「ちーす」
「ようやく来たか」
攻略組の拠点となっているサロンに入ると出迎えてくれたのはヒースクリフとディアベルとクライン……それと〝隠密〟を使って隠れている数多くのプレイヤーたちだった。
何だろう、ヒースクリフとディアベルが良い笑顔なのにクラインが親の仇でも見るような目で俺を睨んでいてる辺り嫌な予感しかしない。それに〝隠密〟で隠れているプレイヤー全員からの視線がクラインと似たようなものなんだが……
そういえばクラインがここに居るって事はキリトは間に合わなかったのか?
「さて、勝手に拗らせて失踪してくれたウェーブに我々を代表してディアベルから一言伝えたい事がある」
「クッソ嫌な予感しかしないから帰って良い?」
「ダメだ。それではディアベル、どうぞ」
「ンンッ!!ウェーブ……夕べはお楽しみでしたね!!」
「ディアベルの股間にシュゥゥゥゥゥゥゥット!!!」
キリトと同じようにとても良い笑顔でとんでもない事を言って来てくれたディアベルに、キリトの時と同じように迷わずに金的を叩き込む。ディアベルは笑顔のまま天井まで飛び上がり、落下してそのまま動かなくなった。顔を見れば良い笑顔のまま白目をむいて痙攣している。
「なんでバレてやがるって原因は1人しかいねぇよなぁ!!そうだろクライィィィン!!」
「あぁそうたよ俺がバラしたさ!!シュピーゲルから聞いたのをこの場にいる全員になぁ!!」
この場にいる全員にという事は〝隠密〟で隠れている奴らも含めてという事だろう。クラインが血の涙を流しながらフィンガースナップをすると隠れている奴らがクラインと同じように血の涙を流しながら現れる。
「クソッ!!クソクソクソクソクソォォォォォォォ!!シノンちゃんがアレなのは知ってるけどあんな美少女とゴールインするだなんて普通に羨ましいぞこんちくしょうがぁッ!!アレなのは知ってるけど!!」
「爆ぜろ爆ぜろ爆ぜろ爆ぜろ爆ぜろ爆ぜろ爆ぜろ爆ぜろ爆ぜろ爆ぜろ爆ぜろ……」
「爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ……」
「ウェーブ氏、貴方は我々と同じ紳士だと信じていたのに……」
「残念だ。元とは言えど〝美少女見守り隊〟の同士を斬らねばならないとは」
「なんでフロアボスと戦う時よりも殺意に満ちてるんだよこいつら」
〝ナイトオブナイツ〟、〝血盟騎士団〟、〝風林火山〟のメンバーが爆弾や剣を片手に殺意に満ち溢れた眼差しで俺のことを睨んでいる辺り、本当に攻略組は手遅れだと思う。ヒースクリフもこの光景を見て笑っているが良く見てみると諦め半分の笑いだと分かる。
それとクライン、アレとなんで二度繰り返した。気持ちは分からないでも無いけどなんで繰り返した。
しかし……こうも錯乱されているとどうも煽りたくなってくる。遅かれ早かれ俺たちの関係性はバレるだろうし。というか2人が率先してバラしそうな気がする。それならば早いうちが良いのかもしれない。
「はぁ……じゃあ俺からは一つだけ言わせてもらおうかーーーいつからシノンだけだと錯覚していた?」
「「「「!?!?」」」」
「ま、まさか……シノンたんだけでは無くユウキたんも!?」
「ハッ!!順番で言ったらユウキの方が先なんだよ!!御馳走でした!!」
「う、嘘だ……!!」
「信じたくない……だけど2人の態度を考えるとぉぉぉ……!!」
「我らの女神が大人になられ申したか……」
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️ーーーッ!!」
真実を知って膝から崩れ落ちたのが7割くらいか。残りの3割とクラインは血涙を流しながら人としての知性を失ってしまったようでバーサーカーみたいになっていた。
「さてと」
殴りかかって来たクラインを避け、股間を蹴り上げる。
「モテモテのイケメンである俺に嫉妬する非モテのお前らの気持ちは分からないでもない」
天井スレスレまで飛び上がり、落ちてきたクラインをまた蹴り上げる。サッカーボールの代わりにクラインを使ったリフティングだ。蹴るのは股間だけど。
「だけど大人しくボコされるつもりは微塵も無い。来いよ、かかって来い。それ相応の覚悟をしてな」
グシャ、グシャとクラインからは嫌な音が聞こえてくる。顔を見れば血涙を流しながら白目をむいて泡を噴いていた。
「さぁーーー 股 間 を 出 せ い !!」
数分後に出来上がるのは血涙を流しながら白目をむいて泡を噴いて転がっているバーサーカーの死体の山。崩れ落ちた7割は青い顔して内股になって震えている。
「ふぅ、良い仕事をした」
「「「「鬼かアンタ!!」」」」
「鬼じゃない、これは鞭だ。もちろん飴も用意しているさ」
アイテムボックスから取り出したのは一冊の本。そう、〝キリトちゃん写真集そのさんっ〜恥ずかしい私の姿を見てくださいにゃぁ〜〟である。クラインの口止めをするという使命を果たせなかった以上、俺も心苦しいがこれをばら撒かないといけない。俺は悪くない。約束を守れなかったキリトが悪いんだ。
「これはとあるプレイヤーの協力により作成した写真集だ。本来なら定価10万コルで販売するつもりだったけど、お前たちにくれてやろう」
「こ、これは……!?」
「猫耳を付けた黒髪ロングの美少女だとぉ!?」
「……良い」
「こう、照れ臭そうにカメラ目線なのか何とも……」
「うぅ……ッ!!ふぅ……」
「キリトちゃん?どこかで聞いた名前のような……」
「んなことどうでも良い!!可愛いは正義だ!!」
カツラと猫耳装備のキリトの女装写真集は飛ぶ様に無くなっていく。これで攻略組でのキリトちゃんの知名度は鰻上りになったに違いない。
「「「「ウェーブ様!!ありがとうございます!!」」」」
「そう思うならそこの生ゴミ持って帰ってくれる?」
「「「「イエッサー!!」」」」
〝キリトちゃん写真集そのさんっ〜恥ずかしい私の姿を見てくださいにゃぁ〜〟を抱えて敬礼をした彼らはバーサーカーの死体を運んでサロンから立ち去って行った。残ったのは俺とヒースクリフ、そして未だに白目をむいて痙攣しているディアベルの3人だけ。
「キリト君の痴態をばら撒く様なことをして一言」
「ちょー楽しいです」
ヒースクリフの質問に答えた俺の顔は間違いなくとても良い笑顔だったと思う。
嫉妬に狂ったプレイヤーたちVSペド野郎ウェーブ。7割が真実を知って絶望、3割が股間を砕かれて再起不能。PVPで男性プレイヤーと戦う時には股間を狙った方が効率的なのは明白。
そしてさらりとばら撒かれる〝キリトちゃん写真集そのさんっ〜恥ずかしい私の姿を見てくださいにゃぁ〜〟。約束を守れなかったキリトが悪いんだから仕方がないね!!なお、入手したプレイヤーたちはキリトちゃんを女性プレイヤーだと思っている。
後、感想で思いの他紳士の皮を被った変態では無くて誠の紳士が多かったのでR版を執筆中。鳴いて喜ぶが良い。