IS×ACE COMBAT X ≪転入生はエースパイロット≫   作:初月

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前半:IS学園

後半:模擬空戦

となっております。


エスコン分補充回


第7話 グリフィス1の災難

私は自室へ帰る途中に恐ろしい集団に遭遇した。

勿論場所はIS学園内である。

 

 

なんだか目つきがすごい集団がこっちに全力で迫ってきているようだ。

よりによって左右から押し寄せているな……。

 

 

……これ私の命ないよね?

 

一瞬そう思ったが、希望は隣にあった。

 

それは保健室である。

医務室であるから逃げ込めば手荒な真似はされないと判断した。

……まあここじゃあてにいならなかったのだが。

 

そしてそれ以外に逃げ道はない。

正確に言えば窓があるが、飛び降りに賭けるくらいならまだ部屋に立てこもるほうがましだ。

 

そう判断した私は全力で保健室へ逃げ込んだ。

 

 

中にいたのは……よりにもよって一夏である。

 

 

その瞬間あの集団の目標を悟り、

 

「終わったな」

 

そうつぶやいた直後保健室のドアが空を舞い、私は窓へ全力疾走した。

どうやら判断を間違えたようだ。

扉を塞ぐことも考えたが、時間的猶予が少ない今実行するのは厳しいだろう。

 

その予想が正しく直後扉はすさまじい勢いで開かれた。

 

「な、な、なんなんだ!?」

 

一夏がそう言った。確かにこいつらいったいなんなんだ?

 

「新手の襲撃じゃない?」

 

さっき自分が本能で察知したことを言ってみた。

 

「どうしたのみんな?」

 

シャルがそう聞いた後襲撃者らは何かの紙を突き出してきた。なんかの申込み用紙のようだ。

 

…しかし、うるさい。

 

「なにこれ?」

 

「"今月開催する学年別トーナメントではより実戦的な模擬戦闘を行なうため二人組での参加を必須とする。

なおペアが出来なかった生徒は抽選で組むものとする"」

 

つまるところそれのペア申請用紙ということか。それで男子の居る保健室に襲撃もとい駆けつけたんだな。

 

私は…誰とでもいいや。

生憎それを頼めるような友人もいない。

 

「締切は―――」

 

ここで一夏の話は途切れる。

 

なぜかって?勧誘合戦が始まったからな。

 

しかし、もう少しくらい静かにできないのかな。

 

「皆悪い!俺はシャルルと組むから諦めてくれ」

 

と一夏が言ったことで騒ぎは収まった。

 

襲撃者らは色々言いながら帰っていったのだが…内容は割愛する。

私にわかる話じゃないんでね。

 

やっと静かになったと思ったら今度はセシリアさんとリンさんで一夏の取り合いが始まった。

 

お前ら怪我人だろ!ってツッコみたかったけどあんなに騒げるってことは私ほどひどくはないようだ。

 

まあそれも山田先生が鎮圧してくれたおかげで保健室は平穏を取り戻しましたとさ。

内容はISのダメージが蓄積してるから無理ってことみたいだな。

 

「山田先生、私のISはどうなんですか?」

 

「オーブリーさんのISは…最後の直撃以外でのダメージがないので出場は出来ますね。

ただ、体のほうが治ればの話になりますけど」

 

「そうですか。一応出場する方向でお願いします」

 

「無理はしないでくださいね」

 

そういうと山田先生は去って行った。

 

私も怪我人だしあんまり動くのは避けよう。

 

「じゃあ私は部屋に戻ってるね」

 

「あの…さっきはごめんね」

 

何故がシャルに謝られた。

 

「何が?」

 

「ケガのことだよ」

 

その瞬間シャルと私以外がキョトンとした。

 

え?知らなかったの?まあいいや。

 

「ケガってなんのことですの?」

 

「ケガってなによ?」

 

「お前いつケガしたんだ?」

 

とこの反応。結構な出血もしたと思うんだけど…何故知らない?

