闘争こそ、我が日常也て   作:鎌鼬

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ツーウィークアフター・4

 

 

ボス部屋への扉を蹴破ったのと同時に目に入ったのは真っ暗闇だったが、両側に火が灯って照らされた事でボス部屋の中が一望出来る様になる。

 

 

横が程々で、奥行きのある形状的には縦長の部屋。そしてその最奥には玉座に腰を下ろしている3メートルを超える巨体の化け物、第一層のフロアボスである〝イルファング・ザ・コボルドロード〟の姿があった。その両脇には取り巻きである番兵(センチネル)が左右に四匹ずつの計八匹が控えているのが見える。

 

 

アイテムポーチからタバコを取り出して咥え、火を着けて堂々とボス部屋に踏み入れる。今回の戦闘の目的は偵察なのだ。それ故に俺にヘイトを向けてもらわねば困る。

 

 

コボルドロードが俺を視認し、玉座に腰を下ろしたまま勢い良く吼えた。そしてそれが指示となったのか、取り巻きの番兵(センチネル)たちが各々の武器を構えてこちらに駆け出した。

 

 

「両手剣が3、両手斧が2、長槍が3」

 

 

番兵(センチネル)の武器を確認しながら慌てる事なく歩いて進む。番兵(センチネル)の数と武装は確認したからあとはコボルドロードの武器だが、それをするためには番兵(センチネル)が邪魔だ。先にこいつらから片付ける事にする。

 

 

そして一番槍のつもりなのか、長槍を持った番兵(センチネル)が一番に俺に近づきソードスキルのエフェクトを煌めかせながら突進してくる。

 

 

「ご苦労さん」

 

 

それを半歩ほど横にずれ、擦れ違いざまに番兵(センチネル)の両腕を〝アニールブレード〟で切断し、頭部を鷲掴みにする。態勢を崩された時ならまだしも、ただ放たれただけのソードスキルなど簡単に避けられる。

 

 

続いてくるのは両手剣持ちが一匹と両手斧持ちが一匹、それと長槍持ちが二匹。ソードスキルを放ってこない、ただ振るだけ突き出すだけの攻撃を、一番槍に突っ込んできた番兵(センチネル)を肉盾にして受け止める。両手剣と両手斧でカチ割られ、長槍で貫かれた肉盾(センチネル)はそのままHPをゼロにして死亡した。

 

 

そして同士討ちという事態によって番兵(センチネル)たちの集中が一瞬だけ肉盾(センチネル)に集まった瞬間、〝隠蔽〟と〝気配遮断〟によりシステム的、感覚的な隠密を実行して番兵(センチネル)から視界に入っているのに認識出来ないという状況を作り出し、

 

 

そのまま、〝アニールブレード〟の薙ぎ払いで上半身と下半身を鎧ごと切り捨てる。

 

 

無茶苦茶な切り方によって〝アニールブレード〟の切れ味と耐久値が落ちたが、まだ許容範囲内。続けてくる残りの番兵(センチネル)を始末しようとして、影が迫って来るのに気づいた。

 

 

咄嗟にその場から飛び退くと、一瞬差で俺がいた場所に玉座に座っていたはずのコボルドロードが落ちてきた。どうやら玉座からここまで跳んで来たらしい。動けるデブとか誰得だよ。

 

 

ともあれ悪い事ばかりではない。さっきのストンプにより残っていた番兵(センチネル)はコボルドロードの下敷きになって潰れたのだ。

 

 

これで、望んでいたコボルドロードの調査が出来る。

 

 

左手には盾を、右手には片手斧、そして腰には鞘に納められた刀剣らしきものをぶら下げている。アルゴの話だとあの武器はタルワールで、片手斧を手放すかHPを減らされるかすると持ち換えるらしい。

 

 

だが、それ以外にも試したい事がある。

 

 

「こいよわんちゃん、遊んでやるぜ?」

 

 

燃え尽きたタバコを吐き捨てて、伝わるはずのない挑発をしながら空いた片手で手招きする。

 

 

その動作で舐められていることを理解したのか、コボルドロードはけたたましい咆哮を上げて片手斧を振りかぶり、薙ぎ払いを仕掛けて来た。このままの軌道だと俺の胴体に当たるそれを完全に見切り、〝アニールブレード〟を合流させてコボルドロードの力のみを使い、軌道だけを書き換える。その結果、片手斧はそのまま通り過ぎて空振りとなる。

 

 

コボルドロードの顔が唖然としたものになったが、それも一瞬。今度は振り上げてからの振り下ろし。それは受けずにスライディングでコボルドロードの股下を潜り抜けて背後を取り、コボルドロードの尻尾を切り捨てる。

 

 

「部位欠損は有効」

 

 

部位欠損が通じることを確認し、尻尾を切られた痛みでのたうち回るコボルドロードの身体を駆け上がって肩に辿り着き、太い首を両断する勢いで叩き斬る。

 

 

刃は通った。首は切れた。だが落ちない。切られた事で噴水の様に出て来る血を浴びない様に飛び退く。

 

 

「即死は無効っと」

 

 

流石にボスクラスになるとザコモンスターと違い即死級の攻撃は発動しないらしい。だが三本あったHPのゲージが丸々一本分削れていることからクリティカル扱いにはなる様だ。

 

 

そしてここで、コボルドロードが目を血走らせながら片手斧を投げ捨てて腰から剣を抜いた。アルゴの話だとタルワールだという事だったがあの形は……

 

 

「刀じゃんか!!」

 

 

個人的に馴染みのある刀剣類の刀だった。無論サイズとしてはコボルドロードの片手にちょうど収まるサイズで普通の刀よりもデカイのだが、刀がSAOに実装されていると分かって少し嬉しくなる。

 

 

片手剣も悪くないのだが、やはり使い慣れている日本刀の方が良いのだ。

 

 

「やっぱり変更されてたカ……ナミっち!!知りたいことは知れたから引いていいゾ!!」

 

「あいよ〜」

 

 

水を差されたと少し残念な気分になりながらアルゴからの指示に従いボス部屋の入り口に向かう。振り向けば新たに湧き出した番兵(センチネル)たちと一緒にコボルドロードが刀を振り回しながら追って来ている。速度的にはコボルドロードの方が早く、このままだと入り口に戻るよりも先に追いつかれてしまう。

 

 

なので速度を緩めてわざと追いつかれて刀の一撃を〝アニールブレード〟で受け止め、吹き飛ばされて入り口まで到着する。

 

 

「次はその首切り落としてやるから首洗って待っとけよ」

 

 

血走った目で迫り来るコボルドロードに一方的な斬首宣言をしてボス部屋から出て、ゆっくりと勿体ぶるようにして扉を閉めてやる。完全に閉ざされた扉の奥からは、無念そうなコボルドロードの叫び声が響いていた。

 

 

 





偵察完了。

取り巻きの数が増えてる?取り巻きが三匹だけとか少ないでしょ?本当は二十匹くらいにしたかったけど流石にそれは多すぎるから辞めた。

フロアボスには部位欠損は通じるけど即死攻撃は通じないって事で。じゃないとフロアボスも即死しちゃうからね。代わりにクリティカル扱いで大ダメージという事で。


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