闘争こそ、我が日常也て   作:鎌鼬

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ニューワールド・3

 

 

「ーーーノォォォォォォォォォ!!」

 

「ちょっとこれマジでシャレになってないわよ……!!」

 

 

アイテム屋で回復ポーションとアイテムポーチを買い揃え、武器の説明も兼ねて武器屋巡りをした後でユウキとシノンを連れて街の外であるフィールドに連れ出した。そしてその結果がこれである。

 

 

「SAOがリアル重視だって話しただろ?なら動物が群れるのだって当たり前だ」

 

「予想外すぎるよぉ!!」

 

 

必死で走って逃げているユウキとシノンの背後から、青いイノシシのモンスター、フレンジーボアが()()()()()()()()()。敏捷がどっこいな為か追いつかれていないが、逆に言えば逃げる事も出来ない。そんな光景を胡座をかいて眺めていた。

 

 

動物って群れるよなと思いつきで俺が発言し、それだと茅場がやらかした結果、街や村の外ーーー安全圏外に出現する敵は大体が同種族で群れて行動している。中には単独で行動するモンスターもいるが、そういうのは基本的に()()()()()()()()()()()()()()()()。2人から視線を外せば、遠くに赤髪の男性らしき人影がフレンジーボアの群れに追いかけられているのが見える。

 

 

「今モンスターたちはアクティブ状態、まぁ戦闘態勢に入っている。その状態のモンスターに捕捉されているとさっき言ってた通りにアイテムボックスが使えなくなる。暇があれば確かめたら……って無理か」

 

「無理無理無理ィ!!」

 

「早く助けなさいよ!!」

 

「しゃーねぇなぁ……そのままこっちに走ってこい」

 

 

流石にこれ以上放置すれば〝疲労〟がつきかねないので立ち上がって腰に下げていた剣を右手で抜く。ダラリと剣を下げたまま立っていると2人が飛び込むようにして俺の背後に辿り着き、その5メートルあとにフレンジーボアが続いてきた。

 

 

一閃、二閃。脱力した状態から一気にトップスピードまで加速させて先頭で走っていたフレンジーボア二匹の右足と左足の前後を叩き斬る。四足歩行の内の片方の足が無くなった事で二匹はバランスを崩し、頭から豪快にスライディングをかます。

 

 

続く三匹目の突進を半身で躱して空の左手を添え、フレンジーボアの突進の勢いを利用して晒して左斜めに走らせ、Uターンしようとしたところに接近して一閃、頭部を切り離す。この先登場するであろう無機物モンスターならば兎も角、生物モンスターであるフレンジーボアは頭が離れれば死ぬ。フレンジーボアの10割あった体力が一瞬で削れて死んだことを証明した。

 

 

これで三匹中二匹を行動不能、一匹を倒すことに成功した。

 

 

「この様に、SAOの戦闘には〝部位欠損〟ってのがある。切れば切り落とせるし、殴れば砕ける。こんな風に足を切ってしまえば動けなくなったりとか、目を潰せば見えなくなったりする。ちなみにプレイヤーにも〝部位欠損〟はある。治療には街の医者のところに行くか上級の回復ポーションを使うかってところだな。後者は値段は張るが場所を選ばないで治療が出来る」

 

「ほへぇ〜……」

 

「流石はリアル戦闘民族の末裔ね……」

 

「戦闘民族じゃなくて戦闘一族な。民族だと日本人が丸々当てはまるから」

 

 

シノンの間違いを正していると、目の前にフレンジーボアを倒した事で得た経験値とドロップアイテムを知らせるウインドウが現れる。

 

 

「敵を倒して得られるのはドロップアイテムと経験値だけだ。ドロップアイテムは容量オーバーしない限りは自動的にアイテムボックスに突っ込まれる。ちなみにパーティを組んでいる時の経験値の割り振りは戦闘貢献度、誰がダメージを与えられたかが参照される。このイノシシは俺1人で倒したから丸々俺が経験値を総取り出来るわけだ」

 

「アイテムはどうなるの?」

 

「アイテムはランダムで配布だったはずだ。ただ特定のドロップアイテムに関しては経験値と同じ様に戦闘貢献度が参照されるはず。よし、休憩出来たな?ならあのイノシシちょっと倒してみようか」

 

「SAO初ハントだぁ!!」

 

「イノシシ、つまりは牡丹肉……!!」

 

 

ユウキが元気にハジけてるなーとか、シノンがオカンしてるなーとか思いながらアイテムポーチからタバコを出して咥え、マッチで火を着ける。リアルでも喫煙家なのでSAO内でもタバコを吸えるのは正直ありがたい。リアルとは違い健康のことや副流煙とかも考えないでいいことは素晴らしい。流石茅場である。

 

 

タバコを吸って間も無く、フレンジーボアの体力が削られてゼロになる。ユウキとシノン、そして俺の目の前にウインドウが現れるが、倒したのが2人ということで経験値は少な目でドロップアイテムは無しだった。

