秘封先導鉄   作:”蒼龍”

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3話編成の話です。
途中『あるぇ〜?』と思う展開があると思いますが、それは相手が『バカ(悪い意味で)』としてご了承下さい。


第1話「私達、ヴァンガードを知りました(前編)」

シャドウが秘封倶楽部に入ってから3日が経過した。

蓮子とメリーはシャドウの探索能力(某TRPG風に言えば目星、聞き耳等)を見て秘封倶楽部内での立場を『現地の安全確認担当』とし、蓮子又はメリーが仕入れた怪異の現地を下見し、安全を確保するとした。

無論これは以前二人で安全確認もせずに現地入りしたら痛い目に遭い掛けた前例がある為だ。

 

「………それで、今日は部長か副部長のどちらが情報を仕入れて来たんですか?」

 

「うーん、それが超絶ヒロイン体質な美少女蓮子ちゃんのセンサーをもってしても情報を手に入れられなかったんだよね〜」

 

「あら、蓮子も?

実は私の方も今日は………となると、今日は暇になるわね」

 

どうやら今日は蓮子もメリーも情報を仕入れてはおらず、予定が全く無い暇な1日になる事が確定した。

秘封倶楽部としてはこんな日は珍しい事では無く、寧ろこの3日間情報が面白い様に入った方が珍しかったりする。

 

「………そうですか。

では今日は解散しましょう。

一応こちらも目星は付けているのですが、確証を得るまで待っていて下さい」

 

「あー、うん」

 

シャドウは蓮子達に解散を促し、情報を探すと言うとそのまま昼の集合場所である喫茶店の席から立ち、その場を離れて行く。

その後ろ姿を見ていた蓮子は、ふとシャドウの大学の講義を終えた後の日常風景を全く知らない…………と言うより、知り合ったばかりで知れなかった事に気付いた。

 

「あ、そう言えば私達ってシャドウの日常風景?

みたいな奴を全く知らなかったよね、メリー?」

 

「確かに知らないわね。

其処まで気にならなかったって言えば嘘になるけど。

何せネクロノミコンなんて物騒な魔導書を見つけた人だし、余り絡まない方が良いのかなって思ってもいたし、彼の日常に干渉する程男には飢えていなかったし」

 

蓮子とメリーは互いに見合い、シャドウについて深く知らない事を確認し合う。

すると蓮子がニヤァ……と笑い、何か悪巧みをしているのが分かる。

それを察したメリーも蓮子程ではないが含みのある笑みを浮かべ、再び口を開く。

 

「これは由々しき事態だとは思いませんかね、メリーさん?」

 

「ええそうね蓮子、確かに由々しき事態ね。

私達秘封倶楽部の仲間である彼について何も知らないのは部長、副部長としてはダメだと思うわ〜。

仲間ならある程度はお互いの事を知らないといけないわ」

 

「と、言う訳で………本日はシャドウも私達もこの後は講義が無いからフリータイムだから彼の後をつけるもとい、彼が普段どんな事をしてるか知る為に彼について行くわよ‼︎

無論こっそり‼︎」

 

「OK蓮子、じゃあ早速会計済ませて行きましょうか‼︎」

 

そして二人共他人から見たらかなりウザ可愛い笑顔を見せ、お互いに人差し指を指し合い飲んでいたコーヒーの会計を済ませてシャドウの後をこっそりつけ始めた。

幸いにしてシャドウは店からそんなに離れていなかった為あっさり発見出来た。

そのシャドウの足取りだが別に愉快にスキップしてる訳で無く、かと言って落ち込んでしまったかの様な重いものでは無く至極普通な物………と、注意深く見なければそんな風に見えてしまうだろう。

しかし、蓮子とメリーは二人で怪異を暴いていた為に卓越した観察眼を持つ故に気付く。

その歩き方からは『一切の隙らしい隙が見当たらず、距離がある為推測だが足音も立てず、更にいつでもアクションを起こせる無駄の無い無駄に洗練された無駄な動きに相当する歩行』だと分かった。

これには二人も改めてシャドウは何者なのか、唯の一般人では無く逸般人に当たる人間だと思った。

そうして、そんなシャドウの後をつけて駅から電車に乗り、一つ先の駅で降りて着いた先は……………子供達が一杯居る公園だった。

 

『…………はい?』

 

