私は教授じゃないよ。大袈裟だよ   作:西の家

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オリ主の容姿ですが、fateの玲瓏館 美沙夜と思ってください。




ペーパーテスト......だよね?

「おらガキども!静かにせえや!これから試験を始める」

 

蘭豹先生が戻って来て、第一声に怒鳴り散らした。

その声に殺気立っていた受験生一同は静まる。

凄い威厳があるな......伊達に武偵学校の先生はやってないね。

 

「これからお前らには殺し合いをしてもらう」

 

はい?あの先生今なんて言いましたか。空耳ですよね。

殺し合いって、バトルロイヤルですか⁉

いつからBR法が設立されたんですか!教えてください。

いや、落ち着け私......殺し合い=試験

これは武偵なりの用語の様なものに違いない。

試験はある意味では戦いだから......

 

「これから装備を渡す!各々好きに使え」

 

そう言って渡されたのは防弾チョッキ・9mm弾×10発・閃光弾1発・サバイバルナイフ一本

あの先生⁉ペーパーテストにこんな必要なんですか?

 

「おい、そこの一般中出身!忘れ物や」

 

蘭豹先生は拳銃を渡して来た。

これは射撃場で私が使っていたS&W M36だった。

わざわざ届けてくれた様だ。

優しいけど、拳銃を使うペーパーテストなんて聞いた事がないのですが......

 

「ありがとうございます先生」

 

取り敢えず、黙って貰うのは失礼なのでお礼を述べて頂いた。

無表情も悪いので微笑みを浮かべながら

 

「随分と落ち着いとるなお前。ほら、サッサと他の連中について行けや。まあ、せいぜい頑張れや」

 

「はい、頑張ります。お気遣いありがとうございます」

 

最後にそう言って、他の受験生の後に着いていった。

これから本番の試験か......ちょっと緊張してきたよ。

 

 

 

 

受験生が移動して暫くーー

 

無精髭を生やした40代風の男性教諭が蘭豹の方を向き、

 

「何故探偵科の生徒を強襲科の試験に?」

 

尋ねる。

男性教諭にはそれが疑問だった。

何故、探偵科希望のそれも一般中学出身の生徒を強襲科の実技試験に送りんだのか。

 

「10発」

 

「はい?」

 

「あのガキ......全弾全て急所に撃ち込みよった。何の躊躇いもなく平然とな」

 

「ーー偶然では?」

 

武偵は殺傷を禁じられている。

射撃試験では急所を狙わず撃つようになっている。

しかし、玲瓏館・M・零は急所を狙ったーー大衆の面前で平然と......

最初あの女に声をかけられた瞬間、蘭豹は勘だろうかーー得体の知れない悪意を感じ取った。

自分の怒気にもビビらず、涼しい顔ーー笑顔で受け流していた。

その笑顔を見たとき思わず蘭豹は体の奥から何かが込み上げてきたーー恐怖だ。

底知れない悪ーー巨悪を前にしたそんな感覚だった。

 

「これ見てみ。アイツの撃った的や」

 

「これは⁉」

 

「分かるか?アイツは10発全て急所に撃ちこんだ。頭・喉・心臓に一切狂いなく正確にな。おまけに最後の2発は同じ場所ーー最初に撃ち抜いた頭と心臓に''同じように撃ちこんだ''。しかも、拳銃の扱いも手馴れとった素人やない」

 

蘭豹の渡してきた的を見て、無精髭の教官は驚愕した。

それには8つの弾痕があった。

しかし、頭・心臓の部分にはそれぞれ2回づつ撃ち込んだ跡がある。

まったく同じ場所に撃ち込むーー針に糸を通すような繊細な技術がいるにも関わらず、彼女はそれを平然とやってみせたのだ。

 

「急所を正確に撃てるならその逆、急所を外して撃つこともできる。インパクトでも与えたかったんかーーアイツはワザとそうせんかった」

 

「人格破綻者でしょうか?何か過去のトラウマでこうなったとか?」

 

「それを知るために今調べさせとる。そろそろの筈......」

 

「遅くなってごめんなさい」

 

蘭豹が腕時計で時間を確認していると、1人の女性がやってきた。

レディーススーツを着たキャリアウーマン風の知的な感じのセミロングの女性だ。

 

