このすばIF~カズマがチートを選んだら~   作:にゃるめす

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愛の身長を175にしました。


第6話

「それじゃあ愛さん。冒険者カードの作製をしましょうか」

 

「冒険者・・・・カード?」

 何を言ってるのかわからない、という風に小首をかしげる愛さん。

 そういえば俺のようにネトゲ廃人でもない、普通にゲームやアニメが好きな愛さんにとって、ファンタジーとはなんとなくイメージできるくらいのものなのだろう。

 もしかすると、冒険者という単語も初めてかもしれない。

 そう思い、この世界について明るいであろうアクア(なんかコップ置き場のコップで遊び始めた)は放っておいて、俺は冒険者カードやこの世界について、いろいろと愛さんに説明することにした。

 

 

☆☆☆☆

 

「カエルは縦横2メーターを超えます」

 

「からかっているの?」

 

「ならよかったんですけどね。」

 

「・・・・本当に?」

 

「マジです。」

 その真剣な表情から嘘ではないだろう、あり得ない事実に愕然とする。

 冒険者や冒険者カードについてカズマ君に教えてもらった私は、次にこの世界の常識について教えてもらっていた。

 主な信教はエリス教で、エリスは国の通貨になっていること。

 初級より強い魔法は、街中で撃ってはいけないこと。

 このあたり、ルールや信教の部分は、特に抵抗もなく聞けていたのだが・・・

 

「い、いやカエルでしょ?あの小っちゃくてゲロゲロな・・・」

 

「違います。大っきくてベロベロです。ついでをいえば、舌巻きつけて丸呑みです。」

 

「・・・・・・そ、そう。・・・・・・やだなー。」

 生物に関する話になった途端、抵抗アリアリである。

 アホな子供が考えたようなめちゃくちゃな設定が、そのまま現実になった感じだ。

 悪い夢でも見てるのかと何度も頬をつねってみるが、

 

「・・・・痛い。」

 これが現実なのだとしか分からない。

 いったい誰得なのよ、そんなカエル。

 天敵の蛇はおろか、動物すら食べられそうだ。

 まさかこの世界では、カエル>動物、という式が成り立っているの?

 戸惑う私に、カズマ君は悲しげに

 

「バナナは川を泳いで、サンマは畑で育つんですよ。」

 ・・・・あれれー、おかしいなー。

 二つの主語が反対になってるぞーwww

 

「カズマ君、主語が「これであってます。」」

 やだそんなの。

 

「ねえカズマ君、なんでバナナは頑張って泳ぎ始めたの?木から養分貰って満足してたじゃない。そしてどうしてサンマは怠けて土の中に潜ったの?彼こそ頑張って泳ぐべきだと思うのよ、私」

 

「愛さん。サンマは土の中に潜ったんじゃなくて、茎から咲くことを選んだんです。」

 さく?策・・じゃないし・・作も違う。

 まさか・・・・咲く!?

 は!?

 

「ねえカズマ君、常識ってどこにいったの?職務放棄してると思うんだけど、私。常識にちゃんと仕事してって、言ってくれない?」

 仕事って大事。すごく大事。

 ニートじゃ社会が回らない。

 働いてくれないと困る。

 ニート、ダメ、ゼッタイ!

 

「ここの常識はちゃんと働いていますよ。これで平常運転です。」

 前言撤回!

 ここの常識なんてリストラよ!!

 ニートになってしまえ!!!

 ・・・はあ、それにしても

 

「一体何なのこの世界。ホントふざけてるのね。」

 

「そうなんですよ!わかりますよね!俺はただ普通に冒険して、普通に戦って、普通に恋愛したいだけなのになんでこんな無駄設定が多いんですかね!?それにほら見てください、この光景、なんかおかしくないですか?」

 そういってカズマ君は、向こうで食事をしている人たちを指さす。

 私は急にテンションが高くなったカズマ君に少し引きながら、それと同時、カズマ君が取り乱し始めたせいか、代わりに少し落ち着いて、その光景を見る。

 すると、

 

「なんか、キャベツだらけ?」

 皿に盛られた野菜炒めは、基本緑色。そして緑のほとんどがキャベツ。

 他にもキャベツの千切りに肉のキャベツ巻き、キャベツのスープ。

 何もかもがキャベツだった。

 

