秘封先導鉄   作:”蒼龍”

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皆様お待たせ致しました、第97話目更新です!
皆様、自分は失踪してませんよ!

前回に引き続き会話回となります。
この位の長さなら前と繋げても……と思いましたが、会話だけで1万字を超す為前後編に分けました。
もっと短めに出来ないのかと言うジレンマががが()
それから投稿期間が空いたのは書き足したり書き直したりを繰り返してた所為です……。

では、本編へどうぞ!





あ、後今回でこの幕間は終わりです(唐突)


第97話「2人の意地」

ブライトと橙は布都の穏便に済ませようと言う提案(と言う名の脅かし)に乗り、見回りを布都を交えて行う。

2人はこの時布都はこの見回り中に何か聞き出して来ると考え、はぐらかせる内容ならはぐらかし、対して此方も情報を抜き取ろうと考え、それが一致しているアイコンタクトをして布都の様子を伺う。

 

「まぁまぁそう硬くなるな、我とて騒ぎを起こす気など毛頭無いし単に話が出来ればそれで良いのだからな!

先ずは世間体の話でもしようか。

お主、数年間我や霧雨魔理沙達の下に現れなかったが息災であったか?」

 

「……まぁな、昨日仕事の疲れからか黒塗r……じゃなくてパタンと倒れたがな」

 

布都は強かに平時の様子でブライトに話し掛け、最初は世間話からと元気だったかと問う。

対するブライトは黒塗りの高級車にぶつかってと言うネタを話し掛けてしまうが仕事疲れと言う形で倒れたと話す(無論ネタはそう思わせる為の仕込み)。

橙は此処に青いツナギを着た妖精さんが居なくて良かったと思いつつ上手く事実にブラフを仕込めてると考え、それに合わせる気でいた。

 

「だね〜、お陰様で私の方にこのおバカさんがやる筈だった仕事を回されて今度は私の方が倒れそうだけど〜。「だからこうやって何か奢っている上に悪かったと言ってるだろう」

AHAHA、全然まだまだ足りないからもっと埋め合わせよろしく+口答えすんなこの大バカ♪」

 

「お、おう、お主らも何だか大変なのだな……普及協会本部の仕事はアレか?

ぶらっく企業(?)の様に苛酷なのか……?

まぁ兎も角、今は元気そうなのだな、ふむ」

 

橙の話合わせにブライトも乗っかり、軽く問答を交えて事実にブラフを仕込む互いの感覚を掴みこれなら布都に余計な情報を出さないで済むと考え出す。

そんな2人の問答を聞いた布都はヴァンガード普及協会本部の仕事にあらぬ誤解を抱いてしまっていたのだが直ぐに思考を戻しブライトが元気そうだと判断する。

 

「次にデッキが変わった様なのだが、もう『ブラスター・ブレード』等は使う気は無いのか?

特にあの光の騎士はお主の分身だった筈だが……」

 

「もう使う気は無い……いや、使う資格が無い、そして俺は今メサイアの先導者、もうメサイアのデッキと……偶に『根絶者』しか使わんよ」

 

布都はブライトにブラスター・ブレードを使わないのかと問い、聞かれた本人はメサイアの先導者としてと言いつつも資格が無いとも口にし、橙はそれを聞いて瞳を閉じ、布都の方はやや複雑な事情を抱えていると思いその話を切ろうと考えていた。

 

「そうか…………では次だが、これは幻想郷の今後に関わる事柄故隠し通しなどは抜きにして話してくれ。

ブライトには外の世界で聞いたが改めて、そして今から八雲藍会長代行の式橙殿に問いたい。

お主達や会長代行殿は、今幻想郷の裏で粛々と進められている異変の計画、それらを認知し、対策は進めておるか?」

 

次に布都は異変計画を知っていて対策を練っているか否かを聞き出す。

ブライトと橙は先程までの世間話がジャブだとするならこれこそが本題、ストレートパンチの一つだと察知し今度はブライトは答えられる部分のみを話すと考え、橙も同じ考えだと自然な瞬きで合図を送る。

それを確認したブライトは改めて口を開く。

 

「ああ、知っている。

それの対策は主に俺が中心となり考えている。

無論異変の全容解明も同時並行して進めている」

 

「ふむ……ならば異変を止める手立ては彼奴らが本格的に動き出す前、近い内には煮詰まると言った具合であろうな」

 

「次にこちらからだ。

お前達神霊廟はあの人達の同志か、否か?」

 

ブライトは答えられる部分のみを話した後、ある事を確認する為布都に神霊廟は異変計画を共謀しているのかと問う。

すると布都は見るからに不機嫌な表情を浮かべ、ブライトに切り返し始める。

 

「太子様が彼奴らの軍門に下る訳があるまい!

