IS×ACE COMBAT X ≪転入生はエースパイロット≫ 作:初月
あとは他にくらべてかなりの長くなっています。
援護任務を授かった俺はIS学園の指揮下で行動を開始した。
そろそろ報告を入れるポイントだろう。
そう思った俺は教師陣にしか聞こえないようにISのプライベートチャンネルを使用して報告を入れる。
<<あー、あー、こちらはグリフィ・・・メアリー。現在規定の航路を飛行中>>
<<目標ポイントまであと3分、ポイント到達後は遠くで爆炎が見えるまで待機していろ。あとコールサインはくれぐれも間違えるな。お前の場合シャレにならないからな>>
<<すまない、千冬さん。でもやっぱり職業病に近くてな。ところでこのことは攻撃隊は出たのか?>>
<<お前がポイントにつき次第出すつもりだ>>
まあ救援援護をやる可能性のある俺より先に攻撃隊がやられたりなんかしたらシャレにならないからな。
あと攻撃隊員や控え員等の動揺を防ぐ為に俺が出たことは教師陣以外は知らないこととなっている。
…まあ勘づいている奴はいるだろうけどな。正直篠ノ之さんは新しい武器を貰い浮かれている新兵と大して変わらない状態だから100%に近い確率で失敗するだろう。
『ポイントにつき次第』と言っているところも鑑みると千冬さんも成功する確率は低いと思っているのかもしれない。
そんなことを考えていたら目標地点に到達した。
遠方を確認するも機影は無いからまだ来ていないのだろう。
では報告を入れるか。
<<目標地点に到達。機影無し>>
<<こちらでもポイント到達を確認した。それでは攻撃隊を出す>>
<<了解。これからは観測及び遊撃に移行でいいんだな?>>
<<ああ、では織斑と篠ノ之を頼んだ>>
そういうと空から俺のISのスラスターの音以外が消えた。
攻撃隊発進40秒後、赤椿の物と思われる推進音をキャッチ。
50秒後、交戦開始。
交戦してから遠目で見ていたのだがどうやら既に二回外してカウンターを許したようだ。
一応接近しとくか。
そして接近を図ったそのとき、俺は雲の切れ間に航跡を視認した。
あのタイプの航跡だと高速艇…って報告だ!
<<こちらメアリー作戦域内において高速艇の航跡を視認。対応に移る>>
そういうと俺は全速力で高速艇へと向かっていった。
やはりオペレーターにも人員を割かれたおかげで哨戒しきれていないようだ。
速力から考えて漁船に偽装した情報収集船か。
…沿岸警備隊のやつらを呼んで領海侵犯で捕まえてやりたいものだ。
そんなことを考えていたからだろう。
―――俺は白式のシールドエネルギー残量が残り少ないことを見逃してしまったのだ。
そしてそれに気づいたときにはもう混乱している篠ノ之さんと気絶している一夏が視界に入ってしまった。
なんてことだ。
そして篠ノ之さんは海面ギリギリで墜落は阻止したようだ。」
惨事は免れたな。
<<…白式墜落、離脱援護に移る>>
そう報告をいれた私は篠ノ之さんにプライベートチャンネルで
<<私が銀の福音の攻撃をしておくから一夏を旅館まで運んで!>>
と捨て台詞のように残していくとそのまま福音攻撃へと移った。
…そして今頃撃墜命令が軍人としての私に下された。対応遅すぎるだろ…。
まあベルカ事変の情報公開後の世界情勢を上手く利用して作られた国連がオーシアにあまり大きくものを言えないのもわかるけどさ…。
それを知った俺はSAAMを銀の福音に向け放った。
直後M61AとGAU-8の弾幕も同時に展開する。
そしてこちらの攻撃に気づいた銀の福音は光弾の雨による弾幕を展開し、SAAMの撃墜及び俺への直撃を試みる。
が、あらかじめ近接信管に設定しておいたSAAMは福音周辺にて爆発。
軽いダメージとセンサー系への妨害を成功させ、GAU-8を5発当てることに成功した。
ただその代償としてこちらも光弾数発を掠らせ、F-22のウェポンベイみたいになっている盾で2発防いだ。
そして次はその盾の中に入っているAMRAAMを全弾発射、AM-1を展開し福音へ叩き込んだ。
だがAMRAAMは3発外れ、AM-1も後部の翼に被弾するだけにとどまる。
そして福音のカウンター。密度を上げ範囲を減らした光弾の雨だ。
コブラのような機動をとりそれを回避し今度は腕についているTLSを使った。
これにより福音の攻撃態勢突入を阻止、TLS一射目が切れるまでに計1秒当てることに成功した。
機動戦におけるTLS使用では上々の出来だろう。
だが切れたら速攻で光弾の雨が展開された。
しかしかなり荒くばら撒いてくれたので回避はたやすくできた。
と言いたかったのだが安定翼を焦がしたうえにSAAMの発射機が飛ばされた。
シールドエネルギーもこれで数十単位で減った模様。
そろそろ俺も離脱を検討すべきなのだろうか?
