私は教授じゃないよ。大袈裟だよ   作:西の家

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最初の一発は某海賊映画のネタです。


神崎・H・アリアァァァァァァァァ‼︎

零視点ーー

 

「神崎・H・アリアめェェェェェェェェェェェッ‼︎」

 

「零さん落ち着いてッ‼︎」

 

私は金次君とアリアがいなくなった第2グランドのど真ん中で、天に向かって絶叫した。その私に白雪さんが駆け寄る。

側にはバラバラになったセグウェイ、そして、そのセグウェイの銃撃により、廃車となった私の愛車ーーポルシェ356aがあった。車体はUZIの9ミリ弾によって穴だらけ。フロントガラスを始めとした窓ガラスは粉々。びらんと開いたボンネットからは煙を上げるエンジンが顔を覗かせている。車内には割れた窓ガラスと9ミリ弾が散乱しているーー誰がどう見ても、廃車と言うだろう。

 

「うわぁぁぁぁぁ‼︎私は神を憎むッ‼︎この世に神もクソもあるものかぁぁぁぁ‼︎」

 

「零さん本当に落ち着いてッ‼︎女の子がそんな言葉を使っちゃダメだよ‼︎」

 

グランドの土に手を付け、さっきまでの光景を振り返る。

これも全て、神崎・H・アリアのせいだ‼︎あのピンク頭、セグウェイがグランドに侵入してきた途端、よりにもよって私の愛車を盾にしやがった‼︎グランドの倉庫には防弾性の運動器具があるにも関わらずにね!

私の愛車を盾にし、セグウェイと銃撃戦を繰り広げる上で、金次君はアリアでヒステリアモードになるしーーまあ、彼のおかげでセグウェイは全滅できたけどさ......おまけにホックが壊れて、困っているアリアに自分のベルトを貸す始末。

ヒステリアモードになった金次君に揶揄われ、顔を真っ赤にしたアリアは、逃げる金次君を追って行ったが、

 

「私の......私の.......アマガエルがぁぁぁぁ!」

 

「零さん......車は仕方ないよ。また車輌科ーー武藤君たちにお願いすれば、きっと同じ車を探してきてくれるよ。だから、ね?」

 

白雪さんが慰めてくれる。

その優しさに思わず、私は彼女を抱き締めてしまった。

胸の中でオイオイと泣いてしまう。

 

「あの車はカージャクの証拠品として、探偵科と鑑識科に調べてもらおう?零さんもそれでいいよね?」

 

「.....うん」

 

私の承諾を得て、白雪さんは携帯を取り出したーー探偵科と鑑識科に連絡する為だろう。

神崎・H・アリア......そして、『武偵殺し』この借りは必ず返す!

 

 

金次視点ーー

 

アリアから逃げた俺は、武偵高に到着した。

零が車を出してくれたおかげで、始業式には間に合いそうだ。

校門を潜ろうとした時、

 

「誰かー!そいつらを捕まえてくれー‼︎」

 

校門外ーー通りから誰かが叫んだ。視線を移してみると、俺のすぐ側を二人乗り原付バイクが通り過ぎた。

チラッと見たが、乗っていたのは、如何にもガラの悪いヤツらだった。その後を武偵高の生徒が追うーー見た感じ、強襲科に所属する後輩だな。さては、護送中に捕まえた犯人に逃げられたな。しかも、原付バイクーー逃走車まで使われるとは......大方、近くあったモノを盗んだか。

見過ごす訳にもいかないので、俺は新学期の始まりがてら、加勢してやろうと思った。その時ーー

 

「ヒとーつ。人の世の生き血を吸い」

 

「ふたーツ。ふらちな悪業三昧」

 

俺の後ろからドロロ〜とした、聞き慣れた声が聞こえてきた。

こ、この声は⁉︎

嫌な予感がしながらも、そーっと振り返ってみると、案の定ソイツらがいた。

1人は無造作に伸ばした金髪にエンジニアブーツ。首筋には撃たれたのだろうーー弾痕が3発見える。

もう1人は傷んだ金髪を伸ばし、頭にサングラス。足にはジャングルブーツを履いている。こちらの首筋には交差するように3本の切り傷が見える。

2人とも武偵高のセーラー服を着ているが、どちらも独特なダメージ加工を施しており、正直目のやり場に困る。

 

「ボニー!そしてクライド⁉︎」

 

強襲科の問題児姉妹ーーボニーとクライドである。

去年の秋頃にアメリカから留学して来た、強襲科2年の双子の姉妹である。

 

「ミいーつ。醜いこの世の悪を倒してあげよう!」

 

姉妹の片割れーークライドがガチャリと構えたのはRPGだった!