つい先日我らの下に彼奴等の方から接触し軍門に下る様要求していたが太子様はそれを蹴り飛ばしたわ。

故に我ら神霊廟は異変計画を企てし者共と明確な対立をしておるわ!」

 

「そうか、それを聞いて少しは安心したよ。

あの人達の戦力はそう多くないと確信に近付きつつあるからな」

 

布都はブライトに対して怒り、自らがこの世で最も慕う豊聡耳神子が異変を企てる者達と手を組み悪事を成さんとしているか聞かれた事をきっぱりと否定で返す。

対してブライトは懸念材料であった異変を企てる者達の戦力に豊聡耳神子達が加わっているか否かの判断が取れ、自身が思い描いていた異変を企てた2人とその同志の戦力が少ないと言う予想が確信になりつつあった。

その為思考の奥で立てていたプランに変更は必要無いとも判断が取れ、残りは蓮子とメリーが順当に強くなればそのプランを実行出来るとも考えていた。

そんな思考をしていたブライトだが、次に布都に聞く質問は決めておりそれに思考を回し始める。

 

「では次に聞きたいが…………お前達はディペンドカード、アレを何に使おうとしている?」

 

「……はぇ?」

 

ブライトの口からディペンドカードの名が出た事、更に神霊廟がそれを何かに使おうとしていると聞いてしまった橙は驚いて少々腑抜けた声が出てしまう。

対して布都は表情一つ崩さずに一言一句聞きながら口を開く。

 

「はて、ディペンドカード?

その様な物は知らんな。

それは如何様な物なのじゃ?」

 

「惚けても無駄だ、お前達が普及協会本部が発見、監視しているディペンドカードを奪取し、更にそれがバレぬ様にダミーにすり替えていた事は調べが付いている。

もう一度聞く、お前達神霊廟は、豊聡耳神子はディペンドカードを何に使う気だ?」

 

布都の何も知らぬ雰囲気の応答に対してブライトは自身が調査した結果から得た情報を口にし、布都にその問いの答えを改めて聞き出そうとする。

橙は驚き思考が少し混乱したが、直ぐに思考を正常に戻し懐から通信用クリスタルを取り出し普及協会本部へと通信を行い始める。

 

「緊急連絡、無縁塚近辺で発見、監視下にあったディペンドカードがダミーにすり替わった可能性が浮上‼︎

大至急監視対象の下へ赴き真偽を確認せよ‼︎

……ブライト、何故そんな大事な、しかもかなりヤバめな情報を黙って「俺もこれを知ったのはつい3日前だった。

2日前はお前と藍様は月側との協議があり水を差す訳には行かなかった。

昨日出勤出来ていればそれを定時会議で報告する予定だった。

そして布都に会わなければ見回り前半が終わった時点で報告していた」…………はぁ、あの書類の山を整理しながらは流石に無理だからタイミングを計ってた訳か……あー、面倒臭い……」

 

橙は何故早く報告しなかったと通信を終えた直後にブライトへ問い質すが、どうやら昨日出勤出来ていれば報告していたらしく、さっきまでは書類整理(通常の倍以上)で報告する事も出来ず、2日前は藍達の邪魔になる為無理とも言い更に見回り中は第三者に聞かれる可能性のあると橙自身もブライトの言い分を聞き理解し、顔を手で押さえながら愚痴り火急の調査報告を待った。

それからほんの1分でクリスタルに連絡が入る。

 

『報告、橙様の情報通りディペンドカードがダミーにすり替わってました‼︎

申し訳ありません、我々の監視が甘かったばかりに監視対象が……‼︎』

 

「謝らないで良いよ、まさかこちらも探知結界等を擦り抜けて回収されるのは想定外だったから。

各自持ち場に戻り、私達の見回り終了後に緊急会議を私の権限で開くからそれ用書類を作成して。

後、早い報告ありがとうね。

……さて、裏付けは取れたみたいだから答えてくれないかな物部布都被疑者さん?

君達神霊廟はあんな危険物を何に使うのかな?

