全然進んでないのに、なにやってるんでしょうね。
あれからまた一年経ち、二歳になった。
相変わらず『乖離剣エア』は引きこもったままで、声をかけても返事もしてくれない。『天の鎖』が毎日説得(物理)を行っているが、出てくる気配がない。
『乖離剣エア』の引きこもり力は一年前よりも上がっている。
なんにせよ心配だ。このままでは(錆びて)動けなくなるかもしれない。
だけど、俺にできることは少ない。
せいぜい俺ができるのは・・・、
月に一度、バケツいっぱいの御刀油を『王の財宝』の中に流し込むくらいだ。
最初は御刀油でいいのかと考えた。だが、一度流し込んでみたところ『天の鎖』は泣いて喜ぶように自身を鳴らしてくれた。今の『天の鎖』は初めて会った時よりもテカテカと光っている。
きっと喜んでくれているのだろう、一年前よりも引っ張る力は強く、まるで叫んでいるかのような音を響かせてくれる。
『王の財宝』も仲間が揃ってほしいのか、宝具を出すときの波紋は以前よりも大きく、深みのある黄金の波紋へと変わった。
そんな宝具たち(?)を見て俺も嬉しくなり、宝具たちに話しかける。
「ありがとう『王の財宝』『天の鎖』。お前たちの頑張りを見て俺も決意したよ。
今まで油をいれるのは月一回だったけど、来月から二回に出来るように父さんたちに掛け合ってくるよ」
それを聞いて喜んでくれたのか『王の財宝』は室内いっぱいまで波紋を広げる。
『天の鎖』も負けじとありとあらゆる空間から鎖を『乖離剣エア』がいる空間に入れていく。
俺はそんな宝具たちが奏でる音を聞きながら、両親の部屋に向かう。
俺の部屋からは『乖離剣エア』に早く出て来いという、魂の叫びが聞こえた気がした。
両親の説得はうまくいかなかった。俺自身無理だろうなとは思っていた。
御刀油は高い。バケツ一杯分の油となればかなりする。
俺は御刀油以外のものをほしがったりしないからか、両親も御刀油を買ってくれるが、さすがにバケツ二杯分はキツイらしい。おまけに両親からは油以外のものも欲しがってほしいと言われた。冷静に考えて油をほしがる二歳児は確かに嫌だ。
ハーレム王になるつもりはないが、油王にもなるつもりもない。
だからといって『乖離剣エア』を諦めるつもりは毛頭ない。
それに先ほど(一応)油の代わりになるだろうと先ほど母さんがくれたものもある。
そして、俺は宝具たちが待っている自室に向かった。
母さんがくれた、お酢を持って。
その後、『王の財宝』と『天の鎖』は今まで以上に『乖離剣エア』を外に出すのを頑張ってくれるようになった。