RPGーーソ連、ロシアの対戦車擲弾。RPG-2以降は対戦車擲弾発射器とされている。

第二次大戦中にドイツ軍で使用されたパンツァーファウスト250がRPG-2の原型として模倣され、その後RPG-7に改良進化され、現在も数々の発展改良型が存在している。

おい⁉︎ちょっと待て!まさか、お前らそれで原チャリを撃つのか‼︎

俺は慌てて、止めに入るが、

 

「オれたちゃ、処罰はしないぜ......処刑してやる‼︎」

 

非情にもクライドはトリガーを引きーードパ!

RPGーー弾頭は放たれ、キィーンと逃走する原付バイクに、

ドガーーーーンッ‼︎

停車していた周りの車を巻き込んで命中した。

命中した場所ーー辺りには黒煙が上がっている。周りにいる武偵はただ呆然としている。

 

「ヨっしゃー‼︎大命中だぜーー‼︎」

 

「さすガ俺の片割レ。よくやっタ‼︎」

 

姉妹は満面の笑みで「ヘイ!ヘイ!」とハイタッチしている。

そんな2人の態度に俺は思わず、

 

「よくやったじゃねよッ‼︎なんて事しってんだ、おバカ姉妹‼︎」

 

「おっ!キンケツじゃねぇカ」

 

「Hello.キンケツ」

 

怒鳴り散らしてしまった。

しかし、お馬鹿姉妹はケラケラした態度で挨拶してきた。

くそッ‼︎ナメやがって。相変わらずキンケツと呼んでくる。

この姉妹が俺の事をキンケツと呼ぶのには訳がある。

あれは前に零が「金次君の名前って、『次』からにすいを取ると、金欠になるね」と笑いながら言いやがった。その会話を偶々この姉妹が聞いていたのだ。それ以来、この2人は俺の事をキンケツと呼んでくる。

この姉妹にナメられるのは零のせいだ!

 

「原チャリをRPGで撃つヤツがあるか‼︎思い切り、9条破りじゃねぇか!」

 

「ピーピー騒ぐなヨ、キンケツ。安心しろヨ、ちゃんと死なねぇよう火薬の量を減らしたからサ」

 

「オまけ、衛生科の連中を呼んでおいたからよ」

 

クライドが指差す方向には、救命セットを抱えた衛生科の連中が大慌てで駆けつけて来た。

全員、まさかこの様な事態になるとは思っていなかったようで、顔面が蒼白だ。

現場に到着して早々、救命に当たる。

 

「これで何度目だよ。やり過ぎにも程があるぞーーこの前は車で逃走する犯人をバナナマシンガンで車ごと撃つわ。さらにその前は、銀行強盗を車で跳ねて捕まえるわ。どれだけ問題行動を起こせば気が済むんだ?退学になっても知らんぞ」

 

俺の知る限り、この姉妹がやらかした事は沢山ある。

1台の逃走車を捕まえる為に、一般車両10台を巻き添えにする。

犯人が立て籠もるビルのフロアに、『マトリックス』のワンシーンさながら、ヘリからミニガンを発砲する。

その逆、『ターミネーター2』のようにビルの1フロアから、他の武偵車両を巻き込んで、犯人の車両をミニガンで破壊。

上げるだけでもキリがない。

 

「何だよ〜シんぱいしてんのか〜コイツ〜」

 

「ヤけるぜ〜このこの」

 

両サイドから俺の頬をツンツンと突いてくる。

ええい!やめい!鬱陶しい。

間近で見るが、コイツら本当に高校生ーー同い年か?外国人は日本人より年上に見えやすいから、年上に見えるだけかもしれんが.......