幻想郷をぶっ壊す程の異変でもやる気?」

 

報告を受けた後橙はにっこりと布都に目を閉じながら笑いかけ、穏やかな口調に棘を突き入れながらディペンドカード……普及協会本部が監視対象に定めた危険物を奪ったとする神霊廟の幹部に問い質す。

その雰囲気は見た目からは想像し難い威圧感を帯びており、八雲紫が居た当時の橙では出せない八雲の式としての雰囲気を醸し出している。

紫が消えてから八雲の式に恥じぬ様数年の間で一組織の幹部としての風格を身に付けた橙に対し布都は何ら気圧されず、寧ろそれを涼しい顔で流しながら不敵な笑みを浮かべながら応え始める。

 

「ふふ、流石は普及協会本部職員達、我らも悟られぬ様上手く事を運んだつもりだったのだがな……。

何に使うかと聞いたな?

心配せぬとも良い、別に幻想郷を壊そうなどとは我々神霊廟は、太子様は考えておらぬよ。

ただ、この幻想郷に居る弱き者達にちょっとした洗礼を与えるだけの事よ」

 

「洗礼……?」

 

「詳しくはファンタズムカップ本選終了後に太子様から報告が行く予定となっておる。

それまでは互いにただ睨み合う程度で済まそうではないか……今年の大会を潰さぬ為に」

 

普及協会本部職員達の手早い報告、更に自分らの行動を看破したブライトに驚嘆した布都はそれらを流石と褒めながら、神霊廟……神子がディペンドカードを何に使うかは言わず、象徴的なものを口にするに留めていた。

ブライト達は幾つか出たキーワードを頭に入れながら、神子達がファンタズムカップ本選終了後に本部へと報告する予定だとも聞き、本来ならそんなのを待たず神霊廟を押さえる所であった……が、今回はそれが出来ない訳が存在していた。

その訳とは、今年のファンタズムカップは月との連盟締結後、初の共同で開催された物だと言うものだった。

つまり、政に大いに関わってしまうと言う複雑な事情である。

 

「(こちら側の不手際で今年の大会を途中閉幕すれば月との連盟が崩壊しかねない為下手に動きが取れない、そして藍様の政策がパァになる、か。

予想はしてたが面倒だな……)」

 

「(そう言うのを分かっててやったなら豊聡耳神子さんは相当なやり手だねぇ〜……さっきのこの人のハメ手と言い神霊廟の動向と言い面倒臭過ぎて胃に穴が開きそうだよ畜生)」

 

ブライトと橙は神子達の行動がファンタズムカップ開催に合わせたのは月の連盟締結後、幻想郷側の不手際を晒せばその連盟が崩壊し、八雲藍が行なって来た行動の一つ……幻想郷の外敵に成り得る月との連盟により月の中の勢力、更にはそれ以外の者達が幻想郷を下手に手出し出来ぬ様にすると言う政や、紫が不在の幻想郷を他の賢者達が紫のやり方は甘かった為今こそ我が幻想郷を新たに導く(但し幻想郷の益を最優先)と言った考えを持っていた為藍が率先してトップに立って政を仕切っていたがそれら全てが台無しになり兼ねずなかった。

ブライト達の身動きはそれで封じ込めると言う考えに至り、2人は動く前からしてやられたと思い、ブライトはいざそうなると面倒だと感じ、橙は胃がキリキリと痛み出していた。

 

「ふふふ、お主達はこうやって一から全部説明せずとも理解してくれるから話がすんなり通るのう」

 

「それにしてもあっさりと話したな、何故「太子様が本部が我らの動向をある程度把握してたらその通りだと伝えてくれと仰られたからじゃ。

無論理由はお主らが既に考える通りこの時期にどうこうしようが無いのを暗に示す為じゃよ」……矢張りこの時期に動いたのは意図的か」

 

「ではこちらから後少し質問をしようか。

ブライト、お主は紅魔館支部の所属ファイター……今はブロント殿達とチームファンタズマ、と言うチームを組んでおる2名……宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーン、その2人を幻想郷に招き入れたのであろう?

