実弥の依頼をどうするか、という点で八幡とそれ以外で意見が割れる。ただ、比企谷は一度面識のある実弥の依頼を無碍にするわけにもいかず、けれども自分ではどうしようもできない上に、由比ヶ浜は自分の意見を聞き入れず、小町には黙っとけと言われて孤立。手の詰まった八幡はどうするか思案しながら目を閉じた…
という感じですかね?そんなつもりで書いたのですが…もしかしたら表現が抜けていて違う解釈をさせてしまっているかもしれませんね…すいません…では、気を取り直してどぞ!
去年はどうだったか。確か、修学旅行のときの俺の嘘告白で、雪ノ下たちとの関係が悪いときに、新たに、一色を生徒会長にさせないようにするという依頼が舞い込んだんだっけか。それでそのあと、俺が黒歴史を1つ作って、一応元通り。みたいになったんだよな。あのとき俺が『本物』を求めずに、ここから去っていたらどうなっていたのだろう。いや、仮定の話をしても意味がないな。
それよりも、まず依頼の解決、解消方法についてだな。まず、1つ目のやつは、多分俺だろう。本を貸したってのに当てはまっているし。でも、本を貸して貰った相手が目の前にいたら、普通はすぐに返せばいいだけだよな...?なぜ早弓はそうしなかったんだろう...もしかしたら俺じゃない場合も有りうるな。となると、今日直接聞くしかないか。
そして、次に2つ目の依頼。今回のメインはこっちだな。まず『男性恐怖症』について調べてみるか。「おっけーぐーぐる、男性恐怖症とは。」
Google先生「男性恐怖症とは、恐怖症のひとつ。個人差はあるが、男性に触れられると強い不安感に駆られたり、男性と話すとひどく赤面したり、男性と一緒にいることに耐えられないといった病的な心理。中には男性が近づいてきただけで不安を感じる人もいる。」
と。んで?主な原因は...?
「レOプの被害に遭った」「父親もしくは兄弟から虐待を受けた」「子供時代に男子からいじめを受けた」といった経験。
...俺が近づいたら危ないのか...でも、雪ノ下たちはこのことを知っているのだろうか?早弓が男性恐怖症を発症しているということは、男性に対してなんらかのトラウマがあるということで、それを克服しないことには解消はできないんだよな...とはいえ、俺が直接的に動くことができないこの状況、1つ目の依頼さえもまともに解決できないんじゃ...てかあいつ、なんで男性恐怖症なのに男性に本なんか貰ったんだよ...恐怖症じゃないのかよ...いや、待てよ?そんな状態でも俺と会話していたし、どちらかというと、自分から寄ってきたよな、あの時。それに別に赤面しているようなことはなかったと思う。めちゃくちゃ噛んでたし、なんかオドオドしてたけど。ということは、別にそこまで強く症状が現れるということではないはずだ。症状の進行具合を由比ヶ浜を使って聞いてみるか。ついでにその本をくれた男子が誰なのかもな。
***
比企谷「なぁ、由比ヶ浜。少し話があるんだ、ちょっといいか?」
今朝は小町は全く変わった様子はなかったが、昨日のことがあり、こちらから話しかけるのは癪だったので、小町とは話していない。だから恐らく、いつもの、小町から情報が漏れてました!ってことはないはずだ。それなら由比ヶ浜は、早弓が本を貰った相手が俺かもしれないことを知らない。ならば、1つ目の依頼がすぐに終わるかも知れないから、ということを伝えたほうがいい。お礼がしたいなら、俺は本を返してくれれば問題ないしな。症状の具合も聞いておいてもらいたいし。
比企谷「由比ヶ浜。早弓の言っていた依頼についてなんだが。お前、1つ目の依頼の内容覚えてるか?お礼がしたいってやつ。あれな。もしかしたらだぞ?もしかしたら、その相手が俺かもしれん。一応条件には当てはまってるんだ。だから...」
由比ヶ浜「うん、そうだよ。みやっちの言ってる男子はヒッキーのことだよ。」
ふぁっ!?なぜお前が知ってるんだ?いや、なぜ断言できるんだ?もしかして、俺と早弓の関係について聞いてきたときから、由比ヶ浜は知っていたというのか?ならなぜ教えてくれなかったんだ。
それ以前に、知っているのなら話が早いな。
比企谷「お前がなんでそのことを知っているのかは置いておくとして…その、お前に折り入って頼みがある。早弓に俺は本を返して貰えればそれでいい、礼なんかはいらない、と伝えてくれ。それと、男性恐怖症の具合についても、どの程度か聞いてきてくれ。」
由比ヶ浜(なんでヒッキーこんなに気合入ってるんだろう…もしかしてみやっちのこと好き…いやいや、そんなわけない、だって今まで知らなかったんだから…)
とりあえず、ここまで聞き出せれば早弓の依頼も進めやすくなるだろう。判断材料である情報がないことには何も決められないからな。
由比ヶ浜は、うん。わかったよ。と応え、早弓の方に向かって小走りに去っていった。
あとは雪ノ下だな。あいつは男性恐怖症については知ってそうだから、由比ヶ浜からあいつの症状の具合を聞いてから話すか。
***
由比ヶ浜は、早弓の症状はあまり酷くなく、クラスメイトと会話するくらいなら大丈夫だが、近すぎたり、触れられたりするとダメだと言っていた。
比企谷「そこまで重症ではないと…」
確認するように1人、呟く。となると、本を返してもらうぶんには構わなさそうだな。放課後奉仕部にきてもらってそのことを話して。次はどうするか…恐怖症の克服…トラウマに触れたらアウト。それを上手く回避しながら依頼を遂行する必要がある。
近づかれる、触れられる…近づいて触れなきゃできないことはなんだ?暴力などによる直接的体に触れる行動だな…となると、どれも当てはまってしまうな。けれど、いじめというのは、教師に気付かれないように行われるのが基本的で、どちらかというと精神的にダメージを与えることが多いよな。仮にそうだとすれば、いじめの線は薄い…やはり暴力が原因か…家庭内暴力かどうかは本人に聞くしかないが、最悪の場合、即行で地雷を踏むことになる。これは避けたい。
どうしたものか…いや、ここは一先ずいじめの線を探ることだけを考えよう。本人に聞く以外で1番手っ取り早いのは、親しい友人に聞くことだな。これはあとで聞こう。それからその友人に詳細を聞くとするか…
***
奉仕部室から楽しげな声が聞こえる。いつもより多いな、一色でもいるのか…?
