あっ、今回も早弓視点です。
今度でいいや、とか言っていたけどあのことを聞くのは思っていたよりも早くなってしまった。
学校一の美貌と学力を兼ね備え、極めつけにあの大企業のご令嬢。雪ノ下雪乃。
明るい性格と胸元の大きな双丘で男子から大きな人気を得ているアホっ子。由比ヶ浜結衣。
そんな美少女2人に好意を寄せられている比企谷くんは、一体どんな人なんだろう。もしかしたらまだいるかもしれないけど、私が知っている限りでは、今のところこの2人だけかな。この前小町さんの家に泊まったときに少し聞かせてもらったのは、比企谷くんの奉仕部に入る前までの過去。小町さん曰く、比企谷くんは『誤解されやすい』人なのだそうだ。それに私も、実際に比企谷くんと関わってみて感じたことがある。目が腐ってるとかじゃなくてね?
比企谷くんは、優しすぎるのだ。だって、返ってくる可能性はほぼゼロなのに、初対面の人に平気で本を貸してしまうような人だから。もしあのとき本を借りたのが私じゃなくて他の人だったら、彼のもとに本が返ってくることはなかったかもしれないのに。というか、私でさえついこの間まで返せていなかったのに。そんな彼が『校内では嫌われもののヒキタニくん』だなんて、おかしいと思う。あれだけ優しければそんな嫌われたりしないと思うんだけどなぁ・・・
きっと、彼の噂には何か隠されている!
そう思った私は、さっそく比企谷くんの秘密を知ってそうな人。とりあえず好意を抱いている由比ヶ浜さんに聞きに行ってみたのです。
そこで知らされた衝撃の事実・・・っていうほどでもなかったよ。なんとなく予想はついていたし。簡潔にまとめると、今までの噂には全て裏で奉仕部の依頼が関わっていた、というだけのカラクリでした。彼があんなアクションを起こしたのは、全て依頼の解決・解消のため。その裏事情を知らない人たちが彼のことを勝手に誹謗中傷しているだけで、一部事実で、一部虚実だそうだ。
確かに、彼はそういうところがあるよね。考え方が斜め上を行っているというか、犠牲が伴う解決方法を使うというか。色々なことを解決できるのはリスクを背負う覚悟ができているからってことなのかな。そっか、彼の斜め上の優しさは分かる人にしか分からないんだ・・・相模さんなんて3年になってからも比企谷くんの悪口広めているみたいだし。今まで相模さんの話を聞いて「そうなんだ~そんなことされたんだね~かわいそうだね~」とか思っていた自分が恥ずかしくて死にたい(笑)。あ~あ、比企谷くんに謝りたいな~。でも、きっと彼はそんなこと求めてないんだろうね。他のみんなに真実を知ってもらうっていうのも違うんだろうな。私がそうしてしまえば、彼はあんな扱いを受けることがなくなるかもしれないけど、それと同時に。私は彼の決意と覚悟、プライドを踏みにじることになってしまう。それだけは嫌だ。私は彼を肯定したい。彼は本来肯定されるべきはずの人だから。
『今日はちょっと彼と距離を置こうなんて考えていたけど、明日からはいつも通りにしよ。』そう決意しながら沈み行く太陽を眺めている。
***
翌日の放課後。
コンコンコン
どうぞ、となかから返事が返ってきたのでドアを開ける。
「失礼しま〜す。」
雪ノ下「あら、早弓さん。こんにちは。」
実弥「雪ノ下さん、比企谷くん。こんにちは。」
比企谷「おう。」
あれ?いつもは雪ノ下さんの隣にいる由比ヶ浜さんが・・・
雪ノ下「由比ヶ浜さんは今日は三浦さんたちと出掛けるみたいよ。」
そうなんですか。なんというタイミング、まさか心を読んだんじゃ・・・?それはないか。
雪ノ下「それで、調子のほうはどう?」
実弥「そうなんです。それについて少しお話がありまして・・・」
そう言って私は男性恐怖症があまり克服に向かっていないことを伝える。それから私は昨晩思い付いたことを話す。
実弥「克服に向けて、少し比企谷くんをお借りしたいんです。」
もちろんこれは比企谷くんを連れ出すための口実でしかない。まぁ、昨日お風呂に入ってて思い付いたんだけどね、自分の顔を鏡で見たらなんか小町さんを思い出して、それからこの前小町さんの家に泊まったことを思い出してーって。そこで私は小町さんからの依頼を思い出した。
『自分は兄に嫌われてもいいから、兄を変えて欲しい。』
そう。それこそが私にできるであろう比企谷くんへの最大のお返しなのだ。本を貸しただけの彼からしたら大きすぎると思うかもしれないけど、私は彼に出会って、多少なりと影響を受けた。あと、本を返すのが遅くなっちゃったからそれに利子をつけただけなのだ。だから問題なし!
