果たして再集結をしたかつての仮面ライダー達は剣崎の守った世界を守りきれるのか?
2005年1月、人類の命運をかけた戦いは終わりを迎えようとしていた。
仮面ライダーブレイド=剣崎一真とジョーカーアンデッド=相川始は、山中で死闘を繰り広げていた。
激戦の末にお互いの身体はボロボロになる。そして遂に、剣崎はジョーカーになってしまった。理由はキングフォームを酷使したからだ。
しかしそれが、剣崎の狙いであった。彼がアンデッドになったことで、バトルファイトは続行する。これにより、始を封印せずに、人類滅亡を回避することに成功した。
だが、その代償は大きい。
「剣崎……」
「来るな! 俺とお前は……アンデッドだ……俺たちはどちらかを封印しない限り、バトルファイトは決着せず滅びの日は来ない」
「だから……俺達は戦ってはいけない。近くにいては……いけない」
「……いくら離れたところで……統制者は俺達に戦いを求める。本能に従い戦う……それが……アンデッドの運命だ」
「俺は運命と戦う。そして勝ってみせる」
「それが、お前の答えか」
「お前は人間達の中で生き続けろ」
「どこへいく……?」
「俺達は二度と会うことはない、ふれあうこともない、それでいいんだ」
「剣崎……」
「剣崎!」
立ち去る剣崎。
その後を追う始だが追い付けない。
やがて木々を抜けて、崖に辿り着いた。そこに橘朔也と上城睦月も駆け付ける。三人は立ち尽くすしかなかった。
「けんざきぃぃぃぃ!!」
橘の叫び声は、水平線がくっきりと見られる綺麗な海と、雲一つない青空、飛び立つカモメの群れが織り成す空間に響き渡った。
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12年もの歳月が流れた。昼間の草原に、ヨウという名の少年が佇む。
彼はボールから、モンスターを出した。
「ここがブレイドの世界か……ジョーカーを倒してつれてこい」
命令を聞いた白きモンスターが、高速で飛び立つ。衝撃によって、突風が吹き荒れた。草むらは揺れ、キーンとした轟音が鳴る。
「バトルファイトの勝者には万能の力が手に入る……か。待っていろリーリエ……」
彼の左手には一冊の本と、一枚のカードが握られていた。
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物静かな場所に位置する喫茶店─ハカランダ─。
ジョーカーこと始は、現在もここに住んでおり、従業員として働いていた。同時に真崎剣一という名前で、カメラマンとしても活動している。
客にお冷やを渡すため、彼はトレイを持って歩いていた。そのとき、何物かの接近に気付く。
アンデッドの気配とは異なるが、人間や他の動物のものでもない。
「逃げろ!」
始が叫んだ。店長の遥香が驚く。彼は彼女に、客を逃がすように伝えた。
理解の追い付かない遥香だったが、始は仕事中にふざけるようなことはしない。彼女は彼を信用し、客を非常口に案内した。
五人ほどの客は、一目散に逃げ出していく。
全員の避難を確認した遥香も、その後を追った。店内には始が一人残り、敵の襲来を待ち構える。
「どこからでも来い」
突如、窓ガラスが一斉に割れる。そこから現れたのは、白い身体をもった異形の"なにか"だった。名をフェローチェという。
その姿は、かつて自分自身や地球全体を苦しめた、ダークローチを彷彿とさせる。
「目的は何だ?」
問いかける始だが、フェローチェは何も答えない。
するとフェローチェは、いきなり高速で辺りを駆け周り始めた。あまりの速さに、始は目が追い付かない。
フェローチェの飛び膝蹴りが放たれた。
始はそれを顎に喰らい、倒れてしまう。なんとか立ち上がるも、傷口からは緑色の血が付着していた。
「速い......!」
ハートのカテゴリー2、スピリット以外のラウズカードを持たない今の始に、勝ち目は薄い。