ドアに手を掛け、左に動かす。
比企谷「うーっす。」
雪ノ下「こんにちは、比企谷くん。」
由比ヶ浜「あ、やっはろーヒッキー!」
実弥「こ、こんにちは、比企谷くん…」
比企谷「おお、早弓もいたのか。」
やはり男子には症状が発現するのか。さっきまでは普通に喋ってたのにな。やっぱり本人に俺が聞くのはマズいか…?いや、クラスメイトと会話するくらいなら大丈夫なはずだ、俺も一応同じクラスだしな。認識されてるかは別として。
比企谷「なぁ、早弓。聞きたいことがあるんだが、ちょっといいか?」
実弥「は、はい、なんでしょう…?」
比企谷「早弓の中で1番親しい友人って、誰だ?あ、いや、無理にとは言わない。」
由比ヶ浜(ヒッキー、なんでそんなこと聞くんだろ?今日はみやっちの依頼について話そうってゆきのんと考えてたのに…)
実弥「え、えっと…と、隣のクラスの…結城さん…です…」
比企谷「そうか、ありがとな。」
実弥(比企谷くんにありがとうって言われると、なぜか安心する…なんだろう、この心の安らぎは…)
由比ヶ浜「えっと、ヒッキー?今のには何の意味が?」
比企谷「いや、ちょっとな。アレがアレで…」
雪ノ下「比企谷くんがそういう時は、大抵私たちにも関係するこのなのでしょうね。言わなくてもわかるわ。」
こいつは普通に心読むようになったよな。雪ノ下さんかよ。陽乃「くしゅんっ!」
比企谷「そうか、そうだと助かる。」
雪ノ下「いいえ。比企谷くんはもういいかしら?私たちも彼女に話したいことがあるの。」
俺は雪ノ下に続きを促し、話を終始黙って聞いていた。ツッコミたい
のを懸命に堪えて。
雪ノ下が何を話したかというと、早弓の依頼について、まず1つ目は、相手にお礼をするのは恐怖症のため難しいから、相手が本をくれたなら、また同じように本を、お礼の一言をのせて本をプレゼントすればいいのではという提案。ねぇ、それ俺この前言ったよね?なんでその意見無視しといて今サラッとあたかも自分の意見のように言った⁉︎俺1人だけ奉仕部の危機とか深く考えてたのがバカみたいじゃん⁉︎まぁ、いいや。これで奉仕部が無くなったりしないなら。なんだよ、最初から決別のけの字もなかったんじゃねえか…
次に、恐怖症の克服。さっきのは正直茶番に過ぎない。こっちが本題みたいなもんだからな。
雪ノ下「早弓さん、できればその恐怖症が発症した原因に心当たりがあれば教えて欲しいのだけど…もちろん、無理にとは言わないわ。」
早弓は、ぁ…ぇっと…と言いながらこちらを見てくる。俺は席外した方が良さそうだな。
比企谷「なんか飲み物買ってくるぞ。注文があれば受け付ける。」
実弥「あ、いえ、席は外さなくても大丈夫です…」
比企谷「そ、そうか…」
実弥「そ、それで…その原因についてなんですけど…」
まさか友人から聞こうと思っていたのが意外にも自分から話してくれるとは…
ガラガラガラ
平塚「全員揃ってるな。もう時間だ、下校したまえ。」
ちょ、平塚先生、タイミング…
雪ノ下「早弓さん、明日、そのことについて聞かせてもらえるかしら?」
実弥「ぁ、はぃ…」
やっぱり本人は話したくないだろうな、自分の苦い過去のことについてなんて。俺?俺はもう振り返っても黒歴史しか出てこないからそんな感情とっくに捨てたぜ。
さ、明日、原因を聞かせてもらうか。
心情描写多目にかくと、どうしても文字数が膨らんでしまいます。どのくらいの文字数が読みやすいんでしょうか?ちなみに今ので3731文字でした。ご意見をお聞かせください。