ベルセルク・オンライン~わたしの幼馴染は捻くれ者~ 作:兵隊
「クソがッ!!!」
都内にあるマンションの一室にて、叫び声にも似た怒鳴り声が響いた。
床を見れば物が散乱しており、怒鳴り声を上げた主が暴れていたことは明らかだ。
彼は肩で息をしながら、床に落ちていた携帯を手に取る。
連絡は、ない。
誰からも通知は来ておらず、着信も鳴ってない。
それを確認した彼は、怒りに身体を震わせて、再び手に持っていた携帯を床に叩きつけてしまった。
苛立ちは収まることはない。
唯一散乱していないベッドの上にドカッと座り込み、頭をかきむしる。
「どうして、連絡がない。ジョニーもヘッドも、何をしている……?」
数日前から、彼の協力者と連絡が取れない。
逃げた、とは考えにくい。いいや、考えたくないといった方が正しいのかもしれない。今まで自分達のしてきたことが明るみに出れば、破滅が約束されている。とてもではないが、自首しに行くとは考えにくい。
しかしそれはジョニー・ブラックに限ってのことだ。果たしてヘッドと呼ばれたあの男は、こちらの常識が通じる相手だろうか。
わからない。
長い間あの男に従っていたものの、終ぞ理解するには至らなかった。あの男が何を思い再び自分達の前に現れ、そして消えたのか。今となっては何もわからない。そしてこのままでは、死銃計画も満足に執行が出来ないことも。
彼はますます苛立ちを募らせる。
煮えたぎる怒りのまま、衝動のまま、また物に当り散らそうとするが。
「――――」
携帯から着信音が鳴り、動きがぴたり止まる。
ゆっくりとした動作で、床に落ちていた携帯を拾い上げて、画面を見る。
見知らぬ番号だった。
彼は応答し、耳に携帯を当てて。
「誰だ?」
『あー、君が新川昌一君かな?』
変声期を使っているからか、男なのか女なのか判断に難しい声だった。
彼――――新川昌一は訝しげに。
「お前は誰だ?」
『あぁ、それとも赤眼のザザっていうべき? それとも――――
「っ!?」
燃えていた憤怒が、冷えていくことを感じる。
心臓の高鳴りを押さえ、搾り出すような声で。
「どうやって俺のことを……」
『他人を調べるのが趣味って人にお願いしてね。引く趣味だよねぇ、わかるよ』
電話越しの声はとても楽しそうな声のまま。
『警戒しないでほしいな。誰も君の事をチクったりしないよ』
「何が目的だ」
『いいねぇ、話しが早い。BoBで私と手を組まない? 何だったら、君の犯行を手伝ってもいい』
「なんだと?」
突然の申し出に頭が追いつかない。
犯行の手伝いとはつまりはそういうこともするという。何が目的なのか判断が出来ないからか、昌一は警戒心を強めて。
「何でお前と手を組まないとならない?」
『共通の敵がいるからさ』
「敵?」
『――――アインクラッドの恐怖、って言えばわかるよね』
「なっ!!」
聴きたくない言葉。
憎悪している“はじまりの英雄”とは違う意味で、聞きたくない単語に、昌一は身体が固まる。
電話の主はそんな昌一を知らずに、極めて軽い口調で言う。
『君、アレを殺したいんでしょ?』
「……俺一人で充分だ」
『アッハハハハハ!! いいや、無理でしょ!』
声の主は暗に語った。
お前では無理だ、と。“アインクラッドの恐怖”には絶対に叶わないと。
それだけで、自分が侮られていると認識するには充分だったのか。憎悪ともとれる声色で昌一は口を開いていた。
「何がおかしい?」
『あ? マジで言ってたの? ごめんごめん、冗談だと思った』
「……」
『でもさ、無理だって君が一番知ってるんじゃない? アインクラッドの恐怖に叩きのめされた君なら』
その声の主はどこまで知っているのか。
確かに、昌一は過去に、ソードアート・オンラインで“アインクラッドの恐怖”に相対し、プライドと共に叩き潰されてしまった。その傷跡は深く、今も当時の“アレ”を思い出すだけで身体が震える。まるで人と対峙している気になれなかったのは、今でも覚えている。人並み外れた力を行使する暴威。余計な会話もせずに、ただひたすら作業するように、雑草を毟り取るように、圧倒的な力で処理していく姿。今でも悪夢として夢に見る。
次は勝てる。
あのときよりも、確実に弱くなった。
ならば勝てる、次こそは殺せる。そう言いたくても口に出ない。
助け舟のつもりなのか。
返答がない昌一に、電話の主は明るい口調で言う。
『悪い取引じゃないと思うよ? 私はアイツを殺したい、君はアインクラッドの恐怖を殺せる術を持っている。お互いにメリットがある』
「……そっちが裏切らない証拠は?」
『私は君を一方的に殺せる手札があるんだよ。選べる立場だと思う?』
つまりは、手を組まないと死銃計画をバラすということ。
悪魔の契約ようだった。拒否できないのを知って、こうして交渉に持ちかけるなど悪魔以外に何と言えるだろうか。
もはや、昌一に選択肢などない。この悪魔に縋るしかないのだから。
