秘封先導鉄   作:”蒼龍”

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何だか色々と踏ん切りが付き、この第25話から一般公開とさせて頂きました。
閲覧してくれる皆さんへ、かなり見辛くヴァンガードなんざ知るかよ、有頂天ネタは飽きてると考えている方もいらっしゃるかと思いますが、最後までお付き合い頂けたら幸いです。
では、どうぞよろしくお願いします。


第25話「お月様へGO」

テレビの視聴後、蓮子は娯楽室のテーブルの目の前に座らされ、他の全員は彼女を囲む様に座っていた。

こんな事になった理由は無論蓮子がテレビに向かって叫び、画面の向こうにいてその声が届かない筈のオリオンがまるでその声が聞こえたかの様に反論し、そのまま勢いで依姫に勝利した事が原因だった。

 

「………では蓮子よ、何故あんな事が起きたか心当たりは無いか?」

 

「全然無いわよ⁈

私もあんな不思議現象が起きてビックリよ!

えっ、何?

私幻想郷に来てこの『星空を見たら時間や位置が分かる眼』以外にも不思議能力に目覚めたの?

『相手に思念を伝える程度の能力』とでも言う力がこの私に宿ったの⁉︎

うっわマジ…………局所的にしか役立たな〜い…………」

 

如何にも蓮子にすら心当たりが無いらしく、当の本人は幻想郷に来て何らかの能力が目覚めたのかと最初は喜ぶも、考えた能力名を口にした途端に余り便利な力では無いと理解し、完全に項垂れてテーブルにのの字を書き始めていた。

 

「全くこのおバカは………で、他の皆はどう思う?」

 

「ふむ………これはあくまでなんとなくであり確信はないと言う意見なのだが、敢えて言わせて貰うならば蓮子は程度の能力に目覚めた感じがまるでしないと言ったふいんき(何故か変換出来ない)であると思うんだが?」

 

「私もブロントさんと同意見だぜ。

程度の能力ってのは幻想郷内で目覚める力でたまに外来人も目覚めたりするんだがな、それらが目覚めると幻想郷に居る奴が感じ取れる……例えるなら『ニオイ』、みたいな奴が出るんだよ。

でも、蓮子にはそれが無い。

だから程度の能力が目覚めたって訳じゃないと思う」

 

しかし魔理沙とブロントさんは蓮子が能力に目覚めた可能性を否定し、確証では無いが幻想郷に居る者が感じ取れる物が蓮子に無い為だとも話し、アリスや麟と言った他の面々も首を縦に振りそれを肯定している。

それを聞いた蓮子は何処かガッカリと、しかし思念を伝える程度の能力が宿った訳では無いと知り何処かホッとした感が出ていた。

 

「ふむ、となれば他の可能性は…………『ポゥ』」

 

するとレミリアは蓮子に近付きマジマジと見始めたかと思うと、位置的に蓮子にしか見えない位置でレミリアの瞳が一瞬、瞬きをしたら見逃してしまう様な一瞬紅とその周りを虹色で囲う輝きが宿り、蓮子はそれを見逃さず首を傾げる。

するとレミリアは何かを察したかと思わせる様子を見せ、自分が座っていた位置に戻りまた蓮子を見ていた。

 

「………それでレミィ、何か察した様だけれど、何かあったのかしら?」

 

「ああ、あったな。

それを手っ取り早く理解する方法もキッチリと浮かんだよ。

………宇佐見蓮子、それとマエリベリー・ハーン、お前達に起きてるトラブルは咲夜の口から一応聞いているが、改めてお前達の口から聞きたい。

お前達は今、どんなトラブルに巻き込まれているかを」

 

「えっ?

……『ピッ、スッ、ババァーン‼︎』…………分かりました、実は…」

 

蓮子は突然レミリアに自分とメリーの身に降り掛かるトラブルの事を聞かれ、それを話すかメリーとアイコンタクト(と周りを引かせるウザ可愛表情での指差し、厨二、荒ぶる鷹のポーズなど)をし、結果幽々子にも話した情報と幽々子から齎された情報をレミリアや咲夜以外の紅魔の面々に伝える。

 

「………ふむ、話には聞いていたが………成る程、蓮子の『ブラスター・ブレード』は元は奴のカードだったか。

フン、自らの分身を切り捨て剰え魔理沙に一方的絶縁を叩き付け我らから離れたのみならず、人攫いの一貫を行なう下衆な人間に成り果てるとは………これでは今この場に居る魔理沙が本当に金かわになるではないか」

 

「?

