私は教授じゃないよ。大袈裟だよ   作:西の家

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緋弾のアリア最新刊でやっぱりいましたね。
名探偵が生きているなら、あの教授だって生きていてもおかしくはないと思ってたんですよね。
うまく原作と繋げられるようにやってみます。
タイトルは「憂鬱のモリアーティ」がよかったかな......


原作前
プロローグ


スイスーーライヘンバッハにて

滝があったーー底の見えない大きな滝だ。

岩棚にぶつかって幾筋にも分かれるこの滝は、その美しい光景によって観光スポットにもなっている。

そこに2人の男女が居たーー2人とも10代で若い。

男は根暗な雰囲気を放ち、一方で女は知的な雰囲気を放つ。

側から見れば観光に来た恋人同士にも思えるが、そうではなかった。

滝のそばの崖の下に向かって、男は手を伸ばしていたーー手に掴んでいる女を助けるために......

 

「ーー私は間違っていない......っ!間違ってるのはお前だ!遠山金次‼」

 

女は手にした杖を振り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

中学3年、最後の冬

受験シーズンに突入し、進路の決まった人もいれば未だ決まらない人もいた。

この私、玲瓏館・モリアーティ・零も受験シーズン真っ只中の中学3年生だ。

学校帰りで一緒に歩いていた友人達に手を振り、

 

「じゃあね教授」

 

「またな教授さん」

 

「バイバイ教授!」

 

「ハイハイじゃあね皆」

 

別れた。

教授ーーこれは私のあだ名のようなものだ。

何故、このような呼び名か?それは私の名前が原因だろう......

あれは中学に入学し、クラスメイト達の前で自己紹介した瞬間、「教授」、「ライヘンバッハの滝よコナン君!」「ライヘンバッハ滝にご注意を」など、出るわ出るわ。

モリアーティーーこの名を耳にすれば、まず誰もがあの人物を思い描くだろう。

ジェイムズ・モリアーティ

名探偵シャーロック・ホームズの最大の宿敵

彼と同等の頭脳を持ち、イギリス犯罪界のナポレオンと呼ばれた人物

 

同じ名字を持つ私はジェイムズ・モリアーティとどんな関係か?

身内?違いますよ。

偶々、同じ名字なだけです。

私の母はイギリス人で性がモリアーティだけど、母が言うには「偶々同じ名字なだけよ。だから関係はない......」とも言ってたし......

ある時、同級生から「教授さん勉強を教えてください!」と言われたので勉強をみてあげたら成績がぐんと上がったようで、それが評判になり次々と勉強の指導を申し込む人が現れ、ますます「教授」と呼ばれる様になったよ。

ご大層なあだ名でしょう?大袈裟ですよ本当に

まあ、もう慣れたし好きにさせている。

 

中学校生活が終わりに近いのか、思わず懐かしいことを思い出していた。

真っ暗な寒空の下、自宅を目指し歩く。

途中、肩掛けバッグから、

 

「進路......どうしようかな」

 

学校で貰った高校のパンフレットを取り出して、私は呟いた。

進路ーー今後の将来が決まる大事なこと。

好きなことで食っていけるならそれは良いだろう。

私の好きな事と言えば、数学・読書

思い切って、数学者や学校の先生も良いかも!

でも、それだとますます教授が板に付きそうな......

 

「あれ?これ何だろう」

 

私は進路表ーー様々な高校のパンフレットの中に変わった名前が、

 

「東京武偵高校?」

 

武偵ーー武装探偵の略

凶悪犯罪の増加に伴い武装した彼らは警察に準じた逮捕権を有し、武偵法の許す限り権利を行使できる犯罪捜査のスペシャリスト。

その養成学校のパンフレットだった。

 

「何でこれが......」

 

もしかして、間違えて一緒に貰っちゃったかな?

返しに行こうにも学校から離れすぎているし、引き返すのも......折角だし貰っておこう。

それにしても武偵か......