そうして考え事を始めた瞬間隙をつかれてまた光弾の雨にさらされる。
回避には成功しているのだがそろそろ俺の気力もまずくなってきたな。
そんなときに無線が入った。
<<既に攻撃隊は帰還している!お前も帰ってこい!>>
どうやら千冬さんから・・・福音の光弾についてる追尾は面倒だな。
誘導弾が飛んでくる状況下で離脱を図っても回避機動でまともに進めず気力を消費するだけだ。
今すぐ帰りたいところだが帰れそうにない。
そう思った俺はAM-1を乱射しながら千冬さんへと無線を繋いだ。
<<機をみて離脱する!それまで待ってくれ!>>
そして一言だけ言ったあとに無線を切った。
機関銃を牽制のためにかなり使ったためもうM61AやGAU-8の残弾が厳しくなってきたな。
…やられる前にやらなければ死にかねないな。
そう判断した俺は一撃離脱に戦法を移した。
そこで俺はまず低空を全速力で駆け抜ける。
後方で着弾による水柱が上がり始めたことを確認し即座に急上昇し太陽の方角へと向かった。
視界を主な索敵手段とするIS戦では戦闘機による空中戦以上に太陽が使えるのだ。
おかげで急降下しながら撃ったAM-1のうち7割を当てることが出来た。
だが離脱が対福音としては甘かった。
離脱時に後ろに張り付かれ光弾の雨を浴びさせられたのだ。
後方への警戒も欠かしてはいなかったためエンジン被弾に止まるがそれによって起きた動きのラグが致命的となってしまった。
エンジンパージ中にまだ撃っていなかったQAAMとGAU-8の残弾を福音へ向け放ったのだがパージしてから展開する2秒足らずの間に光弾を4発直撃、一部で誘爆が発生し戦闘継続を行うには困難になってしまった。
だがQAAM回避を強いられた福音とはかなり距離が離れたので出せる限りの速度を使い俺は旅館付近の砂浜へと向かった。
高度でいうと10フィートくらいのところを飛び離脱を始める。
だが福音は俺のことを逃がす気がないようで光弾を俺の前方へと放った。
疲労が重なっていたがそれにギリギリ気づけた俺は左に避けた。
だが光弾落下による水柱ですこし操縦が狂い着水しかけてしまう。
そしてそれにより残りシールドエネルギーが残り13となってしまった。
しかし福音はそれ以降の追撃をしてくることはなかった。
AIが攻撃の必要無しと判断したのかそもそも一定範囲の外に出られないようになっているのか・・・。
あ、千冬さんに報告入れとかなきゃ。
<<こちらメアリー離脱に成功した>>
無線を切ったあと色々考えながら飛んでいた俺はあることに気が付く。
…今の速度が速すぎて降りれない可能性があるということだ。
そしてその予想は残念ながら当ってしまい、減速は出来たものの着陸の衝撃でシールドエネルギーが減ったようだ。
あと着陸してから気が付いたのだが誘爆の時に一部がエネルギーシールドを貫通したよう。
おかげで出血しているところがある。
絶対防御、あんまりあてにしていいものじゃないね。
単騎で挑んだとはいえこのザマとは何だか不甲斐なく思えてきた。
そして同時に俺は砂浜でISを展開したまま意識が遠のいて行った。
◇
目が覚めるとそこは旅館の一室。
現状確認とその他報告のため起き上がろうとすると痛みが走った。
それでも一応起き上がる。
…一部がシールドを貫通したようだ。
よくみると包帯が巻いてあった。血が滲んでいるようだからそろそろ取り替えないとまずいだろう。
そういえば私の部屋には誰も来てないのか。
…まあ来てくれそうな人が千冬さん、一夏、ラウラくらいしか思い当たらない時点で来れるやつが居ないということに気づいておくべきだろう。
で、諦め半分で部屋を見回したところ案の定だれも居なかったので隣にあった多分俺の物と思われる制服を着てブリーフィングルームへと向かうことにした。
だがケガはかなり重傷なようで手を壁につかないとまともに歩けなかった。
脚がやられていたらもう戦闘機に乗ることは出来ないが…大丈夫なのだろうか?
