このすばIF~カズマがチートを選んだら~   作:にゃるめす

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遅くなってごめんなさい!


第5話

「・・・・・納得いかない。」

 パーティー結成のあの日から数日。

 クリスが用があってしばらく抜けると言った日の明後日の朝。

俺は今、めぐみんとダクネスとテーブルを囲み、ギルドの酒場で旨すぎるキャベツの野菜炒めを食べている。

 なぜこれを食べているのかと言えば、昨日はキャベツの収穫祭だったからだ。

 キャベツの収穫祭と言っても、畑から収穫するのではない。

 捕獲するのだ。

 ・・・・・まさに異世界クオリティーと言うべきか、この世界のキャベツは飛ぶ事が可能で、年に一度ありえないほどの大群でもって、誰もいない辺境の地目指して空翔ける。

そしてその道中、街を通り過ぎるその日を収穫祭というらしいのだ

・・・・・・空飛んでまで食われたくないのなら、どっかで隠れてろよ。

 

「カズマカズマ、見てください!レベルが上がりました!」

そんなことを考えていると、キャベツを食べながら冒険者カードを見ていためぐみんが、向かいの席から自慢げに言ってくる。

 

「嬉しいのは分かるが、飯食いながら経験値溜まるのを見るのやめろ」

まったく、いくらキャベツが経験値豊富とはいえ、食事のマナーくらい守ってほしい。

でも本当にうれしそうな笑顔をするものだから、あんまり強い口調にもなれなかった。

・・・・強い口調?・・・・・そういえば

 

「そういえばダクネスさんや、昨日は随分とお楽しみでしたね。見ましたよ、キャベツの捕獲そっちのけで、キャベツの大群の体当たりを、デコイまで使用して受けておられて・・・・・ちゃんと稼げたんだろうな」

俺はドスの利いた声でダクネスに聞く。

パーティーメンバーにはそれぞれ一長一短がありどんな時に誰が役に立つか分からないのだから、クエストの報酬は参加したメンバーで完全折半にすべきと言うクリスの考えのもと、うちのパーティーでは報酬の完全折半制がとられている。

つまり収穫祭の際、思いっきり欲望に走っていたコイツが稼げてないと、俺の報酬が大きく減ってしまうのだ。

 

「だ、大丈夫だ!その・・・・結果的にたくさんの冒険者をキャベツの体当たりから助けていて、そのお礼にと、助けた冒険者たちから、幾ばくかの謝礼金を貰えたのだ。だからそこそこ稼ぐことは出来たと思うぞ。」

 無論、初めは謝礼金を受け取ろうとせず断ったのだが、どうしてもと皆が言って仕方なく受け取ったのだと、ダクネスは騎士道精神からかそう付け加える。

 と言うかもし受け取ってなかったら、俺はスティールでこいつの冒険者カードを奪い、筋力と耐久力の具体的な数値をギルドの皆に広めていただろう。

 

 「あの、すいません。カズマがそんなことを聞いているのは、自身の報酬が減ってしまうことを恐れているからですよね。」

 そんなことを思っていると、めぐみんが俺に聞いてきた。

 

「当たり前だろ?うちのパーティーは完全折半制だからな。」

 

「でもそれは、パーティーとして受けた場合の話ですよ。今回は緊急クエストでしたから、パーティーとしてではなく各自個人で受けたようなものなので、折半の対象にはならないはずです。」

 あ、そういえばそうだ。

 今回はパーティーメンバーで協力してキャベツの捕獲をした訳ではない。

 ならば今回自分で稼いだ金は、そのまま自分の物になるのが筋だ。

 

「・・・・なるほど。ありがとうめぐみん!お前のおかげで大金が手に入ったよ!」

 

「?・・・・カズマはそんなに稼げたのですか、まあ口ぶりから察するに相当な額なのでしょうけど。」

 

「おう、400万ちょいだ。」

 

「「よ、400万!?」」

 2人は目を大きく見開き、身をずいっとこちらに寄せてくる・・・・というか、

 

「あの、・・・・恥ずかしいから元の位置に戻ってくれよ。その・・・・・近い。」

 

「あ、・・・すまない。」

「えっと・・・わかりました。」

 俺の言葉に、2人は顔を赤らめて元の位置に戻る。

 仲間になり、クエストの最中に肌が触れ合うことはそれなりにあった。

 めぐみんに関してなら、爆裂魔法の後は必ずおんぶするほどだし、年も13で俺の恋愛対象の外だ。

 なのに何故、こうしたふとした瞬間に意識してしまうのだろうか?