あの、何でそこで魔理沙が?」

 

「本人の口から聞いてくれ、私が言う立場では無い」

 

するとレミリアの口から魔理沙の事を異様な程気にする言葉を出した為、蓮子とメリーはその理由を聞こうとしたが魔理沙本人に聞けと返され、二人が魔理沙の方を向くとその魔理沙は「あー……」と言いながら頭をポリポリと掻き、少し深呼吸をして二人に向かって口を開いた。

 

「……いやな、これは如何でも良い情報で、幽々子の奴も気を遣って話さなかった事なんだけどな………『シャドウ』って偽名を使って蓮子達にちょっかいを出したバカ、そいつはな、私の……幼馴染なんだよ。

でもって、これ以上はちょっと聞かないでくれたら嬉しいよ」

 

「えっ、幼…………うん、分かった」

 

魔理沙の口から『シャドウ』が彼女の幼馴染と聞かされ、其処からどんな奴であったかを聞こうと思った矢先に釘を刺され、更に魔理沙の様子からこの事は余り触れて欲しく無いタブーの一種だと観察眼で察した蓮子とメリーは、それ以上の事は聞かずいつか魔理沙が細かい事を話してくれるだろうと思い、話題にするのを止める。

 

「………で、それが一体如何したんですか?」

 

「いや、何。

如何も西行寺幽々子では蓮子の方は気付かないなともはっきりと思っただけさ…………蓮子の声が月に殴り込んでる我が従者に届いたかに見えたあの事象、案外『シャドウ』の目的の一つかも知れんと推察したんだ。

確証を得るには、お前達二人には来て貰いたい所があるんだが、良いか?」

 

レミリアは幽々子では気付かず自分なら気付く情報があるかの様なニュアンスの言葉を口に出し、更に蓮子とメリーを何処かに連れて行こうともしており、二人はそれが何処なのかを聞き出そうと質問をする。

 

「あのー、ちょっと良いっすか?」

 

「えっと、私達を何処に連れて行こうと?」

 

「ああ、月に居る我が従者オリオンの下さ。

実は私ら紅魔の面々と魔理沙、ブロントさん、麟、アリスはオリオンが今から3日後に行われるエキスパートカップ本選決勝、つまり優勝者決定戦にオリオンにはサプライズでVIP席で観戦する約束を取り付けていてな、其処にお前達二人も追加してオリオンに会って貰うのだ。

どうだ、生で我が従者のファイトを見れるし蓮子の起こした事象の正体が分かるのだ、行きたくはないか?」

 

レミリアはオリオンが決勝まで進んだ暁にはVIP席での観戦を向こうに約束させたらしく、彼が決勝まで進んだのが嬉しいのか、はてまたは依姫の態度から月の人は地上の者を見下す傾向にある事が分かり、それをジャイアントキリングの形で見返せたのが痛快なのか、或いはその両方か背中の羽をパタパタと揺らし、表情も明らかに嬉しそうに笑っており、蓮子とメリーはそれを見てついレミリアを可愛いと思ってしまうも、冷静に考えあのファイトが生で見られるのと蓮子が起こしたとはっきりと言われてしまった事の正体が分かると知り、二人は互いに見て顔を縦に振り、答えを出す。

 

「分かったわ、今回は危険が危ないなんて事は支部長達から離れなきゃ無さそうだし、付いて行くわ」

 

「その言葉を待っていたわ。

ならオリオンの居る月に行くわよ、『明日』‼︎」

 

『…………ゑ?』

 

しかしいざ付いて行くと答えた蓮子とメリー、いや、魔理沙達もレミリアの口から思考が一瞬追い付かない爆弾発言が飛び出して来て呆けてただ一言しか口に出来なかった。

すると咲夜達が少し申し訳無さそうな表情で蓮子達を見る中、レミリアが更に口を開く。

 

「ああ、言っていなかったか?

