このすばIF~カズマがチートを選んだら~   作:にゃるめす

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すいません。ダクネスディスりが多い回になりました。





第3話

それは、俺とクリスがギルドに戻ってすぐのこと。

ダクネスというクルセイダーが来る予定の、30分前のことだった。

「あなたが真の冒険者カズマですね。募集の張り紙見させていただきました。」

ギルドに入り、近くの席に座ると早々に、12~3歳くらいの小さな女の子にそう声をかけられた。

紅い瞳に眼帯が特徴的で、魔法使い然とした恰好をしている。

 

「ふっふっふ、この邂逅は世界が、いや宇宙が選択せし定め。私はあなたという存在を待ち望んでいた!」

 女の子はバサッとマントをひるがえし、

 

「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操りし者・・・っ!」

 ・・・・・・?

 

「えっと・・・・」

 

「ふっ、余りの強大さ故、世界から疎まれし我が禁断の力を汝は欲するか?」

 ・・・・・ほほう?

 

「ならば、我と共に究極の深淵を覗く覚悟をせよっ!人が深淵を覗くとき、その深淵もまた、人を覗いているのだ。」

 なるほど。

 

「冷やかしはけっこうです。」

「ち、ちがわいっ!」

 

「・・・・!!もしかしてその瞳、君は紅魔族かい?」

 突然のことに動揺していたクリスが口を開く。

 

「いかにもっ!私は紅魔族随一の魔法の使い手、めぐみん!我が必殺の魔法は岩をも砕き、山をも崩す。正真正銘、人類最強の攻「なあクリス、紅魔族って一体なんだ?」って話を止めないでください!?」

 

 ごめんね。

 君の自己紹介よりクリスの説明の方が、君のことを理解できると思うんだ。

 

「え、えーっと、紅魔族は一族の全員が高い知能と魔力を持ってて、生まれながらにしてアークウィザードになるための素質がある。つまり、魔法のエキススパート達なんだよ。あと・・・・・・」

 クリスは少し悩み、

 

「・・・・個性的な感性をもった人たちなんだよ・・。」

 

「おい、そこの女装した変態!私たち紅魔族の高尚なセンスについて言いたいことがあるなら聞こうじゃないか!」

 

 ・・・・・なるほど。

 このめぐみんとやらについて、ようやく分かった。

 頭がおかしいだけで、こいつは今まで本当のことを言ってたのだろう。

 変な名前や名乗りも、大真面目だったに違いない。

 ・・・・・・フッ

 

「あ、あたしは正真正銘の女なんだけど!」

 

「嘘をおっしゃらないでください!あなたの名前は“クリス”でしょう?クリスは男性名で、女性に使われることはあまりありません!」

 

「ムキーーーーッ!」

 

 

 「この世界の神様は、患者に毒を与えるのか。」

 言い争っている二人をよそに、思ったことをつぶやく。

 産まれつきの中二病軍団全員に、アークウィザードの素質を与えるぐらいだ。

 きっとロクな人間には、凡才しか与えないのだろう。

 

「神様をバカにすることは許さないよ、カズマ!」

 

「なぜかすごくバカにされた気がするのは私の勘違いでしょうか!?」

 二人がこちらに方向転換してきた。

 

「うるさい!俺の知ってる女神は、見た目だけで中身すっからかんのクズ女だ!あぁ思い出しただけでもイライラする!どうせ幸運の女神エリスもギャンブル狂いか何かだろ!自分の幸運をいいことに、札束片手に高笑いしながら豪遊してるに決まってる!そんな奴の世界だから無駄な奴に無駄な才能与えてんだ!」

 

「君が言うような神様なんてほとんどいないよ!あと、女神エリスは普通の神様だよ!」

 

「おい。最後の言葉は聞き捨てなりませんね!ここであなたの言う無駄な才能を発揮してあげましょうか!?」

 

「「「「「す・い・ま・せ・ん!」」」」」

 大声で言い争っていると、ギルド職員の方々がやってきた。

 それはもう、最高に怖い笑顔で。

「今は4時。日の明るいうちは一般の方々も来られているんです。そこまでの大声で騒ぐのなら、日が沈んでからにしていただけませんか?」

 職員の一人が言ってくる・・・って、やばいやばい目が笑ってない!