フェローチェの虫のさざめきが鳴り響く。残りの窓ガラスもすべて割れ、ガラス製のコップも次々と破裂していった。
彼も大いに苦しめられる。
「はあ......はあ......」
始を衝撃で、壁まで吹っ飛ばされた。もたれ掛かっている始。フェローチェが一歩ずつ、距離を詰めていく。
今の始がフェローチェに勝つにはもはや、本来の力─ジョーカーの力─を解き放つしかない。
けれども"人間たちのなかで生き続けろ"という剣崎の言葉から、踏み出すことが出来なかった。
そのときだった。フェローチェの背中を、弾丸が襲いかかったのだ。
フェローチェは極めて耐久力がない。だからフェローチェはそれを受け、地に膝をつけた。
「始、カードを受けとれ!」
レッドランバスに跨がる赤いライダー─仮面ライダーギャレン─。彼は始に、ハートのカテゴリーAを投げつけた。
始はそれを手にすると、腰にカリスラウザーを出現させる。
「変身」
掛け声と共に、カードをスリットに通らせる。仮面ライダーカリスへの変身が完了した。
醒弓カリスアローを出現させると、フェローチェ目掛けて走り出した。
銃撃を受けたフェローチェに、更に斬撃が迫り来る。
何度かは避けられた。しかし、その素早さは既に失われている。フェローチェは次第に追い詰められていく。
「残りのカードだ」
ギャレンがカリスの元に辿り着く。彼は残る11枚のラウズカードを渡した。
カリスはそれを、左腰に一度しまう。それから、カテゴリー3,6を取り出した。
カリスアローにカリスラウザーを取り付けると、先程手にした2枚を読み込ませる。
読み込みが完了した。カリスの右手が風に覆われる。
彼の手刀が降り下ろさせた。肉を断ち、骨を砕き、フェローチェの細い身体を破壊し尽くす。
スピリットのカードを使い、カリスは始の姿になった。彼の眼前には、赤い鮮血に包まれた肉片が散らばっている。
ギャレンも変身を解いた。始は橘に問いただす。
しかし詳しい事情は、橘もよくわかっていなかった。
彼の研究所に、六体の未確認生物を見たとの情報が入ってきた。橘は半信半疑ながら、バイクを走らせて探していた。追加の情報によって、その内の一体がハカランダに迫っていることを知る。
そして二人は、再会したわけだ。
話を聞いた始は、橘に協力することにした。
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草原にて、二人の男が対峙していた。
うちの一人はヨウだ。彼はタブレットの様なものを眺めながら、顔をしかめている。
「ちっ……フェローチェの反応が消えやがった。殺されたか。だがもう一体のジョーカーを封印すればどっちみち同じことだ。そうだろ?」
もう一人は、失踪した剣崎だ。ヨウは何らかの手段で、剣崎を見つけ出していた。
「目的は何だ?」
「お前を封印する」
「封印だと? 俺を封印したらこの世界は今度こそ滅びる!」
「安心しな? 俺がその世界を救ってやるからよ! 行け!」
ヨウが5個のウルトラボールを投げた。中から現れたのはウツロイド、カミツルギ、マッシブーン、テッカグヤ、デンジュモク。いずれも強力なポケモンたちである。
「お前たち、奴の動きを止めろ!」
5体は畳み掛けるように、剣崎へ攻撃を仕掛けていく。
アンデッドであるため死ぬことはないが、かなりの苦痛である。
だが、歴戦の戦士がその程度でくたばることはなかった。
剣崎はオールオーバー─コーカサスビートルアンデッドの持っていた剣─を召喚する。それを振り回して、ウルトラビーストたちを凪ぎ払った。
「流石は元仮面ライダー。だけど俺には切り札がある!」
オールオーバーが上段から降り下ろされる。テッカグヤは真っ二つに切り裂かれた。
しかし一体倒したのも束の間、剣崎はデンジュモクのコードに囚われてしまう。
「よくやったデンジュモク。剣崎 一真、これが俺の切り札だ。どこかで見覚えはないか?」
