私は教授じゃないよ。大袈裟だよ   作:西の家

40 / 63
原作1巻にコーラをこぼしてしまった‼︎びしょ濡れで読めないよ(涙)
新しいのを買って来ます。゚(゚´Д`゚)゚。


キンジの部屋にて

キンジ視点ーー

 

『......火事だぁ‼︎』

 

「うお......‼︎」

 

俺は誰かの叫び声で、目が覚める。

今、火事だと言ったか⁉︎火は何処だ⁉︎

俺は飛び起きて部屋を見回すが、何処も火の手はない。

 

『火事だぁ‼︎火事だぁ‼︎』

 

枕元には無機質な目覚ましのスピーカーから、さっきの叫び声が響く。こ、これは前に、理子が無理矢理プレゼントしてきた目覚ましじゃねぇか!

すぐに目が覚めるからって、押し付けられ仕方がなく使ってみたが、こんな目覚ましコールはいらねぇよ。

近所迷惑なのでスイッチを押すが、

 

『泥棒だぁ‼︎地震だー‼︎逃げろ!!借金取りだぁ‼︎開けろ‼︎』

 

鳴り止み気配なし。

こ、こんな目覚ましコールしかないのか?

本体の電源を切り、時間を確認する。時刻は7時ぴったし。まあ、自分でセットしたんだし、この時間に目覚めて当然か。

 

......ピピピ......

 

キッチンからアラーム音が聞こえる。

豆と水を入れ、7時にタイマーセットしたエスプレッソマシンが、豆を焙煎し終えたんだろう。

もそもそ、とワイシャツをはおり制服のズボンをはくと、俺はキッチンに向かう。

 

「おっ、できてるな」

 

マシンのスイッチを押し、コポコポと焙煎されたコーヒーをカップに移す。このエスプレッソマシンは零の勧め(半端強制的に)で買ったが、気に入っている。

コーヒーの種類は4種。ソロ、リストレット、ルンゴ、ドッピオ。

 

「うん、美味い」

 

軽く一杯だけ飲む。

俺はリストレットを飲む事にしている。うま味がぎゅっと凝縮され、パンチの効いた濃い味だから、すぐに目が覚める。

そういえば、前に零がルンゴとドッピオは飲まない方がいいって、言ってたな。こっそり飲んでみたが、別に美味いんだけどな。

コーヒーを持って、テーブルに着くとテレビを点ける。

丁度、朝のニュースをやっていた。見慣れたニュースキャスターがピックアップしたニュースを報道する。

 

「ますます物騒になったな......」

 

【豪華客船内で白昼堂々の殺人⁉︎犯人は現役の政治家】【ルパン復活か⁉︎大英博物館に予告状届く】【米国 銀行強盗発生率UP過去最高値】など目立つが、最近は殺人などの凶悪犯罪が増えた気がする。

それに伴い、『武偵法の改善を‼︎』などの『武偵による殺傷を許可』する法案を求める声が高まるが、俺はこの法案には反対だ。

 

......ピン、ポーン......

 

ドアチャイムが聞こえてきた。

誰だ?いや、あのチャイムの慎ましさからして白雪だな。

俺は1人で住むには広い、マンションの部屋を渡り......ドアの覗き穴から、外を見た。するとそこにーー

 

「ほらな」

 

やっぱり白雪が立っていた。いや、白雪だけじゃない零も立っていた。

2人とも純白のブラウス。臙脂色の襟とスカート。シミ一つない武偵高のセーラー服を着てーー白雪は漆塗りのコンパクトを片手に、何やらせっせと前髪を直している。

零は覗き穴に満面の笑みで、イエィとピースしている。

武偵高の生徒会長と副会長が、朝から何やってんだ?

俺はガチャとドアを開けた。

 

 

零視点ーー

 

「キンちゃん!」

 

寮の廊下で、案の定金次君を起こしにやって来た白雪さんが、ドアが開くなり入室した。

朝から大胆だね〜突撃!朝の金次君。いや、白雪さんかな?

 

「その呼び方、やめろって言ったら」

 

「あっ......ご、ごめんね。でも私......キンちゃんのこと考えたらつい、ごめんねキンちゃん」

 

「まぁまぁ、呼び方くらい別に良いじゃない。堅いぞ金次君」

 

金次君を見るなり、あわあわと慌て出したので、私が助け船を出す。

 

「ていうか、ここは仮にも男子寮だぞ。よくないぞ、軽々しく来るのはーー特に生徒会長と副会長がな」

 

金次君の言う通り、私と白雪さんは生徒会に入っている。

私が生徒会長で、白雪さんが副会長だ。いやー、何故か投票で白雪さんと競う事になったんだよね。あれは、よく覚えている。

 

「いやー、白雪さんが昨日まで伊勢神宮に合宿していてね。キンちゃんのお世話かできなーいって、言うから面白そうだと思って来ちゃった♪」

 

「ちょ、ちょ、ちょっと零さん!それは私が......言おうと思ったのに‼︎」

 

