ポケモン不思議のダンジョン 空の外伝   作:チッキ

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(この時間に投稿される理由は、ポケモンが好きな貴方は知っている)


第21話 調査団

 なだらかな洞窟を抜けて、歩くこと、数十分。活気のある町に辿り着いた。行き交うポケモンそれぞれが様々な表情をしている。

 

「あ、そこのお姉さん。ここ、ワイワイタウンですか?」

「お姉さんって、やあねぇ!そうよ、ここはワイワイタウンよ」

 

 いつのまにかビートが通りかかったブルーに対して、おべっかを使っていた。

 

「キミたちはここは初めて?子どもだけでいると迷うから、必ず親といるのよ」

「あ、はい」

 

 ビートの笑顔が引きつっている。そうか、私達は世間一般では子どもと呼ばれるらしい。……あまり納得のいく話ではないけど。

 

「目的地のワイワイタウンに着いたけどさ、これからどうするの?ワイワイタウンで何かするの?」

「いえ、私が師匠から受けた言葉はワイワイタウンに向かえって事だけなので……詳しい事はあまり……」

「そっかぁ、じゃあワイワイタウンで過ごしてたら何か起きるかもしれないね〜」

 

 随分お気楽な様子のビートに私はいつの間にか握り拳が緩むのを感じた。私は、どうやららしくもなく心配になっていたらしい。

 

「こういう時は、とりあえず散策だよ。探していけば、何か見つかるかもしれないし、それじゃあ、しゅっぱーつ!」

 

 なんだかテンションが高いビートは振り向いた瞬間に動きを止めた。

 

「……どうしました、マメパトが豆鉄砲喰らったような顔をして」

「見知らぬ地で、さあどうしようかと迷いながらも、心中に過ぎる不安や心配を振り切り、思い切って一歩目を踏み出した瞬間に、見知ってるポケモンを見かけました」

「…………それは丁寧に御説明ありがとうございます」

 

 私達の目線の先には、腕を組んでニヤケ顔でこちらを見ているジラーチの姿があった。私はなんだか無性にその巫山戯た面にエナジーボールを当てたい気分になった。

 

「……どうする、そのまま通り過ぎる?」

「いえ、あれ絶対強制エンカウントキャラです。諦めて話しかけましょう」

 

 諦めてジラーチに近付くと、ジラーチは待ってましたかと言うように口角を高く吊り上げた。

 

「君達がここに現れる事は、僕(天才)には容易に想像出来た事だよ!」

「相変わらず鬱陶しいな、こいつ」

 

 ビートの口調が素に……いや、元々の弱そうな口調の方が素だから、ビートの口調が作られたものになった。

 

「着飾る事はないよ、君の罪や咎は僕は全部知っているし」

「……………ッ!」

「……ちょっと、ビート君だけじゃなくて、リフルちゃんもそんなに殺意を露わにしなくていいじゃん。ちょっとブルっちゃいそうだよ」

「…………流石、幻と呼ばれるだけありますね。ビートの記憶を戻したのも貴方ですか?」

「おや、僕が記憶を戻した証拠はあるのかい?しかも、そんな伏線なんてどこにもないだろ?」

「伏線?変な事を言いますね、ただまぁ…貴方ならやると思っただけです」

「……ま、正解か不正解かはともあれ、ビート君の犯した罪は僕は一切公言しないよ、信じてもらえるかわからないし」

「貴方みたいな幻のポケモンがここにいるのも些かおかしい話ですしね」

「あ、そうだよね。ラッチーはどうしてここにいるの?」

 

 切り替えの早いビートはジラーチをラッチーと呼んで、ジラーチに問いかけた。その言葉を聞いたジラーチは懐かしむ顔をしながら答えた。

 

「…………その呼ばれ方久しぶりだなぁ。ともかく、お答えするよ。僕は調査団のメンバーの1匹なのさ!君達に例の力を分け与えた後、調査団の団長がやってきてね、その彼の願いが“調査団のメンバーになって欲しい”だったからその願いを叶えてあげただけさ!」

「へぇ、調査団。そういえば、リフルも前に軽くだけど調査団の事を話してくれた事があるよね?知ってるの?」

「よくもまあ覚えてますね……はい、知ってますよ。ただ、私が知っているのは存在とその活動内容でメンバーが誰だかは知りません」

「そうそう!そのメンバーの話なんだけどね……」

 

 やっと本題に入れたというような顔でジラーチは続けた。

 

「……君達も調査団のメンバーになってくれないかな?」

 

▼▽▼

 

 曰く、本来調査団のメンバーは入れ替わりが激しい組織では無いが、団長が変わった際にいざこざがあったらしく、大半の調査団のメンバーが離反してしまったらしい。

 

