秘封先導鉄   作:”蒼龍”

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皆様お待たせしました、第93話目更新です。
今回はファイト回前の会話回です。
そしてこの回を投稿した現時点で幕間の終着点が見えました。
なのでもう少しだけお付き合い下さいませ。
では、本編へどうぞ。


第93話「頑なな者と挑む者」

夜22時、ブライトは大事をとって(と言う名のレミリアの威圧)により紅魔館で1夜を過ごし、其処から普及協会本部へと出勤する様になった為夕食まで蓮子達と食し、チームファンタズマはアリスや魔理沙、霊華も加えて紅魔館でお泊まり会となっていた。

それまでの間に魔理沙が一度家に戻りポストを見ると、また〈ギアクロニクル〉のカード、しかも修正力が使っていたカードが届けられており、修正力はメリーのデッキを使いそれらのカードを加えていたと思った蓮子やメリー本人はもうそのカードは必要無いと思いデッキを確認すると、修正力が使ってたカリブムなどが消え、代わりにメリーが乗っ取られる前の状態のままだったりと少々訳の分からない事態があったり、ブライトとオリオンがファイトをして異様な激戦になるなど様々な事が1日で起きた。

そして今蓮子達は寝る前に何故修正力が使ってたカードがメリーのデッキから消え、ポストに投函されていたのかをブライトに聞きに行くべく廊下を歩いていた。

 

「にしてもアイツとオリオン、凄まじいファイトだったわね〜」

 

「オリオンの初手クリティカルからのダメージドロー&ヒール、更に返しでアイツがクリティカルを出してそれをダメージヒール……もうそんな事の繰り返しで真似出来ないわって思ったわ」

 

「うむ、あの2りはコインの表と裏でかち合えば互いにトリガーの応酬をしつつムチャクチャやりまくるからな真似しなくて良いぞ(お願い)

蓮子達があの2りみたくムチャクチャやらかしたらおれは完全に2りの導き方を間違えだと確信してブロントは深い悲しみに包まれて裏世界でひっそりと咽び泣いちぇまうとなるな」

 

蓮子とメリーはブライトとオリオンのファイトを振り返り、メサイアとオーバーロードがしのぎを削ったり盤面でもトリガーの応酬を繰り返したりとやりたい放題だった2人に引き気味になり、ブロントさんも真似はしなくて良いと言って2人の会話に混ざってた。

因みに聞きに行くメンバーはファンタズマの全員とカードを持って来た魔理沙である。

アリスは現在パチュリーと何かを話し合っているらしく付いて来てはいない。

そんな会話をしてるとブライトが居る部屋の前まで付き、蓮子達はドアに近付く。

 

「と、着いたわね。

じゃあ早速「私が気付かないとでも思った?」……あれ、霊華さん?」

 

すると部屋の中から霊華の声が聞こえて来る。

どうやらブライトと霊華が何かを話しているらしく、しかし霊華の声からしてブライトが何か隠し事をしていたのがバレた様な感じであった。

 

「流石博麗の巫女、真っ先に気付きますか」

 

「兎に角、もう昨夜みたいな無茶な真似は止しなさい。

でないと君、肉体と魂へのダメージで本当に死ぬわよ?

 

「(……えっ、死……⁉︎)」

 

すると霊華が突然ブライトに物騒な一言を告げ、それを聞いた蓮子達は驚き、特に魔理沙は絶句していた。

だが、部屋の中のブライトは平然と口を開く。

 

「肉体と魂への負担ならメサイアの加護で極限まで減らされている。

だから昨夜の様な事をしても死にはしないさ。

それに俺は死ぬ訳には行かない、未だ俺の目的を果たしていないからな……しかし無茶は止せと言うなら、それが必要な時になった以外ではしないと約束しますよ」

 

「……つまり無茶自体は絶対やらないって訳じゃないね。

全く、君はいつからそんな風に大人の言う事を聞かない聞かん坊になったんやら。

これじゃ魔理沙ちゃん達が夜寝れなくなるじゃないさ」

 

ブライトは負担は減ってるとして、無茶が必要になった以外ではしないと約束するもその無茶自体は止めないと宣言し、霊華にこれ以上話しても無駄だと呆れさせ、霊華は最後に魔理沙達への心配をしつつ、その彼女達にも迷惑を掛けてると遠回しに言って部屋から出る。

するとドア前に蓮子達が居た為霊華は驚き、ブライトは溜め息を吐き面倒なと言う態度を見せる。

 

「あ、あの〜……」

 

「あ、坊やに何か用なんでしょ?