逸般人の後をつけてみて辿り着いた先は唯の公園だった事に呆気に取られてしまう二人だったが、更に二人の目の前で不思議な光景が広がってしまう。

なんと…………シャドウが公園の中に入った瞬間に子供達(男女問わず、年齢層は最年小でも8、最年長が14歳程)が駆け寄り、全員が何やらカードケースを持っていた。

それが気になり、シャドウに気付かれないギリギリのラインまで近付くと子供達とシャドウの声が聞こえて来た。

 

「さあシャドウの兄ちゃん、僕とファイトだ‼︎」

 

「ダメよ、お兄ちゃんとファイトするのは私が先よ!」

 

「おいおい(笑)

此処は年長者であるこの俺が一番手だろ?www」

 

「はは、やれやれ。

僕の尊敬する人の言葉だけど、こうも大人気で誘いがあっては1りの時間も作れないな。

どれ、此処は公平にジャンケンをして順番を決めようじゃないか。

因みに後出ししたら強制的に最後に回すから其処の所はしっかりルールを守る事、いいね?」

 

『はーい!』

 

「…………ねえ、何あの………何?」

 

「………分からない、私にも何が何だか分からないわ蓮子」

 

蓮子とメリーはそんな不思議な光景を見てちょっと(?)人よりも良い頭を以ってしても状況が呑み込めず、理解出来ずにいた。

そんな蓮子とメリーだったが、子供達の中の一人が二人に気付いてしまう。

 

「あ、お姉さん達〜!

シャドウの兄ちゃんとカードファイトしたいならこっちに来なよ〜!」

 

「えっ、お姉さん………って、部長に副部長?」

 

「あ、やべ気付かれた」

 

「………気付かれたなら仕方無いわ、行くわよ蓮子」

 

子供の一人の所為で蓮子達はシャドウに気付かれてしまい、二人は渋々公園内に入りシャドウ達の方に向かった。

するとシャドウが苦笑してやれやれと言った表情を浮かべていた。

 

「お姉さん達、シャドウの兄ちゃんとファイトするんでしょ?」

 

「えっ?

いや〜お姉さん達はその〜………」

 

「部長達、僕が普段何をしてるのか気になったならそう言って下さいよ。

そしたら二人も此処に誘いましたのに」

 

蓮子達が少々戸惑っているとシャドウが苦笑しながら二人に話し掛けて来る。

その様子からは二人がこっそり付いて来てた事に少々びっくりはしているが、言葉通りの意味を持っている事が伺えた。

 

「それで、お姉ちゃん達はどんな『クラン』を使うの?

『ロイヤルパラディン』?

それとも『ジェネシス』?」

 

「いや、『エンジェルフェザー』や『ペイルムーン』もあり得るぞ?」

 

「………ねえメリー?」

 

「……うん、そうね」

 

そんな二人に対して子供達はどんなクランを使うかと聞いてきた。

すると蓮子とメリーは互いに見合い、正直に話そうと決めた。

そう、自分達はただシャドウに付いて来た(後をつけた)友人で………子供達が何を言ってるかさっぱり分からない事を。

 

「ごめん、私達何を言ってるかさっぱり分からないんだけど………」

 

「えっ、『カードファイト‼︎ヴァンガード』を知らないの?」

 

子供達の内の一人が『カードファイト‼︎ヴァンガード』の名を出し、カードケースからデッキを取り出した事により、蓮子達は漸く子供達がヴァンガードと言うカードゲームの話をしていて、シャドウはそんな子供達の相手をしてあげていた事を理解した。

そして、シャドウが子供達を纏め上げてる様子を見て子供受けが良く、世話好きだと言う事も理解した。

 

「じゃあお姉ちゃん達、ヴァンガードを知らないのにどうして来たの?」

 

「あ、あはは………いや〜、私達其処のお兄さんとお友達なんだけど、普段何してるのか分からないからちょこっと様子を見に来たって感じかな〜?」

 

「へえ〜、兄ちゃんにこんな綺麗なお姉さんの友達が居たんだ〜。

しかも二人も居るなんて、兄ちゃんやっぱりスゲー人だよ!」

 

「で、シャドウの兄ちゃんはどっちが本命なの?

