私は教授じゃないよ。大袈裟だよ   作:西の家

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時間が欲しい。
何故、私は学生時代にこのサイトに出会わなかったのだ‼︎


新しいクラスメイト

零視点ーー

 

ライカちゃんと別れた私は新しいクラスーー2年A組に向かった。

教室のドアを開け、入室する。

 

「みんな!おっはよー‼︎」

 

教室に入ると、私は新しいクラスの仲間ーー新しい顔のクラスメイト、前から同じクラスメイトに挨拶する。

皆「おはよう!」「零、おはよう!」と各々、返してくれる。

一通り、挨拶し終えた私は自分の席に向かう。私の席は金次君の前だ。

 

「金次くーん。朝、会ったけどおはようございます」

 

私は金次君の耳元で、手をメガホン状にして挨拶するが、彼は無反応だ。憂鬱な顔をして頭を抱えているだけだ。

 

「おーい、金次くーん?もしもーし」

 

ダメだ。これは重症だね。原因は何かな?

さては、久しぶりにヒステリアモードになって恥ずかしいのかな?

あんなチビピンクに興奮するなんて、許容範囲が広いね。罪な男ですな〜。あっ!まだベルトしていない。返されてないのかな?

 

「よっ!零。おはよう」

 

「あっ!おはよう武藤君」

 

金次君の隣ーー右隣の武藤君が挨拶してきた。

相変わらず、優しさが滲み出るいい男だね〜。挨拶もしっかりしてくるしさ。

 

「キンジの奴、どうしたんだ?ずっと、こんな感じでよ」

 

金次君をまじまじと見つめる。

 

「ツッコまない方が彼の為だよ」

 

私の答えに武藤君は頭の上に「?」マークを浮かべる。

きっと今、金次君は過去の出来事を「うわー‼︎」という気持ちで振り返っているだろうからさ。

 

「ヤッホー!レイレイ!」

 

「おはよう。りこりん」

 

金次君の左隣の席に理子ーーりこりんが座ってきた。どうやら、ここが彼女の席のようだ。

やって来て早々、挨拶してくれるのは嬉しい。

 

「聞いたよレイレイ。キーくんとユキちゃんを車に乗せて、登校する時にカージャックにあったんだって?」

 

りこりんが開口一番にそんな話題を持ち出して来た。

彼女も探偵科に所属しているから、報告くらい届いているか。

おまけにりこりんは探偵科一の情報収集能力がある。言うなれば現代の情報怪盗だ。

でも、カージャクか......正直、今は思い出したくない内容だよ。

 

「うん、そうだよ......」

 

「珍しいね。レイレイがカージャックされるなんてさ。何時ものなら、犯人の裏をかいて逮捕に追い込んじゃうのに」

 

「マジかよ⁉︎もしかして、キンジの奴が憂鬱なのは、それが原因か?」

 

「武藤君は知らないか。りこりんは知ってるかも知れないけど......」

 

私は朝の出来事を語った。車で金次君の寮に向かった事。白雪さんと共に学校に向かった事。カージャックでのやり取り。そして、アリアとの出会いを......

 

「そうか......ポルシェ大破しちまったんだな」

 

「ごめんね武藤君。折角、武藤君が見つけて来てくれた車なのに」

 

「いやいや、お前が謝る必要はねぇよ。悪いのはカージャック犯だろ」

 

「うーん、そうだよね」

 

「そうだって!レイレイが気を落とす事ないって!」

 

気を落とす私を、武藤君とりこりんが励ましてくれた。

りこりんが私の肩をパンパンと叩く。

 

「ねぇ、レイレイ。因みにカージャックを捕まえる予定はある?」

 

りこりんが突然、そんな事を聞いてきた。

どうして聞きたがるの?りこりんも探偵科だから気になるのかな?

 

「そりゃ、当たり前だろうよ理子。なんたって、零は自分の愛車をスクラップにされたんだしよ!なぁ、零?」

 

「分かるかい武藤君⁉︎そうとも......私の愛車を......フロントガラスを直せば、まだ使える筈だったアマガエルを......蜂の巣にしたカージャック犯を私は必ず捕まえる......!」

 

私は握り拳を作りながら、宣言する。

あー、ダメだ。朝の事を思い出すとイライラしてきた。カージャック犯もそうだが、愛車がスクラップになる原因を作ったアリアにもイライラしてきたぞ。

 

「だ、だよねー。そうだよねー。あっ、そうだ!ねぇ、ゴウくん。これを気にレイレイに同じ車ーー新車を見繕ってあげたら?足がないとレイレイ大変だろうし」

 