「おう金田、なんか分かったか?」

 

「彼女の受験申込み用紙のサインから筆跡学である程度は....」

 

筆跡学ーー手書き文字の分析、個々の心理的特性を推測することを目的とする手法。

この女性ーー金田 真名部教諭は探偵科の教諭の1人で筆跡学を教えている。

 

「筆跡の心理分析の結果、筆が上目遣いで非常に高い知性を持っています。文字の下の部分を誇張して書くのは高い創造性を持っているが几帳面。それと筆を傾け全体的に筆圧の強いのは激しく自己中心的........他人にまったく共感できず、モラル意識に至っては破綻しています」

 

「蘭豹先生、今すぐにでも連れ出すべきでは?下手すれば他の受験生が危険です」

 

「私も同感です。モラルが破綻しているーー知能高く冷酷なまでに論理的に行動するでしょう」

 

「危険かどうかは試験を見て決める」

 

「彼女には私が付いてもよろしいですか?」

 

「勝手にせぇや」

 

 

無骨なコンクートの建物

室内は廃墟ビルであるのか、ドラム缶やら壊れた机やらゴミが散乱している。

しかも日当たりが悪く部屋の隅は、局地的に陽が沈んだように暗い。

試験官もいなければ問題用紙もない。

これは一体どういう事ですか?

私、探偵科を受けに来たのですが....

これは探偵科の実技試験ーー犯行現場を想定した試験でも始めるつもりでしょうか?

てっきり人探し、紛失物でも探すかと思ったんですが....さっきからずっと銃声や悲鳴が聞こえてきます。

なんか怖いですよ!

思わず笑みが浮かんできた。

これは「fear grinning(恐怖による笑顔)」と呼ばれるものでしょうか?

自分は危なく無いと、激しく否定しようとして笑いが出てくるというのは本当だったんですね!

まさか本で書かれたことを自分で体験することになるとは....

 

「取り敢えずどうしようかな」

 

渡された拳銃を弄りながら装備を確認してみる。

防弾チョッキーー重く着ていると動きにくいので脱いだ。

流石に実弾を撃ってはこないでしょう。

その証拠に受験生ーー私に配られているのはゴム弾だ。

私以外は全員実弾なんてことはないはず........あっ、でも撃たれたら痛いよね。

サバイバルナイフーー刃がしっかりと研いであるし、少し触っただけで切れそうだ......気をつけないと。

閃光弾ーーこれはピンを抜けば名前の通り閃光が炸裂するのだろう。

 

「はぁ、どうしてこうなったのだろう」

 

握り締めた拳銃を眺めながら、自分の口から思わずそんな言葉が出てくる。

教師志望のはずが今こうして武偵の試験を受けている。

やはり、天丼のせいだ!全ては私をたぶらかした美味すぎる天丼ーー犯人はお前だ!

拳銃を持ったままの腕を振るう。

その拍子にパァンと発砲し、

 

「ぐわっ!」

 

柱の陰から飛び出してきた人に命中した。

えっ、いつの間に⁉︎

心臓に命中した為かうつ伏せのまま動く気配がない。

ど、どうしよう⁉

 

「あの大丈夫ですか?」

 

「ゆ......油断したぜ。まさか俺が飛び出してくるのを計算して撃つとはな」

 

頭を上げ、こちらに顔を向けてきた。

計算してません‼︎ただふざけて....その拍子に偶々発砲してしまっただけです!

しかし、撃たれても平然と喋れるとは流石武偵高校の試験を受けるだけあって、並みの鍛え方はしてないようですね。

これなら大丈夫そうかな........

 

「あの私.....」

 

「いや、何も言うな。急所を撃ったのは偶々だろう?撃つタイミングは完璧だったけど、一般中出身だから仕方ねーよ」

 

気にかけてくれるのは嬉しいのですが、ただの偶然です。

 

「気をつけろよ。まだまだ試験は始まったばか....」

 

ガックリと頭を地に伏せ、そのまま動かなくなった。

返事がないただの屍のようだ....って、違うでしょう!ふざけている場合じゃない。

心臓ーー防弾チョッキに命中したからよかったものの頭に当たってたらどうなってたか.......下手したら後遺症が残ってたかもしれない!

この歳で罪の十字架背負いたくないよ!