「そのカードは!」
ヨウは動けない剣崎に、カードを近づける。
それが触れた瞬間、剣崎の身体は消え去った。あとにはジョーカーのカードのみが残る。
「人類を滅亡させるわけにはいかないな。変身」
左腕のカードリーダーにカードが入る。姿が異形のものに変わった。
胸部にはヨウの顔が浮かび上がる。
「さてと、もう一体のジョーカーを封印しにいくか」
残る4体のウルトラビーストをボールに戻すと、彼は日本へ飛び立った。
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始は橘の研究所に連れてこられた。かつて、仮面ライダーレンゲルとして人々の為に戦った上条睦月の姿もある。会社が休みだったため、橘に召集されたのだ。
睦月は現在、ごく一般的なサラリーマンとして暮らしている。
仕事は忙しいが、充実感のある毎日を過ごしているらしい。
睦月に挨拶をしているときに始は、何か嫌な予感を感じた。それはすぐに、不気味なほど完全に消え去る。
彼は恐れるでもなく、侮るでもなく、ただただ困惑状態に陥った。
彼の思考は、橘の部下の言葉によって遮られる。彼によると、ここから南西20kmの地点に未確認生物が現れたようだ。
3人は研究所を飛び出した。バイクに跨がり、目的地に急行する。
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「ほんとに懐かしいですよね。仮面ライダーとして戦うなんて」
「そうだな。これであいつがいれば……」
「剣崎……今はどこで何をしているんだ……」
会話に花を咲かせつつ、3人はバイクを走らせた。十数分ほどで、彼らは現場に到着する。
三人に見覚えのある怪物がそこにはいた。その正体はケルベロス。天王寺の作り出した人造アンデッドである。ヨウがそのカードで変身しているため、戦闘力はさらに上昇していた。
ケルベロスは肩から火炎弾を放って、ビル郡を破壊していく。
「どうしてケルベロスが……?」
「そういえばケルベロスのカードは、ダイヤのカテゴリーKが封印されてから行方不明になっていたな。まさかそれをどこかで手にいれたのか?」
睦月の疑問に、始が答える。
ケルベロスのカードは、ギラファアンデッドが落としたあと、岩の間に挟まっていた。ギラファアンデッドはすぐあとに、ギャレンと共に海中に没し、封印された。
海面に漂うダイヤカテゴリーのカードを、剣崎たちが拾い集める。彼らが撤収したあと、ケルベロスのカードは風によって水没した。
それから12年後。ヨウは苦心の末、ケルベロスを探しだしたのだ。
「何故こんなことをする!」
橘がケルベロスに問う。
「お前たちに用があるんだよ。正確にはジョーカーに、だけどな」
「俺にだと?」
「貴様を封印して俺がバトルファイトの勝者になる。そうすれば万能の力が手に入る。それを使って俺は、最愛の人を取り戻す!」
「そのために大勢の人々を巻き込もうというのか! それにどこでそんなことを?」
睦月も疑問を投げかけた。
「この本が俺に教えてくれたのさ」
ケルベロスはどこからともなく、一冊の本を取り出した。
3人はそれを見て驚愕する。それは白井虎太郎の書いた当時の大ヒット小説─仮面ライダーという名の仮面─であった。
一年間に及ぶ剣崎達の激闘を書き綴ったもので、現在でも度々話題に上がる程の作品だ。
「変身!」
3人はそれぞれ、仮面ライダーに変身した。
ケルベロスの投げたボールから、ウルトラビーストが飛び出す。
彼らの戦いの火蓋が、切って落とされた。
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醒杖レンゲルラウザーを構えるレンゲル。
マッシブーンも独特の構えで牽制している。
レンゲル「行くぞ!」