 

「「「す、すいません」」」

 3人みんなで頭を下げる。

 ギルド職員達は、きちんと謝ったら許してくれたようで、それぞれの持ち場にもどっていった。

 あれだけ騒いでた俺たちだが、一気に静かになる。

 ・・・・・・・・・沈黙が苦しい。

 

「・・・・・なあ、めぐみん。お前ってその、強いのか?」

 とりあえずこれは破る。

 会話が完全になくなってしまう。

 

「えっ?あっ、はい。我が爆裂魔法の前では、例え上位悪魔ですら致命傷はまぬがれないかと。」

 

「まじか?」

 

「マジです。並大抵の敵なら話にすらならないでしょう。ですので、私を仲間に入れてください!」

 

「そんなに凄い奴なら、もちろんオーk「ちょっと待って、」なんだよクリス。せっかく仲間に入ろうとしてくれてるのに。」

 

「君、ちまたで噂の爆裂狂だよね?」

 爆裂狂?

 

「あの、その不名誉なあだ名について詳しく聞かせてもらえませんか?」

 

「爆裂魔法を一発使って倒れる紅魔族が、いろんなパーティーに声をかけているって噂になってるよ。爆裂魔法だけしか使えない地雷だから、そんなあだ名がつけられるんだよ。」

 クリスは弱冠、怒気を孕んだ口調で言う。

 ・・・・・・・ん?

 

「ちょっと待て。めぐみん、一発使って倒れるってどういうことだ?」

 

「・・・・・・・我が爆裂魔法はその威力の絶大さ故、消費魔力もまた絶大。要約すると、魔力切れで身動きがとれません。」

 

「その上、スキルポイントがすごく高いし、発動の爆音のせいで近くのモンスター達がやって来るっていう、完全なネタ魔法なのさ。」

 なんだと?

 それじゃあ、全く使えないじゃないか。

 めぐみんは爆裂魔法をネタ扱いされて怒っているが、どうでもいい。

 この子、要らない。

 

「・・・・やっぱりめぐみんには、もっと別の場所に居場所があr」

 ると思うよ。

 そう丁重に言いかけてやめる。

 確かこいつは、自分の魔法は人類最強の攻撃手段だとか言ってた。

 もしかすると、糞女神を泣かせながら犯すという俺の願い、つまり魔王討伐には欠けてはならない存在なのではないのだろうか?

 

「もうどこのパーティーも拾ってくれなそうにないのです!荷物持ちでもなんでもしますので見捨てn」

 

「良いよ。お前今日から、うちのパーティーメンバーの一員だ。」

 魔王討伐のため、こいつにはとにかく爆裂魔法関係にスキルポイントを費やしてもらおう。

 

「本当ですか!?」

めぐみんはとても驚いた表情で身を乗り出してくる。

って、近い近い近い顔が近い!・・・・あれ?女の子特有の良い匂いはどこだ?

 

「う、嘘なんて言わないって、俺にはお前が必要なんだ!」

 そういうと、めぐみんは喜びの感情一色に表情を染め、

 

「はぁ♡、やはり私とあなたは運命という必然で結ばれていた盟友だったのですね!良いでしょう、我が力存分に振るってください!・・・・・はぁ、ようやく私もパーティーに・・・」

 大仰なポーズをとりながら言い放ち、最後には自分の世界に入った。

 ・・・・・・・どんだけのパーティに断られたんだよ。

 でもまあ、

 

「よしっ」

 とりあえず魔王討伐への第一歩を刻むことが出来た。

 そう内心で思っていると、クリスが後ろから肩を叩いてきた。

 

「ねえカズマ、いいのかい?あたしも彼女を見捨てるようなことはしたくないけど、・・・でも」

 そうクリスは小さな声で聞いてくる。

 ちょうどめぐみんに聞こえない程度の声で。

 

「いいんだよ。めぐみんはいざという時の切り札にすればいいだろ?モンスターをおびき寄せるデメリットも、逆に考えれば、モンスターをおびき出す手段になる。それで倒れたら、モンスターの餌にすればいい。なんだかんだメリットが多いんだよ。ほかのパーティーに取られないうちに、引き込むべきだと思うぜ?」

 俺も同じように小さい声で返す。

 