大会の決勝自体は3日後に行われるが、我らが月にのりこめー^^するのは明日になっているぞ。

いや〜、明日迎えに来る『綿月姉妹』をドヤ顔で出迎える日が来るなんて夢にも思わなかったわ、アッハッハッハッハ!

だからまあ、今日は明日に備えて紅魔館で泊まって行くと良い。

だが魔理沙、お前は地下図書館出入り禁止な!」

 

『え、工エエェェΣ(°д°;)ェェエエ工!!?』

 

何と魔理沙達すら聞いていなかった明日月へと行くと言う予定に全員驚き(魔理沙のみ地下図書館出入り禁止にも驚く)、全員紅魔館に泊まる事が強制決定してしまう。

一応家を空ける為戸締りはしっかりとして来る様にと言われ、それぞれ一度家に帰り戸締りを確認し、改めて紅魔館に戻り意図していなかったお泊まり会が始まった。

豪華な夕食を見て蓮子が驚き過ぎてテーブルマナーをメリーに逐次聞いたり、浴場にて魔理沙、蓮子が胸囲の格差社会に涙し、蓮子はメリーに、魔理沙はアリスとパチュリーにセクハラさて三人に拳骨を受けたり、夜中に蓮子が『人の家に泊まったら枕投げはお約束!』と言う謎の発言をし、意外と全員ノリノリで(枕がダメにならない程度に)白熱した枕投げが行われたりその枕投げでブロントさんが理不尽に狙われたりなどがあったりした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた朝、吸血鬼が朝早く起きて活動するなどの蓮子とメリーの中にあった吸血鬼のイメージが崩れるプチ事件があったが、門の前で全員が迎えに来る『綿月姉妹』を待ち、咲夜は紅魔館の戸締りを彼女の能力である『時間を操る程度の能力』を駆使して隅々まで時を止めながら確認し、全部確認し終えてから日傘を差しているレミリアの下に立ち、月の迎えを待った。

 

「そう言えば迎えに来る姉妹の内一人って、オリオンが準決勝で戦った態度が大きいチート引きの姫騎士っぽい人ですよね?

そのお姉さんってどんな人なんですか?」

 

「私達は直接会った事は無いが、話によれば依姫よりかは柔軟な思考を持つがやはり月人と言った感じの奴らしい。

そして奴が持つ扇子は『森を一瞬で素粒子レベルで浄化する風を起こす扇子』で、そんな物を仰がれたら最近は爆破されなくなった紅魔館ごと辺り一帯が綺麗サッパリ消し飛ぶらしいぞ。

だから警戒だけは怠るなよ、特にバカっぽい蓮子と魔理沙」

 

『何でだし!?』

 

そんな中でメリーはレミリアに『綿月豊姫』の方を聞くと、恐ろしい物を持つ危険人物的な答えが返って来た為、顔を少し青ざめさせて豊姫を警戒しようと心掛け、バカと言われた蓮子と魔理沙はレミリアに反論していた。

 

「流石のナイトも圧倒的な防御力を誇るが素粒子レベルに分解されたらまるで意味がないと言うある様……マジで震えてきやがった…………だ、だがナイトはLSメンは見捨てないので扇子を振るおうとしたらインビンで無敵状態になって全員かばってやるからよ俺の後ろに隠れておくべきそうすべき分解されたくなかったらそうすべき「あらあら、幾ら地上が穢れで満ちていると言っても、この扇子を易々と仰ぐ真似はしませんわよ?」………来やがったか」

 

ブロントさんが扇子に少しビビりながらも全員を庇う姿勢を見せていた所、突然女性の声が聞こえて来てブロントさんはケーニヒシールドを装備し、警戒し始める。

すると蓮子やレミリア達の目の前にオリオンとファイトをしていた綿月依姫と、依姫と同じ様な白の長袖シャツ、依姫と違い色が青で肩紐も逆に着いたサスペンドスカートの様な服、そして長い金髪と青いリボンが巻かれた白の帽子、及び扇子を持っている女性………件の『綿月豊姫』が姿を現した。