 

「「「・・・・・・」」」

 無言が続く。

 前にギルド職員達に怒られたそれとは少し違う、どこか甘い無言に2人も俺もどうすればいいか分からない。

 しかしその無言は、

 

「あ――――っ!ヒキニート!」

 ・・・・・何故かいるクソ女神によってぶち壊された。

 しかもやたら背が高い、日本人らしき黒髪ボブ美女を連れて。

 

 

 

 

 

 「相川 愛さん、ようこそ死後の世界へ。あなたはつい先ほど、不幸にも亡くなりました。短い生でしたが、貴方は亡くなってしまったのです。」

 真っ白な部屋の中、私は唐突にそんなことを告げられた。

 

 突然のことで何が何だかわからない。

 部屋の中には小さな事務机と椅子があるだけで、他には何もない。

 ある・・・・いや、居るとすれば私の人生終了を告げてきた、椅子に座ってる女の子くらいだ。

 

 もし女神と言うものが存在するのなら、きっと目の前の相手のことを言うのだろう。

 テレビで見るアイドルの可愛らしさとは全く異なる、人間離れした美貌。

 淡くやわらかな印象を与える透き通った水色の長い髪。

 年は私より1つ下くらいだろうか?

 出過ぎず、足りな過ぎずの完璧な体は、淡い紫色の、俗に羽衣と呼ばれるゆったりとした服に包まれている。

 その美少女は、髪と同色の透き通った瞳をパチパチさせ、状況がつかめず固まったままの私をじっと見ていた。

 ・・・・・私は、先ほどまでの記憶を思い出す。

 

 

部活から家に帰った私は、汗臭い体を洗うためシャワーで汗を落としていた。

 部活は陸上部で、400と800メートルを専門にしている。

 短距離選手並みのスピードと、長距離選手並みの持久力が必要になる種目故、長距離走よりもきついと言われることもあるのだ。

 だから練習の後は大量に汗を掻く。

 しかも、

 

「ワキガ持ちなんて、・・・はぁ」

 そう、私はワキガ持ち。 

 だからきつい練習終わりの腋の臭いは、それは酷い。

 どのくらい酷いのかと言えば、腋の臭いを嗅げば、鼻をつまんで体をのけ反らせるほどだ。

 でも、

 

「流石にシャワーを浴びたから、もう大丈夫よね・・・?」

 ボディーソープはまだだが、汗はひとまず落としたのだ。流石にそこまでひどくないよね・・・・・?

そう思いながら私はシャワーの水をとめ、立ったまま腋を嗅ぐ。

 

「・・・・・くっさい!!」

 相変わらずのくささに思わず鼻をつまみ体をのけ反らせる。

 

「あっ」

 きっとこんなところで腋の臭いを嗅いだのがいけなかったのだろう。

 私は体をのけ反らせたせいでバランスを崩し、濡れたタイルに足を滑らせる。

 そして後頭部を浴槽のふちに・・・・・・・

 

 

 

・・・・・ぶつけて死んだの?

 

「あの、私の死因って・・・・」

確認のため、女神だという美少女に尋ねる。

 

「腋の臭いで体をのけぞr「もういいです!ありがとうございました!」いいのですよ、遠慮なんてしなくて。あなたは足を滑らせて浴槽のふちに頭をぶつけて死亡したのです。幸か不幸か血が出ていなかったうえに、左手で鼻を押さえながら白目をむき、右手はバンザイという面白い状態での死亡だったおかげで、現在あなたの死を確認したお母様は、悲しみながらも笑いを抑えきれずにゲラゲラしていますよ?」

 