「なるほど・・・って!流石にモンスターの餌にはしないよね?」

 

「うん。おとりとして活用するだけだ。」

 

「少しでも君のことをいい人だと思ったあたしの純情を返して!」

 あ、クリスからの好感度が少し下がった気がする。

 

「二人とも何を言い合ってるのですか?」

クリスが声を荒げたせいで、喜びに浸っていためぐみんに気づかれた。

 

「いや、クリスにお前の利点を伝えてただけだ。変なことはいってないよ。」

 クリスがなにか言いた気だが、気にしない。

 

「そうですか。そういえば、このクリスという女性とはいったいどういう関係なんですか」

「やっぱり女って、分かってたんだね!?」

 ええ、でも最初は本当に男性に見えました。と、めぐみんが答えると、クリスは結構本気で落ち込みだした。

 

「あぁ、クリスは俺のパーティーの不定期メンバーなんだよ。職業は盗賊。でも今日入ったばかりで、互いのことはまだまだ分からないけどな。」

 

「そうですか。ではクリス、同じパーティーメンバーとして、これからよろしくお願いしますね・・・って、そこまで落ち込む必要ないと思うのですが?」

 

「ねぇカズマ、めぐみん。あたしってそんなに女の子に見えないかな?」

 あ、やばい。

 言うクリスの声のトーンがすごく低い。

 

 俺たちはこの後、クリスを立ち直らせるのに10分も費やした。

 慰める中で、露出の高い恰好は、男と勘違いされないためだとわかった

・・・・・クリスに男ネタはほどほどにだな。

 

 

        ☆☆☆☆☆☆

 

 

「やぁクリス、今日はやくそk・・・そこの人達は誰だ?」

 

「あぁ実はね―――――――

 クリスを慰めて間もなく、噂のダクネスと思しき女騎士がやってきた。

 見た目は凄く良い。

 髪は金髪、長いそれをまとめてポニーテイルのようにしており、それでいて、顔立ちは凛々しく、目つきは少し冷たい。

 俺より少し背が高いから、170センチくらいだろうか?その長身と鎧が、これらととてもよく似合っている。

 

―――――――ということなんだよ。」

 

「・・・本当なのかそれは?また途中でパーティーから放り出される気がするのだが、私は。」

 ・・・・!しかも男口調か。

 クール系美女、こいつは女にモテるな。

しかしそれだけではない。

ダクネスはクルセイダー、つまり肉付きが良いのだ。

それがまた艶やかな雰囲気も醸しだしている。

格好よさとエロさを掛け合わせたような美しさには、きっと男も女も関係ないに違いない。

だって俺もめぐみん(爆裂狂)も軽く見惚れてしまったからだ。

 

「大丈夫だって、ダクネスは絶対にパーティーの一人として、ずっといられるから。」

 

「・・・・分かった。」

 どうやら話し合いは終わったようだ。

 ダクネスはこちらに振り向き、

 

「えっと、わ、私はダクネス。クリスからは聞いていると思うが、クルセイダーを生業としている者だ。一応剣を扱ってはいるが、・・・・・・その、不器用すぎて攻撃が全く当たらないのだ。」

 自己紹介を?・・・・・コイツ今なんていった。

 

「だが耐久力には自信がある!なのでガンガン前に出ていくつもりだ!!是非こき扱ってくれ!!!どんなモンスター相手にも一歩も引かないことを約束しよう!!!!」

 興奮しながら俺の目の前でそう宣言sって、顔が近い近い近い近良い匂い!

 でも唾飛ばすな!

 ていうか、

 

「おいクリス、本物のダクネスさんを呼んできてくれ。この偽物はちゃんと粗大ごみにして出すんだぞ。」

 

「いや、偽物もなにもk「んあっ!」・・・・彼女がダクネスだよ」

 ・・・・・嘘だ。

 攻撃当たらないなんて、ただの壁じゃないか。

 そんな聖騎士認めない!

 というか、俺のさっきの言葉で興奮しなかったかコイツ?

