闘争こそ、我が日常也て   作:鎌鼬

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ワイルドライフ・3

 

 

拝啓、爺さん母さん、お元気でしょうか?正直一度死にかけるくらいが国の為になると思ってます……いや、死にかけてから完治したら余計に強くなりそうなのでそのままでいて下さい。私、不知火はデスゲームとなったSAOでウェーブと名乗り、現代では体験出来ないデッドオアアライブな生活を満喫してます。羨ましいだろ、ザマァ見ろ。

 

 

さて、届かないと分かっていながら手紙を書いているのは心の整理がしたいからです。言っておきますが詩乃や木綿季に手を出したわけでも襲われたわけでもありません。立派な大人の女性になるまでは手を出さないと誓ったわけですから。爺さんと母さんならやっと手を出したかと拍手喝采でもしそうなのですが、2人よりも常識人である事を自覚しているので流石に未成年をそういう対象として見ることは出来ません。ただし母さん、2人に性教育と称して房中術の類いを教えるのは止めろ。酔っ払った2人がガチで誘いに来て誓いが崩れそうになりました。

 

 

話を戻します。デスゲームと化したSAOで攻略メンバーという良い空気吸ってる奴らと楽しくモンスターを惨殺しまくっているのですか、その折に記憶喪失の女性を拾いました。一般的な知識は持っていて、自分に関する記憶だけを完全に無くした女性のプレイヤーネームは〝ストレア〟と言い、記憶が戻るまでその名前で良いやと記憶喪失の事を全く気にしていない精神が強い女性です。そして何よりエロいです。胸元を広げて大きな胸とそこにある黒子を強調する格好がエロいです。身体付きが詩乃や木綿季と違って成熟しているのがエロいです。天真爛漫な性格で良くスキンシップをしてきて、その時に意識しているのか無意識なのかは分かりませんが胸を押し当ててきます。柔らかかったです。羨ましいだろ爺さん。羨ましいだろ絶壁の母さん。

 

 

さて、長々と話をさせていただきましたが本題に入りたいと思います。

 

 

ーーーストレアがとってもエロくて、それに嫉妬している詩乃と木綿季を見てほのぼのとしている今が楽しくて楽しくて仕方がありません。少なくとも、リアルで息苦しさを感じながら生きていた時よりも、SAOでデッドオアアライブな生活をしている方が〝生きている〟という実感はあります。

 

 

油断したら即死にかねない地獄の様な世界ですが、俺たちはそんなアインクラッドで武器を手にして戦って(生きて)います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くはぁ〜……」

 

 

まだ微妙に残る眠気を表す様に欠伸をしながら宿屋の二階から一階へと降りる。フィールドボス〝ブルバス・バウ〟を利用した〝ウインドワスプ〟狩りから4日、アルゴから買った情報を元にネズハを連れてエクストラスキル〝体術〟を得る為に自称仙人のNPCの元で岩を叩き割ってから3日が経った。

 

 

〝ブルバス・バウ〟は〝ウインドワスプ〟を虐殺しまくって攻略メンバーたちが満足するほどのアイテムと経験値を得たのを聞いてからトドメを刺し、無事にLAボーナスである〝チャクラム〟とMVPボーナスである食料アイテム〝ブルバス・バウの霜降り肉〟を手に入れた。〝チャクラム〟はネズハに渡し、〝ブルバス・バウの霜降り肉〟は〝タラン〟の街への到達祝いで攻略メンバー全員で食べたので手元には残っていない。

 

 

エクストラスキル〝体術〟については俺は半日ほどで獲得し、ネズハは俺がアドバイスをしながらほとんど不眠不休で殴り続けた結果、2日で岩を割って無事に獲得した。今日は午後から〝伝説の勇者(レジェンド・ブレイブス)〟のメンバーたちと一緒に〝チャクラム〟の練習を兼ねたレベリングをしてくると言っていた。

 

 

今は朝の7時。NPCもプレイヤーも目を覚ましてこれから始まる一日に向けて色々と支度をしている時間帯だ。一階の食堂に降りればプレイヤーたちが今日はどこでレベリングや狩りをするのかを話し合っていて、NPCたちはここ最近であったことを話しのタネにしている。

 

 

そんな中で1人、第一層のフロアボスのLAボーナスで獲得した〝コート・オブ・ミッドナイト〟を着たキリトが、幼い少女を膝に乗せてサンドイッチを頬張っているのを見つけた。

 

 

「よっす、幼女誘拐犯のキリト君」

 

「そういうお前はロリコンだと思ったらただの女の敵のウェーブ」

 

「良し、売られた喧嘩は買うぞ?」

 

「沸点低すぎやしないか?」

 

「まぁ沸点なんてその時のテンションで変わるものだからな」

 

