拝啓、皆様いかがお過ごしでしょうか。
私は今年で六歳をなり、明日『姉』ができることになりました。
うん、おかしい。姉ができるってなに。妹ならわかるけど、なぜ姉?
ことは数日前に遡る。
転生して五年が経ったが、なにも起こらない。悲しいぐらいになにも起きない。平和なのはいいことなんだが、さすがにそろそろなにか起きないと不安になる。
イヤだよ、今まで静かだったのはこれから起きるための準備期間だったのだ、的なの。
なんでそろそろなにか起きませんか?
そんな思いが通じたのか、その日の夜、父が俺に言ってきた。
「一誠、姉ができるぞ」
妹の間違いではと思い父に聞くと、親戚の女の子を引き取ることになったという。
なんでもその子の家族は両親ともにこの世を去り、女の子一人だけが残され、誰が引き取るかという話になって父が引き取ることにしたらしい。
あれ、原作にこんなのあったけ?
と思ったが、見た目から原作をぶっ壊してるお前が言うなという話なので気にしないことにした。だって気にしたってどうしよもないでしょ。イヤだなんて言えないし。
姉が来る日になった昼。
両親は迎えに行き、家に一人残った俺は『天の鎖』を磨いていた。
今更だが、宝具が錆びるわけない。『王の財宝』の中は時間が存在しないのだから錆びる可能性などないし、あの『王様』が錆びるような物を持つとは思えない。
とはいえ、手入れすることは悪いことじゃないし、宝具たちも(たぶん)喜んでくれるので週に一回はやるようにしている。
あ、酢はやめた。酸っぱい臭いがする宝具なんて、ダサすぎる。
宝具の能力に「酸臭を放つ」なんて加えられたら泣く。俺も『王様』も。
玄関の鍵を開ける音が聞こえる。帰ってきたのだろう。
さて、どんな人物かな。
ドアを父さんが開け、母さんが入ってくる。
車イスに乗った少女を押して。
「お、一誠。紹介しよう。はやてちゃん、ちょっとこっちに来てくれ」
・・・。
「あ、はーい」
・・・。
「紹介しよう。今日からお前の姉になる、八神はやてちゃんだ」
「八神はやてや。よろしゅーな、いっくん。姉ちゃんって呼んでな」
「ボク、兵藤一誠。五歳ダヨ、ヨロシクネオ姉チャン」
「・・・いやねえよ。原作ブレイクどころか、別の世界の住人じゃん。え、なんでいんの?ここって『ハイスクールD×D』の世界じゃねえの?」
あの後昼食を食べ、昼寝してくるといって部屋に引きこもった。
「あれか、クロス的な世界か?もしそうだとしたら・・・」
やべえ。ちょー面倒なことになる。
「はやてとか思いっきり地雷じゃん。やばいって」
ただでさえ色々と敵の多いD×Dの世界なのに、マッドドクターや愉快な脳ミソどもとか加わったら、死ぬ(胃が)。
極太ピンクの破壊光線を放つ魔王とか逢いたくない。O・HA・NA・SHI(物理)で管理局に永久就職させられて、ブラック企業も真っ青な労働を課せられるんだ、きっと。
・・・寝よう。頭痛くなってきた。寝ればなんか案が浮かぶだろう。
そうして俺は瞳を閉じた。
ドアの間からこちらを覗いている存在に気づくことなく。