秘封先導鉄   作:”蒼龍”

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前回の話で幽々子様と妖夢が不憫だと思い、後ろめたさが拭い去れない今日この頃ですが第21話更新です(←だから何で書いたし)。
今回はタイトル通り前回の話が何故起きたか、何故ハプニングを起こしてしまったのかが分かります。
では、どうぞ。


第21話「事情説明と忠告」

メリーと幽々子のファイトが終了してから1時間が経過し、蓮子はすっかり顔色が良くなってのんびりとお茶を啜り、生きてる事は素晴らしい事だと理解してそれを噛み締めていた。

 

「ズズゥ〜……はぁ、生きてるってなんて素晴らしいのかしら。

今まで自分の命に真剣に向き合った事が無かったから分からなかったけど死ぬ500歩手前まで行って今に至った時、命は一つしかないし生きてる時には出来る事は死んだら出来なくなるって悟ったわ………ズズゥ〜………ほっ」

 

「ほっ、じゃないわよ⁉︎

え、何?

実は蓮子はピンピンしていたのに私一人が幽々子さんの言葉に惑わされて盛り上がってただけなの⁉︎

わ、私がどんな思いをしたのか分かってないの⁉︎「分かるよ、本気で怒ってくれてた事も、ありがとうメリー、でもあの凄みのあるメリーは少し慣れないかな〜と私は思ったわ」

………おバカ蓮子」

 

「………でだ、何でお前がこんな事したんだよ。

はっきり言って、お前はこんなバカな事をする奴じゃないだろ、幽々子」

 

そんな蓮子に呆れ、更に自分が柄にも無く熱くなって敵意剥き出しになったことが恥ずかしくなり顔が紅潮するも、その上で蓮子に礼を言われたり抑制する様にと言われ、顔を上げられなくなってしまった

しかし、それに対して魔理沙やブロントさん達は幽々子、及び妖夢に怒りながら見据えており、下手な事を言えば爆発する様な一触即発状態となっていた。

すると幽々子はそれに臆する事無く左腕を押さえながら口を開く。

 

「何故こんな事をしたか、それに対する問いは愚問よ魔理沙。

私は必要と思った事以外は余りやらないわ、ましてやこんな初対面の人を追い込む真似は尚更。

全ては必要なプロセスだったのよ、彼の目的を看破し且つ蓮子ちゃんやメリーちゃんが狙われる訳を探るのには。

そして、私の中の疑念は確信へと変わったわ」

 

「なら聞かせて貰おうかしら?

貴女が見抜いた物を」

 

全員が幽々子の一言を聞き、この様な事態を引き起こしてまで見抜こうとした物を彼女の口から引き出させようとする。

無論幽々子もそうするつもりだったので情報を開示し始める。

 

「先ず彼の目的はメリーちゃんの中にある『力』が目的で、蓮子ちゃんやメリーちゃんが狙われるのは間違いなくそれが原因よ」

 

「………はい?

あの、私はそんな特別な力は余り無いんですけど………強いて言うならこの『境界が見える眼』位しか」

 

「いいえ、貴女にはそれ以外にもう一つ『力』があるわ。

しかも、ヴァンガードに密接に関わる物が。

その証拠が………これよ」

 

ブロントさん達、特にメリーはその返答に疑問を感じ、更にメリー自身は力は精々その眼が境界を捉えられる位しか無いと言う(因みにブロントさん達はこの言葉にも反応している)。

しかし幽々子は確かに『力』があると断言し、その証拠と言って左腕を押さえてた右手を退かした。

すると、幽々子の浴衣の左腕部分がバックリと切れており、更に左手の人差し指である方向を示すと、そこにあったのは同じくバックリと切れた跡が残る襖と一本の柱だった。

 

「……あの、それとあれは何なの?」

 

「これはね、メリーちゃんが『時空竜 ラグナクロック・ドラゴン』でアタックした時に出来た傷跡よ。

私が血を流さない亡霊で無ければ、今頃この左腕からは止め処無く血が流れて、床に綺麗な鮮血の花が咲いていた事でしょうね」

 

「………本当に?」

 

「事実よ」

 

