闘争こそ、我が日常也て   作:鎌鼬

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クォーターポイント・2

 

 

「はぁ……一週間ぶりに文化的な生活を送れると思ったら緊急会議かよ。アインクラッド解放隊と中層プレイヤーたちは何を考えてるのやら」

 

「流石にそれはオレっちにも分からないナ。中層プレイヤーの動きまで把握している訳じゃないシ……大方、攻略組の働きを見て自分たちでも出来ると思ったんじゃないカ」

 

「アホだ、アホがいる」

 

 

〝ボーデン〟にあるディアベル率いるギルド〝ナイトオブナイツ〟の拠点を歩きながらぶつくさと文句を吐いてしまうが仕方がない。何せ今日まで隣にいるアルゴと一緒に控えめに言って地獄と評価される二十五層を端から端まで駆け回っていたのだから。肉体的な疲労はまだ我慢出来る範囲だが精神的な疲労がヤバい。どのくらいヤバいかと言うと一緒について来たユウキとストレアの目が完全に死んでいた。

 

 

日が出ている間は大凡十〜二十の間くらいで湧いてくるモンスターだが、夜になると倍以上の数で凶暴化する。夜の見張りは俺が殆どやっていたがいつ死ぬか分からない状況下でストレスが溜まりまくっているのだ。

 

 

酒が飲みたい。度数がクソ高いやつ。そして24時間眠りたい。

 

 

だが緊急会議がある為に攻略組に参加している俺と情報提供の第一人者であるアルゴは会議に出席しなければならない。流石に目が完全に死んでいたユウキとストレアは宿屋に放り込んでおいたのだが。

 

 

「ノックせずにもしもーし」

 

「ちーす」

 

 

会議室の扉を開けるとそこには二十人以上が座れるサイズの円卓が置かれていた。確かディアベルの意向で誰が上だとか決めないようにする為だとか。アーサー王の円卓から真似たのだろう。ブリテン滅んだけど。

 

 

そして俺たち以外にも会議室に来て、掃除をしている者がいた。ノースリーブの忍者ルックで、前髪で目を隠した青年だ。青年は俺に気がつくと箒で掃いていた手を止めてお辞儀をした。

 

 

「ウェーブさん、アルゴさん、お疲れ様です」

 

「よっすコー坊」

 

「こんにちわコタロー=サン」

 

 

アルゴは片手を挙げて気軽に挨拶をするが俺は合掌して顔を上げた状態でお辞儀する。挨拶は大事って古事記にも書いてある。

 

 

この忍者なのかエロゲの主人公かよく分からない青年はコタローと言って、ギルド〝風魔忍軍〟のリーダーでもある。SAOで忍者ロールでもやってるかと思えば、なんとコタローの実家はガチの忍者の家系だったらしく、例に漏れずにコタローもリアル忍者だったとか。その為なのか、隠密の一点では俺を凌駕する。そして〝風魔忍軍〟は攻略組に参加しているギルドであり、隠密を活かして新フィールドの情報収集を行なっている。

 

 

「今お茶を淹れますね?」

 

「ありがとナ」

 

「あー久しぶりの椅子だぁ……」

 

「椅子で喜ぶってどんな生活してたんですか」

 

「一週間ひたすら二十五層を駆け回ってた。寝泊まり?もちろんフィールドだよ」

 

「お陰でフロアボスの情報が集まったけどナ」

 

「……お茶とお菓子をどうぞ」

 

 

同情なのか憐れみなのか分からないがコタローが淹れたお茶と一緒に和菓子の外見のお菓子を出してくれた。手で掴んでお菓子を齧る。甘い。胡椒と塩と血の味以外の味を久しぶりに味わった気がする。

 

 

「あら、もう来てたの?」

 

「こんにちわウェーブさん、アルゴさん、コタローさん」

 

 