「おっ!そうだな。よっしゃ!任せとけ!車輌科のツテを使って見つけて来てやるよ」

 

「えっ?いいのかい武藤君?武藤君も忙しいんじゃ......」

 

「気にすんなって!零には何時も世話になってるしよ。新車の一台や二台見つけて来てやるよ。後、サービスで改造もしてやるぜ〜」

 

「ありがとうね武藤君。それじゃあ、お願いするよ。でも、改造は勘弁して」

 

自然と3人で笑っていた。

りこりんが話を持ちかけてくれたおかげで、武藤君に新車の予約する事ができたよ。正直、お願いするのは気が引けてたんだよね。

助かったよ。りこりん。

暫く、3人で会話をしていると、

 

「は〜い。みんな、席に着いてくださーい」

 

探偵科担当のゆとり先生が入って来た。どうやら、彼女が私達のクラス担任らしい。

あの人は、武偵高の常識人とされているが、私は騙されない。だって、あの人は心の内では戦いを求めているのだもん。

 

「ねぇレイレイ。時間が空いたらでいいからさ、そのカージャック犯について意見交換しない?りこりんも探偵科だから、犯人が気になってさ」

 

りこりんがまた、カージャック犯についての話題を持ち出してきた。

 

「随分と気になるようだね〜りこりん」

 

「うん!レイレイが犯人について、どれだけ情報を掴んでいるか気になっちゃってさ」

 

りこりんがお願いオーラ全開で私にねだる。

情報怪盗だけに捜査の進行状況が気になるのかな?

 

「いいよ。今度、時間が空いたらでいいかな?」

 

「モチのロンだよ!じゃあ、何時ものカフェでね!」

 

りこりんと約束する。

何時ものカフェーー人工島にある私とりこりんの行きつけのカフェだ。落ち着いた感じがあって私は気に入っている。

メニューも豊富......イヤな食べ物を思い出したーーももまんだ。

誰も聞いてないけど、諸君!私はももまんが嫌いだ。大嫌いだ。もの凄く嫌いだ。

何なのアレ?桃の形をしたあん饅だけど、食べたら下痢になったよ。お店の食品衛生はしっかりしているから、食中毒じゃないようだけどさ。どうやら私の身体はももまんを受け付けないようだ。

食べたせいで、お手洗いで1時間も格闘する事になったよ......あれはアレで嫌な思い出だ。それ以来、私はももまんを見ると吐き気がする。

 

「うふふ。じゃあまずは3学期に転入してきたカーワイイ子から自己紹介してもらっちゃいますよー」

 

ゆとり先生がHRの前置きをしてきた。

先生には失礼かもしれないが、私は金次君をつんつんと突き遊ぶーー相変わらず無反応だ。

転校生ね......3学期辺りは金次君と一緒にコンビを結成した時期だ。一緒に捜査していたから、転校生には気を止めてなかったなー。

そういえば、あのピンク頭ーーアリアは見た事がない顔だったね。

 

「先生、あたしはアイツの隣に座りたい」

 

何だか甲高いーーりこりん風に言うとアニメ声が聞こえてきた。

転校生の声かなーーアリアもこんな感じの声だった......な?

私はイヤーな予感がして前を見てみると、ヤツはいた。

ーー神崎・H・アリアだ。

クラスの生徒たちは一瞬絶句して、それから一斉に金次君を見て......わぁーっ!と歓声を上げた。

アリアの登場に気づいたのだろうーー金次君はイスからズリ落ちた。私もイスからズリ落ちたい気分だよ......

 

「な、なんでだよ......!零、教えてくれ。これは夢だよな?悪い夢だと言ってくれ。頼む......!」

 

「あぁ、悪い夢だよ。悪夢さ。私達は悪夢に囚われたのさ......あのピンクの悪魔のね」

 

金次君が現実逃避し始めた。残念だがこれは現実だよ。

何故ヤツが?転校生とはアリアの事だったか。クソッ!会長として調べておくべきだった。

しかし、いきなり金次君の『隣に座りたい』だと?バカめ。寝言は寝てから言え。誰がどう見ても、金次君の隣には座れ......

