さて、新年1発目の話は……9が2つ並びタイトルも不穏な気配を醸し出してるかと思われますが完全な偶然です。
では、本編へどうぞ!
ファンタズムカップ本選の開会式と同時刻の永遠亭の病室、其処には人里にある寺『命蓮寺』の住職であり、ヴァンガード普及協会人里支部の支部長『聖白蓮』が、とある患者の見舞いに来て病室にあるテレビ(見た目は完全にアナログテレビ)を点け、ファンタズムカップ本選を映していた。
「あれからもう数年、貴女が眠り続けてからまたファンタズムカップ……貴女が優勝してやるんだって言っていた大会の本選がまた始まりましたよ。
さあ今年も一緒に観ましょうか、今回はどんなファイターが出てるか楽しみですね」
白蓮は眠っている患者に対し声を掛け、決して返事が返って来る事の無い会話をし、テレビに耳を傾け視線を患者とテレビの両方に向ける。
何故返事が返って来ないのか、それは患者が眠り続けているからだ…………数年間も。
とある異変でこの患者は眠り続ける事になり、関係者であった白蓮は普及協会の仕事の傍で見舞いや今回のファンタズムカップ本選をテレビに映したりなどを続け、ずっと目を覚ます時を待ち続けているのだ。
そんな白蓮の見ているテレビに豊聡耳神子が映り、マイクを渡され少し息を吸う仕草をしていた。
「……あら、音を下げましょうか」
それを見た白蓮は直様テレビの音量を下げ始め、直後に神子の口から大声が上がりテレビが少々音割れするのであった。
ファンタズムカップ本選会場、神子はマイクを持ち少し息を吸う。
会場に来ていた神霊廟以外の観戦者、出場者は何を言うのかをジッと見ていた。
そして目をキリッと鋭くしてーーーーー。
『かぁぁぁぁぁぁぁつッ!!!!』
マイクが音割れする程の大声を上げ、耳を傾けていた者達全員漏れなく酷い耳鳴りに襲われ、一部の者は思わず目から涙が滲み出てしまっていた。
「み、耳が…………」
「マイクであんな大声はアカンって……」
当然蓮子とメリー、チームファンタズマ全員やフラン達も耳に大ダメージを受けフランに至っては人間より耳が良い分更にダメージが大きくなり気絶しないながらも倒れてしまっていた。
この大声の所為で誰一人として声を上げられそうに無くなった所で神子は普通の声量で話し始める。(なお隣に居たマイクを渡した文や近場の豊姫達も耳に大ダメージを負っている)
『弱さは罪である。
過去、幻想郷は二度に渡り異世界より来りし災厄に見舞われ、滅びの危機に瀕してしまった。
その原因はひとえに弱さにある。
ファイターとしての実力も、精神も、肉体も、果ては運も、それら全てが弱き者達がこの幻想郷に数多く居た為に我々は虚無の闇へ誘われ掛けたのだ!
あれから数年、各支部はそれぞれの方針の下であの様な事態をこれ以上引き起こさぬ様にとファイター達を育成し、そしてこの大会でその成果を披露する形となる!
故にファンタズムカップ本選出場者達よ、諸君は此処まで残った選りすぐりの精鋭なのだ!
それは所属支部の代表でもある事を意味し、諸君らの如何様によっては支部の名誉に泥を塗るか栄えある名誉を掴むか、この大会はそれらが決まる二者択一の場である‼︎
故にッ‼︎
その実力を最大限にまで引き出し、真に強き者として誇りと力を以ってこの大会を勝て‼︎
そして弱き己を超克せよ、以上ッ‼︎』
神子は過去の異変……蓮子とメリーの知らない、しかし幻想郷に生きる者達に刻まれた負の記憶、それらを弱さは罪と口にしながら話し、全員の視線を集める。
そして最後に弱き己を超えろと締め、文にマイクを渡しその場を去って行った。
『え、えー……豊聡耳神子支部長、開会の言葉ありがとうございます。
続きまして〜……』
文は耳を押さえながら次へと進行し始め、蓮子とメリーはふとブロントさん達が気になり視線を移すと魔理沙、ブロントさん、麟は複雑そうな表情をし、菫子もそれに気付きブロントさん達を見ていた。