なら入って、私はもう出るから(皆、ちょっと任せたわよ)」

 

メリーが何か言おうと口を開くと霊華は部屋から出て、去り際に皆に任せたと小声で話し掛け、そのままその場から去ってしまう。

そして残された蓮子達は頭が整理出来ていないが、ドアが開けっぱなしだった為ブライトが居る部屋へと入り、ドアを閉めその前に立ち尽くす。

 

「……チームで来るとは、何の用だ?」

 

「あー、メリーのデッキでちょっと。

修正力が使ってたカードの事を」

 

「成る程な、何故かカードが消え、改めてカードがポストに投函されてたか知りたいのか。

良いだろう、俺はデッキ調整しながら話す」

 

ブライトが何の用かと聞いて来た為、蓮子は当初の予定通りメリーのデッキの件を話し、ブライトはそれで内容を察したらしく黒いデッキケースを取り出し、中から『根絶者(デリーター)』軸のデッキを出して1枚1枚分けて行き、また懐からカード束を出しそれも1枚1枚丁寧に分けて睨めっこしながら話を続ける。

 

「えっと、何であんたが私のデッキやカードの入手経路を知ってるのかはこの際置いておいて、どうして修正力が使ってたカードが私のデッキに入って、また彼……いや彼女?

兎に角修正力が消えた途端それも消えて乗っ取られる前のデッキに戻ってそのカード達はまたポストの中にあったの?

あんた、何か知ってるのよね?」

 

「ああ、推測だがな。

恐らく奴はマエリベリー・ハーンのデッキをそのまま使ってたが、カリブム等はそのデッキ内のカード、グリマーブレスやギアハウンド等にそれらの絵柄やテキストと言った実体テクスチャを被せてファイトしていたんだろう。

実と虚の境界を弄ってな。

つまり修正力が使ってたアレらはイミテーション、虚像だ」

 

「……えっ、それってズルくない?

デッキに入れてないカードを入れてる様にしたんでしょ?

うわぁ〜、あのファイトそんな不正があったんだ……」

 

どうやらブライトの話によればメリーのデッキを修正力が使い、その中の一部のカードにカリブム等のカードの虚像を被せ、それを虚と実の境界を操り実体にして使うと言う本来ならジャッジキル物の不正を働いていたと推測され、それを聞いた蓮子はズルいと思いかなり複雑な感情を抱き、麟やメリー達はそんな不正がある中で勝った蓮子は本当に成長したのだと実感し、またメリーはこのポストに投函されていたカードこそが実物、本物だと思いこれは大切に使おうとそんな事があった為尚更思う様になっていた。

 

「……えーと、そのデッキは……」

 

「以前宇佐見蓮子を倒した時に使った『根絶者(デリーター)』デッキだ。

アレから弄る機会が中々取れなかったから今デッキをこの新しい浄化済みのカード達で組み直している所だ」

 

「…………ふん、ちょっと癪だけど……私らにもそのカードとか色々見せなさいよ」

 

次に麟が今弄っているデッキは何かと聞き、それは月で蓮子とファイトした時に使った『根絶者(デリーター)』軸の〈リンクジョーカー〉と話し、それを組み直しているらしく蓮子はその言い方にカチンと来そうになるが押さえ、ブライトにそれらを見せろと要求する。

ブライトはそんな義理も何もないが、何処かで蓮子達が『根絶者(デリーター)』使いに出会い、それに負けて躓く事があっては目的に支障が出ると思い、不本意ではあるが崩したデッキと新しい『根絶者(デリーター)』などを蓮子達の前の床に置き、蓮子達はそこに膝をつきカードを見ていた。

 

「ふーん、これが『根絶者(デリーター)』。

イラストとかゆっくり眺めてる時間や余裕が無かったから改めて見ると、髑髏を模した怪物だらけで気持ち悪いわね〜……んん、裏でバインド(バニッシュデリート)?

アンタ、これ何?」

 

「新しい根絶者(デリーター)のスキルさ。

この裏でバインド(バニッシュデリート)を貯めて行きながら相手を追い詰めて行き、13枚以上貯めた瞬間このGユニット、『始原根絶者(オリジナルデリーター) ヱヰゴヲグ』のデリートスキルを使えば特殊勝利、デリートエンドが発動するのさ。

最も、ヱヰゴヲグのデリートはGB2が付いてる為現段階では『根絶者(デリーター)』の基本戦術と噛み合ってないから強力だが余り使い辛い物だがな」

 

「ふーん」

 