次にやって来たのはシノンとシュピーゲル。シノンは言うまでもなく攻略組で、シュピーゲルもAGI特化のステータスを活かしてコタローたちと一緒に情報収集で攻略組に参加している。

 

 

俺の右隣にアルゴが座っているので、シノンは自然に左隣に座ってシュピーゲルは苦笑しながらその隣に座る。

 

 

「帰っていたのだね」

 

「たった今な。お陰で休む暇も無しに会議に出席だよ」

 

 

次にやって来たのは白と赤の装飾の施された鎧を着たヒースクリフとその後ろに付き従う似た装備を着込んだアスナ。ヒースクリフは二十層から〝血盟騎士団〟という少数精鋭のギルドを立ち上げて攻略組に参加するようになった。〝血盟騎士団〟はヒースクリフの意向なのか実力重視で、能力があるのなら経歴は問わずに勧誘している。

 

 

その為なのか、人格がぶっ飛んだ奴が入ってくるとヒースクリフが愚痴っていたのを爆笑しながら肴にして酒を飲んでいた。

 

 

「ウィース」

 

「ちゃーす」

 

 

〝コート・オブ・ミッドナイト〟を着たキリトと胴当てとバンダナを着けた野武士面の男性クラインがやって来た。キリトは基本的にソロで活動しているが、流石に二十五層でソロは厳しいと考えたようでアスナやクライン、それとクラインがリーダーのギルド〝風林火山〟と一緒に最近は活動している。

 

 

コミュ障じゃないのかと言ったらソードスキルを叩き込まれそうになったので、完全に見切って避けてから煽りまくったのは良い思い出だ。

 

 

ちなみに二層で面倒を見ると言っていたユイだが戦闘には向いていなかったらしく、基本は主街区にいるらしい。流石にユイが嬉々として武器を振るってたら精神衛生上よろしくない。主に癒し的な意味で。

 

 

「波の字波の字。ユウキちゃんとストレアさんはどうしたんだよ」

 

「目が死んでたから宿屋に放り込んでおいた」

 

「目が死んでたって、お前ナニやらかしたんだ!?」

 

「何のイントネーションが気に入らないのでアイアンクロー」

 

「ぐわぁ……!!」

 

 

完全に俺が何かをした事を前提に話すクラインにイラっとしたのでアイアンクローをかます。圏内なのでダメージは無いのだが痛みはある。なので気にせず全力で、頭から軋む音が聞こえる強さで握る。

 

 

初めは抵抗していたが次第に弱々しくなり、身体が痙攣したところでクラインを空いている椅子に向かって投げ捨てる。

 

 

「ーーーみんな、よく集まってくれた」

 

 

そして最後にやって来たのはこの会議を開く事を決めたディアベル。疲れているのか顔色は悪く、どこか覇気が無い。

 

 

情報収集担当の〝風魔忍軍〟、そして攻略担当の〝ナイトオブナイツ〟〝血盟騎士団〟〝風林火山〟ソロのキリト、この場にはいないが〝アインクラッド解放隊〟。

 

 

そしてPoHと飲んで酔った勢いで作った俺がリーダーのギルド〝笑う棺桶(ラフィン・コフィン)〟。それが今アインクラッドの最前線に立つ攻略組のメンバーだった。

 

 

 






取り敢えず会議の前に現在の攻略参加メンバーの軽い紹介。ディアベルはんが生きているので〝ドラゴンナイツ〟は消滅しました。

そしてウェーブがPoHニキと飲んで酔った勢いで作ったギルドが〝笑う棺桶(ラフィン・コフィン)〟という事実。メンバーは波キチ、ユウキチ、シノノン、アルゴ、シュピ虫……シュピーゲル、ストレア、PoHニキ。波キチとPoHニキとかいう二大クレイジーが揃っている超パワーギルド。

ちなみにこのラフコフは犯罪者ギルドではありません。でもPoHニキはオレンジで元気に徘徊してる。


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