 

「コラァァァ‼︎また、お前らかぁぁぁぁ‼︎」

 

俺らの後ろーー校舎の方から聞き慣れた怒鳴り声が響く。

この声は蘭豹だ。

ズンズンと走ってきた蘭豹はお馬鹿姉妹にゴツン、ガツン!と拳骨を食らわせた。

 

「いってえナ⁉︎何しやがるんダ!」

 

「イきなり可愛い生徒に鉄拳とか頭イッテんのか⁉︎」

 

「何が可愛い生徒や!あとな、頭イッとんのはお前らの方じゃあ!逃走犯捕まえんのに、ロケット砲ぶっ放すアホがおるか‼︎」

 

「「はい!ここにいます」」

 

手を上げてアピールする2人に蘭豹は再び、鉄拳をお見舞いする。

ナイスタイミングだぜ蘭豹。このお馬鹿姉妹を止められるのは、あんたしかいないぜ。蘭豹の登場に周りの生徒は安堵する。

どうやら、他の連中もお馬鹿姉妹をどう扱うか困っていたようだな。

 

「来いお前ら!覚悟せぇよ、教務科で反省文1000枚書かせたる‼︎」

 

「やめてくレェェェェ!俺は反省文が嫌いなんダァァァ!」

 

「コろさないでェェェェ!俺は反省文アレルギーなんだぁぁぁぁ!」

 

「あー‼︎喧しい!黙って来い!」

 

「「Help キンケツ‼︎」」

 

お馬鹿姉妹は蘭豹にずりずりと引き摺られながら、連れて行かれる。

自業自得だ馬鹿め。あとよ反省文アレルギーって、何だよ。そんなアレルギーがあってたまるか。

いかん。お馬鹿に付き合ったせいで時間を取られた。

このままだと始業式に遅れるぜ。

俺は始業式のある体育館に急いだ。

 

 

 

零視点ーー

 

武偵高校にてーー

 

始業式には白雪さんと共に何とか間に合ったーー生徒会長と副会長が遅刻したらマズイからね。

体育館で会長として、新たな学校生活・挨拶を終えた私は体育館を後にすると、

 

「零先輩!おはようございます!」

 

「えぇ、おはよう」

 

「零会長。どこに行くんですか」

 

「新しい教室だよ」

 

「途中までご一緒してもいいですか?」

 

「うん、いいよ」

 

「先輩。私、クッキー焼いたんです!よかったら食べて下さい!」

 

「ありがとう。頂くわ」

 

「今日も綺麗な黒髪ですね!」

 

「君の茶髪もね」

 

体育館を出て早々、後輩ーー強襲学科・諜報学科・探偵学科の生徒達に取り囲まれた。

まあ、この光景は生徒会長に就任してからは、もう慣れた事だ。

 

「ハイハイ!みんな〜お話は昼休みに聞いてあげるから、教室に向なさーい。遅れると、怖ーい先生の雷が降ってくるぞ♪」

 

「「「はい!零先輩!」」

 

後輩達と一通り話し、ある程度話し終えると皆を教室に向かうよう誘導する。

 

「ははは、皆、素直で可愛いね」

 

私は後輩を見送ると、再び教室に向かう。その際、朝のやり取りを思い出す。

学校に到着して、カージャクについて教務科に報告ーー私の愛車は証拠品として押収された。

武藤君にお願いして、同じ車を探してもらおう。アレは非常に気に入っているのだから......

新しいクラスーー2年A組の教室に向かう為、一般教科クラスがある校舎を歩いていると、

 

「零先輩!」

 

後ろから声を掛けられた。振り返ってみると、

 

「あっ、ライカちゃん」

 

スラリとした身長165㎝。金髪をポニーテールに結い、勝気そうな翡翠色の瞳をした、男勝りな女子ーー強襲科の一年生。火野 ライカが私の後ろにいた。

彼女とは今年の2月頃から顔見知りだ。正確にはモランが紹介してきてくれたんだけどね。いや〜紹介してきてくれた時は嬉しかったなーーモランに友達が出来てたからさ。

 

「おはようございます!始業式のスピーチお見事でした!」

 

「ははは、ありがとうね。ねぇ、ライカちゃん。そんなに畏まらなくても良いんだよ。もっと軽い感じで接してきてよ」

 

「そ、そうすっか?なら、そうします」

 

まだ、少し硬いけどいいか。

確か彼女はアメリカ人と日本人のハーフだったね。彼女とは仲良くできそうなんだよね〜。同じハーフだからかな?