 

「よ......良かったなキンジ!なんか知らんがお前にも春が......いや、もう来ているか?まあ、いいか!先生!オレ、転校生さんと席代わりますよ!」

 

まるで選挙に当選した代議士の秘書みたいに金次君の手を握ってブンブン振りながら、右隣に座っていた武藤君が満面の笑みで席を立つ。

武藤君......君は死にたいのかい?よりにも寄ってアリアと席を変わるとは......またヒャッハー化させて......イヤ、ダメだ。彼には私の新車を見つけてもらわないと。

 

「あらあら。最近の女子高生は積極的ねぇー。じゃあ武藤くん、席を代わってあげて」

 

ゆとり先生は嬉しそうにアリアと金次君を見てから、武藤君の提案を即OKしてしまった。

 

わーわー。ぱちぱち。

「零にライバル登場⁉︎」「レイからキンジを奪いに来たのか......⁉︎」「チャレンジャーだ!」

教室はとうとうお祭り騒ぎを始めてしまった。

ちょっと待ってよ。ライバル?金次君を奪う?ナンノコト?チャレンジャー?私に?こんなピンク頭が?

私はゆとり先生に抗議しようとした時、

 

「キンジ、これ。さっきのベル......」

 

金次君を呼び捨てにしつつ、第2グランドで金次君が貸したベルトを放り投げようとした、アリアと目が合った。

 

「何でアンタがここに居んのよ‼︎」

 

「私の教室だからだよ。文句があるのかい?」

 

「大アリよ!よりにもよって、アンタと同じクラスなんて......最悪よ」

 

「あぁ、奇遇だネ〜私もだよ」

 

バチバチとお互いの目から火花が散る。

教室は又しても、お祭り騒ぎになった。

「えっ?ナニコレ」「あんなレイさん初めて見るよ」「あの転校生は一体何者?」「スゲェー、武偵高の女王とガン飛ばしてる」

今はそれどころじゃない。よりにもよって、同じクラスとは......教室じゃなくて、あの子ーースミスが経営している殺人ホテルに放り込んでやりたいよ。1日も持たないだろうーー運が良ければ2日は持つかもね。

 

「理子分かった!分かっちゃった!ーーこれ、フラグばっきばきに立ってるよ!」

 

金次君の左隣に座っていたりこりんが、ガタン!と席を立った。

 

「キーくん、ベルトしてない!そしてそのベルトをツインテールさんが持ってた。これ、謎でしょ⁉︎でも理子には推理できた!できちゃった!」

 

りこりんが何か分かった様だ。

ほーう、ならば聞かせてもらいましょうか?峰 理子君。

 

「キーくんは彼女の前でベルトを取るような何らかの行為をした!そして彼女の部屋にベルトを忘れて、自分の部屋に戻った。そして、そんなキーくんをレイレイは朝迎えに行った際、知ってしまったーーキーくんが転校生さんに誘惑されたと!つまり3人はーー熱く激しい、三角関係の真っ只中なんだよ!」

 

ツーサイドアップに結ったゆるい天然パーマの髪をぴょんぴょんさせながら、りこりんは推理をぶち上げる。

りこりん......私は知ってるよ。金次君がコイツの部屋に行ってない事も。そんな事実はない事もさ。でも、何だろう?りこりんの推理結果を聞くと、本当にそんな気がしてきた。凄くイラッとする。

りこりんの推理にクラスは大盛り上がりしてしまった。

「キ、キンジがこんなカワイイ子といつの間に⁉︎零さんがいるにも関わらず......!」「影の薄いヤツだと思ったが、三股かけてたとは......」「零さんを裏切るなんて最低......!」「フケツ!」

顔見知り率は高いけど、新学期なのに、息が合いすぎだよ皆。

 

「お、お前らなぁ......俺と零は」

 

「そ、そうだよ......私と金次君は」

 

あれ?何か顔が熱くなってきた。

 

ずぎゅぎゅん!

 

鳴り響いた2連発の銃声が、クラスを一気に凍り付かせた。

ーー真っ赤になったアリアが、二丁拳銃を抜いて撃ったからである。

 

「れ、恋愛だなんて......くっだらない!」

 

広げたその両腕の先には、左右の壁に1発ずつ穴が開いていた。

コラッ!誰が直すと思ってんだテメェ。ここがスミスのホテルだったら、あの子キレるな。

 

「全員覚えておきなさい!そういうバカなことを言うヤツには......風穴あけるわよ!」

 

又しても奇遇だネ。バカな行動をする君に、私は風穴あけたいよ。

 




とあるホテルの一室にて

「はぁー、モリモリ。また、遊びに来てくれないかなー。お友達沢山連れて」

ダブルベッドでゴロゴロ寝返りを打つ少女は暇そうにしていた。
綺麗な長い黒髪を羽のようにベッドに広げている。着ているフリル付きの白シャツと黒のスカートは皺になっている。目は爬虫類のような真っ赤な色をして、部屋の天井をジーッと眺めている。

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