闘争こそ、我が日常也て   作:鎌鼬

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フリータイム

 

 

予算は集まったが、直ぐに攻略に移れる訳ではない。廃棄品同然の大砲とバリスタと、それぞれの弾の仕組みの解析から始まり、攻略に必要だと思われる数を揃えるまで時間がかかる。エギルとヒースクリフの予想によれば順調に行って4日、長くても1週間でそこまで持っていけるとか。思ったよりも早いというのが攻略組共通の見解だったりする。だがそれは二十四層で狂喜乱舞しながら大砲とバリスタを解体して仕組みを解析している生産職のプレイヤーたちを見て納得した。

 

 

考えてみれば大砲とバリスタというのはSAOで使われている武器よりも比較的近代兵器に当たる。生産から改造に成功すれば、もしかしたら銃やクロスボウなどの生産も行えるかもしれないと上半身裸のもやしプレイヤーが筋肉隆々のプレイヤーに囲まれながらはしゃいでいた。

 

 

でも、生産に成功した所で使えそうなのが〝射撃〟持ちのシノンしか居なさそうなのだが。

 

 

ともあれ、これで時間が出来てしまった。〝風魔忍軍〟は〝ザ・ファフニール〟の監視に当たっているので暇ではないが、それ以外は出来た時間を使ってフロアボスに備えている。アスナはユウキとシノンを連れてレベリングに向かい、シュピーゲルはキリトとクラインと一緒にプレイヤースキルを磨いているし、ストレアは生産職のプレイヤーたちのやる気を天元突破させる為にエギルにバイトとして雇われてコスプレして応援しているらしい。

 

 

エギルに写真を渡されたのだがコスプレは薄紫の色合いのミニスカの着物だった。見えそうで見えない加減が素晴らしい。

 

 

そして俺はというと、ユウキたちとは別でレベリングを行う為に1人でフィールドに出かけていた。〝色絶ち〟や〝隠蔽〟を使う事なく堂々とタバコを咥えながらフィールドを歩いているのでモンスターに見つかり、襲われる。

 

 

「キシャァァァ!!!」

 

 

襲い掛かってくるのは二十五層でポピュラーなモンスターである2メートル台のトカゲの〝パラライズリザード〟。数は二十程で、どれもが唾を飛ばしながら口を開けて俺を貪ろうとしている。〝パラライズリザード〟は名前の通りに麻痺毒の攻撃をしてくるので直撃どころか掠るだけでも致命傷になりかねない。麻痺の耐性を上げる〝耐麻痺ポーション〟を使うか、専用の装備をしていなければ一撃食らって麻痺してそのまま殺されるなんてことも珍しくない。

 

 

だが、それも食らわなければ意味が無い。

 

 

我先にと群がる〝パラライズリザード〟の群れに敢えて飛び込む。人の形に近いモンスターは知恵があるが、動物の形のモンスターは本能だけで動く。飛び込んだ事で中心にいる俺に向かって群がる。それを空いたスペースを見つけて移動する事で回避、さらにそれと同時に攻撃を誘導してやって同士討ちさせる。すると〝パラライズリザード〟は自分の麻痺毒で麻痺してしまった。麻痺毒持ちなのに麻痺するのかと聞かれても、おかしく無いと答えるしかない。リアルでも毒持ちの動物が自分の毒で死ぬなんてことはあるのだから。

 

 

とはいえ麻痺に対する耐性はあるので放置すれば直ぐに復活する。なのでネズハに打ってもらった〝頑丈さ〟のみを優先した片手剣〝サイズブレード〟で〝パラライズリザード〟の首を切り落とす。〝頑丈さ〟のみを優先してもらった為に切れ味はメイン武器の〝妖刀・無銘〟に比べれば泣きたくなるほどに無いのだが、()()()()()()()()()()。腕の振り方、刃の入れ方、重心の移動などを意識すれば〝パラライズリザード〟の鱗ごと斬首するのは容易い。

 

 

〝パラライズリザード〟を麻痺させてから10秒で全ての〝パラライズリザード〟の斬首を完了させ、リザルト画面を流し読みして先に進む。

 

 

目的地は〝ボーデン〟から然程離れていない森の中。見通しが悪く、フィールド以上にモンスターの沸きが早いということで1人で森に向かうことは自殺行為とされているが、俺なら問題無い。