まさか、ハーレムルート?」

 

「あ、あのね。

お兄ちゃんは別に凄くは無いし女性関係は…………ちょっと待ってて、少し離れるよ」

 

蓮子からそんな事を聞いた子供達はシャドウを見て凄いと言い、一部おませな発言もあり彼の周りでテンションが上がる。

それをシャドウが少し落ち着かせようと口を開く………が、何かに気付きその場から少し離れた。

子供達と蓮子達はそれを目で追い、シャドウが向かった先を見ると男の子が泣いて公園の前に居たのだ。

シャドウは話を少し聞くと、公園内に男の子を連れて戻って来る。

 

「ねえ君達、この近くにヴァンガードファイターだけど明らかに不良な年上で『負けたらレアカードを盗るアンティルールを仕掛けて来る奴』は知ってるかな?」

 

そのシャドウの口から出た言葉はレアカードを巻き上げる不良を知っているかと言う質問であり、シャドウが連れて来た男の子はそれの被害に遭ったと言う事を物語っていた。

更に言葉や態度には現れてはいないがシャドウは明らかにキレており、その不良の居場所を聞いたら殴り込みに行く気満々だと言う事をその場に居た全員が理解出来た。

 

「えっと………それならあの隣町の不良じゃない、かな?

ほら、高校生だけど物すっごく俺様不良だからSUGEEEEEしてるあの………」

 

「ああ〜、あの不良ね。

僕も兄ちゃんと会う前に『騎士王の先導者 エゼル』を全部盗られたよ」

 

「私も『全知の神器 ミネルヴァ』を盗られたの………」

 

「やっぱそいつだよな。

そいつなら隣町やこの近辺がナワバリだから探せば見つかるよ。

俺も付いて行くよ、そいつの顔分かるし」

 

「そう、ありがとうね」

 

シャドウはそう言うと泣いていた男の子を一旦なだめてから道案内を買って出た別の男の子(年長者)を連れて公園から出ようとした。

 

「あ、ちょっと待ってシャドウ!

私達も付いて行って良いかな!」

 

「構いませんよ、別段疚しい事をする訳じゃないんで」

 

そんなシャドウに付いて行こうと蓮子は声を掛けると当の本人は二つ返事でOKを出し、蓮子はそれに付いて行き始めた。

するとメリーが蓮子の後を付いて行きながら彼女に声を掛けた。

 

「蓮子、本当に付いて行く気なの?

別に私達も一緒に行かなくても良いのに」

 

「あのねメリー、私達はシャドウが普段何をしてるのか気になって来たんでしょ?

だったらこのまま付いて行くのは必然だと思うけど?」

 

「それはまあそうなんだけど…」

 

「おーいお姉さん達〜!

早く歩かないと追いてかれちゃうぞ〜!」

 

蓮子とメリーが少し話し合っていると年長者の少年が二人を呼び、早く来る様に促す。

二人はそのまま早歩きをしてシャドウ達の直ぐ後ろをに追い付き、歩調を合わせる。

それから数十分歩いていた所で年長者の少年がピタッと止まり、三人も止まり周りを見ると明らかにTHE・不良な人物が数名居た。

 

「兄ちゃんあいつ、あのグループのど真ん中で威張ってるあいつが犯人だよ!」

 

「そうか………で、大方周りに居る連中は共犯者と言った所か」

 

少年の一声で誰がカードの巻き上げを行なったかを確認したシャドウはその周りに居る不良も共犯と推察し、そのまま不良達に近付いて行く。

 

「って何の策も無しにいきなり近付くの⁉︎」

 

「策ならあるよ」

 

シャドウはメリーの心配をよそにそう答え、不良達に近付く。

それを見かねた蓮子達は年長者の少年を先に公園に戻る様に促してからシャドウの後を付いて行った。

すると不良達が三人が近付いて来る事に気が付き、因縁をつけて来る。

 

「あぁん、何だてめえら!

何こっち見てるんだ‼︎」

 

「単刀直入に言う、子供達から巻き上げたカードを全て返せ。

そうすればそっちも何もなくて済むぞ」

 

そんな因縁をつけて来た不良達にシャドウはカードの返還をド直球で要求する。

しかも何もなくて済むの下から何かをする事を仄めかし、少しだけ威圧を掛けている。

が、それに対し不良達は高笑いをしてシャドウを煽る。

 

「お、おい聞いたかよ今の!wwwwww

こいつ俺らに対して、クップハハハハハハwwwwww」

 