「魔理沙達、どうしたの?」
「ん、いや……何でもないよ。
気にしなくても大丈夫」
「それよりも対戦カードを気にするべきそうすべき、ちゃんとファイトしたいならそうすべき。
何故なら本選出場ファイターはぜいいんがミミズク太子の言った精鋭でもあり絶対に勝つと闘志と覚悟を燃やす奴ばかり。
心持ちが出来てないで戦う事になれば本選出場ファイター達に遅れを取るのは確定的に明らかだ。
心持ちが出来てない→ファイトで全力を出し切れない→本選出場ファイターにボコられる→初戦敗退→そのままいくえ不明。
心持ちが出来てる→ファイトで全力を尽くせる→本選出場ファイターにも十分勝てる→優勝→彼女が出来る。
ほらこんなもん」
「そうですね、どんなチームが本選に出場したのか私達はまだフランさん達以外は知りません。
が、トーナメント表が発表され、本選でのファイトが始まればどのチームも勝ち残って来た猛者としての雰囲気に変わります。
私達も気をしっかり引き締めねば勝ち残れはしないでしょうから、ブロントさんの言う通り心持ちをしっかりと致しましょう!」
魔理沙達は蓮子達に何でもないと告げた後に大会へ集中する様に促し、特にブロントさんが気を抜けばやられると言う風に全員に言い、続いて麟もブロントさんと同じ様な事を言いながら握り拳を作り軽くガッツポーズの様な仕草をする。
蓮子とメリーは予選でも文達にチーム全体で苦戦した光景を思い出し、あの時以上の激しいファイトを繰り広げる事になると不思議と本選の試合が始まる前でも予感し、両者共に1人のヴァンガードファイターとしての闘志を燃やし始め、そのままブロントさん達を見やりながら口を開く。
「つまりチーム神風以上に闘志を燃やした連中がフラン達以外に6チームも居るんでしょ?
そしてそのチーム達に勝てば幻想郷No.1チームの座に輝けるって事ね。
1ヴァンガードファイターとして燃えてくるシチュエーションじゃない!」
「そうね、私達も此処まで勝ち抜いたんだから遅れを取る理由も無い。
なら正面からぶつかって勝ち抜きましょう!(そして夢の中で見た優勝の瞬間を皆で、蓮子と一緒に迎えさせるんだ!
その為にも…………私の中の運命なんかに負けない為にも何処までも諦めずに行くんだ!)」
「お二人さん良い調子じゃん。
ブロントさんや麟もやる気MAXみたいだし、私も秘封倶楽部初代会長として負けてられないわ‼︎」
蓮子とメリー、2人の決意に当てられ菫子もまたやる気が湧き始め、チームファンタズマは全体的に本選への闘志等が十分以上となり、周りの観客達もそんな様子の蓮子達を見聞きしてこの5人が本選出場チームだと理解し、どんなファイトをするのかと期待を寄せていた。
そしてそんな闘志に当てられた者達が他にも居た……そう、直ぐ傍に居るフラン達は当然として、他にもこの近くにもう1チーム居たのだ。
「ほほーう、アンタらファンタズムカップ本選に出場したんだ!
じゃああたい達もあの時の借りを返すと同時にアンタらの手から優勝の喜びってのをもぎ取ってやろうじゃん!」
「あれ、この声は確か…………チルノ!」
その声を聞きチームファンタズマやフラン達、特に蓮子とメリーは自分達よりも上段の観客席を見ると其処には、かつて蓮子達が初クエストの際に遭遇し成り行きでファイトをした者達…………チルノ達バカルテットと呼ばれる4人と大妖精の5人、チームストームファイターが立っていた。
「おお〜、ブロントさん達も居るのか〜( ´∀`)。
宇佐見蓮子達とチームを組んだって噂は本当だったんだね〜♪」
「よう、ルーミア達」
「あれ、アンタ達は霧の湖を根城にしてるバカルテットじゃないの。
ファンタズムカップ本選を見に来たの?」
「ちっがうわ私達も出場してるんだよ吸血鬼!
後バカルテット言うな、私達のチーム名はストームファイターだ!