***
こうして私は比企谷くんと本屋にきている。一緒におすすめの本を紹介しあったりして、それこそ本物のカップルみたいにお喋りしている。ように見えると思う。まぁ、そんなべったりくっついてるわけじゃないよ?まだちょっと怖いから。でも、彼と話していると私は少し、自分が恐怖症持ちだということを忘れる。正確には、『忘れられる』かな。いつかはこんな恐怖症を完全に克服して、手を繋いでみたりしたいな~って、ちょっと思った。傍目に見えるボディータッチしあってるバカップルが一瞬羨ましく見えたりもした。でも、肝心なのは、『私の恐怖症が治っても、彼が私の好意を受け入れてくれるか』ということだ。ってあれ?私、彼って・・・もしかして比企谷くんとそういうことするの想像してた!?あわわわわ・・・///った、確かにっ!比企谷くんと一緒にいるのは楽しいけどっ!それは否定しないけどっ!なんだろう、意識した瞬間顔があっちぃや・・・
比企谷「おい、早弓。大丈夫か?お前顔真っ赤だぞ?」
(確か男性恐怖症の症状のうちのひとつに、激しく赤面するってのがあったような・・・やはり早弓にはまだキツかったか・・・?)
早弓「ビクッ!! う、うん。多分大丈夫だよ。」
比企谷くんてば、私がそんな邪な想像してたらいきなり声かけてくるんだもん・・・びっくりしちゃうじゃん。
***
それから私と比企谷くんは近くの公園で休憩中。そこでも比企谷くんは気をきかせて飲み物を買ってきてくれた。
実弥「ありがと。」ニコッ
あれ?普通にありがとって言っただけなはずなのに、比企谷くん、そっぽ向いちゃった・・・なんか変なことしたかな?
比企谷「なぁ、早弓。依頼のことについてなんだが。なんでそんなに急いでるんだ?この依頼は解消がすごく難しいのは早弓も分かっているし、実感していると思う。けどな、もしその途中で早弓のトラウマを再発させてしまえば、本末転倒だ。確かに俺は暴力を振るうようなことはしない。けど、俺だって健全な男子高校生だ。そういうことだって考えるときくらいある。最悪の場合、俺が早弓に更なる傷を、心にも体にも負わせてしまうかもしれないんだ。だから・・・」
実弥「俺とあまり関わらないでくれ。でしょ?」
先を言いにくそうにしていた比企谷くんの言葉を引き継ぐと、彼はとても驚いたようすで私を見つめる。いやん、そんなに見つめないでえっちぃ~。・・・何やってんだ私・・・
比企谷「ああ。だから、その。依頼を遂行できなくてすまん。」
実弥「ふふっ、比企谷くんのことだから絶対そう言うと思った!でもね、私は、そんな比企谷くんの、優しいところが、好きだよ!」
あ~あ、言っちゃった!どうしよう、もしかしたらこれから先、比企谷くんに避けられるかもしれないや。もったいぶってゆっくり自分にも言い聞かせるように言ったけど、比企谷くんには届いてるかな?
チラッ
リンゴ病患者みたいになってる・・・照れてる比企谷くんかわいい。
実弥「じゃ、また明日。学校でね!」ノシ
ふふっ!明日学校でからかってやる!
最初のころよりは、ちゃんとキャラクターの心情について書けていますかね。ちょっとここらで小町x早弓の話いれてあの2人の関係について掘り下げますかね。今日か明日投稿します。