さあイメージして下さい………此処からが『本当のスタート』だと。
「じゃあ、『沈黙の騎士 ギャラティン』にライド!『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎』
更にギャラティンとマロンをコール!『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎』」
メリーはパワー10000のグレード2のユニット、ギャラティンにライド、及びコールをし、そのリアガードギャラティンの後列にはマロンを呼び、攻勢に入る。
シャドウもそれを見て手札のユニットを確認し、最低値かつ枚数少なめでガードしようと手札に手を掛ける。
蓮子もそれをリアル視点、イメージ視点の両方から見ている。
するとイメージ視点の蓮子が気付いた事だが、シャドウのネハーレンはライドした影響か彼の特徴であるマロンカラーの髪の毛と青い瞳が兜から出ているのに対し、メリーがライドした筈のギャラティンにはメリーの特徴………眼は隠されている為分からないが、髪の毛の色も反映されていないのか彼女の金髪では無く、カードイラストと同じく紫色であった。
これに蓮子は少々違和感を感じ、首を傾げる。
「じゃあ、マロンのブースト、リアガードのギャラティンでアタック!「ダメージチェック」」
と、此処でメリーが攻撃を仕掛けた。
シャドウはリアガードのアタックをガードせずに受け、次のヴァンガードのアタックに対処する動きを見せていた。
対するメリーもそれは分かっているらしく、だったら何も気にせず突撃と考えていた。
「みるびるのブースト、ギャラティンでアタック!「ガード!」
ドライブトリガー、チェック!『断罪の騎士 ボールス』
トリガーじゃない………ガードは突破出来ないわね、ターンエンド」
メリーのアタックをトリガーが来ないと予測したシャドウは10000のガードだけ使い、このターンにおけるダメージを1枚だけに抑えて次の自分のターンで巻き返しの札を残す。
此処で蓮子はシャドウの先程のガードは経験則から導き出した最小限のガードだと考え、この分だとメリーはいずれジリ貧になりダメージレースで負けると言う予測を立てた。
「よし、スタンド&ドロー!
僕はグレード3『クレステッド・ドラゴン』にライド!
更にネハーレンと『ドラゴンダンサー モニカ』をコールして、モニカのブースト、テージャスでヴァンガードにアタック!
……ガードはしなかったね、ならエルモのブースト、クレステッド・ドラゴンが行く!」
イメージ世界にて、炎を纏う剣をメリーがライドしたギャラティンに向ける青い竜が、咆哮を上げて襲い掛かって来る。
其処にメリーの指揮下のユニットがそれを阻もうとしてメリーの下に走るが、メリーがライドしたギャラティンはそれを制止させ、自らの刃1つでそれを受け切る気でいた。
するとシャドウはそれを見て説明に入る。
「さて、今グレード3のヴァンガードがアタックしたんだけど、グレード0と1にブーストが、ついでにグレード2には前列リアガードサークルからガーディアンサークルに移動してアタックを防ぐ『インターセプト』があるんだけど、このグレード3にも同じ様にグレード固有能力があるよ。
それは『ツインドライブ』、文字通りドライブトリガーを2回行う能力だよ!」
「えっ⁉︎」
「なっ、トリガーチェックを2回も出来るの⁉︎
それじゃあ、グレード3になればトリガーを引ける確率が倍以上になるって事⁉︎」
「その通りですよ部長。
さて副部長、これを聞いて改めて聞きます。
ガードしますか、しませんか?」
蓮子とメリーはグレード3の固有能力であるツインドライブを聞き驚く。
トリガーチェックが2回になる、これは単純に2枚分トリガーを引く確率が上がるのでは無く1枚引く毎にデッキが減るのでその分トリガーを引ける率も上がり、また引けなくても次の1枚がトリガーである確率も跳ね上がる為攻撃側に大きなメリットを齎すのだ。
しかし、トリガーチェックで2枚引くと言う事は公開手札も2枚増えると言う事にもなり、これがシールド0のグレード3を2枚引いた場合相手に手痛い反撃を許しかねない諸刃の剣でもあるのだ。
メリーはそれを考慮しつつ、シャドウがクリティカルトリガーを2枚引く確率を計算する。
そして、シャドウのデッキが自分と同じ仕様のデッキだと考えて残りのクリティカルトリガーはおそらく3枚、更にデッキの枚数も計算式の中に入れ、答えを導き出した。
「………クリティカルトリガーを2枚引く確率はまだ少ない、ならノーガード!」
「うん、じゃあツインドライブトリガーファーストチェック『槍の化身 ター』『☆』ゲットクリティカルトリガー!
