そんなこんなで迎えてしまった文化祭。小町は生徒会役員共として文化祭の運営に貢献しているみたいです。兄として嬉しい限りです。
私は何をしているかって…?
「比企谷くんとデート!」
じゃなくて見回りですねはい。
隣にいるのは早弓さんです。
私は出来る限り仕事が少ないものを選ぼうとしたのですが、社会的格差に負けました。
後に発行される学校の行事の風景?を映した冊子のための写真撮影。
ところどころ早弓さんが映っていますがそれについては問題なし。
どうやら映っちゃいけないのは私だけだそうです。幽霊だからかな?
はぁ。普段やらないことをいきなり始めると存外疲れるんだな。
こうして比企谷八幡の社畜バカ日記は幕を閉じた。
「あっ!ヒッキー!とみやっち!」
「おお結衣ちゃん!やっはろー」
「やっはろー!」
「2人で偵察?」
偵察ってお前な。俺らはスナイパーかなんかか。
「視察だね。結衣ちゃんは?」
「あたしは…暇だから来た!」
「そっか!それじゃ一緒に回ろうよ!」
ということで由比ヶ浜が仲間に加わった。
3人で歩いているのだが、こいつらが物凄く視線を集めるせいで落ち着かない。別に怪訝な顔をされたりはしなかったと思うが、明らかに女子中学生らには笑われていたような気がした。
そんなことを考えながら俺は由比ヶ浜にやるハニトーを買ってくる。
それからカフェのような趣の教室で3人でハニトーを頬張りながら時間を潰す。
すると
「あ、優美子からLINEきたからそろそろ戻るね!ヒッキーハニトーごちそうさま!」
「おう。頑張れよ。」
「行ってらっしゃい!結衣ちゃん!」
また2人きりに戻ってしまった。
しょうがない、お仕事の続きといきますか。
――――
「八幡。」
っと。誰かに袖をつままれた。
といっても声と呼び方で大体分かるんだがな。
「久しぶりだな、ルミルミ。」
「ルミルミいうな。」
ふと視線をもとの高さに戻すと…
「こんにちは、八幡さん。初めまして、になりますね。」
鶴見の母親だった。
とても綺麗な人で、長く艶やかな黒髪を下ろし、優しそうな瞳をしている。
確かに鶴見(親)と鶴見(ルミルミ)は似ているかもしれない。そりゃそうか、親子だもんな。
「留美とはとても仲が良いのですね。家でもよくあなたのお話を留美から聞くんですよ。」
「ちょ、ちょっと、お母さん…」
「普段は全然学校でのことを話してくれないのに、あなたの話だけはしてくれるんです。娘がお世話になったみたいです。ありがとうございました。」
「も、もう…お母さんったら…」
「いえいえ、こちらこそ。別に大した事じゃないですから。」
「そうでしたか。では、またいつか、お会いした時には、よろしくお願いしますね。」
「バイバイ、八幡。」
「八幡くん、既に名前呼びされてたんだね…しかも年下の女の子に…」
あれ?早弓さん?なんかちょっとダークオーラ纏ってません?
ヤンデレからデレを無くしたらただの殺人鬼ですよ…?
「じゃあ、あだ名を考える必要があるね!私だけの!」
そうきたか。よし、健全な判断だ。
「う~ん…」
はっくんだのはちくんだのはっちーだのいろいろ模索しながら考えてるみたいだ。
考えてくれてるのはありがたいんだが、俺は別にあだ名にいい思い出が…
「よし決めた!はっちーにしよ!」
はっちー?
「はちくんだとなんかありきたりな感じがするし、はっくんだと他の人と混ざったりするかもしれないから!ね!」
お、おう。
普通なあだ名を付けられて少し嬉しいのは気のせいか。今まで本当にマシなあだ名付けられたこと無かったからな…
「はっちー!」エヘヘ
お、おう…これはこれでかわいいな…
はっちーの最後の音が『い』になるから必然的に「ニィーッ!」って笑ってるような風になるのはいいな。
「サンキュな。おかけであだ名嫌いが治りそうだ。」
特に発症してたつもりも無いけどな。
「そっか!じゃあこれからいい思い出作っていこうね!」
こいつのこういうポジティブなところっていいよな、こっちまで明るい気持ちにさせてくれる。でもそれでいて俺を振り回す訳でもない。
ちゃんと、俺の意見も汲み取ってくれるし、考えてくれる。
奉仕部のメンバーや、他にも色々関わったことがある人はたくさんいるが、ここまで親身になって支えてくれているのはこいつだけかもしれないな。
いや、それは俺の思い込みか。あーあ、新しい黒歴史増やす前に自重しておこう。
でも、支えになってるのは本当だな。
「ありがとうな。」
自然と思いが口をついて出た。
「うん。どういたしまして。」
どうやら向こうも分かってたみたいだ。
この先は早弓さんとはっちーくんのあまぁーい2人のお話になるので、みなさん砂糖吐く用のコップの準備、忘れないようにしてくださいね。