「おはよう比企谷くん。」
今日は月曜日。いつもなら憂鬱でしかたがないのですが、今日はなぜかとっても元気です。
「ちょっと気になることがあるんだけど、聞いてもいいかな?」
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「八幡くん。目、腐ってるね。」
「いつも通りだ、気にするな。」
「あれ、名前呼びしてみたのに意外とリアクションが薄かった・・・」
八幡くんは「ふっ。今更そんなことで動じる俺ではない。」
とか決めセリフ?を吐いてた。
けど、かすかに耳元からは羞恥の色が見受けられます。えへへ、かわいい。
この前、いきなり八幡くんは私に何かあったかって聞いてきたから、その理由を聞きだしてみた。
そんなことがあったなんて怖いな、と他人事のように思いつつ、私を心配してくれてとても嬉しかった。
でも彼もあの男のように裏切るのではないか。誰かが私の心の奥底から囁く。きっとこれは悪魔のほうだ。
だって、ほら。彼の腐ったような、濁っている、なんとも形容しがたいこの目を見て。
私はこの目の人に何度も助けられた。
今だって現在進行形で助けられている。
そんな彼を信用できないほどに、私は腐ってしまったのか。人間として廃れてしまったのか。
私は、信じたい。彼になら・・・
何をされてもいい、は言い過ぎだけど、ちょっとくらいなら、ね。
私はこの感情が『好き』という名前だと気付くのには、まだ時間が足りなかった。
――――
「ねえ柚木。ちょっと昔話を聞いてくれる?」
――――
「へぇ、そんなことがあったんですか。」
そういって柚木は私の頬に指を優しく掠めさせる。
「えっ?」
自分でも気づかないうちに泣いていたみたいだ。
「そうなんですか、その比企谷くんは優しい方なのですね。安心しました。あの目は見るからに危なさそうな雰囲気が・・・」
「それは違うよ、柚木。あの目は、あのお姉さんと同じ目。優しくて、温かい目だよ。」
「ふふ、実弥がいうからには、そうなのでしょうね。」
「実弥、あなたは前と比べて変わってきているのを、実感していますか?」
どうだろう、と私は曖昧に答えてしまったが、本当はわかっている。
彼の影響で、変われたこと。
「それにしても、あんな状態だった実弥をここまでにさせるとは、私も少し彼について知りたくなりました。実弥、教えてくれますか?」
「もっっっっっちろんだよっ!」
「そうですか、ありがとう。」
(こんなに笑顔の実弥を見るのは初めてかもしれないですね・・・)
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「八幡くんおはよー!」
「ごきげんよう比企谷くん。」
「お、おう・・・」