 

 

「2人とも、今フレンジーボアがどう見えてる?」

 

「ん?なんかこう、赤いモヤモヤがかかってる様に見えるけど?」

 

「……待って、なんで倒したのにまだ残ってるの?」

 

「ここでオプション画面を開いて、そこにある倫理コードを解除してみようか」

 

 

倫理コードとは茅場が作った安全コードで、全年齢を謳っているSAOにおける一切の規制コードを解除することが出来る。俺はログインと同時に速攻で倫理コードを解除したが、2人はまだ解除していないはずだ。

 

 

俺の指示に従い、2人はオプション画面を開いて倫理コードを解除した。そうしたことで見えたのはーーー全身がズタボロになって血を流しているフレンジーボアの死体だ。

 

 

「oh……」

 

「リアル重視って聞いてたけどここまでとは……」

 

「死体が残らないのはおかしいって口出しした漣とかいう日本が誇るイケメンが戦犯らしいぞ。でも理性が働いてくれたらしく、倫理コードを解除しないとリアル描写は省かれてさっきみたいなあやふやな感じになる」

 

「死体が残って何か意味があるの?」

 

「〝解体〟のスキルがあれば実際に解体してフレンジーボアのアイテム、肉とか皮とか骨とかを獲得出来るし、アイテムボックスに放り込んで街に持って帰って解体を頼むことが出来る。死体をそのまま放置して肉食モンスターを誘き寄せるとかも出来るな。時間が経過するとポリゴンになって消滅するけど」

 

「やり過ぎじゃない?」

 

「漣とかいうイケメンは大層ご満悦だったらしいし、茅場とかいう変態も思わずニッコリだったらしいぞ?」

 

「どうしようもないほどに手遅れだって理解したわ」

 

 

呆れた様に言いながらもシノンの目はギラギラと輝いているのを見逃さない。なんだなんだ言いつつ、シノンもSAOに魅了されているのだ。ユウキ?フレンジーボアの死体を剣で突いてる。

 

 

「そんでだ、俺たちが使ってる武器には〝耐久度〟と斬撃系の武器限定で〝切れ味〟がある。体力ゲージの下の包丁のアイコン見える?それが切れ味ゲージだ。これが赤のギザギザになったら切れ味は最悪、ほとんど鈍器と変わらない。切らないで殴るしか使えなくなる。アイテム屋で砥石が買えるからそれを使えば回復するぞ。んで〝耐久度〟は武器の説明欄に書いてあるな?武器屋に持っていけばメンテナンスしてくれて〝耐久度〟は回復する。もし〝耐久度〟がゼロになったら壊れるから気をつけろよ」

 

 

そこまで説明したところでフレンジーボアの死体がポリゴンに代わり、消滅する。どうやら肉食モンスターは来なかった様だ。

 

 

「最後にSAOの目玉とも言える〝ソードスキル〟だな」

 

 

見とけよと2人に声をかけながら刺突の構えを取ると剣が青白く光り輝き、身体が自動で動いて滑りながら刺突を放った。

 

 

「使いたいとか技名を始動モーションに組み込んだら発動する。要するに必殺技だな。まぁ俺は身体が勝手に動くのとか、技の使用後の硬直とか嫌いだから使わないけど。んで、〝ソードスキル〟も無限に使えない。SPってのがあるのが見えると思うけど〝ソードスキル〟や〝バトルスキル〟ってのはこれを使って発動してるんだよ。SPは時間経過アイテム使うか、なんかのスキル使えば回復出来るはずだったけど……悪いがそこはwikiなりを調べてくれ……って、聞いてる?」

 

「ヒャッハー!!」

 

「ここをこうして……こんな、感じで!!」

 

 

人が必死に思い出しながら説明をしている側でユウキは〝ソードスキル〟をポンポン連発し、シノンはシノンで俺の真似をしながら一挙一動を丁寧にして〝ソードスキル〟を発動させていた。

 

 

説明を聞いていないのは寂しく思うが、2人が楽しそうなのでそれでよしとしておこう。

 

 

そんなこんなでフレンジーボアやその死体に釣られてやってきた狼型のモンスターを狩っていると時刻は夕方になり、俺たちがいる草原をリアルでも中々お目にかかれないであろう立派な夕日が照らしていた。休憩がてら、3人でその夕日を眺めていると、

 

 

リーンゴーンと、街から鐘の音が聞こえてきた。

 

 




新仕様が更新されました。

・MOBは同種で群れて行動している。単独で行動しているのはそれなりに強いMOB。
・斬首などの急所を突くことで即死攻撃。敵も同様。なおそれとは別に体力ゲージはあり。
・死体は残る。倫理コードを解除するとリアルな描写になる。
・MOBからコルがドロップしない。くれるのはアイテムと経験値だけ。
・武器に耐久度の他に切れ味を追加。落ちたままだとダメージと耐久度が低下する。

そして、鐘の音は鳴り響いた。


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