 

「そういえば、モランとは仲良くやってる?あの子たら、プライべートの事は余り話さないから困ってるんだよね〜」

 

「先輩、まるでモランのママみたいすね。モランとは同じ強襲科とあって仲良くやってますよ。射撃とかじゃ、見習う事もあったり勉強になりますよ」

 

ライカちゃんはモランを褒め称える。

へぇ〜モランは強襲科で慕われているんだね。安心したよ。

 

「知ってますか先輩。アイツ、強襲科の女子に大人気なんすよ。中性的な顔もそうだけど、キリッとして性格が女子にウケるみたいで」

 

「それは始めて知ったよ。なるほどーーモランは強襲科ではアイドルなんだね」

 

「あー、まあ、そうも言えますね......」

 

ライカちゃんが苦笑いしながら、目をそらす。

うん?どうしたんだい?私、変な事を言ったかい?それにしても、モランがアイドルかー。

私はモランがアイドルーー可愛らしいファッションに身を包んで、ステージで歌を歌う光景を思い浮かべる。

今度、モランにお願いすればやってくれるかな。

 

「あっ!そうだ、零先輩。先輩は戦姉妹は誰にするか決めてるんですか?」

 

ライカちゃんが尋ねてきた。

戦姉妹とはーー特定の先輩と後輩が2人で活動する、徒弟制度。

通常は下級生から教務科を通して『あなたの徒弟になりたい』と上級生へ申請を上げ、上級生が下級生をテストし、それに合格すると晴れてコンビを組ませてもらえるものだ。

それが男子同士の場合は戦兄弟、女子同士の場合は戦姉妹と書く。

これは上級生・下級生共にメリットのある制度で、戦姉妹になると先輩は後輩に無償で仕事を手伝わせる事ができ、後輩は先輩から技術を学ぶことができる。だが、警察に準ずる活動も行う武偵の仕事は......荒事が多い。出来の悪い後輩を戦妹にしてしまったために、命を落とすリスクだってある。なので、先輩側は後輩の選抜を慎重に行うのが通例だ。

私が戦妹を誰にするか気になる視線を向けてくる、ライカちゃんに私は、

 

「おや?ライカちゃんは聞いてないのかい?私の戦妹はモランだよ」

 

「えっ⁉︎あたし、聞いてないすよ。モランは一言もそんな事、あたしに言ってこなかった」

 

ライカちゃんは目を見開いて仰天している。

 

「まったく......あの子ったら、そんな重要な事をクラスメイトーーそれも友達に言ってないなんて。ごめんねライカちゃん。モランを許してあげて。さっきも言ったけど、あの子はプライベートの事をあまり言わないから」

 

「そんな!先輩が謝る必要ないすよ。それくらいでモランを嫌いになりませんって」

 

ちょっとショボーンとした声で謝る私に、ライカちゃんはアワアワし始めた。見ていて可愛いね。

 

「ありがとうね。ライカちゃん」

 

「いいですって、それくらい......あっ!そうそう!先輩、戦妹申請はモランから申し込んで来たんですか?」

 

「そうだよ〜」

 

私は戦妹申請ーー当時の事を思い出す。

アレは確か、私が寮の自室で同人誌「なかよしキョウダイ」を書いていると、モランが突然、部屋に入ってきて「主‼︎私を......私を戦妹にしてくださいッ‼︎」と申請書を持ってリビングーー私の前に土下座して懇願してきたのだ。

突然の事に私はポトリとペンを落としてしまったっけ。

懇願するモランは凄まじい気迫だったなーーあの状態で「やだ」と言ったら自決するくらいに......