レンゲルが槍を、大きく振り回す。マッシブーンはかわそうとせず、身体で受け止めた。
マッシブーンの尖った口が襲いかかる。
レンゲルは咄嗟に、クラブのカテゴリー9をラウズした。効果は煙幕。それを用いて隙を作り出す。
レンゲルは煙幕に身を隠しながら、マッシブーンの背後にまわった。
彼は斬撃を繰り出し、さらにマッシブーンを突き飛ばす。そして2枚のカードをラウズした。
槍から手を離して飛び上がる。足から冷気を放ち、マッシブーンを凍らせた。そのまま挟み蹴り─ブリザードクラッシュ─を喰らわし、マッシブーンを砕く。
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デンジュモクの放電をかわしつつ、カリスが接近した。彼はカリスアローで、敵を切り裂いていく。
カリスラウザーを弓に装着すると、3枚のカードを読み込ませた。
渦巻きがカリスを包みながら高速で回転し、空中に浮遊する。
デンジュモクが放電した。カリスはそれを無視して、ドリルキック─スピニングダンス─を放つ。電撃ごと、デンジュモクの身体を貫通した。
一息つく間もなく次の敵、カミツルギが近づいてくる。
「雑魚の癖に数ばかり多くて厄介だ」
カリスラウザーをベルトに戻しハートのカテゴリーKをラウズする。彼は13枚、すべてのハートスートと融合を果たし、ワイルドカリスへと変貌を遂げた。
新たな武器・ワイルドスラッシャーを手に持ち、斬り合う。両者の刃が幾度なく交わされる。
鎌を振り上げて、カミツルギの小さい身体を吹き飛ばした。彼は鎌を折り曲げると、カリスアローに装着する。
彼はワイルドのカードを精製した。それをラウズし、巨大な光線を発射する。
カリス最強の技・ワイルドサイクロンは、カミツルギを木っ端微塵に消し去った。
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ギャレンラウザーの弾丸と、パワージェムが激しくぶつかる。
両者引くに引けない攻防だ。
パワージェムをかわしつつ、ギャレンは左腕のラウズアブゾーバーを操作した。
彼はカテゴリー11と融合し、ジャックフォームになる。空中へ舞い上がり、銃撃を浴びせた。しかし、ウツロイドには効いていない。
ウツロイドがパワージェムを連射する。持ち前の機動力を活かして、ギャレンはかわしていく。
彼は有効打に繋げることができない。
そんな中、一発のパワージェムが命中した。ギャレンは墜落してしまう。
発射されたヘドロ爆弾。ギャレンはジェミニのカードをラウズする。分身を身代わりに、彼は攻撃を防いだ。
彼はカードを二枚ラウズする。
炎を纏ったドロップキック─バーニングスマッシュ─をウツロイドに放った。
相性が不利なため身体を破壊することこそ失敗したが、命を奪うのには充分な威力を誇る。
三大ライダーの活躍により、ウルトラビーストは全滅した。しかしケルベロスはそこまで、落ち込む様子を見せない。
彼は漆黒のカードを取り出すと、ライダーたちに見せつけた。
「そのカードは……剣崎か?」
研究所にいたとき、始は嫌な予感を感じていた。その正体は、一瞬だけアンデッドが一体になったことによるもの。つまり、剣崎が封印されたことだ。
ギラファアンデッドが封印されたあと、始はジョーカーの本能に苦しめられていた。そのときと同じようなことが、先程起こっていたのである。
「ここからが本番だ!」
ケルベロスは左腕に、そのカードを挿し込んだ。途端に、ケルベロスが苦しみ始めた。左腕を抑える。
二体の超強力なアンデッドを支配下に置くのは、そう易々と出来るものではない。
絶叫の最中、ケルベロスはその姿を消した。
しかし決して、負荷に耐えきれず自壊したわけではない。ケルベロスは一瞬で、レンゲルの背後に移動していた。レンゲルが気づく前に、ケルベロスが攻撃する。
長い爪は簡単に、レンゲルを吹き飛ばした。