その理由は何か聞きたいが、答えられるか?」

 

ブライトが布都がやけにあっさり答えた事を敢えて聞くと、布都はブライトと橙が脳裏で考えた通りの思惑であったと神子がそれを条件を満たせば伝える事、更には思考通りだと理由も余裕を見せながら言う。

布都……神霊廟にリードを奪われる中、次にブライトが蓮子とメリーを幻想郷に連れて来た理由を問い、ブライトはそれも本題の一つかと1人理解し、少し考えながら言葉を発する。

 

「……異変の計画を止める為。

何故あの2人なのかはお前達は分かる筈だ……宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーンを求めていたお前達なら」

 

「……成る程、あの2人は我らの見立てでは『特異点候補』、どちらかは間違い無く『特異点』、その力を使おうと考えたか。

そしてあの2人には今は実力を付けて貰い、後々協力を仰ごうと考えている、そうであろう?」

 

ブライトは深くは語らず、しかし目的は明確に示し、布都は其処からブライトの考えを分析し2人のいずれかが持つ力……『特異点』としての力を使おうとしていると断言する。

ブライトはこの布都の発言からまだどちらが『特異点』の力を持つか見極め切れてないと一瞬で読み解き、メリーがそれを持っていると最低でも悟らせなければこの腹の探り合いは勝ちになると考え次の会話が分かれ目と腹をくくり始める。

 

「ご想像にお任せする」

 

「そうか。

さて、次で最後の質問なのだが…………これは個人的に事故肩の力を抜いて置くと良いぞ。

ブライト、お主の瞳に映る物は昔と変わらぬか?」

 

「……あら????」

 

布都が次が最後とした質問は先程までのものと打って変わり何かブライト個人の事を聞くと言ったもので、橙はそれを聞いた途端変な声が漏れてしまい、頭に疑問符が幾つも浮かんでしまっていた。

ブライトはその質問を聞き、何の意図があるのかを考え…………昔と変わらないのか、と言う部分を重点的に絞り思考を張り巡らせる。

すると直ぐにその意図が分かりこれは別に答えても問題なさ過ぎると思い、口を開く。

 

「変わらない、変わる訳が無い。

これで満足か?」

 

「……ふむ、我個人の知りたかった事、神霊廟の一員として知りたかった事は大体分かったから満足であったぞ。

腹の探り合いで時間を取らせてすまんかったのう。

次に会う際は太子様共々キチンとした挨拶をさせて貰おうぞ。

ではさらばじゃ!」

 

ブライトが変わらないと質問を答え、それを聞いた布都はその瞳を少しだけ見つめた後、満足気にその場から去って行く。

その後ろ姿は本当に何処か満足感に満ち溢れた感じが見受けられ、橙は最後のは何なのかと思いつつも今は普及協会本部へ足早に帰るのが先決と考え直ぐに行動へと移し始めていた。

 

「ブライト、急いで本部へ帰還するよ。

このまま舐められたままだと私達普及協会本部……何より私、幻想郷最高峰の妖怪たる八雲紫様と式八雲藍様、その式としての沽券に関わり、如何様によっては八雲の名に泥を塗る事になる。

そうならない様会議で何とか私達に出来る神霊廟への対応を練るわよ……」

 

「ああ、分かってる。(……そうさ、変わる筈が無い。

俺がこの瞳に映すのは……)」

 

橙は表情を明らかに険しくし、余程先程の腹の探り合いが癪に触ったのかその足も力が入り走りに近い歩き方となっている。

更にその口から神霊廟に普及協会本部職員の肩書きに加え、八雲の名を汚させぬ為と言う妖怪としてのプライドが言葉として発せられながらブライトを引き連れ本部へと向かい始める。

ブライトも普及協会本部職員として一支部の暴走寸前の事態を見逃す訳には行かずその後を追う。

それと同時に布都の最後の質問が脳裏を過ぎるとブライトは布都への返答を繰り返し心で呟き、その心の奥にとある風景が広がり、自身の目的への覚悟と決意を再確認し力強く走るのであった。

 

 




此処までの閲覧ありがとうございました。
この回で判明した事は以下。
1:ディペンドカードは元々普及協会本部が発見、誰も持ち出さない様にその場に管理、監視していた。
2:神霊廟がそのディペンドカードをこっそりとダミーにすり替え、覚醒させようとしている。
3:神霊廟はまだ蓮子とメリーの何方が、或いは両者が自分達の欲する力を持つ者か見定め切れてない。
4:ブライトと橙は神霊廟への対応を検討中。
これらが蓮子達の物語と如何に絡むかは次回からの新章に……。

次回もよろしくお願い致します、よろしければ感想、指摘などをお願い致します。

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