 

「さっきの模擬戦でシールドエネルギーが切れたところで流れ弾が来てね…脇腹を掠っちゃったんだよ」

 

サクッと説明。だいたいあってる。

 

「大丈夫…ですの?」

 

「検査で骨とかには問題ないって言ってたから多分大丈夫だと思うよ。少し痛いけどね」

 

そう思いつつ眺めた傷口は少し赤く滲んでいた。

 

どうやらまだ大丈夫じゃないらしい。検査で骨とかが大丈夫だったのならこの痛みは多分出血だろう。

大方先程走ったのが原因だろうか。

 

痛みをこらえていると一夏が

 

「部屋まで運んで行ってやろうか?」

 

と聞いてきた。断る理由もないのでそのまま甘えることにした。

 

 

…うしろから殺気の籠った目で見られたのは私の気のせいだろう。気のせいに違いない…。

 

 

帰る途中のことは疲れによる眠気のせいで朦朧としていたためあまりよくは覚えていない。

 

ただおぼえているのはシャルが一夏がペアを組んでくれてありがとうみたいなことを言っていたくらいだ。

 

そして部屋に帰ってからはギリギリ保てていた意識も途絶えた。

 

 

余りにも早く寝すぎてかなりの早起きになってしまったのはご愛嬌である。

 

 

 ◇

 

翌日早起きするとかなり不謹慎なメールがクラックスから来ていた。

 

[隊長の送ってくれた情報のおかげでフランス製装備が多数手に入りました。情報提供感謝します。]

 

 

…つまるところあの情報でデュノア社かフランス政府を揺さぶったのだろう。多数手に入ったってところを考えると揺さぶられたのはフランス政府だろうか?

 

もし仏政府がグルだったとしたらシャルの苦悩はただの無駄になっている気がするのだが…そこをとやかくいうのは止そう。

 

 

ちなみに起きた時間は午前4:00。

 

また私は飛行訓練(戦闘機のほう)を行うことにした。

 

 

ただ今日は少し違った。

 

ノースポイント(日本)のパイロットから模擬戦の申請があったのだ。

 

 

そして一番の問題は…相手があのメビウス1だということだろう。

 

ただ機体のハンデはつくらしく、こちらがRafale Mなのに対しメビウス1はF-4Eだ。

 

 

…でも勝てる気がしないのは俺だけじゃないはず。

 

勝てる気どころかミサイルを当てられる気もしない。

 

相手は大陸戦争の英雄。トップエース。

一機で一個師団と同等の戦力を持つとまで言われた隊長と彼について行くことの出来るエースのみで構成された部隊、メビウス中隊。その部隊の隊長だ。

最初は二代目が就任したのだと思っていたが、年齢を見る限り初代隊長のよう。

 

隊員の一人ならまだ余裕が持てるが、初代隊長となると希望を抱くことすら無理だった。

だが諦める気はない。

俺だってオーレリアのトップエース。抗えるだけ抗ってやる。

 

まあ戦って俺の実力を知ることにしよう。

 

 

昨日の整備士からは「…がんばって来てね」と言われた。みんなそもそも出来レースとか言わないあたり優しいのかな?

 

 

まあいいや。

 

≪グリフィス1、テイクオフ≫

 

 

 ◇

 

上空へなぜか編隊を組んで上がった。前がメビウス1、後ろが俺だ。

 

≪こちらメビウス1、同位反航戦で始める。指定座標はレーダーに表示されているのでそこまで向かってくれ≫

 

≪グリフィス1、了解≫

 

 

その指示とともに俺らは逆方向へ機首を向けた。

 

指定位置についてからはだれも何も言わないまま開戦となった。

 

 

まずAIM-9をヘッドオン。ちなみにXMAAやSAAMが出てこないのはそもそも当らないと思っているからである。

 

で、ヘッドオンされたAIM-9を両機ともに回避して、後ろの取り合いになった。

 

ちなみに弾頭はミサイルが近接信管のペイント弾で、機銃もペイント弾である。開発製造はグランダーI.G.社のものであり、かつてのiPodミサイル等よりは危険だが実戦に近いということで1対1の訓練などで稀に使われていた。

 

まず俺が後ろをとることに成功する。距離250まで接近してからXMAAの連射を行い機銃による牽制も入れる。

 

だが俺は甘かった。

 

 

メビウス1は回避機動の直後にF-4Eで疑似コブラを行ったのだ。

 

 

おかげで位置関係は逆転。こっちが追われるはめになるが距離が80程度しか離れていなかったのでバレルロールでAIM-9を回避したあとに急旋回を行うことでメビウス1の視界から逃れることに成功した。

 

また巴戦に入る。

 

しかし巴戦になるとRafaleのほうが分がいいはずなのだがなかなか追いつくことができない。

 

 

エンジンを見るとバーナーが付いたり消えたりしていた。

 

どうやら速度調節を細かく行うことで追いつかれるのを避けているようだ。

 

 

かくいう俺も微細な速度調節で追いかけているんだけどね。

 

 

 

ふとあることを思いつき、俺は速度調節で少し旋回半径を大きくしていきメビウス1をうしろにつけさせた。

 

 

 

勿論射撃も受けるが距離を80~20に保たせミサイルを使わせないようにする。

 

