IS×ACE COMBAT X ≪転入生はエースパイロット≫   作:初月

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2014/9/25 一部追記

2015/7/23 一部改稿


第9話 ラウラとグリフィス 後編

―――こんなところで負けるのか、私は……。

 

―――私は、負けられない。負けるわけにはいかない!

 

 

私は戦いのために作られ、生まれ、鍛えられた。

 

その証拠が最初の識別記号だ。

 

C-0037といったか

 

私は優秀だった。

 

私は様々な戦い方にて最高レベルを維持し続けた。

 

しかしそれは世界最強の兵器、ISの出現までだった。

 

直ちに私にもISへの適合性向上のため肉眼へのナノマシーンの移植手術が行われた。

 

しかし私は適応しきれずその結果出来そこないの烙印を押された。

 

そんなとき、あの人―――織斑教官―――に出会った。

 

彼女は極めて有能な教官であった。

 

私はIS専門となった部隊の中で再び最強に君臨した。

 

そんな中私は教官の強さが気になった。

 

それは弟だという。

 

だが私は教官に優しい顔をさせる弟が許せない。

 

認めない。

 

 

―――力が欲しい。

 

 

そう思うと機械質の声が聞こえてきた。

 

『汝、力を欲するか?』

 

「よこせ、力を。比類なき最強を!」

 

そう叫ぶ。

 

直後、私は気を失った。

 

 

 ◇

 

 

突然ラウラの機体が稲妻をまとい始めた。そして同時に爆風が発生し、発光までしだした。

 

ファルコ1なんかは流石はベルカ、やることが違うな、とか考えてそうだ。

 

 

だが私は旧ベルカ(ドイツ)ではないと思い知った。機体が溶け、操縦者であるラウラを取り込んだのだ。

光学迷彩やショックカノンといった攻撃、欺瞞の手段などではない。

 

変形でもするのだろう。

その片鱗を見せるかのようになんらかの流体がラウラの機体を覆い始めていた

 

このアリーナにいるほとんどが衝撃を隠せていない。

まああんなものを見せられればそうなる。

 

そういえばコフィンシステムってISに近いような気がする。

まあ関係は無いだろうが。

あれは未完成だがこちらの思考操縦システムは完成しているといっていいだろう。

機械の補助付きとはいえ動くのだ。対してコフィンシステムは操縦者に多大な負荷をかけてやっと機動のみが出来るレベルである。

 

案外ISをコフィンシステムにリンクさせたら高性能戦闘機になるかもな。

 

そんなことを考えていると警報がなった。

 

『非常事態発令。トーナメントの全試合は中止、状況をレベルDと認定。鎮圧のため教師部隊を送り込む。来賓、生徒はすぐに避難すること』

 

そしてアナウンスが終わると防護壁が出てきて客席を隠した。

 

さりげなくユジーンとファルコ1を見たがファルコ1が随分と残念そうにしていて、早く逃げましょう的な感じでユジーンが説得していた。

 

ファルコ1はこの技術が気になるのだろう。

それは俺も大して変わらない。

最新技術というのは心を躍らせるものだ。

まあ同時に警戒心を向けるものであるが。

 

 

……どうやら変形も最終段階まできたようだ。

 

すると一夏が唖然とした様子でくちを開いた。

 

「雪片……千冬姉と同じじゃないか」

 

そうなのか。

 

千冬さんを慕っているラウラのことだ。案外操縦者の意思も反映されているのかもしれない?

 

だが私は深く考えるのを中断した。なぜなら一夏が感情的になっているからだ。

 

それに黒いなにかがこっちにきた。

 

 

私はとっさに両手にショートナイフを展開し、雪片をそれでうけた。

 

「一夏、なぜそこまであれに敵意を抱く?」

「あいつ千冬姉と同じ間合いを使ってやがる。あの技は千冬姉だけのものなんだ」

「だからといって生身でISに突っ込むのか。死ぬぞ!」

「ならどうすれば……!」

 

