IS×ACE COMBAT X ≪転入生はエースパイロット≫ 作:初月
いくら不定期更新とはいえ時間がかかりすぎたことにお詫びを申し上げます。
ものすごい速さで扉が開くとそこからでてきたのはリンさんだった。
そんなことをする理由とすれば・・・企んでいるであろう無断出撃のメンバーに篠之野さんを誘い込もうとでもしたのかな?
まあ私が気にすることではないからいいや。
そんなことを考えている間に私の意識は徐々に遠のいていった。
流石に大怪我した状態で動くべきじゃなかったな・・・。それに本来の目的も話してないし・・・。
起きてからじゃおそいだろうけど千冬さんに行っておけばラウラ達にも伝わるだろう―――
◇
―――なんて思っていたのだが起きたのは案外早かったようだ。
そして出血も止まったみたい。
本来は安静にすべきなんだろうけどあいつらに追いつくためにちょっと無茶をすることにした。
さっきの無茶のように痛みが走ったりはしてないところから察するに怪我はマシにはなってきたようだ。
これなら無断出撃もいけるかな?
と思ったが俺が気絶している間にいってしまったかもしれない。
ま、そうだとしても増援出撃には行ってもいいかもね。
・・・なにかを忘れている気がしなくもなかったが気にする必要はないと俺は判断し仕度を始める。
もう普通に動くことはできるようだから戦闘機に乗れなくなるなんて自体にはならないだろう。
そう思うとなんだか安心はできたのだが無断出撃で悪化するかもしれないな。
でもあんなものに戦闘時の情報を持たずに挑むのはいくらなんでも無謀すぎるだろうと思うことにして不安を取り払った。
生体再生とかの機能がISにそなわっていればいいのになぁ・・・
とか他愛の無いこととかも考えながら誰にも見つからないように出撃準備を整えていった。
・・・見つかっても問題はないんだけど説明が面倒だからな。
◇
さて時は立ち(といっても1時間はたってない)俺は洋上にいた。
ちなみに飛行速度は巡航より低めで飛んでいる。
流石に今の怪我で音速域を長時間維持するのは無理だしね。
そんなことを考えながら福音の背後に回り込もうと飛行をしていると千冬さんからの通信が入った。
<<メアリー、お前もか>>
いたって予想通りな質問である。
これについての釈明は・・・まあ千冬さん相手なら問題はないだろう。
<<一応司令部から直で指令が来ているんで無断じゃないですよ>>
<<そのことは分かっている。だがお前は今の体で出撃して何の意味があるというのだ?>>
予想とは違う質問だったがこの質問に返す答えも用意はしていた。
むしろこっちのほうが本命だな。
<<いくら専用機持ちとはいえアレは危なすぎる。下手すれば死人が出てしまう。それだけは回避したいんだ>>
<<お前がそういうのならそうなのだろう。だが死ぬなよ>>
<<了解>>
そういうと千冬さんとの会話は終わった。
俺の理由には納得してくれたようだが確かにこの体では被弾は許されないだろうな。
最悪空中管制だけを行うのもありなきはしない。
これからについて考えていると雲の切れ間から戦闘中のISを捉えた。
遠くてあまりよく確認できないがさっきから光弾で弾幕はってるところを見ると作戦目標のアレだろう。
しかし動きを見る限り再生されてしまったか・・・。これじゃ私活躍できないね。
火力支援ぐらいしかできないと思った俺はSAAMの照準を福音を射程距離に収めるべく接近した。
俺が予想していたとおり皆さん苦戦しているようで。
少なくとも決定打を欠いているせいであまり攻勢に出れてないみたいだな。
なら俺が決定打になろう。
丁度回避機動をとってこちらに背を向けているから追撃をしかけやすいしな。
そう思い俺は福音の後ろからSAAMを発射した。
でも福音の放った光弾により照準をはずす羽目になりSAAMは奇跡的にあたった1発を除き外れた。
なんてこったい。
SAAMの欠点が見事に出てしまったが俺はめげずに残りのミサイルを全弾発射した。
ちなみに雲の陰から攻撃しているのでラウラたちからみたら少々不思議な光景だろう。
そして直後に戦域から福音の反応が消失した。
だが俺がラウラたちのところへ向かおうとしたとき突然衝撃波が飛んできたので旋回しながら徐々に距離をつめていくことにした。
ミサイル用のレーダーとかを使いながら爆発の中心地を見る限り海水の壁のなかで福音が停止し何かしているよう。
なんだか悪寒が走ったので千冬さんに通信を入れることにした。
<<千冬さんへ、こちらメアリー。ターゲット海上にて行動停止している模様>>
<<周辺の状況はどうだ?>>
即座に返信が入る。
なんだかちょっと焦りが混じっているようにも聞こえたがもしかしてやばい状況だったりするのだろうか?