「あ、ウェーブさんおはようございます」

 

「おはよう、ユイちゃん」

 

 

俺を見てペコリと頭を下げて挨拶してくれた少女の名前は〝ユイ〟。3日前にフィールドで倒れていたのをキリトが見つけて〝タラン〟まで連れて来たのだが、目覚めてみたらストレアと同じ記憶喪失だったというプレイヤーだ。アルゴに事情を話して第一層の始まりの街でユイの事を知らないか探してみたが該当する人物は見つからず、済し崩しにキリトが面倒を見ることになったという経緯がある。

 

 

キリトの事を兄と慕い、キリトと良くいるアスナを姉と呼んでいる純粋無垢な少女だ。出来る事ならこのまま汚れずに育って欲しい。

 

 

「そういやアスナはどうしたんだ?姿が見えないけど」

 

「昨日からシノンとユウキと一緒に迷宮区に潜ってる。聞いた予定じゃ今日の昼には帰ってくるってさ」

 

「第一層じゃあこの世の終わりだぁみたいな雰囲気してた奴が元気になったよな」

 

「言ってやるなよ。彼女だって突然デスゲームになって精神的に追い詰められていたんだから」

 

「何の話しですか?」

 

「アスナお姉ちゃんが元気が良いって話しだよ……あ、何か食べる?お兄さん奢るよ?」

 

「お、本当か?良かったなユイ、このおじさんが甘い物奢ってくれるってさ」

 

「ヘイキリト、俺はまだ25歳だ。つまりおじさんなんて呼ばれる歳じゃない……オーケー?」

 

「ユイくらいの子供からしたら25歳だっておじさんだろうが」

 

「おじさん、ありがとうございます!!」

 

「グハッ」

 

 

幼い子供からおじさん呼ばわりされて精神的なダメージを受けてテーブルに沈む。

 

 

「うん……大丈夫……おじさんは三十路になってから……ハタチな俺はまだお兄さんだから……」

 

「お兄さん、おじさんはどうかしたんですか?」

 

「大人になるとな、肉体的に強くなれても別のところが脆くなってしまうんだよ……」

 

「む〜……難しくて分かりません……」

 

「……良し、精神補強完了。何、慌てて理解しなくてもゆっくりと分かっていけば良いさ」

 

 

ダメージから回復したついでに定食とユイ用に甘味を頼む。

 

 

「ーーーふぁ〜……おはよ〜……」

 

 

二階に続く階段からストレアの声が聞こえたのと同時に食堂が一気に静まり返った。幼い頃から鍛え続けていた直感が最大限の警報を鳴らしている。見たくない、でも見ないといけないと腹をくくり、階段を見るとーーー

 

 

「アウト〜」

 

「ブッ!?」

 

 

ーーーキャミソールに下着姿のストレアが眠たそうに眼をこすりながら階段を降りていた。キリトが噴き出した物をテーブルの上にあった空の皿でガードする。個人的には眼福なのだが、今のストレアは色んな意味でアウトな姿だった。食堂にいたプレイヤーもNPCもストレアの事をガン見していて、元気よく配膳をしていたウェイトレスはストレアの胸部装甲を見て崩れ落ちていた。

 

 

「ストレアァ!!部屋から出る時は服着ろって言っただろうが!!」

 

「え〜?着てるじゃない?」

 

「せめてズボン履いて上に何か羽織れよ……!!あぁクソ!!」

 

 

まだ完全に起きていないのか寝惚け眼なストレアを肩で担いで階段を上がる。その時にプレイヤーとNPCたちからブーイングが上がるが一睨みすると静まり返った。キリトは食べていた物が気管にでも入ったのかえずいてユイに心配されている。

 

 

ストレアはどうも羞恥心が無いらしく、全裸でなければ格好は気にしない節がある。それは普段から露出度が多い服を着ても気にしていない事から分かる。俺としては本人が気にしてないのならそれで良いが、それでも最低限の限度は守ってもらいたい。

 

 

記憶喪失でありながらデスゲームとなったこの世界で戦うと決めたストレアの面倒を俺が見ると決めたのだから。主に俺の精神的な負担を減らす為に。

 

 

「ウェーブ〜ご飯は〜?」

 

「頼んであるからはよ服着てこい……!!」

 

 

猫撫で声を出しながら食事の催促をするストレアを借りていた部屋に叩き込んで扉を閉め、深々と溜息を吐いた。

 

 

 






アインクラッドにユイとストレア参戦。早すぎる?逆に考えるんだ、早くても良いんだとね……

ストレアは露出強、でも露出狂では無いと信じている。今回?別にストレアが曝け出して興奮しているわけじゃ無いからセーフセーフ。

だけど保護者役のウェーブの精神はガンガン削れる模様。


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