私は教授じゃないよ。大袈裟だよ   作:西の家

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少し短めです。
現在、海外ドラマ『ゴッサム』を見て資料集めしてますが、地図とかあればいいのにと、思ったりしてます。


外伝:食後の後は観光?いいえ、しませんよ 相棒 理子編

理子視点ーー

 

料理を食べ終えたヘイゼルことヘイヘイはスーツの胸ポケットからシミひとつない、真っ白なハンカチを取り出し口周りを拭く。

食事中もそうだが、彼女は動作の一つ一つがどれも優雅で絵になる。

 

「さて、料理も食べ終えた事だし、今後の予定は決めてあるのかい?まさか、この街で観光なんて言わないでくれよ」

 

ヘイゼルは自分から見て向かい側ーーあたしの隣のソファで足を組んで座る零に今後のプランを訪ねる。

観光ねぇ、ここゴッサムに観光しに来るヤツなんていないよ。いるとしたら、余程のモノ好きか命知らずくらいだ。

 

「まずはゴッサム市警に挨拶ついでに事件の詳細を尋ねに行こうと思うんだ。レクターも同行してくれないかい?」

 

零は彼女に同行を願う。

まだ零はゴッサムで起きた誘拐事件について、大雑把にしか知らされていない。

情報収集の為にも地元警察に顔を出すのは正しい選択だろう。

 

「僕は大いに構わないよ」

 

「レクターがいれば非常に助かるよ。りこりんもそれでいい?」

 

「全然構わないよ。3人一緒に行動する方が楽しそうだし」

 

コンコン!

あたしの同行承諾を待っていたとばかりに、部屋のドアを誰かがノックしてきた。

誰だろう?このアパートにはあたし達3人と、大家のバートンくらいしか居ないし。

ガチャとドアを開けて入ってきた。あぁ、やっぱりバートンだ。

手には3つのティーカップを乗せたトレーを持っている。どうやら、食後の紅茶を淹れてくれたらしい。

 

「食後の紅茶よ。よかったらどうぞ」

 

バートンはあたし達が座るソファ近くのテーブルにカップを置く。

食後の紅茶か。あたしはまだ何も食べてないけど。

食べる前に零が窓から捨ててしまったのだ。見るからに美味しそうだったのにさ。本当にもったいない事をしてくれたよ。

そんな愚痴を零に溢しながら、あたしはバートンに一言お礼を言ってから出された紅茶を啜る。

ーーずずぅ

あっ、これ『アメリカンクラッシックティー』だ。

 

「姿なき女主人ーーバートンさんが現れた......あっ、紅茶ありがとうございます......ずずぅ」

 

「ありがとう婆や。ずずぅ......うん、美味し」

 

ヘイゼルと零がカップに口を付けて紅茶を啜る。

婆やって、バートンはヘイヘイの使用人って訳じゃないよね?

あたしは紅茶を啜りながら、そんな事を考えた、

 

「誰が婆やですか。私はここの大家であって、貴女の使用人じゃありません」

 

「怒らないでくれよ。婆や」

 

ヘイゼルは『婆や』という単語をワザとらしく強調して言う。

 

「あんまりふざけていると追い出しますよ」

 

バートンはそれだけ言って部屋から退室した。

 

「ねぇ、この部屋ってヘイヘイが借りてるの?てっきり、レイレイが借りてると思ったんだけど」

 

ヘイゼルに質問する傍ら、チラッと横目で零を見る。

 

「ああ、この部屋は僕のモノであり、ゼロのモノでもあると言えば分かるかな」

 

「ウーン、分かんない」

 

ぶんぶんとクビを振って、分かりませんアピールをする。

 

「そうだね......どこから話そうか。僕がこの部屋を借りて間もない頃、部屋の広さを持て余していてね。連帯保証と言うか......家賃を折半出来る''同居人''を探している時に、スカイプで知り合ったゼロが家賃を折半してくれると言ってくたんだ。そうだったよね、ゼロ?」

 

「そうそう、仕事くらいでしか利用しないのにね」

 

2人とも「ははは」と楽しそうに笑いながら話す。

懐かしい思い出に浸っている様子だ。

 

「仕事で?ヘイヘイはチェサピークの武偵だよね。ゴッサムにはよく来るの?」

 

ゴッサムとチェサピークは地理的にも離れている。

仕事とはいえアパートを借りる必要はないと思うけどな〜。あたしならホテルを借りる方を選ぶ。ヘイゼルは変わってるね。

そんなヘイゼルーースカイプで知り合った相手の家賃を折半してあげる零も十分変わってるが。

 

「仕事もあるけど、私用で度々来る時もあるよ」

 

「あれ?それは初耳だ」

 

「この街に何か思入れがあるの?」

 

「アーカムアサイラムを知っているかな?」

 

『アーカムアサイラム』ーーゴッサムシティにある精神治療施設。

この街の犯罪者、俗にヴィランと呼ばれる存在は精神を病んでいる者が多く、捕まるとここに刑の執行を受ける代わりに送り込まれるので、事実上の刑務所と同じ。

なお正気の犯罪者に対しては、ブラックゲート刑務所という通常の収容施設がある。

 

「僕の母方の叔母が精神科医として昔、そこに勤めていてね。その縁あって、僕も精神科医として呼ばれる事があるんだよ」

 

「へぇ〜、そうなんだ。ヘイヘイの叔母さんは今も勤めているの?一緒に仕事したりして」

 

アーカムアサイラムは『イ・ウー』曰く、「あそこは早い話、キチ◯イ病院」らしい。

おまけ、あの病院の創設者である医師が治療にあたった犯罪者に妻と娘を殺害されたことから、徐々に狂気に陥いり、その数年後、治療中の事故に見せかけ、その犯罪者を殺害。その後、完全に異常をきたし、患者として収容され狂死したバックストーリー付きだ。

 

「いいや、随分前に職場恋愛が原因で辞めてしまった。職場恋愛は破滅のもとってね」

 

ずずぅと紅茶を啜る。

破滅って、正しくは破局のもとでしょう。どっちらも変わりないけど。

ヘイゼルの叔母は同じ職場の同僚に恋をした。そして、破局に終わったか。少し可哀想と思えてくる。

 

「さて、話はこれくらいにしてゴッサム市警に行こう」

 

「やれやれ、やっと終わったか。君は自分の話となると長くなるんだから」

 

すっかり蚊帳の外だった零が、呆れ顔で飲み終わったカップをテーブルに置く。

除け者にされていじけているのかな。

 

「それを君が言うかい?この前なんかスカイプ越しで、自分の追ってる事件の詳細を3時間も話しただろう。時差の関係上、こっちは夜中だというのに」

 

「正しくは3時間6分だよ。ヘイゼル」

 

追ってる事件だと。零のヤツ、『イ・ウー』の事をヘイゼルにも話したのか?

あたしは零だけじゃなく、目の前にいるヘイゼル・レクターも要注意リストに加える。

一応、こいつの事を『教授』に報告しておくか。

 

 


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