蓮子の問い掛けに幽々子は答えると、メリーは信じられないと言った表情を浮かべ、何が何だか分からなくなって来ていた。

だが幽々子はそれにお構い無く自分が導き出した答えを淡々と述べ始めた。

 

「そして私は、この現象からメリーちゃんの力は『ヴァンガードのユニットのアタックを実体化させる』と判断し、更に他の事だって出来ると確信したわ。

例えばそう………『惑星クレイのユニットをこちら側へと呼び寄せる』事………とか」

 

『な、何だと/何ですって⁉︎』

 

幽々子の言葉に魔理沙やブロントさん達は驚愕し、声を上げてしまった。

しかし蓮子とメリーは何故ブロントさん達が驚いたのか訳が分からず、更にクレイからユニットを呼び寄せると言う言葉も架空の物を如何に呼び寄せるのか、そもそも存在しない物をどうやって出すのか説明になっておらず、蓮子はやれやれと手を上げていた。

 

「はぁ〜幽々子さん、冗談ならもっと上手い物を出さなきゃダメでしょうに。

クレイだとかユニットとか、架空の物を実体化させるなんて………まぁ幻想郷には程度の能力があるから分からなくも無いけど、ちょっと押しが足りないんじゃありませんかな〜?」

 

「…………いや、蓮子、メリー、惑星クレイは実在するんだよ、私らの世界とは違う別次元に」

 

『………えっ⁉︎』

 

しかし、次の魔理沙の一言で蓮子達も驚いてしまう。

何と、魔理沙のは惑星クレイは別次元に存在すると言い出し、ブロントさん達も深刻な表情を浮かべてそれが確かな事実だと雄弁に物語っていた。

 

「………マジで?」

 

「ええ、そしてそれこそが私が『‘‘Я(リバース)’’ユニット』を忌むべき物と言った原因でもあるのよ。

あれは、惑星クレイがとある異次元の侵略者に侵攻を受けた際に虚無の力を打ち込まれたユニット達が、侵略者の尖兵と化した存在なの。

そして惑星クレイで起きた事柄は幻想郷、引いては地球その物に影響を与えてしまうわ、逆もまた然り。

その所為で、幻想郷にもその侵略者の力に犯されたファイター、『‘‘Я(リバース)’’ファイター』が溢れてしまったわ。

更に侵略者はクレイと地球の両方を滅ぼす気だったわ、‘‘Я(リバース)’’はその足掛かりであり手段だった。

お陰で2つの世界は虚無の力が満ちて行き、滅亡寸前まで追い込まれたけれど、ギリギリで踏み止まって侵略者を撃退したのよ。

そんな訳だからメリーちゃん、貴女の持つ力は悪用されれば非常に危険な物なの、過去に起きた事の再現やそれ以上の事態を引き起こしかねない恐ろしく大きな、ね。

分かったかしら、私が何故あんな事をしてまで確かめたのか」

 

真剣な表情の幽々子にクレイが存在し、地球と密接に影響し合う関係にある事と、蓮子とメリーが知らない過去に侵略者が攻めて来て世界滅亡寸前と言う壮大且つ深刻な事態を引き起こした事件があったと説明を受け、更にメリーの力が悪用されれば危険と断言された蓮子とメリー。

その話にメリーだけで無く神経が図太い蓮子も青ざめてしまっていた。

 

「……だが、なら何故予め私らに言わずにあんな事をしたんだ?

そこが説明が」

 

「魔理沙の言い分も分かるわ。

確かにそれだけならあの時点では確証が無い上に話せば良いって事も言えるわ。

でも貴女達、特にメリーちゃん自身がその力の大きさをしっかりと理解する必要性があったし、どんな条件でその力が発揮されるかも確かめなければならなかったわ、今後の暴発を防ぐと言う意味でも。

魔理沙達ではメリーちゃんに何か力があるって事すら気付くのに時間が掛かり、確かめるのにもまた時間が掛かるのは明白、ならば初対面で特に関係を築けていない私がそれをあっさりやれるのもまた然り。

