IS×ACE COMBAT X ≪転入生はエースパイロット≫   作:初月

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第23話 unknown

僕は相次ぐ失敗のせいか後方から最前線へと回されてしまった。

 

昔は色んな国の新兵器の情報やISの警備状況なんかを盗み出していたころが懐かしいくらいだ。

飛行拠点の情報が流出したあたりからだろうか?

色々な失敗をして遂には組織から厄介者扱いされてしまったようだ。

 

とにかく素人では生存できない可能性しかない敵地潜入任務だ。

バックアップはあるが、間接的なものにしか過ぎない。

 

多分本気で僕を殺しに来ている。

拒否しても任務のどこかでさりげなく殺されるだろう。

 

でも幸いなことにこの任務では僕は一人で動くことになる。

逃げる、いや生き残る最後のチャンスだろう。

 

なら行くしかない。IS学園に――――

 

 

 ◇

 

 

そこそこ長かった夏休みも終わり、今日からは授業が再開される。

 

もう特殊なことが起きないと思っていたのだが、それは私の思い違いだったようだ。

 

「また転校生か。それも企業所属とは…」

 

名前はアリス・ヘイズ。

自由国籍を持っているエイプリルインダストリー所属の専用機持ち。

容姿はすこしメアリーに似ているだろうか。

 

ただ、エイプリルインダストリー自体は装備のみを開発しているため機体はゼネラルリソースの物らしい。

これを良いことにゼネラルリソース社も支援しているようだ。

 

背景がややこしい奴め…。

 

さらにエイプリルインダストリーは色々尖っている装備を発表することで有名な会社だ。

そんな会社の専用機となると…正直背筋に悪寒が走る。

 

今年はなんでこんなに濃い連中が集まるのだろうか。

 

そして何故厄介な奴は大体私のところになるんだ···。

教師なんか向いてないこの私のところに。

 

まあいい。私の務めは果たさねばならない。

気分を切り替えてさらなる転校生を向かえにいくとしようか。

 

 ◇

 

「それでは今日のホームルームを始める」

 

千冬さんの一言で夏休みの終わりを実感した。

まあ前半はノースポイントの暑さに耐え、後半は任務中とはいえ降りてくる書類の処理と改造されたグリフィスへの慣熟訓練に消えた。

あとはたまに輸送機の護衛に向かったくらいだ。

 

銀行での一件以外は戦うことはなかった。

久しぶりの平和な夏休みだったな。

だけどやっぱり私は飛んでいたい。あの綺麗な青空を。

 

そんなことを窓の外を見ながら考えていたからだろう。

 

「ホームルーム中に外を見るとはいい度胸だな」

 

という千冬さんの言葉と共に突然上方から聞こえてきた風切り音。

 

動かなければ頭に当たる。

しかし体を傾けただけでは肩か腕への被害は免れない。

 

咄嗟にそう思い体を捻らせつつ横に動いた。

 

すると風切り音を発していた物体が私の机に直撃し、衝撃で筆箱が少し浮いた。

 

「ほう、私の出席簿を避けるか」

と言った千冬さんに

「とにかくホームルーム中に外を見るな」

という軽い説教と同時に小突かれた。

 

「すみません」

少し考え事をしていました、とかは続けない。

余計なことを言ってしまえば地雷を踏むだろう。

 

この件はこれで終わり、と私は思ったのだが

 

「千冬様の出席簿を避けるなんて」

「避けた人初めて見たよ」

「千冬姉の攻撃を避けウグッ」

「おお~。メアりんはすごいね~」

 

などの驚愕と称賛の声が教室中に満たされてしまった。

 

まあ

「お前ら静かにしろ」

と千冬さんの一声で静まるから問題は無いんだけど。

 

まるで士官学校みたいだ。

 

ふとそんなことを思ったが、二回も出席簿攻撃を受けたくないので真面目に聞くことにした。

 

―――しかし私の災難はまだ終わらない。

 

「実は今日からこのクラスに転入してくるやつがいる」

 

ざわめく教室。

まあ当たり前だろう。

二学期の時点で同じクラスに4人も転校生がいるなんて尋常ならざる事態だ。

 

でも1組のメンツを考えると納得出来る。

性能を見極めるにはちょうどいい。

 

また場を静める千冬さん。

 

だが私の心の安静はここで崩れる。

 

なぜなら入ってきた車椅子に乗っている彼女は―――

「はじめまして、僕はエイプリルインダストリー所属のアリス·ヘイズといいます」

 ―――行方不明になった妹にそっくりだった。

 

僕っ娘なところまで同じとかどういうことなの?

 

思わず口に出してしまったその言葉と一瞬顔に出た驚愕が黄色い悲鳴にかきけされたのは不幸中の幸いだ。

 

しかし、もしも転校生が本当に私の妹だったら色々と危険なので要注意人物として監視しておくべきかもしれない。悲しいことに。

 

もし妹であったにしてもそうでなかったとしても複雑だ。

 

というか九割方妹だろう。

そう言い切ってしまいたいくらいエイミーと同じだった。

 

違うところといえば車椅子だけだが、エイミーが空襲で脚を怪我した可能性も否定できない。

 

…会うならもっと違う会いかたをしておきたかった。

 

そう思った時ジェットエンジン特有の甲高い音が聞こえる。

 

ふと空を見るとノースポイントの新鋭戦闘機が飛行機雲を作りながら通り過ぎていった。

 

 

 ◇

 

「はじめまして、僕はエイプリルインダストリー所属のアリス·ヘイズといいます」

そう亡国機業にこれから襲撃される人々に告げた。

 

前なら内心嘲笑えたかもしれないが今の立場を考えるとせいぜい哀れむくらいだろう。

私も亡国機業に狙われているであろう身だ。

幸いこの学級には代表候補生とかイレギュラーが多い。

 

亡命のために上手く使うとしよう。

このためというわけでもないが僕の本名を知っているのは亡国機業内では誰も居ない。

 

使えなくても完全に失敗するわけではないだろう。

 

 

先ほどからずっと悪巧みを考える僕自身にすっかり悪いことを考えるようになったと思った。

 

同時に今は亡きかつての家族が見たらどう思うのだろうか、とも思ったが死人に口はない。

どう思われようが僕の勝手だ。

 

そう思ったのが運のつきだったのかもしれない。

 

だけどこのときの僕はそのことには気がつかなかった。




新鋭戦闘機はACAHのF-3震電Ⅱのつもりです。

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