「なんだよ話って。」
俺がそう聞くと葉山はやけに真剣な顔つきでこういった。
「さっき、比企谷の後ろに人がいたの、気付いていたか?」
「ああ、さっきの物音はそいつだったのか。」
「気づいていたのか・・・」
「ぼっちなめんな。」
はは、そうか。と乾いた笑いのあと。それで、そろそろ本題に戻りたいんだが。と。
「実は、ある噂が流れているんだ。比企谷くんに関するね。」
「焦らさなくていいからはやくしてくれ。小町が待ってる。」
「そうか、なら細かい説明は省く。結果から話すと、君を妬んでるものが少なからずいる。君は心当たりがない、と思うだろうが、実弥だ。君と彼女が仲良くしているところを見聞きしたものがさっきのように君に襲い掛かってくるかもしれない。さっきのは比企谷くん自身も、俺も気付いていたから何事もなかったが、必ずしも相手は一人で来るとは限らない。」
だから・・・
「あ~はいはい、気を付ければいいんだろう?簡単じゃねえか。」
「待ってくれ、そういう意味じゃぁっ・・・!」
「じゃあな葉山、マッカンさんきゅな。」
これだと比企谷くんは確実に実弥と距離をとろうとするだろう・・・
でも、そうしてほしいわけじゃないんだ・・・
――――
葉山に何か言われたが、忘れた。
だが、前の俺がとっていた方法では解決も解消もできない、それどころか状態が悪くなるだけ、そう言われた気がして、俺は正直気に入らなかったんだろうな。
今までずっとこのやり方を貫いてきた、いや強いられてきたのにその方法では全く持って解決できない事象が現れたからな。それも深く考えなくてもわかる程に。
これからどうするか。幸い明日は土曜、考える時間はたくさんある。
まあまずはパンクした自転車でも修理にだしてくるか。
手押しで自転車を動かし最寄りのサイクリングショップまで行く。
約20分間のウォーキング。
いつもならバードウォッチングやらなんやらして20分を潰すが今日はそういうわけにもいかない。
考え事をしながら歩くと20分という時間は短すぎた。
修理してもらっている間も帰りもずっと同じ問題で悩んでいたが、どう進めても可能性の話になってしまい、考えること自体をやめた。
こればっかりはあいつ自身に聞いてみるしかないか。
ひとまずでた答え、否、聞くべきこと。まずは、早弓本人に被害がいっていないかだ。
ここで本人に被害がいっているのであれば俺は距離をとったほうが良い。だがしかし、本人に被害がいっていないのであれば、まだ対策を考える時間ができるということだ。
しかし来週まで待ってられんな。もしこの休日の間に早弓の身に何か起きてしまっては時すでにお寿司だ。
なぜ俺がここまで焦っているかって?
理由を説明しよう。
まず俺を襲おうとしてきたやつと早弓が接触してしまった場合、劣情をこじらせて何するかわからないため、早弓が非常に危ないということ。
もし早弓が何かされてしまった場合には、早弓の男性恐怖症は不治の病となるだろう。そうすれば依頼は達成されなくなってしまう。
そう、つまりは依頼を完遂するためだ、依頼のため。
これに俺の私情は含まれない。
そう、あくまで依頼のためだ。
――――
早弓に連絡をとったが返事がこない。
ピコン
と思ったら返事がくる。世の中不思議なものですねぇ。
「ごめんね、お風呂入ってた・・・(笑)」
ちょっと、なんだかこっちまでのぼせてきたじゃないですかヤダ。