そんなことを考えた俺は詳細を伝えることにした。
<<なんだか光っているようだが巻き上げられた海水で視界が悪すぎて視認できない・・・っ、動き出した!!>>
通信中にミサイル用のレーダーが福音と思われる反応が動いたのを検知した。
そして通信が即座に返ってこないところから察するに少々不味い事態になっているのかもしれない。
今の体で空戦機動をとりたくは無かったが知り合いを見捨てたくも無かったので俺は交戦域に突っ込んだ。
だが明らかにISの数が足りない。
福音含め6機いなければおかしいのだがどう見ても2機しかいないのだ。
もし今見えない4機が撃墜されたのだとしたらかなり脅威だろう。
そこまで考えたとき俺は自分の考えの甘さに呆れた。
骨折はしていないとはいえかなりの大けがをした状態での機動戦なんてほぼ自殺行為だ。
フェンリア戦の時ですら疲労していたとはいえ怪我はしていない。
さらにこの短期間(レーダーでIS6機の交戦を確認した1分前から今まで)で4機撃墜したのだとしたらかなりの脅威だ。離脱するには超低高度での高機動戦を行い着水による失速を狙うか誰かを犠牲にして逃げるぐらいしなければ追撃を振り切れないだろう。
つまりは落とされる前に落とすしかないのだ。
そうと決まれば交戦するのみ。
福音への突撃を始めると千冬さんからの通信が入った。
<<福音は二次移行している!先の戦闘のダメージは無いものと思え!>>
それを聞いてなぜこんな短期間で3機も落ちたのかを理解した。
専用機持ちとはいえ訓練生には変わりない彼女たちが完全状態の福音に対し連戦できるほどの気力や技能をもっていたかといえば答えは否。
つまりは圧倒的な戦力不足だろう。
周囲の海水を巻き上げはじめた時点で再集合をかけていればここまであっさりとやられることはなかったかもしれないがそもそも単機での交戦の多いIS乗りに集団戦まで望むのは荷が重い。
・・・やっぱり最初からついていくべきだったかもしれないな。
そんな結論には至ったが過去のことを言ってもどうしようもないので俺は攻撃を再開した。
AM-1を展開し、福音に対して牽制射撃を始める。
だが全弾回避される。
先の戦闘での機動から1,2発は当たるようなところへ撃ち込んだのだがどうやら機動性まで上がっているようだ。
外れた中間子弾が海面に着弾したのを離脱しながら確認するとラウラからの通信がはいった。
<<メアリー、なぜお前が居るんだ!怪我はどうした!>>
<<そのままだよ。そんなことより他の皆は?>>
<<落とされた・・・ってメアリー!無茶はやめろ!>>
落とされたと聞いたとき既に私は空戦機動へと入っていた。
予想はしていたが脅威度が高すぎる。
でも逃走をすれば最初にわたされた救援任務すら果たせないだろう。
なら任務の障害を排除するのみ。
いや、今回の場合は殿を務めて逃がしたほうがよさそうだな。
そう判断した俺はラウラに通信を入れた。
<<福音の注意は引き付けておくから落ちた奴らを回収してくれ!>>
そして返信を聞かずにAM-1やGAU-8を福音へと叩き込み始めた。
威力がGAU-8より高そうに見えて少し低いAM-1で福音の機動を制限しながらGAU-8を叩き込んではいるのだが中々あたらない。
流石は純粋な軍用ISというべきか。
まあそんなことに関心していられる戦況ではないのだ。
こちらが全力で攻勢に出ている中でも反撃の機会を見つけては光弾を叩き込んできている。
その度に敵に正面を向けたまま回避機動が取れるのはISならではの利点だろう。
おかげで福音は光弾をあまり使えていない。やっぱり数も大事なんだろうか?
少しずつ心に余裕が出てきたころ、最初からほとんど引き金を引きっぱなしだったGAU-8の残弾がなくなった。
リロードすればまた撃てるがその間に光弾を撃たれる危険性を考慮して俺は威力は少し劣るもののかなりの連射性をもつM61を展開し、GAU-8を格納した。
このときのタイムロスを限りなく小さくしようとGAU-8が玉切れになるすこし前からM61を展開してみたりなどと試みたのだがいくらエースとはいえ精々一ヶ月半くらいしか乗っていないISだったので0.5秒ぐらいにわたり弾幕が途切れる。
そしてその僅かな時間で反撃された。
立場は逆転し弾幕を撃つ側が福音へと変わり避ける側がグリフィス1となった。
避ける側になってから福音を見てみるとGAU-8があたった後にできる爆発痕があまりないことに気がつく。
やっぱり戦闘機乗りの俺にはあまり爆撃機の後部銃座みたいな撃ち方はあってないのかもしれないな。
とか思いながら隙を見てM61を叩き込んでいく。
ここまで俺が稼げた時間は5分ほど。
お堅い軍人並の冷酷さを持つ人間であるラウラなら合理的に判断しもう墜落した奴らの回収を済ませて離脱していることだろう。
そうは思いレーダーで友軍機の位置を確認する。
そしてそこには索敵圏外へと離脱していくISの反応と違う方向から突撃してくるIS1機の反応が出ていた。