動かなくなった受験生を調べてみたが、呼吸は安定しているし、これなら大丈夫そう。

なら早くここから離れよう。

さっきの銃声を聞きつけて誰かがやってくるかもしれないからね。

拳銃を撃てば銃声がなる=場所を知らせるようなものだから。

いや、既にいたりして.......

 

「そこにいるのは分かってます。ずっと見ていたのでしょう?」

 

部屋に無造作に置かれているドラム缶の方を向きながら喋る。

なーんて、いる訳.......

 

「気づいていたか......一般中出身だと思ってたけど中々鋭いな」

 

ドラム缶の後ろから人が出てきた。

いたー‼︎本当にいましたよ。

しかもこの人待合室のベンチで一緒に座ってた遠山金次君じゃないですか。

気のせいか雰囲気が違うような?双子いやそっくりさん?

 

「驚いたよ。ただ立ち尽くしていると思ったら、彼が柱から飛び出してくるのを待っていたとはね。まさに延頸挙踵 (えんけい-きょしょう) 」

 

難しいことわざを使ってカッコよく決めてるところ悪いのですが、

 

「ただの偶然ですよ」

 

ただ天丼の憂さ晴らしでふざけて撃ってしまっただけなんですよ!

 

「そして恐ろしくもある。君は彼を躊躇いなく撃った。それも急所を狙ってね......武偵を目指すなら、それは許されることではないよ」

 

「いえ、別に私は武偵を目指している訳ではありませんよ」

 

本当は学校の先生になりたかったんですよ!

この試験を受けたのは偶然なんです。

 

「......何か他に目的があるのかな?」

 

「それは秘密です」

 

もし、ここで「この試験を受けたのは只の偶然です!武偵になるつもりはありません」とカミングアウトしたら、真剣に試験を受けている他の受験生に失礼じゃないですか!

 

「女性の秘密を詮索するつもりはないけど、さっきの急所狙いは許せないね。しかし、手荒な真似はしたくない。降参してくれないか?そうすれば教務科もお咎めなしにしてくれるだろう」

 

何か拳銃を構えてきたー!凄く怖いよ!

ドラマでしか見たことのないシーンを自分で体験することになるなんて........

撃たれたくない。

自分は人を撃っておいて何を言ってやがるとは言わないで。

撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ........私は撃たれる覚悟はないよ!

に、逃げないと.......でも何処へ?

遠山金次君の後ろーー他の階に行く階段入り口がある。

薄暗く、人が隠れているかもしれない。

あそこまで走って逃げようにも遠山金次君は私から目を離す様子はない。

どうにかして彼の意識を別の場所に向けないと......

 

「さて、どうしましょうか......私も手荒な真似はしたくない」

 

遠山金次君の後ろに目を向け、指をこめかみに当て、トントンと叩きながら考える。

時間を稼ぐのだ!考えろ玲瓏館・M・零

伊達に「教授」と呼ばれていないーーあだ名だけど......

 

「私にばかり気を向けてないで自分の事にも気を遣ったらどうですか?」

 

「どういう意味だい?」

 

「君の後ろーー階段入り口に人が隠れている。ずっと私たちのことを監視しているね。恐らく教諭だろう」

 

デタラメだけどね。

流石の遠山金次君も学校の先生が後ろにいると思ったら、私の方に集中できないはず!

 

「そろそろ出てきてくれませんか?隠れんぼは飽きました」

 

手をメガホンのようにして叫ぶ。

まあ、いる訳ないんですが......ただ金次君の注意を引くだけでいい!

逃げる時間を私にください。

 

「いつから気づいていた」

 

階段入り口の陰から人が出てきた。

またですか!しかも見るからに受験生ーー学生じゃないし!

無精髭生やして眼帯してるし、どこの傭兵ですか貴方は?

 

「最初からですよ。貴方は経験豊かな歴戦の猛者だ。しかし、経験豊かだからこその油断がある。自分より下ーー経験不足な学生を下に見る傾向がある。その為、普段の実力を半分も出さない癖がある。貴方はこれで十分だと思っていたようですが、私は遊びで隠れんぼしていると思いましたよ」

 

顔を見て話さないの失礼だから見て話す。

我ながらよく嘘八百を言えるものです。

とにかく時間稼ぎをしないと!