凶悪な犯罪に対抗して作られた機関

最近、ニュースでは物騒な事件が報道されているし、夜に襲われたなんて事件もあるから早く帰ろ。

自宅を目指し、歩くこと15分ーー

 

最初に出迎えてくれるのは

明治・大正時代を思わせる和洋折衷な作りの屋敷。

母方の曽祖父が明治ごろに来日し、建てたそうだ。

青森にも同じような別邸があるのだが、私は中学に入って以来一度も行ってない。

 

「ただいま」

 

「おかえり零。寒かっただろう?」

 

玄関を開けると、黒のセーター、黒のジーパン、黒縁メガネと全身黒づくめのちょいイケメンーー玲瓏館 誠司、私の父が出迎えてくれた。

名前から分かるように父は純粋な日本人だ。

職業は探偵をしているーー武偵じゃないよ!人探しとがメインの探偵だよ。

黒髪・黒目、身長170センチの30代風だが実年齢は45歳。

前に一度、どんな若作りしてるの?と聞いたところ「別に何もしてないよ。強いて言えば、適度な運動かな」と笑いながら言ってたな。

 

「夕食作っておいたから、一緒に食べよう。カバンは預かっておこうか」

 

「ありがとうお父さん。じゃあ、よろしくね」

 

ファスナーが開いた状態のままの肩掛けバッグを渡した。

その際、中に入っている高校パンフレットが顔を覗かせていたので、

 

「おや、これは高校のパンフレットだね。どの学校にするか決まったのかい?」

 

父の目に止まった。

 

「うん、まあね」

 

「ーーそうか。遂にこの時が来たんだね」

 

何やら真剣な面持ちでパンフレットを見つめている。

やっぱり娘の将来を心配しているのかな?

でも大丈夫!将来、学校の先生になると決めましたから!

 

「どうしたの父さん?」

 

「いや、何でもないよ。それより、手を洗って来なさい。夕食を食べながら進路について話そう」

 

そう言われて洗面所に向かったーーカバンとパンフレットを預けたまま。

 

自宅は和洋折衷な為、和室もある。

私の家では食事はいつも、ここで食べることになっている。

和室用テーブルの上には2人分の夕食が置かれている。

今日は天丼だ。

家事や洗濯は父が全部している。

こうして食事を作るのも父の仕事だ。

えっ、母は何をしているかって?

母さんは海外で仕事ーー海外企業の相談役をしているので、普段は家にいない。

疎遠にならないよう電話もしているし、休暇には帰ってくる。

その際、父さんは腕によりをかけた料理を作るのだ。

この前、母さんが帰ってきた時は中華の満漢全席を作ったっけ......ちょっとやり過ぎ。

 

おっと料理のことを思うとお腹が空いてきた。

もうお腹ペコペコだよ〜早く食べよう。

私が席に座り手に箸を持ち、天丼に手をつけようとした時、

 

「零。もう決めたんだね」

 

突然、父さんが遮ってきた。

そこで止めないでよ。

進路で気を張ってたから、お腹が減り過ぎているから食べさせて!

ただでさえ美味しそうなんだから、早く食べたいよ!

 

「うん、もう決めたよ」

 

だから早く食べさせろマイダディ。

 

「なら、好きにしなさい。母さんも父さんも止めないよ。零の決めた道だからね。''自分の思ったようにやりなさい''」

 

パンフレットを見て察したのかな?

伊達に探偵をやってはいないね!流石はお父さん。

私が学校の先生になりたいのを賛成してくれるとは......

 

「受験の申し込みは父さんがやっておくから心配することはないよ。さあ、食べよう」

 

その言葉を待ってたとばかりに、私は天丼に食らいついた。

うん!空腹であればあるほど料理は美味になるのは本当だったね。

食べている間も父さんは何か言っていたが、私は食事に集中していて聞いてはいなかった。

 

 

 

 

 

受験当日

桜が咲く、とある学校の校門前にて

 

「何故よ!」

 

私は東京武偵高校の前で叫んだーーそれもこの学校の受験票を持って

いや、父さん何であなたはこの高校に申し込みをしたんですか⁉︎

私、将来は教師ーー学校の先生になりたかったのに......

この学校では教師になれそうにないよ。

 

「電話しよう」

 

カバンから携帯を取り出し、父さんに掛ける。

何でここにしたんだ!って言ってやる!

