やはり俺の高校生活は間違っている   作:のらネコ

18 / 34
どうものらネコです、今回は二部編成です


夏の暑さは氷塊をも溶かしてゆく 前半

姉さんに気を遣わせるわけにはいかない。

いつまでも姉さんの後ろを追いかけるだけの私ではない。

いい加減、『彼』からも、『姉さん』からも、巣立つ時だ。

ただ、私が海外に行くという選択肢では今と変わらない結果が待つ。ならば誰も予想しなかった方向に切り替える必要がある。

姉さんを納得させられる、母さんに諦めてもらえる、そんな理由。

 

今から新しくやりたいことを見つけるのでは間に合わない。かと言って海外に行かなくて済む方法も直ぐには思いつかない。

 

こうなれば…

 

 

 

 

姉さんを引き込むしかないわね…

姉さんを頼るのはまだ抵抗があるけれど、利害関係から考えても、私が手を組めるのは姉さんしかいない。

 

 

ーーーーーーーーー

 

「雪乃ちゃん?いきなり呼び出してどうしたの?」

 

「姉さん。私の海外編入の話について、提案があるわ。聞いてくれるかしら。」

 

「お?いいけど、雪乃ちゃんが海外に出ることを決意した、とかなら受け付けないよ?」

 

「姉さんならそう言うと思ったわ。大丈夫よ、どちらにとっても良条件なはずになっているわ。」

 

「そんなに雪乃ちゃんが自信満々なら少しは期待できそうだね!」

 

「その前に1つ聞きたいのだけれど。姉さんは私のこと、嫌い?率直に聞かせてほしいの。」

 

「およよ?どうしたの?雪乃ちゃんらしくないなぁ〜。でも、私はどんな雪乃ちゃんでも大好きだよ?嘘偽りなく、妹である雪ノ下雪乃が好き。」

 

「そう、なら私の提案を受け入れるがいいわ。」

 

「そうやってすぐに調子に乗るところもだよ♪」

 

ーーーーーーーーー

 

雪ノ下嬢2人の秘密の会談は雪乃の提案を受け入れることでまとまった。

そしてこれから、2人はその提案を、

 

 

『ラスボス』

 

 

にぶつけにいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

「そうですか!それがあなたがたの出した答えね?ふふっ。2人ならやってくれると思いました。さすがは私の娘たちです。」

 

「「えっ⁉︎」」

 

雪乃、陽乃は自分たちの想像していたものとのギャップに完全に硬直してしまっていた。

 

「雪乃、陽乃。あなたたちはやっと自分たちの想いを私にぶつけてくれましたね。」

 

そう言って雪ノ下母は続ける。

 

 

いつもいつもいい顔を作って挨拶回りに出てくれる陽乃。

あまり言葉に表さないけどやることはしっかりやる雪乃。

2人とも優秀だけれど、2人とも不器用だから、都合が悪くなると思ったとき、自分の想いを言葉にせずに隠してしまう。

そんな部分があると分かってはいながらも、私はそれを無視してしまっていた。そのほうが自分に都合がよかったから。

いつも不満を隠して本音を隠していた2人に、いつかは素直に、わがままを言って欲しかった。

けれどそうできないようにしてしまったのが私自身なのだから、本当にバカな母親ですね。

それに、あなたたちの意見を受け付けなかったのだから、最低な母親でもありますね。

 

なんて言って母は涙ながらに笑ってみせた。その姿はとても麗しかった。そしてとても儚かった。

 

ーーーーーーーーー

先に硬直から治ったのは意外にも姉さんではなく私だった。

 

「と、ということは、私たちの提案を受け入れてくれるということでいいのかしら、母さん。」

 

私がそう尋ねると母さんは、

こんな私でも母さんと呼んでくれるのね、言った。それから

 

「いいえ、あなたたちの提案をのむ訳ではありません。ですが、雪乃に予定していた海外編入と、陽乃に予定していたお見合いを無しにしたいと思います。」

 

最初の一言を聞いたとき、私は完全にダメだと感じた。けれども二言目でその感情は吹き飛んだ。

 

まさか、あの母さんがそんなことするとは。

 

今まで17年近く共に過ごしてきて、そんなことは一度もなかった。自分の言ったことは絶対で、有無を言わさせなかっなような母がだ。

 

「実はね、最近色々考えてたのよ。雪乃と陽乃がどうやったら幸せになれるかってね。だから雪乃には海外編入、陽乃にはお見合いをさせようとした。」

 

本当にバカよね。と、

母さんはそのまま続ける。

 

「けれど、雪乃と陽乃に言われてやっと気付けたわ。それぞれの幸せは、それぞれが自分で作るものだって。親が押し付けるものではないものね。」

 

「そのことに気付かされたのは、雪乃の

 

『母さんが絶対にそうするというのであれば、私と姉さんは親と縁を切って、2人で暮らします。』

 

って言葉よ。あのとき、私は自分の理想を押し付けているだけのことに思い至ったわ。なんて醜いことをしていたのかしらね。過去の自分を呪いたくなったわ。」

 

「お母さん…」

 

「けどね、これだけは覚えておきなさい。」

 

『どんなことがあっても、私はあなたたち2人の親を辞める気はありません。いつまでも、愛し続けます。』

 

 

 

このあと3人で抱き合って泣いたのはいうまでもない。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。