 

 

時折出てくるモンスターを斬首して、リザルト画面を流し読みしながら森の奥へ奥へと進む。森に入って1時間も歩けば木々が深くなり、射し込んでくる陽射しが少なくなって薄暗くなってくる。目的がなければ誰も入ってこないような場所、ここが俺の目的地だ。

 

 

倒れていた木に腰掛けて、アイテムボックスからシノンが作ったサンドイッチと水筒を取り出して食事を摂る。その間も警戒することは忘れずに、常に〝索敵〟と〝気配感知〟で周囲を探っている。そしてサンドイッチを全て食べて、包み紙を投げ捨てたところで地響きが聞こえてきた。

 

 

「ご馳走さんっと……」

 

 

食事を終えて、立ち上がり地響きのした方向を見れば森の奥から軽装の鎧に身を包み、曲刀と盾を持った4メートル程の人型の爬虫類、〝ジェネラル・リザードマン〟が()()現れた。

 

 

SAO内では基本的にモンスターは群れるのだが、時折1匹だけで活動しているモンスターがいる。それは1匹だけで活動しても()()()()()()()()()()()()()()()()()。そうしたモンスターは他のモンスターとの識別の為に名称付けされていて、ネームドボスと呼ばれている。ネームドボスは一層一層に四、五種類用意されていて、倒されても一定時間経てば再び沸くので経験値やアイテム的な意味で実に都合の良いモンスターだと言えた。

 

 

俺がわざわざ森の奥にまで来たのはレベリングとアイテムの為にネームドボスを狩るためだったのだが……三匹で現れるのは予想外だった。が、同時に納得も出来た。普通ならネームドボスは一匹だけだが、今の二十五層は〝ザ・ファフニール〟が活動しているので普通では無い。ネームドボスとはいえ群れなければ蹂躙されて食われるのだ。

 

 

それを防ぐ為に複数沸いたと考えられるが……少し驚いた。()()()()()()()()

 

 

〝色絶ち〟、〝隠蔽〟(よいしょっと)

 

 

〝ジェネラル・リザードマン〟たちに見つかる前に〝色絶ち〟と〝隠蔽〟による隠密で隠れ、近くにあった木の幹を足場にして飛び上がり、先頭にいた〝ジェネラル・リザードマン〟の首を〝サイズブレード〟で切り落とした。即死判定によりHPのゲージが一瞬で砕け散る。そして後ろに居た二匹の〝ジェネラル・リザードマン〟に気付かれる。

 

 

「〝色合わせ:気配同化(やっほー)〟」

 

 

〝色合わせ〟による気配集中の応用編、呼吸を合わせる事で〝ジェネラル・リザードマン〟の意識を此方から合わせる事で同一だと認識させ、俺は敵ではなくお前の一部なのだと〝ジェネラル・リザードマン〟の感覚を誤認させる。

 

 

その結果、同胞の首を切り落とした俺を〝ジェネラル・リザードマン〟は自分の一部なのだと認識し、無警戒のままに二匹とも斬首された。

 

 

「ん〜やっぱりソロでネームド狩ると経験値効率が良いな〜他の奴らには出来ないだろうけど」

 

 

〝ジェネラル・リザードマン〟三匹を倒した事でリザルト画面には大量の経験値とドロップアイテムが書かれている。普通ならネームドボスは複数人で狩ることが前提で、経験値やドロップアイテムも複数人用の量が設定されている。それを俺1人で倒したのだ。経験値もアイテムも独り占めだ。

 

 

「今が正午だから……帰り考えてあと4時間は篭って居られるな」

 

 

目的であるネームドボスは倒したがまだ時間はある。4時間も篭っていれば一、二はレベルは上がるだろうと当たりをつけて、〝ジェネラル・リザードマン〟の血の匂いに釣られてくるモンスターを待つのだった。

 

 

 





キチ波式レベリング方法、1人でネームドボスを倒す。複数人で倒すことが前提のネームドボスを1人で倒すことで経験値もドロップアイテムも独り占め出来るぞ!!なお、自分の実力を把握していないクソ雑魚ナメクジがすると死ぬ。

ネームドボス複数沸き。普通は一匹だけなんだよ!!でもフロアボスがいるから一匹だけじゃダメだと思って複数沸いたんだよ!!でもキチ波に狩られる運命だったんだよ!!


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