「これがジョーカーの力! 素晴らしい!」
ケルベロスの胸部は、ジョーカーの頭に変わっていた。
ワイルドカリスですら、その素早さを視認することはできない。
ギャレンが銃を乱射する。だが、速すぎて当たらない。
「喰らえ!」
放たれた怪光線は、辺り一面を焼き払う。
その威力は凄まじく、周囲の建物は粉々になった。
ギャレンはバレットとファイアをラウズした。ギャレンラウザーから燃える弾丸を撃ち出す。
それはケルベロスⅡの左腕を掠めるも、ほとんど効いていないようにみえた。
「貴様ら雑魚がいくら足掻いても勝てるわけがなかろう! 俺が万能の力を得るんだ!」
「万能の力……12年前の惨劇を知りながら、それでも叶えたい願いなんてものがあるのか!?」
橘が問いただす。
「当たり前じゃん……俺はリーリエに会いたいんだよ! それに12年前のこととか本でしか知らないよ。俺は別の世界からバトルファイトの話を聞き付けて、やって来たんだぜ!」
別の世界という言葉に、彼らは理解が遅れた。しかし確かに、ウルトラビーストやポケモンは、この世界には存在しない。
証拠が提示されている以上、納得するしかなかった。
「ジョーカー! さっさと封印させろよな!」
「剣崎に救われたこの命を無駄にするわけにはいかない!」
「お前だけは俺達の手で倒す!」
ギャレンはラウズアブゾーバーを展開した。中にはダイヤのJ、Q、Kが収納されている。
アブゾーバーに、カテゴリーQが装填された。
「遊ぶのも飽きたし、お前らを消し去ってやるぜ」
極太の禍々しいビームが襲い掛かる。直撃すればまず助からないだろうと思われたとき、金色の光が始たちを守りきった。
エボリューションキング!
「俺はなってみせる! キングフォームに!」
光が途絶える。重醒銃キングラウザーを携え、ギラファアンデッドとの融合を遂げたギャレンが、そこに立っていた。
「ほう……少しは楽しめそうだな!」
「いいか……奴には正面からやりあっても勝てる見込みは薄い……だから狙うべき位置は……」
ギャレンは他の二人に、作戦を伝えた。二人は賛同する。
キングラウザーから光弾が放たれた。避ける隙を与えず、ケルベロスを吹き飛ばす。
ワイルドカリスがワイルドスラッシャーを持ち、追い討ちをかける。
ケルベロスが爪で応戦を始めた。互角の戦いが繰り広げられる。
始はこのときまでに、ケルベロスの動きに慣れていた。さらに素早さを上げ、斬撃を繰り返す。
ケルベロスはワイルドカリスの腕を弾き、鎌を落とさせた。そのまま、左爪先をカリスの胸に突き刺す。
緑色の血が、傷口から吹き出された。カリスは激痛に耐え、ケルベロスの左腕を掴む。
「今だ、睦月」
レンゲルはブリザードベノムを発動した。レンゲルラウザーにありったけの力を込め、ケルベロスの左腕を貫いた。
「せめて剣崎のカードだけでも返してもらう」
ケルベロスのカードは強く結びつけられているため、奪うことはできなかった。
しかし、ジョーカーのカードを回収することには成功する。
「ちくしょう……力が失われていく……」
カリスはケルベロスに、傷口を更に抉られる。彼は血を飛沫のように上げながら倒れた。
ギャレンは五枚のラウズカードを、キングラウザーに入れていく。
レンゲルは槍を振り回して、ケルベロスに飛びかかった。
しかしケルベロスは、肩から火炎弾を放出する。それを受けたレンゲルは、遠くに吹き飛ばされてしまった。
「弱体化したとは言え貴様らに遅れを取ることはない!」
ギャレンがカードを入れ終わった。彼の前に、五枚のカード型のエフェクトが現れる。彼は引き金を引いた。
キングラウザーから発射された光線─ロイヤルストレートフラッシュ─は、それらを通過するごとに威力やスピードを増していく。そして一直線に、ケルベロスに襲いかかる。
ケルベロスを中心として、爆発が発生した。
風に吹かれ、煙が徐々に止んでいく。