二度と間違ないで!」
「あ、そうなんだごめんね〜。
じゃあ今年はサクッと優勝出来るかもね、バカルテットが出場する位だし〜」
ルーミアとブロントさんが仲の良い様子を少し見せる中、フランはチルノ達を見て色々と言い、更にリグルの反論はスルーしてチルノ達が出るなら優勝は簡単だと口にする。
しかしそれを口にした瞬間世紀末な見た目の執事妖精がフランに対して口を開く。
「フランドールお嬢様、油断してはならぬ。
彼奴らは確かにか弱き妖精一行だと見えるやもしれぬが、その実身に纏いし闘気は正に死線を潜りしファイターそのもの也。
一瞬たりとも気を抜けば我ら紅魔の首を刎ねる難敵である。
故にその様な愚なる思考は即刻捨て去るべきと進言する」
どうやら執事妖精は人を見る目が備わっているらしく、チルノ達5人の強さを判別しフランの言う様なあっさり勝てる雑魚では無く、寧ろこちらを喰いかねない敵だと進言していた。
実際フランは冗談でそんな事を言いチルノ達の反応を見るつもりだったが、そのチームストームファイターは、特にチルノはその言葉には反応せず、それどころかその言葉だけはこちらを測るブラフだと気付いていると言わんばかりにチルノに闘気を纏われ、それに続きリグル達も闘気を纏い周りの空気がピリピリとし始める。
フランもこれは難敵だと言われるまでも無く察知していた。
無論それはそのやり取りを見ていた蓮子達も気付いており、最初に会った頃とは比べ物にならない強さを得ていると蓮子とメリーは固唾を飲みながら気を張るのだった。
「……まっ、今は挨拶だけだからそう気を張らなくたって良いよ。
でも試合で当たったら容赦無くファイトするから。
特に宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーン、二人には少し借りがあるしそれを返さないとさいきょーのあたいの名が廃るからな!
アンタ達二人のチームとは早めに当たりたいよ、んじゃまた後で〜」
ファンタズムカップ天界予選を通過した自分達の気に呑まれない蓮子達の様子を見てチルノは満足気にその場を去り始め、ルーミア達もそれに続いて行った。
蓮子達はチルノ達と当たれば間違い無く激戦になるとファイターとしての雰囲気などから確信し、しかし強いファイターと当たる事に高揚感を感じ腕に力が自然と入っていた。
「思わぬ強敵登場って奴だったな。
蓮子達やフラン達もあいつらに負けない様に頑張るんだぞ。
勿論お互いが戦う事になっても本気でやってくれな」
「勿論よ魔理沙!
私はファンタズムカップで優勝してお姉様達を見返してやるって野望もあるんだから蓮子達が相手でも容赦無しだよ!」
「良く分かってるじゃないフラン、それでこそヴァンガードファイターよ。『さて、最後に本選トーナメントの発表を行います!』
あ、皆トーナメントが発表されるみたいよ!
画面注目‼︎」
魔理沙は蓮子達とフラン達を労い、互いに誰と当たろうと全力を尽くすと意気込んでいた時、画面の文がトーナメント発表をすると宣言した為全員画面に注目し、どのチームと当たるのか見守り始める。
すると画面が文達の映像からトーナメント表の映像に切り替わり、一番左とその隣の名前の枠が8つの名前が認識し辛い早さで切り替わって行きそれが徐々にスピードを落として行く。
そして一番左の名枠がストップし、その隣の名枠も埋まりその二つのチーム名がズームで映された。
『第1回戦は、チームスカーレットデビルズとチーム尸解仙の対決に決まりました!
さあさあ、この調子で第2回戦の方も見て行きましょう!』
「あ、私達が1回戦だ!
相手は……多分神霊廟のチームかな?
ぬっふっふっふっふ、あいつらが何企んでるか勝って聞いてやろっと♪」
第1回戦はフランと小悪魔達のチームがファイトする事が決まり、幸いにしてチームファンタズマとは当たらなかった。
が、神霊廟のチームと思しき者達とファイトする事となり、フランは自信満々な様子でチーム尸解仙に臨もうとしていたが…………その組み合わせを見た瞬間、蓮子とメリーの脳裏に嫌な予感が過っていた。
「(何だろう……フラン達の試合が決まった瞬間嫌な予感が……)」
「(フランや小悪魔達は大丈夫かしら?
相手は神霊廟の人達みたいだし…………蓮子じゃないけど、嫌な予感がするわ……)」
蓮子達がフラン達の心配をする中、第2回戦の両名枠、左の3番目と4番目も埋まり先程と同じ演出で発表される。
『第2回戦はチームブルーゲイルと、チーム蓬莱傘に決まりました‼︎
いや〜ブルーゲイルと聞きますと矢張りあの方を連想しますね〜。
蓬莱傘は恐らく蓬莱の姫様でしょうかね〜?
では次に第3回戦を発表します!』
文が何やら誰かを脳裏に浮かべた発言をした所、会場の皆が頷き同意しており蓮子とメリーは何の事か分からず首を傾げていた。
そんな中でも試合の組み分けは進み、残り4つのチーム名がランダムに表示されて行き……遂に蓮子達が待っていたその時が訪れた。
『第3回戦、組み合わせはチームストームファイター対チームファンタズマに決まりました‼︎
チームストームファイターはファンタズムカップ前までは敗戦続きで予選は通過不可と言われてましたが、その前評価を覆し見事全勝による予選通過を果たしたダークホースです!