無謀な突撃を静止しつつ頭を捻らす。

この場に居るにしろ去るにしろ身を守るもの、つまるところISが必要となる。

どうにか再起動できないものかと思考を巡らし、一つの可能性に思い至った。

 

「俺の機体には中間子攻撃の際に使うエネルギーパックがある。これから用意するから少し待ってくれ」

 

そういうとエネルギーパックをとるまでの戦術を考えた。

あれがこちらに来ている現状で取り出すのは不可能だ。

あれの目標をシャルにすればいいのかな。

 

<<シャル、あれに攻撃を加えて俺から引き離してくれ!>>

 

<<分かった>>

 

そういうとシャルの銃撃が始まる。そしてあれ改め偽千冬さんはそちらの方向へ向かっていった。

 

 

その間に俺はM.B.S.R.を展開、エネルギーパックを取り外し武装をAM-1とLSWM(演習用)に変更した。

 

「じゃあこれを接続してシールドエネルギー等を補給してくれ。俺もイラつくからちょいと攻撃してくる」

 

そういうと一夏のほうへ進まないように攻撃を繰り出した。

 

 

……だが腐っても千冬さんのコピーだということだろう。

俺が突っ込んだ瞬間シャルの機体は切られ、シールドエネルギーが切れたようだ。

実際俺が撃っても大体避けられている。

 

おかげで交戦から20秒立つ頃には接近戦となっていた。

 

もう逃げるのはむりだと判断した俺は両手にショートナイフの形態へ移行、TLSをレーザーブレード代わりにしながら近接戦をしかけた。

 

 

だが俺の攻撃は掠るばかりで逆に偽千冬さんの攻撃は少しづつ確実に俺のシールドエネルギーを削って行った。

 

 

そしてまた俺がケガで運ばれるのかと思ったとき、横から乱入していてきた一夏に零落白夜発動状態で切り付けられ倒れた。

 

そしてそのとき一夏のつけた切り口からラウラが落ちてきた。

 

意識を失っているようだが目立った外傷はないな。

 

 

「ありがとう、助かったよ。あと少しで前の二の舞だったぜ……」

 

そして妙に疲れるトーナメントだったぜ……。

 

 

そう思い一息をつこうとしたら周りを教師部隊に囲まれていた。

 

 

少し違和感を感じた私はログを確認した。

どうやら撤退を勧告されていたらしい。

 

……説教来るかな。まぁいいや、サァ行くか。

 

 

 ◇

 

救護室で私は千冬さんとラウラの目覚めを待っていた。

 

千冬さん曰く「あいつが自ら選んだんだ。何らかの理由があるんだろう」ということなので一応目覚めるまで待つことにした。

 

ちなみに今は暇だから軽い雑談をしている。

 

「流石は本職というべきか。かなり的確な判断をしていたな。撤退以外は、だが」

「はは……。戦場じゃ咄嗟に判断しなければいけないときが多かったんでね」

「そういえばあの時点で光学迷彩の技術が確立していたと聞いたが本当か?」

 

光学迷彩といえばフェンリアとかグレイプニルか。

話すのは全世界中継が行われたフェンリアのほうにしよう。

 

LSWM以外に機密はないはずだ。

 

「ええ。確か全世界へ向けた中継も行われていたはずです」

「そんな情報は聞いた覚えがないのだが」

「直後にISが出たせいで光学迷彩のことなんてすっかり忘れられましたからね。

それにあのあと製造施設が崩壊したせいで今では失われた技術になってしまいました」

 

アーケロン要塞での緊迫した戦いを思い出しつつそう言った。

今ではオーレリアのレーダー基地となっているあの島を訪れてみるのもいいかもしれない。

 

「そうなのか。ならISに搭載される心配も少ないということだな」

 

その問いに一瞬逡巡して答える。

 

「ディエゴ・ナバロや開発者らが関わることが無い限り搭載されることはないでしょう」

「ふむ……」

 

案外光学迷彩については気にかけているようだ。

 

でもISは有視界戦闘の多い兵器だからしょうがないのかな?

グレイプニルの発電量か地上の支援施設無しで稼働するとは思えないが。

 

「何かあったんですか?