「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」     

ヤバい。

恥ずかしくて死にそう。

これから医師や葬儀屋の方々のお世話になるであろう、現世に残っている、バカなポーズをとった私の肉体を今すぐ処分したい。

 

「プークスクス!!ホントここ最近は面白い死に方する人が多いわね。こんなに私を笑わせてくれた死に方をした人は、最近じゃあなたが2人目よ。」

・・・・・なんだろうこの子

仮にも人の死に方で、ここまで笑うことないじゃないか。

と言うか、

 

「私以外にもバカな死に方した人がいたんですか?」

 

「ええ、いたわよ。名前は佐藤和真っていうの。」

あ、知ってる。

女の子を突き飛ばして骨折させた直後に謎のショック死をして、つい最近ニュースに流れてた人だ。

何が原因でショック死したのかは不明らしい。

 

「その男は、道で女の子がトラックにはねられる!って思ってその子を突き飛ばしたんだけど、実はその車はトラックじゃなくてトラクターだったのよ!しかも速度なんてほとんど出てなかったから何もしなくても女の子は避けられたのに、突き飛ばしたせいで女の子は足を骨折。その後自分はトラックにはねられたと思って失禁しながらショック死。そのあんまりな死に方に搬送先の病院の先生たちや、あまつさえ自分の家族にまで笑われたのよ。プークスクス!」

・・・・・うわぁ。

これは酷い。

ショック死の原因が不明、として流れていた理由が何となく分かった気がする。

 

「さて、私のストレス解消も出来たことだし本題に戻るわよ。」

人の死に方でストレス解消しないでほしい。

というか本題に戻るとかいっているけど、そもそも本題に入ってすらないと思う。

 

「私は水の女神アクア。日本で若くして死んだ人々を導いている女神アクアよ。相川愛さん、死んだあなたには3つの選択肢があります。」

選択肢?

 

「1つ目は、肉体を捨てて天国的なところに送られる。2つ目は記憶を失って、同じ世界で次の生を受ける。まあ、このあたりが妥当ですね。」

・・・・・天国的って何よ?

でも2つ目より良いかもしれない。

記憶を失って次の生を受けるというのは、どこか忌避感がある。 

肉体を捨てるのも嫌だが、記憶よりマシだろう。

 

「あっ、天国的なところを選択するのなら気を付けてね。体がない上に、娯楽も特にないから、やることと言えば日向ぼっこか、他の人とおしゃべりするくらい。もちろん、えっちいこともできないわ。」

 ・・・・なんっ、ですって!

 処女も捨ててないのに、それはいやだ。

 自分で言うのはなんだが、見た目は良いのだ。

 175センチという長身ながら、かなりの回数を告白されているくらいには良いのだ。

 けれど、ワキガ(強烈)のせいで、これをすべて断ってきた。

 バレるのが怖くて、恋の1つもしたことがない。

 

 「・・・・・天国も次の生も嫌です。」

 

 「そうよね。ワキガのせいで恋ができないまま死ぬなんて嫌よね。そんなあなたに、実は良いはなしがあるのよ。」

 良い話?

 私が恋ができなかった理由を何故アクアが知っているのかはとりあえずスルーして、彼女の言葉に耳を傾ける。

 

「実は最後の選択肢に、{異世界に送られる}ってものがあるの。これを選べば記憶を失うことも、肉体を失うこともないわ。」

 異世界?

 そんなもの本当にあったんだ。

 

「・・・・・えっと、その異世界と言うのはどんなところなんでしょうか?」

 

「大体で言うと、RPGみたいな世界かしら?科学技術は中世ヨーロッパぐらいだけど、魔法がある分そこまで文明レベルは低くないわよ。」

 

「そんなところに行けるの!?」

 

「ええ、そうよ。」

 ゲームやアニメで、ちょっと憧れていたファンタジー世界に行けるなんて!

 あれだろうか?意外と自分はついているのだろうか?

 

「でも、そんなに喜んでいられる選択肢ではないの。」

 えっ?

 

「実は異世界では{魔王}とか、{モンスター}とかがいてね。こんな選択肢があるのは、日本で若くして死んだ人たちに魔王討伐をお願いしたいからなのよ。」

 ・・・・・?