対するチームファンタズマは予選で私やはたてのチームを破った方々なので贔屓目に見てこの大会の注目株、期待の超新星ですよ‼︎
……コホン。
さて、第4試合は残った2つのチーム、チーム汚忍LSとチーム玉兎に自動で決まりました‼︎
以上がファンタズムカップ本選の組み合わせとなります、いや〜どの試合も目を離せそうにない素晴らしい物になりそうで司会の私も現段階で興奮が止みません!
此処でゲストの豊姫さんに……』
「決まったわね。
私達は第3回戦、チルノ達のチームと当たるわ」
「最初のクエスト中にファイトした子達と本選最初の試合で当たる……私達はあの子達と不思議な感じと縁があるのかもしれないわね」
「そして準決勝に進出すれば多分ブロントさんの因縁の対決に、上手く行けばフラン達と決勝。
うん、最高にイケイケなトーナメント表じゃん!」
「だね〜!
今から私達も楽しみだよ〜!」
蓮子達チームファンタズマは第3回戦にてチルノ達のチームと対戦する事が決まり、更にトーナメントの組み合わせにより理想的に進めばブロントさんの因縁対決の準決勝、紅魔館支部所属ファイター同士による優勝争いに
なる可能性が浮上し、菫子とフランは意気揚々にハイタッチする。
だが蓮子とメリーはそんなに上手く事が運ぶのかと感じ、改めて第1回戦の組み合わせを見ていた。
『以上により、本選開会式は終了します!
なお第1回戦はこの後30分後に行われますのでチームスカーレットデビルズは東側、チーム尸解仙は西側の選手控え室で待機して下さい!』
「あ、じゃあ控え室に行かなきゃ!
行こう小悪魔、皆!」
「はい、妹様」
「って、フランちょっと待って!」
そんな蓮子とメリーを余所に第1回戦のチームはそれぞれの控え室に待機する様にアナウンスされ、フラン達がそのまま行こうとしたが蓮子がそれにストップを掛けて振り向かせる。
「?
どうしたの蓮子?
それにメリーも何かトーナメント表が発表されてから表情硬いよ?」
「2人共、どうしたんですか?」
「えっと、何か上手く言えないんだけど、第1回戦の組み合わせを見た瞬間に何か嫌な予感がしてね〜……」
「だから、フランと小悪魔、それから妖精達も気を付けてねって…」
2人はそれぞれ嫌な予感がした事をフラン達に告げ、4人に気を付ける様にと言うとフランは笑顔を見せ、ピースサインを徐にしながら口を開く。
「2人共心配ありがと♪
確かに相手は何か企んでる連中の一員だからね、不安になるのも分かるよ。
けど大丈夫、私達は全力全開でファイトして倒してそんな不安なんか吹き飛ばすから!
だから蓮子とメリーは安心して自分の試合に集中してね〜!『トトトトッ!』」
『フラン……』
蓮子とメリーに気を遣いながらフランは笑顔で心配せず自身の試合に集中する様にと言い、そのまま走り去って行く。
その後に続いて小悪魔達も去って行き、ブロントさんと魔理沙達はその後ろ姿を見送りながら蓮子とメリーに声を掛ける。
「2り共安心するべきそうすべき。
フランも腕の立つファイターだし小悪魔はああ見えて一級の廃だ、神霊廟のTHE子供何かに遅れをとるはずがないので心配せずに見てると良いぞ。
その方がフラン達も嬉しい筈だからな」
「……うん、そうね。
紅魔館のファイトルームで良く見てたから分かるけど、フラン達が簡単に負ける訳が無い位強いからね。
じっくり観戦しましょうか!」
「でないとフラン達に怒られちゃうわね」
「へへっ、その意気だぜお二人さん!」
ブロントさんの励ましにより蓮子とメリーは直ぐに何時もの意気を取り戻し、魔理沙達も安堵した表情を見せる。
試合が始まる後20分程、それまでの間に雑談や会場の直ぐ外にある売店に行き、たこ焼き等を買って観客席に戻り間食などをしてそれぞれが思い思いの余暇時間を満喫するのであった。
だがこの時点で誰も知らない、蓮子とメリーの感じた不安感が第1試合で現実になる事など………………。
最後の最後で次回以降の展開が分かる描写をしましたが、勝負は…………なんです。
そしてそれがどんな形でお披露目になるかは次回以降のお楽しみに……。
さて、今後も投稿を続けて行きますがまだまだ不定期的なので何卒次話をお待ち下さいませ。
それでは、次回もよろしくお願い致します。
よろしければ感想、指摘などをお願い致します。
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