蓮子はカードの中の1枚、『悪運の根絶者(イルフェイト・デリーター) ドロヲン』を手に取りイラストやスキルテキストを眺め、その独特なイラストに気持ち悪いと呟きメリーも内心では分かると思いつつ何も言わず、しかしスキルの一文が気になりブライトに聞くと、その裏でバインド(バニッシュデリート)はGユニットのヱヰゴヲグの特殊勝利スキルに関連しているらしかった。

しかし軸ユニット達の基本戦術であるデリートをして速攻と噛み合ってないらしく余り使い辛いとやや評価が低めであった。

ブロントさんや蓮子達は他に裏でバインド(バニッシュデリート)があるユニットを見て、誘発条件を見てゲンナリしていた。

 

「おいィ、ターン1だがスペコしたらバニッシュ+CC(カウンターチャージ)(1)って露骨な展開阻害だろ……いやらしい……」

 

「デリート下でブーストしたらデッキに帰ってバニッシュするクリティカル……やたら優秀なユニットね……」

 

「ライドしたら2枚バニッシュのコイツ、『絆の根絶者(ドッキング・デリーター) グレイヲン』が主軸ユニットだな……絆の根絶者、か……」

 

それらのスキルを見てブロントさんやメリー、魔理沙は三者三様の感想を言いながらブライトがどんな風に新しいデッキを組むか見て、すると当本人は魔理沙が持ったカードやメリー達の持ったカードを取り、それらを中心にデッキを組んで行き、アレよアレよと言う間に新しい『根絶者(デリーター)』デッキ……ヲクシズを中心とした物では無く、グレイヲンを中心にした物が完成する。

但しブライトは完成したデッキを見てやや気に入らないのかジッとデッキを目を細めながら見ていた。

そして……此処で今まで黙っていた菫子が動き出す。

 

「だぁーもう、皆肝心な事聞きに行かないでどうすんのよ!

ほらアンタ、さっき霊華さんに言われた死ぬってどう言う事なのよ!」

 

「……別に、どうと言う訳でもないさ」

 

菫子は皆が肝心な事、霊華の死ぬと言う発言を聞かない為焦れったいと思い問い詰めるも、ブライトは何食わぬ顔でどうでも無いとはぐらかそうとする。

その態度を見て魔理沙が菫子に追従し問い詰め出す。

 

「……答えろよ、どうでも無いとかはぐらかさずに。

アンタは絶縁状態で色々やらかしてるバカだけど私からしたら幼馴染だ、そいつが死ぬなんて事聞けば何事かと思っちまうだろ!

良いから答えろよこのバカ!」

 

「…親切なお姉さんとの約束の一つで今の俺の状態は出来るだけ明かせない、悟られない様にしている、としか言えないな」

 

しかし、それでもブライトは親切なお姉さんとの約束と言って深くは答えずに居た為魔理沙は歯軋りし、胸倉を思わず掴みそうになったが、その手をもう片方の手で押さえながらブライトを鋭い視線で射抜くのみに留める。

蓮子とメリーはブライトの態度にまた怒りが込み上げて来た為、2人はアイコンタクトをして一回物申す事を決める。

 

「アンタ、魔理沙が真剣に聞いてんのよ!

それにちゃんと答えないとか何考えてんのよ!」

 

「答えたくとも答えられない物は世の中にある、魔理沙が聞いた事もその一つだ。

最も、例え答えられたとしても絶対に言わないと思うがな」

 

「じゃあこれは?

親切なお姉さんってのがそんな約束を取り付けた、ならアンタのその死ぬってのはその親切なお姉さんがそうしたって言う「それは違う、この状態になったのは親切なお姉さんも不本意で、俺の方から今の状態になる事も聞き出した上に提案し、それらの内容を口外しない様にしたんだ。

俺の目的である異変の計画と、それを企てる2人を止める為にな」…………アンタの方から、ね……」

 

蓮子の物申しにはブライトは何時もの様な仏頂面且つ何食わぬ態度で答え、更に答えられたとしても答えないと付け加え蓮子のみならず、ブロントさんも頭に血が上り始める。

その次のメリーの物申し……親切なお姉さんが約束や『無茶な事』をすれば死ぬかもしれない状態にしたのかと口にした瞬間ブライトはメリーの顔を仏頂面のまま、しかし何処か真剣に見ながら答え、情報や約束、今の状態になったのはブライトの方から聞き出し、そうする様にしたのだと間髪入れずに答える。

その突然の返答に頭に血が上り始めていた面々のボルテージがほんの少し下がり、またメリーはその答えを噛み締め、親切なお姉さんはブライトがこうなるのは不本意で、もしかしたら口外しない約束も望んでいなかった事が判明する。

