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「よいしょっと」
気の抜けた声でストレアは両手剣に分類される武器〝ツヴァイハンダー〟を振るい、〝タラン〟の街周辺のフィールドに現れる牛型のモンスター〝トレンブリング・オックス〟を横合いから両断する。それだけでは止まらずに、振るい終わった〝ツヴァイハンダー〟を強引に横に薙ぎ払い、死角から突進していた〝トレンブリング・オックス〟の顔面をかち割る。
「うん、まぁ悪くないな」
今俺はストレアを連れて2人でフィールドに出ていた。理由としてはストレアに戦い方を教える為。記憶喪失の彼女を拾い、面倒を見ると決めたからには最低限でもアインクラッドで戦えるだけの力を身につけさせなければならない。
キリトもそれを感じているのか別の場所でユイを連れて戦い方を教えている。出来る事なら汚れ系にしないで欲しい。首狩り幼女とか怖いから。
「イェーイ。どう?凄いでしょ?」
〝トレンブリング・オックス〟二頭を倒したストレアが地面に刺した〝ツヴァイハンダー〟に肘を着き、笑顔でピースしている。どうやら戦うことに対する恐怖心はない様だ。これがあった場合にはまず徹底して恐怖心を無くすところから始めなければならないから手間が省けた。
「悪くは無いだけだからな。まず武器の使い方がなってない」
「え〜?振り回したら良いんじゃ無いの?」
「それで戦えるのは最初だけだぞ。その内、力任せだけじゃ倒せない奴が出てきて殺される」
ストレアの戦い方を見せてもらったがステータスに任せて〝ツヴァイハンダー〟を力任せに振り回すだけのお粗末な物。ただ振って、モンスターにぶつけるだけ。今はそれで良いかもしれないが、ボスクラスや上層のモンスター相手だと確実に殺される戦い方だった。
「まず、使い方からだな。両手剣ってのは大剣みたいな物だ。大剣ってのは重たい剣で、力任せに振り回しても疲れるだけだ。だから、少しの力と重みで振るえ」
ストレアから〝ツヴァイハンダー〟を受け取る。軽く振るい、重さに任せて身体を泳がせ、遠心力を使ってさらに振るう。
「それに体当りってのも出来るのが強みだな」
〝ツヴァイハンダー〟を盾の様に前に構えて、そのまま地面を蹴って前に出る。両手剣は剣幅が広いので身体を隠すのに丁度良い。一々斬りかからなくてもこうやってぶつかりに行くことも出来る。
「まぁ取り敢えずは素振りからだな。1日千回も振るえば嫌でも振り方は身に着く」
「……千回?」
「YES、千回」
「……えへ」
身を屈めて上目遣いになり、ハートマークが付きそうな可愛らしいウインクをする。なるほど、千回も振るうのが嫌なんだな。気持ちは分かる。ユウキとシノンも千回振るう様に言ったら母さんから学んだのか似た様なことをして来たし。
「だがダメ……!!千回……千回なのです……!!」
「そんなぁ!!」
だがダメなのだ。甘やかしたところでツケを払う事になるのはストレア、しかもそのツケは自分の命になるのだ。だから甘やかさない。身体に覚えさせてしまえば滅多なことでは忘れなくなる。最低でも奇襲されても反射的に防ぐくらいに育てないと。ユウキとシノンにもそのレベルになるまで教育したし。
「お願い、もう少し優しくしてよぉ〜なんでもするから〜」
「……………ダメなのです!!」
絶対に甘やかさないから。
その後、延々とストレアに〝ツヴァイハンダー〟で素振りをさせて、〝トレンブリング・オックス〟が湧いてくるたびに休憩と称して相手をさせていた。最初の方はグチグチ文句を言いながら素振りをしていたが二百を超えた辺りから口数は減り、五百を超えた辺りから何も言わなくなり、七百を超えた辺りになると目から光が消えていた。
「……997……998……999……せ、ん……」