これが私が強硬策なんて穏やかじゃない手段を取った理由よ。

それとメリーちゃんに何か力があると思ったのには彼が蓮子ちゃん達を狙っていて、且つメリーちゃんには未知のクランである〈ギアクロニクル〉を、対して蓮子ちゃんには『ブラスター・ブレード』……かつて自分が分身として苦楽を共にして来た半身とも言うべきユニットとその派生系を入れた〈ロイヤルパラディン〉を渡した事で、蓮子ちゃんにはメリーちゃんを守る為の力を与え、メリーちゃんの方が本命って予測を立てられたわ。

そしてもう1つハッキリしてる事は、蓮子ちゃん達がシャドウと呼ぶ彼は、メリーちゃんの力を何らかの目的の為に利用しようとしている………その何らかがまだこれから調べ出す所だけどね」

 

そして魔理沙の反論も予測してたと言わんばかりに幽々子は遮り、強硬策を取った理由とメリーに『力』があると予測を立てた理由をきっちり話し、その上で『シャドウ』がメリーを利用しようとしていると言う事実も言い、その場に居る全員に緊張感を持たせた。

そして蓮子は自分が持つ『ブラスター・ブレード』が『シャドウ』の分身であった事を知り、不思議なイメージの中で邂逅した彼が言っていた言葉の意味を理解し、自分の分身を切り離した『シャドウ』に対して益々ムカッ腹が立っていた。

……だが、それと同時に幽々子は一度目を伏せ、改めて蓮子とメリー、更に魔理沙達に申し訳なさで満ちた表情で見つめて言葉を紡ぎ出して行く。

 

「………でも、だからと言って私が行った事が許されると言う免罪符で無いのも事実よ。

貴女達を騙して、蓮子ちゃんに私の能力を向け、メリーちゃんを極限状態まで追い詰めてしまった事………蓮子ちゃんを死なせるつもりは毛頭無かったとは言え、とんでもない事をしてしまったわ。

本当に、申し訳ありませんでした……」

 

「私も、幽々子様の従者として、一人の半人半霊として貴女方に対する非礼をお詫び致します。

申し訳ありませんでした…」

 

そして幽々子、更に漸く口を開いた妖夢は自分がした強硬策や蓮子やメリーを追い詰めた事などを深く謝罪し、蓮子達に深く頭を下げていた。

それを見て蓮子とメリーは魔理沙達の方に向き、対して魔理沙達は当事者に幽々子達の謝罪に対する答えを任せると言い、蓮子とメリーは二人で見合ってどうするかを考え出す。

すると蓮子が直ぐに答えを出し、口にし始める。

 

「顔を上げてよ二人共。

そう言う事情があるなら私自身は気にしないし、次からはしっかりと説明してくれるならもうこの謝罪フェイズはお終い、後腐れ無く私は許しますよ」

 

「蓮子ったら………まぁ、私の方も次から説明をしてくれるなら許します」

 

「………そんなアッサリで良いの?」

 

蓮子の答えを聞いたメリーは楽観的な彼女に少々頭を抱えたが、1番被害に遭った蓮子がそれなら自分が何を言っても可笑しな方向にしか話が進まなくなると考え、次回から説明をしっかりと言う蓮子と同じ条件で幽々子と妖夢を許す。

それを聞いて魔理沙達も蓮子とメリーの意見を尊重する為に幽々子達がしでかした事は水に流す事に決め、漸く怒った顔を和らげていた。

対して幽々子と妖夢はキョトンとするが、直ぐさま蓮子とメリーが首を縦に振った為、表情が少し和らぐ。

だが幽々子は直ぐ真剣な表情に戻り、蓮子とメリーに最後の話を始める。

 

「………じゃあ、蓮子ちゃんとメリーちゃんに一つ忠告よ。

私の予測ではシャドウ、彼だけがメリーちゃんの『力』を狙っている訳が無いと思ってるわ。

恐らくこの幻想郷内には貴女達に明確な裏を持って接触する輩が存在するわ。

それらを見極める様に、また対抗出来る様にヴァンガードの実力を身に付けて欲しいわ。

幸いにもメリーちゃんの『力』はメリーちゃんの感情、特に怒りや敵意と言った負の感情で爆発する物だと今回で分かったから普通にヴァンガードをしたり、心を落ち着けさえすれば暴発はしないわ。