パワーはネハーレンに足してセカンドチェック『グラファイトキャノン・ドラゴン』ノートリガー」
「ひ、ヒヤッとしたわ………メリーが自信満々にノーガード宣言したらファーストチェックからクリティカルトリガーを引いて来た………」
シャドウがトリガーチェック1枚目からクリティカルトリガーを引き、ヴァンガードのクリティカルを引き上げた事に自信満々にノーガード宣言をしたメリーと観戦中の蓮子は冷や汗をかいてしまう。
何せまだデッキ枚数は多く、クリティカルトリガーも残りは3枚なので引き当てるだけでも確率が少ないにも関わらず1枚目から引きダブルクリティカルの可能性を生み出したのだ。
二人はシャドウの強運をかなり凄いと思い、メリーに至っては次の自分ターンで決めなければ負ける確率が増えたとさえ考えていた。
「さてダメージチェックは………ドロートリガーが出てパワーは同じだけど、このターンでは決められないか。
ネハーレン、アタック!「ガード!」
ターンエンド」
「ふう……トリガーに助けられたけど、次のターンを渡したら負けるかも………私のターン、スタンドしてドロー。
『スタードライブ・ドラゴン』にライド!
これで私もグレード3………ここで決めるつもりで行くわ!
コール、『断罪の騎士 ボールス』と『ナイトスクワイヤ アレン』!」
メリーはそのままリアガードをコールして全ての盤面を埋め、攻撃態勢を整えてこのターンで決めると意気込む。
蓮子もその雰囲気に乗りドキドキしながらメリーのアタックフェイズを見守る。
しかし、二人は初めてやるカードゲームに此処まで意気込まなくても良い筈なのに妙に力み、ずっと以前から今に至るまで続けて、しかも真剣に向き合っているかの如くヴァンガードにのめり込み始めていた。
そう、二人はいつの間にかこのカードゲームの魅力に引き込まれ、心の底から楽しいと感じていたのだ。
それは観戦してるだけの蓮子や肌に合わないと感じる〈ロイヤルパラディン〉を使っているメリーのどちらも変わらない、二人は同じ位に、このヴァンガードと言うカードゲームに引き込まれたのである。
「マロンのブースト、ギャラティンでアタック!「ノーガード、ダメージチェック『ワイバーンストライク テージャス』
これで決めるわ!
みるびるのブースト、スタードライブ・ドラゴンでヴァンガードにアタック‼︎「ターでガード、2体のリアガードでインターセプト!」
うっ……」
メリーはこのアタックで決める気でスタードライブのアタックを行うが、それを合計シールド30000でしっかりガードしてそのアタックを完全にシャットアウトする。
しかし、メリーは次にボールスを見る。
このユニットはアタック時に何らかのコストを払えばパワーが+3000されるとテキストスキルに書かれており、更にブーストを入れればトリガーが無くても20000までパワーが上昇する。
其処にトリガー2枚を引けば更に+10000上昇し、シャドウは合計シールド35000でしか防ぎようが無い。
オマケにメリーは覚えていた、シャドウの手札にはガードには使えないグレード3のユニットが1枚確かにあると。
それを考えればトリガーを2枚、内1枚は必ずクリティカルを引けばゲームエンドに持ち込める可能性が高かった。
故にメリーは必ず2枚引くと意気込んだ。
「よっしメリー、トリガー引いてバッチリゲームエンドよ‼︎」
「勿論よ蓮子、ツインドライブトリガー1枚目‼︎『世界樹の巫女 エレイン』『治』
あ、トリガーゲット!「それはヒールトリガー、相手とダメージの枚数が同じか相手より多い場合に1枚ダメージを回復……ドロップゾーンに送ってダメージ枚数を減らせるよ」
なら、ダメージを1枚回復してボールスにパワー+5000!
2枚目‼︎『幸運の運び手 エポナ』『☆』
クリティカルトリガーゲット‼︎
パワーとクリティカルはボールスにプラスするわ‼︎」
「ダブルトリガー………ダメージ4で手札はコレ、ボールスのスキルを加えたら………うん、次はボールスでアタックするよね?
そしたらボールスのスキルを発動出来るんだけどそのコストが分からないよね?
ボールスのスキルのコスト、紫色のカードをひっくり返す様に書かれているそれはダメージを指定された枚数裏向きにする事なんだ。
これを専門用語で
他にもヴァンガードのソウル………ライドや一部のカードのスキルでヴァンガードの下に置かれるカード群を使う
「じゃあ、アレンのブースト、ボールスでアタック!