モランの気迫に負け、私は「いいよ」と言って、申請書にサインしてあげた。すると、モランは満足したのか「我が生涯に一片の悔いなしッ‼︎」と叫び、号泣しながら拳を天井に向けて上げたーーその後、武蔵坊弁慶のように立ったまま気絶した。

そういえば、モランが戦妹申請してきた時期と、探偵科に転科した金次君と私が本格的にコンビを組んだ時期が重なるな.....偶然だよね?

 

「どんなテストをしたんですか⁉︎零先輩の事だから、きっと難解なテストだったんですよね!くそッ〜モランが羨ましいぜ。零先輩の戦妹になれるなんて......!」

 

「あー、まぁね(実際はテストも何もしてないけど)」

 

今度は私が苦笑いして答えた。

モランの能力は発展途上だし、戦妹にして損はないーー鍛え甲斐がある。それに手元に忠実な部下がいるのは、いい事だしね♪

 

「あっ、先輩。モランについてなんすけど」

 

ライカちゃんが何か思い出したようだ。

 

「モラン、何かあったんですか?」

 

「何かあったと言うと?」

 

「いや、実は......アイツ、今日ボロボロの状態で登校してきたんすよ。どうしたんだって、本人に聞いたら『私の邪魔をするヤツと戦ってきた』って、言うですよ。何か知らないですか?」

 

ライカちゃんの報告に私は思う事があったら、

そういえば始業式で見かけたモランは制服と髪が乱れていた気がする。真面目な性格のモランにしては変だーーまるで、ひと暴れしてきたかの様だった......

 

「ごめんね。私は知らない。でも、報告してくれてありがとうね、ライカちゃん。後で私の方でモランに尋ねてみるよ」

 

私はニコッと笑顔でライカちゃんにお礼を言う。

大切な戦妹兼部下のモランについて教えてくれたのだ。これくらいはお礼をしないとね。

 

「ふぇ⁉︎いやいや!いいすよ!ただ、あたしは友達が心配で......!」

 

「ははは、もう!ライカちゃんは可愛いね」

 

「か、か、可愛い......⁉︎」

 

ライカちゃんはボン!と、白雪さんの様に顔を真っ赤にして、テンパり始めた。

 

「ははは、あっ!そろそろHRが始まるね」

 

私は時刻が気になり、ポケットから懐中時計を取り出し時間を確認するーーこの懐中時計はアメリカのオークションで買った。

時刻はもうすぐHRが始まる頃だ。少し話し過ぎたかな。

 

「お話しできて楽しかったよ。今日も一日、学校頑張ってね」

 

「あっ、はいッ!」

 

私は「バイバイ」と言って、ライカちゃんと別れる。

HRが始まるし、急がないと!

 

 

別視点ーー

 

零と別れたライカは、暫くその場でボーッとしていた。

 

「あっ!ライカ、ここに居たんだ」

 

「探しましたよライカさん」

 

ライカの後ろから、同じクラスメイトーー間宮 あかりと佐々木 志乃が現れた。どうやら、ライカを探していたようだ。

 

「ねぇ!ライカ!ライカったら!」

 

あかりはライカを呼ぶが、当の本人は心ここに在らずだ。

 

「うおっ⁉︎あっ、あかり。それに志乃も」

 

「どうしたのライカ?ボーッとしちゃって」

 

「そうですよ。ライカさんらしくない」

 

「あっ、いや、ちょっと零先輩と話をしててよ」

 

「零先輩?誰なのソレ?」

 

あかりはコテンと首を傾げる。零が誰か本当に知らない様だ。

 

「って、あかり⁉︎お前、零先輩を知らねぇのかよ」

 

「う、うん」

 

「零先輩と言うのは、この東京武偵高校の生徒会長を務めるーー探偵科2年の玲瓏館・M・零さんの事ですよ。あかりさん」

 

零が何者かわからないあかりに志乃が解説する。

 

「というか、今日の始業式の挨拶してたじゃん。その人だよ」

 

「あ、それなんだけど......居眠りしちゃって聞いてなかったんだよね」

 

あかりは「ははは」と笑いながら、答える。始業式ーー体育館で立ったまま居眠りを決め込むのは、ある意味で根性がある。

 

「あかり......お前、ある意味スゲェな。零先輩のスピーチで居眠りするなんて......」

 