 

「まさか受験会場に入った瞬間から分析したのか⁉︎会場にいた教諭・受験生全員を......末恐ろしいな」

 

いや、傭兵さん?デタラメですからね?受験会場の人間を全て分析って、そんな芸当ができる訳ないじゃないですか!

全員殺気立ってたし、怖くてビビってましたよ。

なんか話が大袈裟になっているような......

 

「俺のこともあの時点で分析済みだったのかい?」

 

遠山君が尋ねてきたよ。

ど、どうしよう......わかりませんと言うのもカッコ悪いし、ええい!どうにでもなれ。

 

「君は武偵中だけでなく、自己鍛錬も欠かしてはいないね。おそらく実家が道場か代々何らかの武術を継承しているね。その証拠に握手した時、手に拳銃だけでなく何か別の跡ーー手の甲の皮が剥げた跡があったよ。あれは拳銃だけを使っていて、自然にできるものではない」

 

どこの漫画の主人公設定だよ。

自分で言っておいて、凄く恥ずかしい。

何が代々武術を継承する家だよ、そんな人間が現実にいる訳が、

 

「驚いたぜ。まさか、たったそれだけの情報から俺のことを分析するなんてね」

 

......いたよ。目の前にいましたよ。

えっ、厨二病とかじゃないよね?......わかりましたよ。

この遠山金次君は厨二病を拗らせているのだ!

可哀想に......まだ治ってないんだね。

でも大丈夫ですよ。私は他人に言いふらしたりしませんから、だからこそ君のノリに付き合ってあげますよ。

 

「クフフフ、分析ではなく解答と呼んでください。だって、私これでも数学者ーー教授なんですから」

 

うわー、何か凄く恥ずかしいようなこれは黒歴史確定だわ。

 

「さて、話はここまでにしましょうか。遠山君、一時休戦しませんか?」

 

「ーー休戦?」

 

「はい、一緒に先生を倒しましょう。さっきも言った通り、先生は歴戦の猛者ーー経験豊富なのに対して、私たちは学生でまだまだ経験不足なところがある。1人で相手にするのはかなり手こずるでしょう。先生もよろしいですよね?まさか、学生と戦うのが怖いーーなんて言わないですよね」

 

私は薄ら笑いを浮かべながら、傭兵先生(今決めたあだ名)の方を見る。

 

「構わないぞ。しかし、教務課も随分と舐められたものだ。手加減ができんぞ」

 

怖いよー!何か凄く睨み付けてきた!

ごめんなさい傭兵先生、薄ら笑いを浮かべたのはノリだったんです。

だから許して!

 

「遠山君、先生もああ言ってますし、君も一時休戦を受け入れて戦ってくれますね?」

 

こんな時はノリ仲間の遠山君に頼ろう。

私を守って騎士様!

 

「ああ、構わないぞ。俺も教務課とマジで戦うのは初めてだからな。まさか、君と一緒に戦う羽目になるとは思わなかったよ」

 

マジで王子様だわこの人。

まさか本当に騎士だったりして......

 

「私もですよ。前線は君に譲りますよ。だって、その方が得意でしょう?」

 

前に出て戦うなんて怖いし!

私、格闘技ーーボクシングを習ってたけど、あの傭兵先生には通じなさそう。

ここは遠山君に任せよう。

大丈夫、骨は拾ってあげますから。

 

「それも解答していたのか......なら、後援は任せる!」

 

そう言って遠山君は傭兵先生に向かって走っていた。

間合いを詰め、先生の顔に蹴りを放つ。

しかし、躱された。

その後、激しい徒手空拳の応戦が始まった。

打つ、止める、躱す、受け流しーー

やはり、武偵高校の先生は手強い。

このままでは下手したら鉄拳制裁が私にくる!それだけは避けないと

でも私にできることなんて......せめて援護射撃でも!