 

「これはこれは、我ら下賤なる地上の民を遥々迎えに来てくれた我が従者に無様に敗北した高貴なる綿月姉妹ではありませんか。

態々この紅魔館の前に醜態を晒して迎えに来てくださるとは光栄の極みであるな(ドヤァ………)」

 

「(イラッ☆)ええ、高貴なる月人である我々は一度約束した事は反故にはしないわ。

例えそれが私に負けた腹いせに自分の部下を送り込み、自分が倒してもいないのにまるで自分の功績の様に振る舞うお山の大将であるうー☆うー☆いつも言ってるかりちゅま吸血鬼が相手でもね」

 

「(ビキッ!)あっはっはっはっは、従者の功績は主の功績でもあると言う一勢力の長の基本事項をまるで知らない博識(失笑)な負け姿がお似合いな姫騎士っぽい方とこうしてお喋りが出来て痛快だわ。

それにしても試合、見ていたぞ。

いや〜相変わらずな積み込みを疑うチート引きを見せてくれて、最後には6点ヒールからのVスタンド確定でプリケツ晒した様は見事だったよ!」

 

「(ビキビキッ‼︎)ふふふふ、そんな貴方はその時はさぞやお山のボス猿の如くはしゃぎ回られた事でしょうね〜。

カリスマブレイクの場面を見たかったですよ、そして思いっ切り笑い飛ばしてやりたかったですよ!」

 

「あっはっはっはっは(#^ω^)」

 

「ふふふふ………(^ω^#)」

 

出会い頭の会話でレミリアと依姫は既に一触即発の状態になり、依姫は懐の刀を抜こうとし、レミリアは魔力で作られた紅い槍『スピア・ザ・グングニル』を形成しようとし、いつでも互いを攻撃し合える体勢に入り蓮子達をオドオドさせる。

すると豊姫が前に出て依姫に手を出して制する。

 

「依姫、ちょっと興奮を抑えなさい。

此度の彼らはあくまで客人、ならば我々が持て成すのは必然である筈よ」

 

「し、しかしお姉様!」

 

「依姫………口約束とは言え約束は約束、月人は約束を反故にしないと誰が言ったかしら?」

 

「………申し訳ありません」

 

「分かればよろしい」

 

豊姫は依姫を諌め、そのままレミリアと会話を始め、持って来ていた書類等に目を通させ、レミリア自身にサインをさせていた。

その中には月に行くメンバー名簿があり、其処に自身らの名を書き、豊姫が数の確認をして首を縦に振るやりとりがあった。

 

「さて、これでやっと月行きなのね。

レミリアがいきなり喧嘩腰になったから、どうなることやらと思ったわ」

 

「なら止めろよアリス」

 

「嫌よ、火傷したくないもの」

 

こんなアリスと魔理沙の会話などがその間にあり、和気藹々とした雰囲気が戻って来て蓮子とメリーはホッとし、気分を落ち着けてその時を待っていた。

 

「お待たせしたわね。

早速月に跳びますのでリラックスして下さいな」

 

「よしよし、いよいよ月に行くのね………冥界と同じく、其処には何が待つやら」

 

「非常に楽しみね、蓮子」

 

そして月に跳ぶ時間となり、蓮子とメリーは未だ見ぬ世界をこの目にする事に秘封倶楽部としての高揚感を覚え、心音が高鳴り少しだけ落ち着きがなくなって来ていた。

 

「では、カウント3で跳ばせて頂きますわ。

はい1、2………3」

 

その瞬間、蓮子とメリーの目の前は突如として暗転し、気付いた時には其処は先程の紅魔館前では無く、森も無く空は星空で、背後には海と青く輝く星が見えていた。

そう、今の一瞬で蓮子達は地球の周りを回る物………夜に浮かび太陽光を反射して輝く衛星である月へと来たのであった。

 

 

 




今回はファイト描写は無く、代わりに会話パートのみとなりました。
予定としては後1、2話程は会話パートのみになります。
最後にですが、前書きにも書きましたが最後までお付き合い頂けたら本当に嬉しい限りだと思っています。

次回もよろしくお願いします。

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