ボールスのスキル、アタック時に
これによりボールスの合計パワーは2枚のトリガーによるパワーアップを含めて30000、更にクリティカルは2よ‼︎」
シャドウのスキルの説明を受けた後、メリーはボールスのスキルを使い合計パワーを30000に引き上げ、ガードへの圧力を高める。
当たる、当ててみせる、そうメリーは心で念じ、蓮子も同じく当たれと強く念じる。
対してシャドウは手札を見て、35000のシールドを出せない、ヒールトリガーが出る事に期待するしか無いと言う結論に至り、そのままアタックを受ける事にした。
「……ノーガード、ダメージチェック『ドラゴンダンサー モニカ』『引』ドロートリガー、パワーをヴァンガードに与えて1枚ドロー。
セカンドチェック『リザードソルジャー ガンルー』『醒』スタンドトリガー………負けました」
シャドウはダメージトリガーに期待したが、結局ヒール以外のトリガーが出てしまいそのままゲームエンドとなった。
「………勝った?」
「うん、副部長の勝ち」
メリーはアタックがヒットし、シャドウのダメージが6枚になった所で惚けてしまい、いまいち自身が勝ったと言う結果が飲み込めなかったが、シャドウの副部長の勝ちと言う言葉を受け漸く自身の初ファイトを白星で飾る事が出来たと実感し、右手をギュッと握って勝利を噛み締めた。
「よっしゃ‼︎
流石メリー、初めてのヴァンガードファイトでも問題無く勝てたわね‼︎」
「ええ、勝ったわ。
そう………勝てたわ」
蓮子とメリーは初めて知り、不思議と引き込まれたカードゲームで勝利を収めた事にこれまた不思議と互いに喜び合っていた。
それはまるで今までこのカードゲームをしていて、久々に勝ったかの如く。
それを見ていたシャドウは2つのデッキを片付けている最中にそれを見て…………………自分の当初の思惑通りに、否、予定よりも大分事が運んでいると考えていた。
「(少々予定と食い違っていたが、軌道修正の必要も無く計画が早々と最終フェイズ前まで来た。
………此処まで来るのに後2ヶ月程最悪掛かると考えたが杞憂に終わり、第3、第4フェイズを飛ばせた。
残るは二人を……………)」
そんな事を考えている中、デッキの片付けが終了しいよいよ最後の仕掛けに入るべく、シャドウは喜び合う二人に近付き声を掛け始めた。
「部長、副部長。
ヴァンガードファイトに付き合ってくれてありがとうございました」
「ううん、私達も十分………私は見てただけだけど、楽しめたからこっちの方こそありがとう!」
「はい。
で、数日前から其処の怪異を調べてて、昨日下見をして安全を確認したので本格的に調べようか………と思ってたんですが、今日のいざこざとかがあって今から調べて、当たりと思たらメールをしますので途中で合流して行きませんか?」
「そうなの?
分かったわ、待ってるわ」
「で、その場所の名前は?」
「はい、名前は…………『博麗神社』です」
蓮子とメリーは先程のファイトで上機嫌、且つシャドウの丁寧な態度に二つ返事でOKを出し、行く先が博麗神社だと告げた後一旦そのまま解散となった。
そしてシャドウは目的地たる博麗神社…………シャドウにとってこれ以上と無い所縁ある地に行き、最終フェイズの準備に取り掛かるのであった…………………。
深夜2時、蓮子とメリーは必要最低限の物をポシェットに入れ、シャドウに連れられて目的地に向かう道を林の中にある舗装されていない道を歩いていた。
「ふふーん、今回の怪異は何だろうね〜。
前行った時は何もなかったけど今回いよいよ、あの神社に秘められた謎を解き明かす時が来たわ!
いや〜、このパーフェクトブレインの蓮子ちゃんも楽しみで仕方ないよ〜!」
「すみません、其処に何かあるって分かったんですが僕だとそれが何なのか微妙に分からなくて………わざわざ足を運ばせてすみません」
「良いのよ、シャドウが来る前は何時もこんな感じで行き当たりばったりだったし、何もなければまた夢の世界に行ってみようって言うのが秘封倶楽部だったから。
だから気にしなくても良いわよ」
二人はシャドウの話を聞きながらこの先に何が待つのか楽しみながら歩いて行く。
すると、蓮子達の前に神社に続くやや長めの石段と古ぼけた鳥居が現れ、二人は走って石段を上がり鳥居を潜った。
すると目の前にはこれまた古ぼけた神社の本殿があり、賽銭箱の前まで歩き、普通に歩いていたシャドウを待っていた。
「よっし、じゃあシャドウ!