最悪の事態を考えた私ギプスが無い以上大丈夫だということにしてゆっくりとブリーフィングルームへ向かっていった。
多分この体では数日間戦闘はできないだろうから戦って感じたこととかは話していったほうがいいだろう。
少なくとも命令が解除されていない以上最悪一人でまた突っ込まなきゃならないからな。
・・・専用機持ちに直接話すことも考えたがそれだとあいつらが勝手に突っ走りそうなのでハブられると思いやめたのは私だけの秘密である。
◇
作戦は失敗した。
密漁船の出現で混乱していた私を織斑がかばう形で被弾、そしてそれを援護しに行ったメアリーもISに乗ったまま気絶し、砂浜を赤く染めているところを発見された。
そして二人ともまだ起きていない。
何時間もたっているのに…。
(私のせいで・・・私のせいで・・・ッ!)
そういいながらスカートの端を握っている手は白くなっていた。
そもそも私は自分を律するために修行してきた。それなのにこのザマはなんだ。
結局律することなんてできなかったではないか。
この程度のことすらできない私にもうISに乗る資格なんてない。
私はもうISには乗らない、そう決心しかけたとき一夏の眠っていた一室の襖がに開いた。
「…あれ?部屋間違えたかな?」
そこから遠慮も無く入ってきたのは血の滲んだ包帯を巻きつけたメアリーだった。
いつの間にか起きていたという事実とここまで来たという事実で数秒間固まったあとに出てきた言葉は
「メアリー!お前安静にしていなくていいのか!?」
といういたって普通の言葉だった。
そのときの私はかなり動転していたのかもしれない。
だが動転してもいい要素なら十分にあった。
まずは一夏はISの絶対防御が発動しているためにエネルギー回復まで昏睡状態に陥るだけなのだが、メアリーの場合は疲労と出血による気絶だったということ。
次に、脇腹を怪我した人がこの部屋まで来たということだ。
普通出会い頭に誰か止めるだろうし、気付いたら怪我人が居なくなっていたなんて洒落にならない。
そしてメアリーの怪我も元はといえば私のせいだったからだ。
正直罵倒も覚悟したのだがメアリーが次に言った言葉は違うものだった。
「別に…このくらいの距離なら問題ない…。あと…私の怪我は私のミス…。篠ノ之さんのせいじゃない」
「しかし私が自惚れたでそんな大けがを・・・」
切れ切れに出てきたことばに咄嗟に返す。
だがメアリーは
「原因が分かっているなら直せばいい」
と言った。
だが話はそこでは終わらない。
「それより、もう一つ、言うことがある。篠ノ之さんは…落ち込みすぎて今やるべきことを見失ってる…。
落ち込んだり反省したりするのは終わってからにして…。
作戦は終わっていない…」
つまりは無駄なことを考えている場合ではないと言ったのだ。
そして私はある結論に至った。
反撃すればいい。
シルバリオ・ゴスペルを落とせばいい。
だがシルバリオ・ゴズペルを落とすのは一人では無理だろう。
―――なら
私の頼みを聞いてくれるかどうかは分からないが動かないよりはマシだ。
そう思って動こうとしたとき一夏の眠る部屋の襖が開いた。
容赦のない速さで。
そしてそれに気をとられている間にこの部屋に来た病人は気絶したのだった。
…やっぱり無茶してたじゃないか。
12/20 一部修正を加えました。
9/21 一部修正&追記