「ねぇ、零先輩って、どんな人なの?武偵高校の生徒会長をやってるって、事は分かったけど」

 

「えっーと、確か3月の役員選挙に立候補。その時、同じく立候補した星伽 白雪先輩と会長の座を巡って争ってました。ねぇ、ライカさん」

 

「ああ、よく覚えてるぜ。選挙期間は、それでお祭り騒ぎだったしな。零先輩と白雪先輩、どっちが会長になるか、どっかのクラスが賭博を開いていたって、噂も出てたくらいだし」

 

「へぇ〜あたし、全然知らなかった........」

 

「何度にも及ぶ投票の結果、会長の座を勝ち取ったのは零先輩でした。そして、会長に就任すると、それまで会長の座を巡って、自分と争った白雪先輩を副会長に任命したんですよ。それも、会長就任宣言の場ーー全校生徒の前で。あれはインパクトがありましたね」

 

「そんで会長になってからは、相当な型破りな方策に出たんだよな」

 

「型破りって?」

 

「とにかくイベント好きな人でーー就任した途端、学園祭やら部活の予算やらどんどん増やして」

 

「ある程度、制限のあった制服改造も銃検も武偵活動ーー捜査方法も全部自由化しちゃったんだよな」

 

「ふ〜ん」

 

この時、零の方策に対してあかりの頭にある疑問が浮かんだ。

 

「でもそんなに自由にしちゃったら、学校が無法地帯になっちゃうんじゃない?一時期、うちの学校の車輌科の先輩が無法者になったって、噂もあるし.....」

 

「あっ!それなら私、聞いたことがあります。何でもヒャッハーと叫びながら暴れ回ったとか......」

 

もしも、この場に武藤を始めとした車輌科生がいたら、顔を真っ赤して暴れた挙句、ナイアガラの滝にバイクに乗って飛び込むだろう......

 

「それがどういう訳だが、不良も不登校もすっかり減って、むしろ平和になってんだよなー」

 

「何だか不思議な話だね。零先輩のおかげかな?」

 

「多分そうなんじゃねえかな。あの人、会長に就任する前、色んな生徒の相談に乗ってたし。おまけにただ、相談に乗るだけじゃなく、自分から進んで問題解決に尽力してくれたらしぜ。今でも時間の許す限り悩み相談に乗ってくれるし」

 

「悩み相談?カウンセラーみたいな事をやってるの?」

 

「何でも先輩曰く、『私立相談役』をやってるそうですよ」

 

友達から零の事を聞いて、あかりは件の会長に直接会ってみたくなった。

 




過去ーー
茨城県某所ーー

「私の一族は家を焼かれーー奴らによって家族は散り散りにされた......!」

あかりは目に涙を浮かべ、”ある人物”に心の内を訴えた。

「復讐を望むのかい?」

「正義を......!復讐は手段だよ」


ーーーー

○1人の教授ーー玲瓏館・M・零はカッカッと黒板に向かって、何かを書いていたーーそれは複雑な数式だった。
「犯人は明白だね」
1・数学教授ーー

「仕事だよモラン。手を貸してくれ」

○山に向かって、狙撃銃を発砲する中性的な麗人ーーセバスチャン・モラン
「何処へでもお伴します主」
2・狙撃手ーー

「かなり難解な仕事ですか?」

「簡単じゃないね」

「何人ほど集めますか?」

「集めるられるだけ」

○ドル札を手にするお金が大好きな小さな女の子
「もっとお金を貯めて、リッチに暮らすんだもん☆」
3・泥棒ーー

○プロ仕様の調理器具で見事な料理を作る長身の麗人
「この中にベリタリアンはいないよね?」
4・精神科医ーー

○高い場所を避ける赤毛の男
「......高い所は嫌いだ」
5・暗殺者ーー

○某所の銀行を襲撃する二人組
「「生きても死んでも、取り敢えず金を出せ!」」
6、7・銀行強盗ーー

ーーーー

「ワルが集結かよ」

「......最悪のチームだ」

「敵は警察も手を焼く犯罪組織だゼ?」

「こっちは7人しかいないし☆」

「作戦はあるのかい?」

「ド派手にやろう♪」

ーー7人の流儀で裁く

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