 

「出ない!何でこの日に限って......」

 

父さんは電話に出なかった。

やっぱり自分の口から直接言っておけばよかったよ......

これも全て美味しすぎる天丼のせいだ。

 

「はぁ、とりあえず中に入ろう」

 

このまま校門の前に立っていても邪魔なだけだし、中に入ってみよう。

申し込みもしてしまったし、このまま帰るわけにはいかない。

 

学校内は広く東京ドームくらいは余裕でありそうだ。

所々から硝煙の匂いがする。

道行く人ーーここの生徒だろうか?彼らの腰には拳銃がぶら下がっていた。

西部劇の中に迷い込んだ気分だよ〜、西部劇好きだけど現実となるとね。

見ていて暴発しそうだけど、武偵ともなれば扱いから手入れくらいしているよね。

 

「やばいよ。迷ちゃった......」

 

学校内をぶらぶらと歩いていると、完全に迷ってしまった。

受験会場は何処かな?

私は探偵科を受験のすることになっている。

強襲科と呼ばれるドンパチの激しい物騒な所ーー実技試験と違い、おそらくペーパーテストがメインだと思うから、建物内ーー校舎で試験を行う筈......

取り敢えず、誰かに聞いてみよう。

そう思った私は学校関係者を探し回った。

すると其れらしき人を発見。

ちょっとガラの悪く、スーツを着崩したーー前を開け、中にタンクトップを着たポニーテールの女性だった。

 

あの番組とは違うけど、第一学校関係者発見!早速、訪ねてみよう。

 

「あのすみません」

 

「何や」

 

ギロリと、睨みつけられた。

怖っ!おっと、冷静になれ。

見た目で判断しては失礼だよね。

ここはスマイル・スマイル......

 

「突然、すみません。私、本日この学校の試験を受けにきた者でして、実は受験会場がわからなくて......」

 

「ーー見たところ一般中やな、お前何科を受けるんや?」

 

「探偵科です」

 

「......ほう、そうか。ならこっちや、ついて来い」

 

そう言うと、顎をしゃくって来るよう促す。

あれ、意外と優しい?

やっぱり人は見た目ではないね。

 

「ありがとうございます。えーっと......」

 

「蘭豹や覚えとけ」

 

「はい、蘭豹先生」

 

女性ーー蘭豹先生の後をついて行く。

受験生をわざわざ受験会場に連れていってくれるなんて、この先生はきっといい人だ!やったね!

 

そして連れて来られた場所は、本校舎から離れた空き島と呼ばれる所だった。

あの蘭豹先生?ペーパーテストくらいなら本土でやれるのでは?

 

「何にボーッとしとる!早くこい!」

 

ひぇっ!怒られたよ⁉

鬼教官ですかあなたは?

また怒られるのは嫌なので、わたしは慌てて蘭豹先生の後をついて行く。

すると射撃場に到着した。

中では私はだけではなく、他に受験生の姿そして、

 

「よし、好きなモンとれ」

 

大量の銃があった。

ズラリと並ぶ、銃、銃の山。

一般人には馴染みのないものが当たり前のようにそこにあった。

 

「あの蘭豹先生、これは一体?」

 

「あぁん?何アホなこと聞いとるんやワレ!武偵が銃持たんでどうするや!」

 

な、なるほど......探偵科といえど、武偵は武偵。

武偵なら帯銃、探偵科も例外ではないのですね。

どれにしようか迷っていると、

 

「あ、これなら」

 

拳銃の中に見覚えのあるものが一つあった。

S&W M36

9mm口径の回転式拳銃

年季が入っているけど、ちゃんと手入れはされているようだ。

リボルバーって、カッコイイよね。

装弾数はオートマチックに劣るけど、シンプルな構造で信頼性が高い。

試しに触ってみよう。

ボディは鏡のように磨きあげられ顔が映るほどだ。

グリップは吸い付くように手に馴染む。

引き金は勿論、弾が入っていないことを確認し引いてみたが、問題はない。

その後もテレビ・映画・本などで知った拳銃の知識を頼りに点検してみる。

 

「ほお......(随分と手慣れとる。素人やない)」

 

「これにします」

 

「オートやなくてもええんか?」

 

「ご心配なく、これで十分ですよ」

 

「そうか......さあて良し全員拳銃は持ったな。一般中出身の貴様らには動かない的を狙ってもらう。その後で適正を見て試験内容を決めるから、さっさ撃てや! 武偵憲章第五条『行動に疾くあれ。先手必勝を旨とすべし』――既に試験は始まっているんやからな!」

 

いきなりですか⁉

周りを見ると、他の受験生はすでに発砲していたーー何発もの弾が的に撃たれていく。

耳あてなしで聞いていると、ここまでうるさいとは......鼓膜が破れそう。

早く、耳あて付けよう!