そして機銃はバレルロールや微旋回などを組み合わせて回避だ。

 

 

だがさっきから機銃弾の風切り音が鳴っているので精神的にはつらいところもある。多分普通のパイロットなら判断ミスでエンジンに喰らいベイルアウトとなるところだろう。

 

 

しかしどんなに避けられても正確な攻撃を与えてくるメビウス1もタフだ。

 

 

もういいや、多分メビウスの気が切れるころには両方とも燃料尽きそうだからやってしまおう。

 

そしてひと思いに減速した。オーバーシュートだ。

 

俺を追い越すメビウス機、そこでここぞとばかりにミサイルを発射する。

 

 

だがそのミサイルをバレルロールで避けられそして今度は俺がオーバーシュートされてしまった。

 

 

そして俺がミサイルを食らって撃墜判定を受けたことで試合は終わった。

 

 

 

 

で、基地に帰ると例の整備士からメビウス1が怒られていた。

顔は笑顔だが確実に切れてるね。

 

ちなみにメビウス1は40代後半のおっさんだ。

その光景がシュールなのは言うまでもない

 

隣にあったのは…主翼が格納庫でもげたF-4Eだった。

 

「…どうやったら…飛んでるだけで機体、壊せるの…?」

 

口調自体に威勢はないが雰囲気がとんでもない。あの殺気だけで気絶する人が出るんじゃないかとか思えてしまうレベルだった。

 

「いや、そもそもF-4EでRafaleと空戦させるのが間違いだ」

 

それに普通に言い返せているメビウスさんもかなりのつわものだな。

俺も援護をするとするか。

 

「確かにあんたの機動はおかしかったよ。機体限界の壁は明らかに超えていたね」

 

「そう…なの…?」

 

「ああ、そもそもF-4EでRafaleと同等の旋回をする時点で機体への負荷がかなりかかったはずだ」

 

「そうだよ、そう…って君は誰だ?」

 

「ああ、俺か。グリフィス1だ」

 

「君がグリフィス1か。先ほどの機動は素晴らしかったよ。機体に無理をさせない機動では君を超える人は出てこないだろうな。流石はオーレリアの英雄といったところか」

 

なんだか俺はこの人をどこかで見たことがある気がした。

 

「お褒めの言葉をありがとう。ところで何だか見覚えがある気がするのは俺の気のせいか?」

 

「案外気のせいじゃないかもしれないけど…名前が言えない以上どうとも言えないな」

 

「そうか…。まあ俺の気のせいかもしれないしな」

 

多分気のせいだろう。

そう思うことにした。

 

ノースポイント(日本)での顔見知りは千冬さんと父さんくらいしかいないはずだし。

もしくは親父だが…うちの母さんが知り合う切欠が思いつかない。

 

「そういえばなんで君はここに居るんだ?」

 

「ああ、俺は色々あってIS学園に行くことになってね」

 

少し冗談めかした口調で言う。

 

「…そうなのか。お前も大変だな」

 

「じゃあ俺は任務へ向かうとするよ。また空で会おう!」

 

「またな!」

 

そうしてメビウス1は自らの愛機であるF-22へ向かった。勿論機体には一見リボンに見えるメビウスの輪をエンブレムがついていた。

 

妙に気の合うやつだったな。なんだかまた会いそうな気がする。

 

そんなことを思いながら離陸していくメビウス1の機体を眺めていた。

 

 

そのまま見えなくなっても空を眺めていると唐突に整備士の人が話しかけてきた。

 

「…グリフィス1、オーレリアから、F-35がくるみたい…」

 

「な、なんだって!?」

 

その発言に度肝を抜かれた。

確かに導入計画はあったが、海軍優先であり空軍に回ってくるのはもう少しあとだったはずだからだ。

金に余裕が出来たのか、試験的に運用するのか分からないのが怖いところではあるがステルス機を受領できるのだから喜ぶべきかもしれない。

 

「…カスタムは…されてないみたい。…だけど、私達でやってあげる…」

 

「分かった」

 

「…遠慮はしなくても、いいからね」

 

「じゃあ注文は乗ってからつけることにするよ」

 

「あと…そろそろ戻ったほうが…いい時間…」

 

「そうだな、じゃあまた!」

 

私はそういうと、例の整備士と新鋭機に期待を膨らませながら学園生活へと戻って行った。

 

学園に戻ると千冬さんに軽くにらまれたのは気にしないでおこう…。

 

 

 

その後IS学園に来ている軍人の間で謎の模擬空戦が軽い噂となったのは言うまでもない。




次は学年別トーナメントになると思われます。

2015/7/23 一部改稿

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