ギャレンはキングフォームに身体が耐えきれず、解除されてしまう。
「剣崎はこれ以上の苦しみに耐えながら戦い抜いたのか……」
「ビックリさせやがって。少しヒヤヒヤしたぜ」
ギャレンの攻撃は決して、効いていないわけではない。しかし致命傷とはなり得なかった。
「橘……剣崎のカードを受け取れ。それをどう使うかはお前次第だ」
始がカードを投げつける。ギャレンがそれを掴んだ。始は力尽き、気を失う、
『やっぱり一流だよな、橘さんは』
『例えカードが一枚もなくても、お前を封印できるはずだ! 俺に仮面ライダーの資格があるのなら!』
『戦えない大勢の人たちの代わりに俺が戦う!』
『俺は運命と戦う、そして勝ってみせる』
橘の脳内に、剣崎の記憶が巡っていく。彼は一か八かの賭けに出ることにした。戸惑いを捨て、行動に移す。
「剣崎……俺に力を貸してくれ!」
ラウズアブゾーバーに、剣崎のカードをラウズした。
ギャレンの姿が変わる。まるで、ジョーカーと仮面ライダーが融合したかのようなものになった。
醒剣ブレイラウザーを召喚すると、彼はケルベロスに斬りかかる。
「まだやるつもりか! 最後まで付き合ってやる!」
「貴様だけは……貴様だけは俺の手で倒す!!」
ギャレンは上昇した融合係数を力に変えた。反撃も恐れずに何度もケルベロスを切り裂く。
また、ギャレンラウザーで零距離射撃も行い、的確にダメージを与える。
「まさか……これほどの……パワーが……」
「俺はすべてを失った……信じるべき正義も、組織も、愛するものも……なにもかも……だから最後に残ったものだけは失いたくない……信じられる……仲間だけは!」
ギャレンはブレイラウザーにキック、サンダー、マッハのカードをラウズした。ブレイラウザーを地面に突き立て、助走をつけて空中へ高く跳ぶ。
「剣崎!!!」
足に雷を纏い、ライダーキック─ライトニングソニック─を放つ。ケルベロスが両手の爪を交差させ、キックを受けた。
限界が近づく中、両者は気力を振り絞る。ケルベロスが腕を開いた。ギャレンは弾き飛ばされる。
「ここまで……か……」
ギャレンに横から、光線が浴びせられた。放っているのはレンゲルだ。
するとブレイドが現れた。レンゲルのリモートによって、剣崎が解放されたのだ。
落ちるギャレンは、レンゲルが受け止める。
ブレイドがライトニングソニックを繰り出した。まさかの二連撃を、ケルベロスは予想していない。
ブレイド渾身のライダーキックが、ケルベロスを貫いた。そしてその強大な力を無に帰す。
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「ここは……?」
変身を解いた剣崎。睦月と橘も元の姿に戻る。
「橘さん! ご無沙汰してます! 睦月、元気にしてたか?」
剣崎は二人と、挨拶を交わした。離れていた時間は長いが、絆はまだ残っている。
いつの間にか、始は姿を消していた。
剣崎と再会し、闘争本能が掻き立てられるのを防ぐためだ。
「すみません橘さん。俺もう行きますね」
剣崎が話を切り出す。悲しむ二人だが、彼の戦いを考えると、引き留めることはできない。
空から黒い石板が飛来した。
それは倒れていたケルベロスを封印すると、剣崎に戦いを促す。
これ以上の長居は危険と、剣崎は判断した。後ろを振り返り、その場から離れようとする。
気がつくとモノリスは既に消えていた。
橘と睦月が剣崎に宣言する。
「俺も俺の運命と戦う」
「俺もです。誰でも運命と戦うことは出来るはずです……違いますか?」
「頑張ってください。二人とも元気で! 始! 近くにいるんだろ? お前もな!」
剣崎は三人に別れを告げた。突風が吹き荒れる。瞬間的に、彼の姿が橘たちの視界から消えた。
「剣崎……俺は……これからも人間たちのなかで生き続ける」
始も決意を新たにし、次なる未来を目指す。
ここまでお読みいただきありがとうございました。