何処に何がありそうか教えてplease‼︎」
「ええ、何かありそうって思ったのはこの神社の本殿の裏手です。
行ってみましょう」
蓮子とメリーはシャドウから裏手に何かあると聞き、そのまま裏手へと行く。
すると、其処には確かに何か………………メリーの目にはっきりと映る、境界の裂け目があった。
メリーがその場所を蓮子に伝え、二人で調べると蓮子の目にも境界がはっきりと映る様になり、二人はその前に立っていた。
「確かにあったわ。
この境界…………何処に続いてそう?」
「………分からない、こんな境界は初めて見たわ。
まるで『何かの力で無理矢理こじ開けられた』みたいに歪な境界………今中に入るのは危険過ぎるかも」
「むむむ、そりゃ不味いわね。
今は調べるだけだったから碌な準備もして無いわ。
…………仕方無い、明日改めて来ようか。
シャドウもそれで」
二人がそんな会話を交わし、この境界が何か歪で先に進むのは危険と判断して一旦帰り後日改めて境界の先を調べると決定する。
それをシャドウに伝えようと蓮子とメリーは振り返る……………筈だったが振り返る事が叶わなかった。
何故ならば……………シャドウが二人の背中を押し、境界に無理矢理押し込んだのだ。
『…………………えっ?』
「悪いが今入って貰う。
それが最終フェイズなんだからな………さて、一旦さよならだ、宇佐見蓮子、マエリベリー・ハーン………」
シャドウのそんな呟きが聞こえた後、二人は境界の中に真っ逆さまに落ちて行った。
そして二人は気付いた、否、気付かされた。
この境界はシャドウが自分達を落とす為に用意し、今までの態度も何もかもこのワンシーンを実行する為に彼が仕込んだ罠だったと。
「いやあああああああああ‼︎」
「っ、メリー‼︎」
境界に真っ逆さまに落ち、悲鳴を上げるメリーを蓮子は何とか抱きしめ、そのまま一緒に落ちて行く。
其処でふと、蓮子は最近見ていた悪夢を思い出す。
幾ら手を伸ばしてもメリーとどんどん離れて行き、彼女が自分の前から消える悪夢を。
「(冗談じゃないわ‼︎
あんな夢の通りにさせてなるもんか‼︎
絶対に離さない、絶対に離さない、メリーを失ってたまるもんか‼︎)」
蓮子は強くそう思い、より一層メリーを強く抱き締め絶対に離さまいとする。
そんな蓮子の思いが伝わったのかメリーも強く彼女を抱き締め、互いに離さない様にした。
しかし蓮子は知らない、自身が見ていた様にメリーも同じ悪夢を……………蓮子と離れ離れになり、もう二度とその手を握る事が叶わない悪夢を見ていた事を。
そして…………二人は互いに抱き締め合いながらそのまま意識を落とし、目の前が真っ暗となって行った………………。
「さあ、これで二人の運命が流転し、新たな運命が紡がれた。
その先の結末が、俺が求める物だと期待してるぞ、宇佐見蓮子、マエリベリー・ハーン」
二人を落とした直後、そう呟きシャドウも境界の中に入り、彼もまた境界の中へと落ちて行った。
一体何故シャドウは二人を境界の中に落としたのか?
彼の目的とは?
それを知る者はまだ誰も存在せず、明かされる日も遠いのであった……………。
3話編成の話を最後まで閲覧して頂き、本当にありがとうございました。
さて、前書きにもありました様に此処からが『本当のスタート』です。
果たしてシャドウは何がしたいのか………と言うか、全国の蓮メリファンの皆さんを敵に回してまでやる事だったのか、その答えはこれから先に待っています。
………では、次回より秘封倶楽部の物語は彼女達の世界から境界の先の世界に移ります。
其処に何が待ち受けるのか、お楽しみに。
追記:とある方からヴァンガードのルール関係を分かりやすく示す箇所、又はサイト誘導が無いと初見さんが苦労すると指摘を受けましたので活動報告にURLを貼りました。
そちらをご覧になればルール関係を理解出来る筈です。
また、自分の力量不足で上手くルールを解説出来ず、対応もかなり遅れてしまった事を深くお詫び致します。
本当に申し訳ありませんでした。
キャラ設定を見たいですか?
-
見たい
-
見たくない
-
次を早く投稿して