「おはよう早弓…お前って朝早い方なんだな。」
「おぁ…おはよう…(ゲンナリ)」
(この歳で興奮して夜寝れなかったなんて恥ずかしくて言えないなぁ)
俺と会うのがいくら嫌でもそんなにゲンナリするなよ…
確かに俺も朝からこんなやつに会うと思うとゲンナリするな。
ついに自分で自分をディスる日が来るとはな。もう末期だわ、これ。
ていうか朝から一緒に登校って仲良しか。いや恋人か。
けれども、ここで勘違いしてしまってはいけない。
時折背中にあたるやわらかな感触にものすごい居心地の悪さを感じながら学校へと向かう。
――――学校―
校門の近くで降りてもらおうかと思っていたが、生憎と今俺が乗っているのは早弓の自転車で、やはり女子なだけあって自転車も黄色なのだ。そんな早弓の自転車に俺が、俺だけが乗っていたら、早弓を知る生徒はどう思うだろう。
考えなくても想像つくよな・・・?
相変わらず早弓は女子たちからの事情聴取でお取込み中だ。
それと比べて俺は男子どもからの鋭利な視線を躱していく。
あぁあ、今日も面倒な一日になりそうだ。
――――放課後、自転車置き場
俺は徐々に傾いていく太陽を睨み付ける。あぁ目がおかしくなりそう。
俺は平凡な日常を過ごしたいだけだ。別に青春()みたいな出来事は求めていない。
それなのに、俺にはなにかしらの災悪がふりかかってくる。
俺は白米じゃねえ、勝手にふりかけんな。
声を大にしてそう叫びたいが近くに人がいる気配がするので自重しておく。
ガサッ
やっぱり誰かいるな・・・
絶対隠れてるよあれ、誰かと待ち合わせしてるような様子じゃねえよ・・・
ん?葉山だ。なんかこっちに向かって走ってきたぞ・・・
あいつに絡まれると面倒だし自販機でマッカンでも買いに行く素振りで自然に逃げよう、あくまで自然にな。
そう、俺はそこのに生えている木々だ。
そうしているうちに葉山がどっかいって見えなくなった。
あれ、本当に見えなくなっちゃったの?透明化に成功したみたいだけどさすがに八幡それはちょっと悲しいかなぁ・・・
ふう。自販機の前のベンチに腰掛けながらあの自転車をどうするか考える。
ピトッ(冷)
「うわああぁぁあぁあぁあああぁっ!」
何か首筋に冷たい物理攻撃を受けたので戦闘態勢に入る。
誰だ・・・やめてくれよ幽霊とかの時期じゃねえぞもう9月だぞそんなことされたら八幡夜トイレ一人でいけなくなっちゃ・・・
「葉山。やめろ。」
今自分でもびっくりするくらいガチなトーンの声がでた。
だってあの葉山の笑顔が完全に引き攣ってるもんな、どうやら俺が幽霊だったみたいだ。
「比企谷くんはどちらかというとゾンビじゃないかな・・・」
なんだこいつ、お前も心を読めるのか。お前ら、揃いにそろって俺のプライバシーをガン無視しおって。
ただじゃおかないからなっ!
「これで機嫌直してくれないかな?」
そういって葉山がマッカンを渡してくる。
さんきゅ、といって受け取る。なるほど、物理攻撃(冷)の正体はこいつか。
・・・
「なぁ、比企谷。ちょっと真剣な話があるんだ。聞いてくれるか?」