私は傭兵先生に向けて発砲したつもりが、銃の反動で彼らの頭上ーー天井に向けて、パァンと1発撃ってしまった。

 

「ガァッ!?まさか......コイツを囮に......して」

 

天井から石ーーコンクリートの塊が先生の頭に直撃した。

いくら廃ビルでも脆すぎるでしょう⁉

銃弾1発で崩れるとか危なすぎる。

先生、大丈夫ですか⁉

 

「これも君の解答ーー計算通りかい?まさか俺を囮にするとはね。さっきの射撃ーーコンクリートの塊を俺にもぶつけるつもりだったろう。教務課と俺を戦わせ、最後は2人とも始末する。一石二鳥を狙ったか......美人にしては悪どいな」

 

イヤイヤ!そんな悪い事をするつもりはまったくありませんから⁉︎

ただ私だけボケーっと立っているのも悪いから援護射撃するつもりが反動で天井に当たっただけです。

それに遠山君しれっと美人だなんて...褒めても何もでませんよ。

よく恥ずかしいセリフがポンポン出ますね彼は......やはり厨二病か。

 

「悪どいーーそれは私からすれば褒め言葉ですよ。勝つために利用できるモノを利用するのは悪いことでしょうか?だったらごめんなさい。私、一般中出身なもので」

 

「そうだったね。利用できるモノを利用するのは悪いことではない。しかし、利用するものは選ばないとね」

 

何やら遠山君は構えを取り出した。

どの武術でも見たことのない構えだ。

まさかここまで......厨二病が進行しているとは見ていて本当に可哀想になる。

 

「その構えを取ったということは、一時休戦は終わりと捉えていいのですね。本気でこの私と戦うつもりですか?か弱い一般中出身のこの私と」

 

「今までの行動からして、君は一般中出身にしては変だ。妙に戦い慣れしているーー普通一般中出身の人間はこんな実技試験に放り込まれたら、隠れて縮こまるものなのに君は隠れもせず堂々と身を晒していたーー防弾チョッキも着ずにね」

 

いや、ビビって動けなかっただけですよ!

防弾チョッキは重いし、動き難いから着なかっただけだよ。

 

「それと拳銃の扱いも手馴れている。狙いもタイミングも狂いなく正確に撃ってみせた。一般中の人間が銃の扱いを心得えているなんて考えられない」

 

拳銃に関してはネットや本、それと狩猟で知った知識を元に扱ってみたんです。

 

「ただ狩猟の一環で銃の扱いを知っただけですよ。それに今のご時世拳銃が扱える一般の人間なんて珍しくありませんよ」

 

「人を撃てる一般人がいるかな?人を撃つことは誰にでもできる事じゃない。ましてや、一般中の人間がね」

 

ダメだ何を言っても納得してくれない。

私が呆れて遠山君を見つめていると、ギリリリリーーと喧しいベルの音が聞こえてきた。

 

「そこまでや!ガキども大人しくしてもらおうか?」

 

突然、蘭豹先生が階段から登ってきた。

後ろには見慣れない人たちーーここの先生たちかな?

数人ばかりの先生たちを引き連れて現れた。

気のせいか全員ピリピリしているような......

 

「おい、玲瓏館。おまえ今、遠山に何をするつもりだった?」

 

蘭豹先生が初めて名前を呼んでくれたよ。

おもわず感激してしまった。

中学では「教授」と呼ばれていたからなんだか、名前で呼ばるのは新鮮だな。

 

「別に何もするつもりはありませんよ。今はね」

 

微笑みを浮かべて蘭豹先生、続けて遠山君を見る。

そう、今は何もするつもりはないけど、ここで会ったのも何かの縁ーー必ず遠山君の厨二病を治してみせます!

彼がこれ以上黒歴史を刻みつける前にね。

 

「そうか。何かする前にお前のその腐った性根を叩き直したる!ここは甘くはないぞ。高校入学までの一ヵ月弱。武偵付属中三年分の内容を叩きこんでやるから覚悟しなっ!」

 

「楽しみにしてます。それじゃ、遠山君またね」

 

そう言って私はその場から立ち去った。

 

 

 

後日、試験結果が発表され私は武偵ランクAの探偵科だった。

やったー!ドンパチとは無縁の学科に入れた。

 

 

ーーーー

 

 

玲瓏館 零

知力・戦闘力ともに高い能力あり

実力はSランクに認定ーーしかし、精神面に問題ありの為、Aランクとする。

 

尚、教務科一同この生徒の動向に注意されたし

特に強襲科・探偵科の教諭は細心の注意を払われたし

監視も兼ねて、この生徒の専門科を探偵科とする。

 

 

 

 

 

 


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