「現在、僕と団長を含めてメンバーの数は4匹!圧倒的ポケモン不足!メンバーから僕が新しいポケモンを連れてくるよう毎日の様にかかる圧力!だけど僕にそんなコネクションは無い!天才の僕でも不眠!……という事で、君達がメンバーになってくれたら嬉しいな」

「僕がいいえって選んだらどうなるんだろう……」

「ビート君、君性格悪いね?僕がこんなにも頭を下げて頼んでいるんだよ?」

 

 今までに一度も頭は下げている様子は無かったけど。

 

「……はぁ、住処提供で手を打ちますよ」

「うん!大丈夫、すごい大丈夫!前のメンバーが使ってた中古住処を選び放題!」

「あ、ごめんなさい。やっぱり断ってもいいでしょうか?」

「待って待って!ちゃんと掃除するから!頼むよ!本当に寝れてないんだよ!!」

 

 巫山戯た調子のジラーチだが、どうからこの件は本当に真剣らしく、真面目な顔で懇願している。

 

「はぁ……わかりましたよ、住処に定期的なハウスクリーニングで手打ちにしましょう」

「あれ!?なんか増えてない!?要求飲んだら僕の仕事が1つ減って1つ増えちゃう!」

「あ、じゃあ……」

「のむ!のむから、その要求!」

 

 交渉は見事成立し、私達は調査団の建物へ向かう事になった。

 調査団の建物に到着し、入り口から入ると、本を片手に彷徨いていたクチートが出迎えた。

 

「む……どうやら、しっかり見つけてきた様だな」

「そうだよ、僕は天才だからね!」

 

 どうやらこのクチートは調査団のメンバーの1匹らしい。クチートは私達をジロリと見ると顎に手を当て首をかしげた。

 

「しかし、随分と若い奴らだな。まだ子どもじゃないか」

「この地方に来てからよく子ども扱いされるなぁ……」

「それは仕方ないよ、この大陸のポケモンは子どもは未熟者だと捉えてる節があるからね。でも、彼らの実力は僕が保証するよ!」

「ふむ、それならまぁ安心だろう。私の名前はクチート、考古学者をやっている」

 

 成る程、道理で古びた本を持っている訳だ。

 

「まあ、これから大変だろうがよろしく頼む」

「はい、お願いします!チークさん!」

「チ、チーク……?ま、まぁ…悪くは無いな……」

 

 私は本当に認めたポケモンにしかあだ名をつけないのだが、ビートはどうやら出会うポケモン全てに名付けているらしい。私のお株を奪われた気分だ。

 クチートと別れ、ジラーチに連れられ団長がいるという団長室に向かった。

 

「ダンチョーーー!新メンバー連れて来たよーーー!」

「あら、ジラーチがちゃんと仕事したのね」

「おや、ジラーチくん」

 

 どうやら話をしていたらしく、向かい合っていたデンリュウとデデンネは首をこちらに向けた。

 

「これはこれは、なかなか若くて頼もしそうな者を連れて来ましたね。私の名前はデンリュウ、団長と呼んでください」

「私はデデンネ、皆の連絡係をしてるわ!」

「連絡係……ですか?」

「ええ、私は電波を使ってメッセージの送受信が出来るの」

『こんな風に、ね』

 

 突然、頭の中に言葉が聞こえた。デデンネの方を向くと、ウインクをした。成る程、確かに連絡係に便利な能力だ。

 

「ニャビーの方がビート君で、ツタージャの彼女がリフルちゃんだよ、彼らには住処を提供する約束で……」

「定期的なハウスクリーニング」

「……住処と定期的なハウスクリーニングを提供する約束でメンバーになってもらったんだ」

「意外と強かなのね、リフルちゃんは」

 

 デデンネの彼女は楽しそうに笑っている。

 

「さて、早速ですが貴方達はまずは調査団メンバーのスカウトマンになってもらいます」

「スカウトマン、ですか?」

「はい、スカウトマン。ご覧の通り、現在調査団のメンバーは少なく、調査が滞っております。その為に、調査を担当するメンバーをスカウトしてきてほしいのです」

「僕達だけじゃ、さすがに調査は無理かもしれないしね……」

「はい、先当たっては水中担当、地中担当、空担当と3匹お願いしたいです」

「その適性を見極めて、尚且つ上手くスカウトするっていう仕事ですね。ふむ、やりがいがある」

「それでは、これからお願いしますね。さて、新メンバーの加入を祝って、歓迎会の意を込めた食事でもしましょう。食事の準備は出来てますか?」

「何言ってるの、団長。昨日、団長が忙しくて僕と食事当番交換したじゃん」

 

 ジラーチの言葉にデンリュウはやれやれと頭を振った。

 

「これとしたことが、私のあんぽんたん」

「……給仕担当もスカウトした方がいいんじゃないの?」

 

 ビートの言葉に私は心ながら大きく頷いたのであった。

 

 

 

 




水の都の護神は名作。

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