白雪さんが顔を真っ赤にして、狼狽し出した。

白雪さんは本当にイジリ甲斐があるね〜。もっとイジリたいが、これ以上やると金次君による、地獄のツボ押しマッサージが来るから止める。

 

「分かった分かった!いつまでも廊下に居られると面倒だから、取り敢えず上がれ」

 

金次君の許可を得て、部屋に上がる。

 

「お邪魔しまーす」

 

「おじゃまします」

 

白雪さんは深ぁーいお辞儀をしてから玄関に上がった。そんなに畏まらなくてもいいのになーー2人とも幼馴染なんだからさ。

 

「で、何しにきたんだよ」

 

「これ......」

 

「それくらい推理したまえよ金次君」

 

私はポケットからパイプを取り出し、口に咥える。精油を切らしているから、ただ咥えるだけだ。

 

「......白雪が持っている和布の中身は箱か?」

 

金次君は少し考えてから答えた。

箱ーーうん!正解だが、何の箱かまで言えたら80点、中身を当てられたら、100点だったね。

 

「白雪さん」

 

「うん。これ......キンちゃんに作ってきたの。よかったら食べて」

 

白雪さんは正座すると、持っていた和布の包みを解いた。

そして出てきたのは漆塗りの重箱を金次君の前に差し出すと、フタを開ける。

そこには玉子焼き、エビの甘辛煮、銀鮭といった豪華食材と、白く輝くごはんが並んでいた。

おおー、私の分せ......待って。西条柿がないぞ。

 

「ねぇ、白雪さん。本当なら西条柿も入れるつもりだったんじゃないかい?」

 

「うん、そうだよ。よく分かったね零さん。最初は入れるつもりだったけど、丁度切らしちゃってて......」

 

「そんな事、どうでもいいだろう。まあ、取り敢えず......ありがとうな白雪」

 

金次君は照れ隠し丸出しで、白雪さんにお礼を言う。白雪さんは「うん!」と嬉しそうに笑った。

どうでも良くないよ‼︎私の分析がぁぁぁ‼︎私の賭けた全財産がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎

あっ、1人で勝手に決めた事だし、どうでもいいか。しかし、外れることがあるとは......

私もテーブルに着き、白雪さんの料理をパクパクと頂く。うん!美味いねーー特に玉子焼きが。今度、私も挑戦してみよう。

 

「って、お前も食うのかよ」

 

「別にいいじゃない。白雪さんには許可を得ているよ」

 

チラッと、白雪さんを見てみると正座したまま、蜜柑を剥き始めた。

 

「......えっと、いつもありがとうな」

 

「キンちゃんもありがとう......ありがとうございます」

 

「ははは、なんで白雪さんがありがとうなんだい?あと、三つ指ついていると、土下座しているみたいだよ」

 

「だって、キンちゃんがお礼を言ってくれたから......」

 

白雪さんは嬉しそうに顔を上げ、目を潤ませている。そんなに嬉しかったんだね。

そんな白雪さんを見て、金次君は慌てて目を逸らした。

原因は白雪さんのセーラー服の胸元、ちょっと緩んで開いて見える黒い、レースの下着だろう。

黒だと!さては、私の真似したな〜。胸元を開けるのも真似るとは、白雪さんに悪知恵が付いたね。関心関心。

金次君は白雪さんから逃げるように、その場から立ち上がる。

ここでヒスったら面白い事になってたのに〜。

 

「金次君。今日からみんなで2年生だね。はい、防弾制服」

 

「ありがとうよ零。って、俺の銃がねぇぞ」

 

「ここだよ」

 

私はテーブルの下から金次君の拳銃を取り出す。

テレビの脇に無造作にあった拳銃を盗んでおいた。白雪さんに見惚れている間にね♪

これはアップルから学んだ技術だ。

 

「武偵たるもの『拳銃と刀剣の携帯を義務づける』だよ」

 

「悪かったな。ほら、返せ」

 

金次君は私の手から拳銃を取ろうするが、私はヒョイと躱す。

 

「君は〜昨日の夜〜疲れ果ててましたね〜。服を脱ぎ散らかし、拳銃も適当にテレビの側に、そして、お風呂ついでに歯を磨き、水を飲んだ後、そのままトランクス一丁でベットに入りましたね〜。う〜ふふふふふ」

 

私は古畑任三郎風に答える。

 

「何で分かるんだよ」

 

私はリビングに脱ぎ捨ててある服とキッチンに目をやる。

 

「床に脱ぎ捨ててある服は見たところ、昨日のモノ。テーブルから始まりリビングの外ーー風呂場で終わっている。脱いで風呂場に向かったのは明白。キッチンの炊事場にはコップが一つ。洗ってないところを見ると、大して汚れないーー水を入れていた。私達を出迎えるために、寝間着からシャツに着替えた様子がないところを見て、トランクス一丁で寝たのは明白だよ」

 

「キンちゃんが......下着一枚で......」

 