 

「ほら、サッサッと撃てや」

 

蘭豹先生が私の後ろにやって来た。

あの先生、何でそんなに睨みつけるのですか?綺麗なお顔が台無しですよ。

取り敢えず、今は射撃に集中しよう。

 

「あれ?点数表示がない」

 

的を見て見るとドラマなどで見る的とは違い、点数表示が書かれていない。

ただ人型の的がぽつんとあるだけだ。

人を撃つ想定だから、急所を狙えばいいかな?

ドラマでも急所は高得点だったし......

 

「好きに撃ってもいいのですか?」

 

「......やってみ」

 

先生からの了解も得たことだし早速、撃ってみよう。

いやー、緊張してきましたよ。

実際に拳銃を持って撃つとなると、手が震えそう。

でも、ここは気合いでなんとかしないとね!

パァン、パァン、パァン!と3発続けて撃った。

銃弾は的ーー人型の頭・喉・心臓部分に命中した。

ーーザワ、ザワ、ザワーー

周りの受験生が騒ぎ出した。

あれ、私なんかやばいことした?

 

「もう一度撃ってや」

 

蘭豹先生が命令してきた。

気のせいか声に怒気がこもっているような......なんか怖いよ!

 

「はい」

 

ーーパァン、パァン!

また続けて5発ーー今度は全弾撃ち尽くした。

的には穴は空いていない。

あれ、外したかな?

 

「ワレこっちこいや」

 

「あのせ、先生?」

 

蘭豹先生に肩を掴まれ、どこかに連行されて行く。

まさか、失格とか⁉

そのまま引きずられ、連れてこられた先は廃ビルのような場所だった。

周りには別の受験生の姿もあった。

射撃場にいた受験生とは違う雰囲気を放っている。

 

「あの先生これは?」

 

「ここで別の試験を受けろや。お前のホンマの実力確かめたる......」

 

射撃が終わったら、今度はペーパーテストかな?

私が頷くと、先生は「そこで待っとけ」と言って去っていた。

待っているのも暇なので周りを人達を見渡して見ると、

 

「せい!ハッ!ヤッ!」

 

「スライドよし、トリガーよし、リングハンマー......ブツブツ」

 

「......」

 

徒手空拳・イメージトレーニング・瞑想など様々な事をしていた。

あの皆さん殺気立ってませんか?いくらペーパーテストとはいえ、そこまで気を張らなくても......

立っているのもなんなので座れる場所を探す。

すると丁度2人がけのベンチを発見し、そこに座っていると、

 

「となり座ってもいいか?」

 

優男風のイケメンがやってきた。

この場にいる殺気立っているーーいかにもチンピラ風とは違う雰囲気を漂わせている。

 

「いいですよ。えっーと、貴方も受験生ですよね」

 

「ああ、そうだよ。君はどこの武偵中?」

 

席を一つ譲ると、

 

「武偵中?ああ、違うよ。私は一般中から編入試験で来たんです」

 

「一般中から......それは大変だね。見たところハーフかな?」

 

「ええ、日本人とイギリス人のハーフですよ。あ、名前は玲瓏館・M・零と言います」

 

「俺は遠山金次よろしく」

 

お互いに握手する。

それにしても、一般中で大変とはどういう意味だろうか?

これでも受験勉強はしてきたつもりだけど......

 

 

 

 

 

 

 




オリ主の名前から何をネタにしたかは、もうわかる人もいますよね。
使用する拳銃はイギリス製がいいかな......
この名前の方がいい何かネタがあれば感想よろしくお願いします。

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