「お疲れさん」
「お、終わった〜……」
素振り千回を終えるとストレアは〝ツヴァイハンダー〟を投げ捨ててその場に俯けで倒れ込んだ。地面に当たって形を変える胸が素晴らしい。が、一応ここは圏外なので疲れたからといっても無警戒でいられるのは困る。
「休むなら座って武器は近くに置いとけ。いつ襲われても良い様にな」
「……なんでウェーブってそんなに戦い慣れてるの?考え方とか完全に戦国時代辺りの人間なんだけど」
「……まぁ、休憩がてらに身の上話でもするかね」
俺の忠告通りに身体を起こしたストレアを見て少し残念に思いながらアイテムポーチからタバコを取り出して火を着ける。ストレアの疲れが抜けるまで時間を潰すのに俺の身の上話が丁度良さそうだ。
「俺の実家が古武術を伝えててな、所謂一子相伝ってヤツで当然の様に俺もそれを教えられたんだよ。ただ教えてくれた爺さんと母さんがどこからどう考えても生まれた時代を間違えた人間でな。爺さんはいつ外国が攻め込んでも良いようにって理由で武器の一通りの使い方は勿論素手でも戦えるように教えられたし、母さんは強い奴を蹂躙するのは楽しいよね!!って言いながら格上殺しの仕方を教えてくれたし……まぁ端的に言ってキチガイなんだよなぁうちの家系って」
「成る程、そんな家系で育ったからウェーブは戦い慣れていると」
「とは言っても戦闘経験がある訳じゃないからな?爺さんと母さんに教えられて後はひたすら反復して、2人が思い出したように襲ってくるのをなんとかやり過ごしてただけだから」
あの2人は本当頭がおかしいと思う。唐突に熊鍋にするぞーって山に突撃して、素手で熊を撲殺して無傷で帰ってくるんだから。それに俺が10歳の時に熊殺してくるまで帰ってくるなよ〜と言われて着の身着のままで冬の山に放り出されたし。
3日かかったけど熊殺して帰って来た時にコタツで寝てる2人を見て灯油ブチまけて火を着けた俺は悪くない。後、全焼した焼け跡から無傷で出て来た2人は本当に人間なのか分からない。SAZANAMIっていうジャンルでも受け入れられる。
「……大変だったんだね」
「学校に通った時が一番大変だったな。誰も日本刀なんて振ったことが無いって言われて驚いたのが懐かしい……」
体育の授業の時に運動する=武器の素振りと考えてたから驚いたんだよな……
「っと、休憩は終わりな。帰るぞ」
「待って、疲れたからオンブして」
「ハイハイ」
飴と鞭はやる気を出させる上で大切な事だ。命に関わる様な事では甘やかさないがそれ以外では甘やかすというのが俺の方針。ユウキとシノンにも同じ様にやって、二週間で2人だけで戦える様になったから間違っては無いはずだ。
「フフッ……ウェーブの背中って広いね」
「そうか?比較対象が居ないからよく分からないんだが」
ストレアを背負い、背中に当たる胸の感触を堪能する。どうもストレアは防御よりも動きやすさを重視するらしく、俺と同じ様にほとんど服と変わらない装備でいるのだ。つまり、俺の背中とストレアの胸を遮る物は何も無いという事だ。
「ん?」
「何々〜?」
「アルゴからだな」
電子音でメールが来たと知り、ウインドウ画面を開いて確認すれば差出人はアルゴからだった。迷わずにタッチしてメールを開く。
『第二層のフロアボスの情報とボス部屋の確認が出来たゾ。今日の5時に〝タラン〟の街で攻略会議を行うからナ』
それは第二層攻略を知らせる物だった。
ウェーブ式戦闘レッスン。基礎を教えて後はひたすら反復学習。小難しい奥義なんて無くても基礎がしっかりしてれば殺すことが出来るんだよぉ!!
ちらりとウェーブの家族説明。戦闘一族というよりもキチガイ一族なんだよな……なお、ウェーブは常識人枠のキチガイの模様。爺さんと母さんは常識は投げ捨てている。