「そうなんですよ!実は今日ーーーーーー」

 要約すると、今日はキャベツの収穫祭で、空飛ぶキャベツたちを捕まえた。

 しかも経験値が豊富で一つ一つの値段が高く、ジャイアントトード討伐より稼ぎやすい。

 その上、不思議なくらい旨いところが腹が立つらしい。

 よほど気に食わなかったのか、それはもう熱演してくれた。

 キャベツが空を飛ぶとか聞き捨てならないセリフを言っていて、どういうことか聞こうとしたのだが、それを聞く前に今度はまた別な愚痴を言われた。

 相当ストレスが溜まっていたのだろう。

 やれ、仲間が問題児だ。やれ、仲間が爆裂娘だ。やれ、仲間がドМの変態女だ。など、まくしたてるように言ってきた。

 そんな人たちとこれから寝食を共にすることに一抹以上の不安を覚えながらも、アクアよりはずっと良いといっていたため、ひとまずその心配は直接会ってからすることにした

 

「・・・すいません。愚痴につき合わせちゃって」

 いいたいことを言い切ったのか、落ち着いた口調になるカズマ君。

 

「別にいいのよ、これから厄介になるんだし。」

 なんとなく今まで苦労してきたのが分かってしまったため、愚痴もなんとなく許せた。

 

 

「そうですか、ありがとうございます」

 カズマ君はほっとしたように、安堵の顔を見せる

 

「じゃあ、そろそろ冒険者登録に行かない?」

 これ以上摩訶不思議生物たちの話を聞くと、頭がおかしくなりそう。

 そう伝えるとカズマ君は

 

「そうですね」

 と返してくれた。

 そうして私たちは、大量のコップでドラゴンを完成させていた(呆れるくらいにアートな)アクアを連れて、受付に行くことにした。

 

☆☆☆☆

  

 アクアがアークプリーストというすごい職業になり、ギルドの方々から激励を受けた後。

 私はステータスカードに記載されたなれる職業一覧の中で、妙なものを発見する。

 それは、

 

「キックランナー?」

 すると受付嬢のルナさんは、驚いた表情を見せた。

 

「キックランナーといいましたか、愛さん?」

 

「え、あ、はい。」

 

「キックランナーは、敏捷性だけならほかのどんな職業より優れているんです。その分、高い敏捷性と生命力、筋力もある程度要求されるため、滅多になれる人はいないんですよ」

 そうなんだ。

 まあ、確かに高校生になってからは、毎日毎日走ることとトレーニングばかりやっていたから、キックランナーに必要とされる項目は、高くなっていて当然か。

 ・・・・・女性としてあまり喜ばしくないな、これ。

 

「じゃあ、キックランナーについて詳しい説明をしてくれますか?」

 とりあえず聞いておく。

 

「はい。先ほども説明したとおり、キックランナーはとにかく速いです。戦い方はその速度を活かして敵の攻撃を躱しながら、走る勢いを乗せた美しい蹴りによって敵を打ち倒すのが一般的です。武器は足にメタルブーツ、予備に短剣を持っておくのがセオリーですね。」

 なるほど。

 結構かっこいいかも。

 

「取得すべきスキルは{流走}と{星走}というスキルですね。{流走}は文字通り、流れるような美しい走りができるようになるスキルです。走ることによる体への負担がちいさくなるため、スタミナ切れの心配が大きく減ります。{星走}は、しばらくの間敏捷性を大きく上げるスキルです。このスキルを使っている間、足が少し輝いて、星のように美しくなるため”女性として”も嬉しいスキルですよ。」

 ・・・いいっ!

 これいいっ!!

 流れるように走り、華麗に攻撃を避け、輝く足で美しく決める。

 なんて良いんだろう、キックランナー。

 ワキガ対策の努力が、こんなところで、こんな形でむくわれるなんて!!

 

「これにしますっ!これがいいです!」

 

「はい。分かりました。キックランナー・・・・・っと。では愛さん。ギルド職員として、あなたの未来に栄光があることを期待してます。」

 こうして私は、キックランナーとして第二の生を受けることになった!


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