気を付けてね、二人共」

 

「りょうか〜い」

 

「ええ、分かったわ」

 

幽々子から一つの忠告を貰った蓮子とメリーは、シャドウ以外にも居るであろう自分らを狙う者達を撃退出来る様により一層ヴァンガードファイトの実力を高めて行こうと言う決意に至り、それを見ていた魔理沙やブロントさん達は保護者会(仮)で決めた事以外にも蓮子達を狙う輩から二人を守ろうと言う決意を固める。

そして、その話が終わった事により幽々子の言うべき事は言い尽くされ、蓮子達は冥界から家に帰る事となった。

 

「じゃあ、私達はもう帰りますね。

また何か話があるならこっちに来て、幽々子さんや妖夢ともファイトをしたいわ。

今度はあんなハプニング抜きでね…………後ついでに内藤達がいない時に呼んで下さいお願いします」

 

「あ、あはは………あ、これはお詫びの品なので持って行って下さい。

それから、私や幽々子様も皆さんとまたファイトがしたいですので、いつの日か、今度は本当のお持て成しをさせて頂きます」

 

「それじゃあ皆、また今度ね〜」

 

こうして蓮子達は帰路へと着き、白玉楼で起きたちょっとした(?)ハプニングは幕を閉じ、それぞれの家へと帰宅していくのであった。

それを見守ってた幽々子と妖夢は、全員が見えなくなる前に一礼して、見えなくなったのを見計らってそのまま白玉楼の中に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、良かったのですか?

メリーさんには、まだ言うべき事が一つあった筈ですよ?」

 

すると妖夢は足を止め、幽々子を見据えてメリーに対しての事を口にする。

それを聞いた幽々子は妖夢の方を振り向き、しかしその表情は何処か悲しげな物で、目も伏せていて妖夢は一瞬で踏んではならない地雷を踏んだと思い、気不味くなっていた。

そして幽々子は、首を横に振りながら口を開く。

 

「………言える訳が無いわ。

もし今のメリーちゃんに言えば、蓮子ちゃんとメリーちゃんは必ず悲しい結末へと真っ逆さまになってしまうわ。

私には、そんな残酷な事………出来はしないわ。

だってメリーちゃんは……………」

 

「………申し訳ありませんでした、私の配慮不足でした。

今のは私の戯言と斬り捨てて下さい」

 

幽々子の辛そうにしながら絞り出した言葉を聞き、妖夢は頭を下げて先程の発言を取り消し、そのまま中へと戻って行った。

そして、今までの会話全てを盗み聞きしていた人物二名………内藤とミストは物陰から出て、もう既に帰ってしまった蓮子達の方を向いた。

 

「……何か、話のスケールが大きくなって来ましたね、内藤さん」

 

「うん……w

まあ、これは俺様達も関わる必要があるよねwww

後で幽々子さんと妖夢タンを説得してwwwww蓮子ちゃんとメリーちゃんを守り隊を結成するぞ〜!wwwwwww

うはwwwwwwwww俺様マジでナイト様wwwwwwwwww」

 

「任せて下さい、説得と防衛任務は防衛隊時代で慣れっこですよ!」

 

そんな会話を交わした内藤とミストは幽々子と妖夢を説得するべく早速二人が居る居間へと向かい出した。

しかし、それが原因で二人が掃除をサボって話を盗み聞きしていたのがバレて追加の掃除を言い渡される事を、テンションが上がった二人はまだ知らない。

 

 




前回の話の直後の回となった今回の話で、白玉楼編は終わりとなります。
そして実は裏話として、妖夢とミストさんのファイト回も実は作ろうとしたのですが、今回は二人のファイトは見送りとなってしまいました、申し訳ありませんでした。
一応二人の使うクランも決まっていて、妖夢が〈たちかぜ〉、ミストさんが〈ノヴァグラップラー〉となっています。
………えっ、ミストさんは〈ディメンジョンポリス〉だろ?
スミマセン、ミストさんの猪突猛進っ振りの所為で〈ノヴァグラップラー〉しかイメージ出来ませんでした。

次回もよろしくお願いします。

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