まあ答える必要はないですが」

 

「有り難い」

 

 

会話が途切れるとラウラは目を覚ました。

 

 

「私は……。

 

なにが起きたのですか」

 

「一応これは重要案件である上に機密事項なのだがな、VTシステムは知っているな」

 

「ヴァルキリートレースシステム……」

 

VTシステムって何?と思ったけどそれを聞くのは後にしよう。

私以外は知ってるみたいだし。

 

「そう。IS条約でその研究はおろか開発や使用、すべて禁止されている。

 それがお前のISに積まれていた。

 

 精神状態、蓄積ダメージ、そしてなにより操縦者の意思、いや願望か。

 それらがそろうと発動されるようになっていたらしい」

 

「私が……望んだからですね」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!」

 

「はい!」

 

「お前は何者だ?」

 

「私は……誰でしょうか」

 

「誰でもないなら丁度いい、お前はこれからラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「へ?」

 

 

意志を持てということか。

 

かの凶鳥フッケバインも「理想は捨てるな」といったそうだな。

 

 

「それからお前は私には成れないぞ」

 

最後に千冬さんはそう少し微笑みながら話すと救護室を後にしていった。

 

こういうところを見ると千冬さんは教官が適任なんだろうな。

 

 

……そして千冬さんが居なくなったあとにラウラは笑い出した。大丈夫か?

 

 

そしてラウラは私に気づいているのかな?

 

「ラウラ、大丈夫?」

 

「うわ!?お前いつからそこにいた!」

 

……最初からいたのに気づいてなかったらしい。少し悲しいぞ。

まあ私の背ならしょうがないのかもしれないが……。

 

「千冬さんの隣にずっといたよ。気付いてほしかったな」

 

「そのことは置いといてだな、その……素晴らしい援護だったな」

 

「そうかな?まあ褒めてくれるのはうれしいけどでも結局ラウラを援護しきれなかった」

 

「いや、あそこまで戦えたのなら十分だろう。それに織斑に予想以上の度胸があったのもある」

 

「そうだね。でもまだ彼の機動は未熟だよ」

 

「ははっ、違いない。まあそれでこそ鍛え甲斐があるというものだ」

 

ラウラの微笑で少し医務室の空気が明るくなる。

 

「あとお前にもう一つ言うことがあった。これから組まないか」

 

「いいよ、ラウラ。それじゃあまたね、相棒」

 

私は戦闘の時から思っていたことを話した。

 

 

少なくとも戦闘ではコンビを組んでもいいと思ったのだ。

彼女の連携を気にしない戦い方を援護するのは私の訓練になるだろう。

 

プライベートに関してはこれからどうにかしていけばいい。

 

それに千冬さんの言葉でどこか吹っ切れたようだしこれからのラウラは変わっていくだろう。

 

 

……だが私が去った理由はもう一つある。

 

一つはドイツ軍に目を付けられたということ。これはあらかじめ分かっていたことだからいい。

ラウラとかかわった時点で既に決定的なのだ。

 

 

問題は二つ目。

 

フェンリアらしき機体を捉えたとの報告がユジーンからあがったのだ。

あとは諜報にてグレイプニルの情報が流出した可能性があるとのことだった。

 

 

フェンリアに関する情報に関しては未確認とのことだが流出の件が判明し、同項に記載されていることから推察するにもう特定されているのだろう。

 

 

私たちは再び戦うのだろう……。

今度の戦いは敵が未知数だ。

でもためらってはいられない。

 

オーレリアのために。

 

その重圧を感じてため息を吐く。

そして私は気持ちを切り替え食堂へと向かった。明日更なる衝撃に見舞われるともしらずに。

 

 

 ◇

 

結局メアリーの正体はわからなかった。

 

分かったのは性格がよく的確な判断を下せるということくらいだ。

 

オーレリアにも気づかれたようだから続けてもあまり戦果は上がらないだろう。

 

 

ただ一つ言えることは…メアリーは私の相棒だということだけだろうか。

 

 

しかし相棒か……いい響きだ。




最近書くペースが上がったり下がったりしてます。

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