 

「カズマひどいですよ。彼女の不器用さについてですが、誇張して全く当たらないと言ったのではないのですか?」

 ・・・・・・確かにそうだ。

 自分の実力が高い奴ほど、高みを知っているが故、謙遜するようになるものだ。

 もしかすると、とんでもないモンスターに一度攻撃を避けられまくったが故の

 

「誇張でもなんでもないぞ。ほら見ろ私の器用さを」

 そう言って見せてきた冒険者カードを俺とめぐみんはじっと見る。

 そこに書かれた器用さの数値は

 

「・・・・最低クラスじゃねーか!」

 少しでも期待した俺の純情を返して!

 

「なぁ、「大剣」とかのスキルは取ってないのか?」

 取っていればここまで不器用なはずがない。

 

「もちろんとっていないぞ。スキルポイントはすべて防御系統のスキルにつぎ込んだ。そうでないと、気持ちよくモンスターの攻撃が受けれないからな。」

 

「今気持ちいいって言ったか?」

 

「いってない」

 

「いったろ」

 

「いってない」

 

「・・・・・今から攻撃系統のスキルを取る気は?」

 

「ない!」

 断言しやがった!

 ・・・・・というか、筋金入りのドM狂性駄亜だったのかこいつ。

 よし

 

「お前要らな「カズマちょっといいかな?」なんだよクリス?」

 いつの間にか少し離れたところにいた、クリスに呼び止められる。

 

「まぁいいから、ちょっとこっち来てよ」

 クリスは手招きをしながら呼んでいる。

 もうダクネスの処遇については決まっているが、とりあえず向かう。

 

「なんだよクリス。あんなやつパーティーには要らないからな。」

 

「へー、そんなこと言っていいのかな?」

 クリスは妖しい笑みを浮かべながら言う。

 

「・・・・・・どういうことだ。」

 

「お昼に君が、あたしに言ったこと覚えてる?」

 たしか、スキルを教えてもらって・・・・・・・・・っあ!

 

「クリス、パンツもらうよ。」

 

「ちっがう!いや、あってるけど!」

 

「?」

首をかしげる。

約束じゃあ、ダクネスを俺のパーティーに入れなければ、パンツは俺の物になるはずだ。

 

「分かってないみたいだね、なら教えてあげるよ。もしここで、カズマにパンツを取られるってあたしが大泣きしだしたら、周りの人たちはどんな目で君を見るのかな?」

 

「きったねぇ!お前それでも人間k「うわーーーーん!カズマにぱんt」よーし分かった!ダクネスは仲間に入れてやるからやめてください!」

 慌ててそういうと、クリスはにやりと笑った。

 こっ、こいつ!いつか泣いて謝るような目に合わせてやるっ!

 そう決心しながら俺はダクネスのもとに向かう。

 

 ・・・・・・本当にどうしよう。

 攻撃が当たらなければ、例え「デコイ」のスキルを使ってもそう長い間、モンスターを引き留めることはできない。

 固くてなかなか倒れない上、攻撃が自分に当たる気配のない無害な奴相手に、そう何度も攻撃するほどモンスターだってバカではない。

 

 それに、騎士職は総じて足が速くない。

 いざ遠距離から魔法を放とうにも、剣などでモンスターを自分から離れさせることが出来なければ、走って逃げても追いつかれる以上、それも出来ない。

 いくら固くとも、仲間ごと魔法を打てる訳がない。

 クリスがパーティーにいる間なら、ダクネスが引き付けているモンスターを、途中で彼女に引き付けてもらって魔法を放つことも可能だろう。

 

 だがクリスが抜けたら?

 ・・・・・・俺はいつもの通り戦い、ダクネスにはめぐみんのお守りを頼もう。

 それ以外はリスクのある作戦しか思い浮かばない。

 いないよりマシなだけじゃん!

 

 

「はぁ」

本当にどうしよう。

 

結局この日、ダクネスは俺のパーティーに入ることになり、パーティー結成祝いをして解散となった。

・・・・・・ちっとも祝いたくない!

 

 

 




にゃるめす「どうしたんですかエリス様?そんな暗い顔をして?」

エリス「・・・・アクア先輩に自分の尻拭いを押し付けられたんです。真の冒険者には本来あんな能力ないですから。天界規定に引っかかったんでしょう。ほら見てください、罰則の雑務書類がこんなに・・・・!」

にゃるめす「・・・・・心中お察しします。次回「このパーティーでクエストを!」」



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