 

「魔王と言うと・・・・・・強いですよね?」

「そうでなければこんな選択肢はないわよ。けど安心して。」

 そういうと、アクアはこちらにカタログをよこし―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「わかった。長ったらしいのはもう無しだ」

 はなしが長いので切らせてもらう。

 

「要はあれか?愛さんはカタログのチートを選ばず、この女神を連れてきたってわけですか。」

 めぐみんとダクネスに、知り合いが来たのでちょっと席を外すと言って、アクアと愛と言う女性を別の席に連れてきた俺は、この状況の事情を聞いていた。

 あまりにも二人の説明が下手で長ったらしく、そして一応どういう状況なのか分かったので、話を切った。

 

「はい。カタログの中のどんなものより、女神自体を連れてくる方が安心かなって思って」

「ほんっといい迷惑なんですけど!私戦う力なんてないし、癒す力しかないのよ?この巨大ワキガ女ほんっとありえないんですけど!」

 

「・・・・すいません。でもその呼び方やめてくれませんか?」

 

「やめて欲しかったら私を楽させて!私女神よ?女神にふさわしい生活を保障して!」

 ・・・・・・うん。

 こいつ連れてこなくて良かった。

 だがこのままでは愛さんが可愛そうだ。

 同じ恥さらしな死に方をした人間として、どうも見過ごせない。

 

「おいアクア、楽はさせられんが、一応の生活ぐらいなら保障は出来るぞ。」

 

「えー、私楽な生活がしたいんですけど。」

 ・・・・・コイツ人生舐め腐っているにも程がある。

 

「あのな、この町の冒険者は大抵、馬小屋で寝泊りしてんだぞ。大衆浴場を利用する金だって安くない。俺達はその中で、一応宿暮らしできるくらいに金が稼げている。お前は馬の糞の臭いがする馬小屋で寝泊りしたいのか?」

 そう、俺たちは宿をとって生活している。

 前、俺が住んでいたボロ宿ではなく、大きい部屋が特徴の宿だ。

 もちろん、無駄遣いは出来ないので、同じ部屋にみんなで泊まっている。

 そこで気づいたのだが、めぐみんは、ちょむすけと言う名前の猫を飼っていた。

 今までは、別の宿で住んでいて、そこで飼っていたらしい。

 何故宿暮らしが出来ていたのかと聞けば、なんでもこの町に来る際に、馬車が上級悪魔に襲われそれを爆裂魔法で退治した際、馬車の主がお礼にしばらくの間、質のいい宿で暮らせるよう手配してくれたそうだ。

 

「そんなのいやよ!」

 

「なら愛さんへのその呼び方はやめろ」

 

「・・・・・わかった」

 アクアは、しぶしぶといった表情で首を縦に振る。

 

「あの、カズマ君、ありがとうね」

 愛さんがホッとしたように言う。

 

「構いませんよ。流石にあの呼ばれ方はきついですよね。」

 同じバカな死に方をしたものとして、謎の近親感もあったし。

 

「それでさ、少し頼みがあるんだけど」

 愛さんは窺うように聞いてくる。

 

「なんですか?」

 

「・・・・・私も宿に泊まらせてくれませんか?」

 なんだ、そういうことか。

 

「なら別に構いませんよ。・・・・ただ、大きい部屋を1つ借りているだけだから、俺を含めて5人で住むことになるし、狭いかもしれませんが。」

 愛さんは男と同じ部屋で寝るのに抵抗を少し覚えたのか少し思案する表情になったが、

 

「別に構いません。お願いします。」

 結局、首を縦に振った。

 




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相川 愛
黒髪ボブの美人 身長175㎝ 胸はゆんゆんくらい。腰はダクネス以上。ダクネスほどではないが筋肉質。
頭は悪くないし運も良いほうだが、考えが斜め上に走ることがしばしば。
かなりきついワキガもちで、それを悩みにしている。
陸上部に入った理由は、運動をして健康的な体になることにより、少しでもワキガの臭いを抑えるため。

4人とはまた別方向でおかしい子です。

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