私が分析結果を語り終えると、聞いていた白雪さんは、顔を真っ赤にしていた。大方、金次君のトランクス一丁姿を想像したのだろう。

 

「あー、そうですよ!推理通りですよ!クソったれ!」

 

「凄いね零さん。流石、キンちゃんの師匠だね」

 

「待ってよ白雪。俺はこいつの弟子になった覚えはないーーまあ、探偵科に転科したけどよ」

 

金次君は今年から、正確には去年の12月の下旬から探偵科に転科した。私が勧めたのだ。

探偵科に転科した金次君は本当に教え甲斐がある。

 

「『武偵殺し』を追うために、探偵科の捜査技術を身につける為だものねー」

 

「でも、零さん。その『武偵殺し』は逮捕されたって......」

 

白雪さんの言葉に金次君は、グッと悔しそうに握り拳を作る。

白雪さんだけじゃなく、金次君にも届いていたかーー『武偵殺し』は逮捕され、模倣犯が現れたという偽情報が......本当は模倣犯に成りすましているのが、本命なのにね。

 

「それは違うよ白雪さん。『武偵殺し』は逮捕されていない」

 

「えっ、でも教務科から周知メールが来たよ?『武偵殺し』は逮捕されて、模倣犯が現れた警戒せよって」

 

「そうだぜ零。『武偵殺し』はもう逮捕された......代わりに『武偵殺し』を語る模倣犯は現れたがな」

 

「まったく、教務科からの情報をそのまま信じるなんて、金次君と白雪さんはピュアだね」

 

私はパイプを咥え、

 

「カオスのカケラを再構築してあげよう」

 

「ねぇ、キンちゃん。零さんどうしちゃったの?」

 

「あー、白雪。気にするな」

 

そんな事を言わないでくれよ金次君。君も探偵科なら分かるでしょう?

このネタは探偵科ーー金次君以外には大ウケする。りこりんはお腹を抱えて爆笑してくれる。

みんながウケる中、りこりんはドサクサに紛れて、私に鹿撃帽を被せようとしたっけ。その時、私は思わずりこりんの後方から、腰に腕を回してクラッチしたまま、後方に反り投げてーージャーマン・スープレックスをくらわせてしまった。

あの場にいた探偵科のみんなは呆然としてたっけ。

りこりんは脳天を抱えて「ぬごおぉぉぉぉぉ!」と唸り、のたうち回ってたな。本当に悪い事をしてしまった。

 

「ナンタラを再構築中、悪いんだが時間だ。そろそろ出ないとヤバイ」

 

金次君に言われ時刻を確認すると、いつの間にか7時55分になっていた。しまった......分析結果を報告し過ぎたかな。

これでは、金次君と白雪さんは58分のバスに間に合わないね。

 

「それは悪い事をしてしまったね。再構築についてはまた今度話そうか」

 

私はスッと立ち上がり、

 

「時間を取らせてしまったお詫びに、学校まで送っていくよ」

 

「学校までって、零さん車で来たの?」

 

「白雪は知らないのか?こいつは一丁前にも、ポルシェに乗ってやがるんだ」

 

「ドイツのアマガエルも偉くなったねー。金次君に嫉妬されて」

 

「うるせぇ。俺は自転車で行かせもらう」

 

強情だネ。自転車では行かない方が身の為だよ。お兄さんの仇も打てぬまま、木っ端微塵にはなりたくないだろう?

ここに来る前、金次君の自転車を調べたが、サドルにプラスチック爆弾が仕掛けられていた。十中八九、『武偵殺し』だろう。このまま、金次君を囮にして『武偵殺し』のシッポを掴むのもいいが、金次君は囮に使いたくはないんだよネ。何故だろうか?

まあ、このまま『武偵殺し』の良いようにさせるのもイヤだし、爆弾は此方の方で''有効的に使わせてもらうがネ''

 

「そんな事を言っちゃダメだよキンちゃん。折角、零さんが送ってくれんだし、お言葉に甘えさせてもらおうよ」

 

「まあ、白雪が言うなら別にいいけどよ......」

 

白雪さんの説得に金次君は折れた。ふふ、金次君は白雪さんに弱いね。さては、白雪さんを遅刻させたら悪いと思ったな。

 

「それじゃ、三人で学校に向かいますか!」

 

そのまま、三人で部屋を出ると、寮の外に止めてある私の愛車に乗り込む。

 

 

 

 

ーー生涯、私はこの時間帯に車で学校に向かったことを悔やむだろう。

何故ならこの後、空からあのピンク頭が降ってくるのだから。

神崎・ホームズ・アリアが。

 

 

 




丁度、原作プロローグ辺りーー本編に入る所でコーラをこぼしてしまいました。
ベタベタでよく読めない。゚(゚´Д`゚)゚。
コーラ飲みながら、読むんじゃなかった......


お気づきかもしれませんが、既にこの時点で教授VS教授の戦いーー謀略合戦は始まってます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。