なら何故この青年はそんな事をしたのか、それらの意味を考え始める……そしてそれはあっさり出る。

異変の計画と、首謀者2名を止める、その為にそれらが必要な事だとこの青年は思っているとメリー、更に蓮子と一言一句聞き逃さなかった魔理沙達は理解する。

また、ブライトの『悟られない様に』と言う部分は恐らく首謀者2名やその同志に悟られたくないと言っているのだとも何となく会話のパズルを組み合わせて理解する。

が、理解は出来ても納得出来た訳では無かった為蓮子達とブライトの間にピリピリした空気が流れたままとなっていた。

 

「……話はそれだけだと言うならもう寝た方が良い、お前達が今やるべきはファンタズムカップ本選まで英気を養う事の筈。

俺も明日の出勤に差し支えない様にしたい」

 

「……詳しく話す気は「無い」バッサリね…………なら、ちょっと私とファイトして」

 

「あれ、メリー?」

 

険悪な雰囲気の中でブライトは蓮子達にもう寝る様に促し、更に互いに早めに寝る理由があると話した上でメリーの一言もバッサリと切り『根絶者(デリーター)』デッキを黒のデッキケースに仕舞い込む。

もうこれ以上会話が続かないと誰もが思った中、突如メリーがファイカからデッキを取り出し、ファイトをする様に要求する。

 

「……宇佐見蓮子ともファイトし、そろそろそちらの成長具合を直に体験しようとは思ってはいたが、何故今だ?」

 

「アンタの事、皆納得出来てないしこのままだと絶対次会ったら変な風に拗れるわ。

だったら今アンタとファイトをして、アンタの決意だとかそう言った目に見えない物を示した方がまだスッキリするし、皆もそこまで強い意志を持ってるなら仕方無いってなると思ったから。

アンタは言ってたわよね、ヴァンガードファイトにはその者の全てが表れるって……だから今、ファイトして!」

 

「メリー……(メリーが此処まで自分からグイグイ行くなんて珍しい……コイツに言われた修正力を退ける強い意志を持つ様に心掛けたから?

だとしたら……まぁ、少しはプラスになってるかしら?)」

 

ブライトはメリーの要求に何故今かと問い、それをメリーは自身の考えや蓮子や魔理沙達皆の気持ちを代弁した上でブライトの意志を示し皆を納得させる為にと答え、デッキを構えてファイトをするか否か返事を待つ。

蓮子はメリーのこの少し押しを強め、且つ自分からグイグイと動く姿を見て自分が手を引きながら歩いていたメリーが強く、また動く歩調が大きくなったと思い嬉しさ8割と自分が手を引く様に歩く事が少なくなりそうな事に寂しさ2割の気持ちを抱いていた。

そしてブライトは締まった黒のデッキケースでは無く、白のデッキケースからデッキを取り出し口を開く。

 

「……良いだろう、1回ファイトをしよう。

それ以上は互いの睡眠に支障を来す上、俺や騎士ブロントは兎も角、女子は肌が荒れるだろうからな」

 

ファイトをすると返事したブライトは部屋から出て、ファイトルームに向かい始める。

それを見てメリー達もファイトルームへと移動し始め、するとファイトルームのドア前に咲夜が居り、部屋に鍵を掛けようとしていたがデッキを持つブライトとメリー、更に観戦の蓮子達を見た為鍵を仕舞いドアを開ける。

 

「あ、咲夜。

ごめん、今鍵掛ける所だった?」

 

「いえ、良いわ。

まだ使う人が居るなら使い終わるまで鍵は閉めないわ。

それに、ファイトをする理由がある2人の邪魔をしてはお嬢様達に叱られてしまうから」

 

蓮子達は咲夜に軽く謝ろうとしたが、咲夜は特に気にしてない様子で、しかもメリー達の様子を見てファイトをしなければならない雰囲気を放ってるのを察し、レミリアにそれを止めたら叱られるとだけで他は特に何も言わずにファイトルームに通す。

蓮子やブロントさん達は改めて咲夜を出来た完璧メイドだなと思いながら2人がファイトテーブルの前に立つのを見守るのであった。




此処までの閲覧ありがとうございます。
今回の話に出た不穏な話は元から考えていた物です。
安易に出しちゃいけない物ですが、それでも出してしまいました……その話にもこの物語が終わるまでには決着が付きますのでご容赦下さいませ。
なお、この回にチラッと出たファイトの話は没話となった物です。
と言うのも、それを没にしないと幕間が更に長くなる不具合がありましたので没にしたのです。
しかし、そのまま無くすのは勿体無いのでチラッと話程度に出したと言った感じです。
そして次の回はファイト回です。

次回もよろしくお願い致します、よろしければ感想、指摘をお願い致します。

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