「こいつ、最近こっちに来たバカか?wwwwwwwww

俺らはちゃんと条件を飲んでもらってアンティしてるだけだっての!wwwwwwwwwwww

無理矢理盗った訳じゃないからこっちは悪くないってのwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

 

『(………ああ、頭の悪いTHE・不良ってそう言う………)』

 

蓮子とメリーは不良達の反応から、明らかに社会一般の常識が欠如したTHE・不良だと言うのを理解し、恐らくこちらが何を言おうと無駄であると言う事も同時に分かり、話し合いの解決は無理だと考え始めた。

するとシャドウはそんな不良達を尻目に次の『警告』を、道案内役の少年が居ない事を確認して最大限の威圧を以って不良達にする。

 

「………3度目はない、『最終警告』だ。

子供達から巻き上げたカードを全て返せ………」

 

『っ⁉︎』

 

その威圧が発せられた刹那、蓮子とメリーは後ろに無意識で後退り、不良達の一部は腰が抜けて動けなくなってしまう。

その威圧は常人が普段では感じ得ない、本当に世界の頂点に立つアスリートがスイッチを入れたかの様な凄まじい物で、この域に達するにはその道をひたすら走り続け、世界選手権にでも出場して優勝しない限り無理だろう。

そんな威圧をいきなり受けた不良達の一部、具体的に言えば主犯以外はそのままTRPGで言うSAN値チェックに失敗したかの如く悲鳴を上げ逃げ出してしまう。

 

「ヒ、ヒイイイイイ‼︎

怖いよ助けてお母ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん‼︎」

 

「あ、ああ、うああああああああ‼︎」

 

「あ、お前ら待てよおい‼︎」

 

「後はお前一人だな………今直ぐカードを返せ………」

 

主犯以外が逃げた直後シャドウが主犯の目の前に立ち、不良よりも身長が小さい為下から覗き込む様にシャドウが主犯の不良を睨んでいた(蓮子達からは位置の関係上表情が見えていない)。

すると不良は苦し紛れの笑みを浮かべ、シャドウに声を掛けた。

 

「そ、そうだ!

そんなにカードを返して欲しいなら俺とアンティルールでヴァンガードファイトしろよ!

俺が負けたら文句無しでカードを返してやるよ!

それならまだ文句は無いだろ⁉︎」

 

「………そうか、ならファイトだ。

こっちも持っているカードを全て賭ける。

これでアンティルールは成立だ」

 

主犯の不良はシャドウに対してヴァンガードファイト(アンティ有り)を要求し、シャドウはその言葉を待っていたかの様にそれに応じてリュックの中からカードケースを9個取り出し、その内の一つを使いファイトをする様だ。

しかし、蓮子とメリーはヴァンガードを知らないのでただ見ているしか出来ないが、これにシャドウが勝てば子供達のカードを取り返せると言う事は理解出来た。

しかもシャドウの方が相手のファイト要求を受けたと言う事はそれこそが最大の譲歩であり、負けても言い訳不可能の様にし、ヴァンガードファイトをさせる様に誘導したのだ。

 

「もう一度言う、こちらが勝ったら」

 

「分かってるっての!

スタンドアップ!「THE」

ヴァンガード……って、THE?」

 

そしてファイトが開始された…………が、その結果はどうなったかと言えば簡単であった。

シャドウによるノーダメージワンサイドゲーム、唯の一度もダメージを受ける事無く不良を一方的に倒したのだ。

 

「……………………………orz」

 

「カードは返して貰った。

もうこんな事はするなよ。

次やれば………その分お前が地獄を見る事になると思え」

 

シャドウは去り際に不良に更に威圧を掛け、二度と子供達からカードを巻き上げない様警告をする。

その姿はつい1時間程前に蓮子達が見た喫茶店で甘めのコーヒーを飲みながら自分達と談笑し、また子供の世話を焼くのが好きな好青年とはまた違った、少々強い姿であった。




Q:ヴァンガードでノーダメのままゲームエンドなんて出来るの?
A:滅茶苦茶確率が低く、相当運が無いと森川デッキが相手ですらダメージを受けますが、一応可能です。
それからこの作品を見ている皆様、カードゲームでアンティは稀に推奨されてましたが現在ではマジで賭博罪になりかねません、公共の場でも友達間でもやらないで下さい!
健全なカードゲームを心掛ける駄作者’’蒼龍’’とのおやくsヤルワケナイダロ○(#`・ω・)=○)Д´∵. グハッ!!

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