電話の主や“アインクラッドの恐怖”に比べたら自分の感性など可愛いものだと思いながら、昌一は応じる。
「いいだろう、手を組もう」
『よかったー。短い間だけど、よろしくね』
「待て」
『なに?』
「お前は何者だ?」
『あぁ、言ってなかったけ?』
『はじめまして、
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12月14日 PM13:05
都内 ダイシーカフェ
ここに通うようになってから、ここまで静かな店内は珍しいと思った。
いつもは賑わいを見せているダイシーカフェ。行列が出来ている、とまではいかないものの、私が来ていたときにはかなりの賑わいであったことを覚えている。屈強な体格の店長が調理をし、小さな幼女が注文を取ろうと右往左往と急がしそうに、そつなくこなしていく普段は目つきの悪いアルバイトも営業スマイルで接客。
それが私が知るダイシーカフェであった。
だが今はそうではない。
店長さんも席を外しており、いつも手伝っている幼女――――レヴィの姿はなく、ましてやいつも愛想笑いを浮かべているアルバイトの姿もない。
あるのは私と。
「……」
気まずそうに座っている女性客――――結城明日奈さんだけだった。
きまずそう、というのは私の主観。
彼女が本当は何を思っているのかわからない。でもきっと気まずいと思う。
私達は何も言わずに、何も語らずに、カウンター席に座っていた。
隣同士ではない。一個席を空けて、私達は座っていた。
きっと私もテンパっていたのだろう。
折角、彼女が店長さんがいないことを教えてくれたのに、それに反応することなく店内へと進み、あろうことか彼女と肩を並べるようにカウンター席に座ってしまった。
会釈一つでもするべきだったと、後悔しても遅い。
私も非常識であるとは思うものの、頭が真っ白になっていた過去を振り返ったところでどうしようもなかった。
何せ考えてもいなかった人物がそこにいたのだ。先輩のことしか考えていなかった私にとっては、不意打ちにも程がある。
横目で彼女を見る。
まつげが長く、綺麗な顔をしていると同時に、携帯を弄る彼女の横顔はどこか憂わしげな表情を浮かべていた。
どうしたのか、と聞けるほど私はコミュニケーション能力に高い方ではない。
聞いたところで私に解決する力はないし、踏み込んでいけるほど私は彼女と仲が良いというわけでもない。
となれば、私の考えることは今後のことだ。
先輩との思い出の場所にも辿り着いてしまった。最後の頼みの綱、先輩へ怒りと言う形で心を再燃させることが出来るか。桐ヶ谷くんが言ったように、喧嘩をし続けることが出来るか。
結論から言うと、やはりと言うべきか、そんな気が起きることもなく。どうしても私には出来そうにない。
私が今まで戦ってきたのは、先輩を倒すためじゃない。少しでも彼に近づくために、そのために弱い自分を殺すために、敢えて苦手であった銃で戦うことを主体となっていた世界へと飛び込んだ。
最初は嫌だったし、苦しかった。私の不調を検知したアミュスフィアから何度強制ログアウトされたかわからない。
それでも戦えたのは、先輩の存在があったからだ。どんなに苦しくても、どんなに辛くても、先輩の隣にいたいと思ったから、私はこれまで銃を取ることも出来たし、“恐弾の射手”と呼ばれるようにもなった。
私の力は、決して先輩と戦うためのものじゃない。隣に立つために、死に物狂いで手に入れたものだ。
俯き、両手で力いっぱい握り締める。
何て小さい手だろうか、何て力弱いことだろうか。
朝田詩乃はなんと脆弱な生き物だろうか。思い人に一度拒絶されただけで、こんなにも弱っている。
そんな人間が、先輩のような強い人の隣に立とうとするのは、おこがましかったのかもしれない。
彼の隣に立つのは、彼にように強い人間。それは桐ヶ谷くんであったり、妹ちゃんであったり、篠崎さんであったり――――。
「あの、大丈夫ですか……?」
――――結城明日奈さんであったりするのだろう。
いつの間にか彼女は空けていた隣の席に座り、私を心配そうな顔で見ていた。
初対面を私に声をかけねばならないほど、私は酷い顔をしていたのだろうか。自覚はある。きっと今の私は泣きそうな、それはもう酷い顔をしているのだろう。
大丈夫です、と返したかった。
だが上手く言葉に出来ない。いま喋ったらものなら、きっと私は涙を流してしまう。
口を閉ざし、顔を俯かせて、私は自身の感情が落ち着くのを待った。
だが、
「わたしで良かったら、お話聞きますよ?」
黙り込んでいる私にめげずに、明日奈さんは話しかけてきてくれた。
誰かに話しを聞いて欲しかったのかもしれない。私は思わず口を開きかけるが、直ぐに閉ざす。
何を考えているのか、と。
私はこの人を出し抜こうとしてきた。見ず知らずの私に、優しくできる様な人を、私は欺こうとした。そんな人間が、共通の想い人に冷たくされたからと、今度は話しを聞いてもらうなんて面の皮が厚いにも程がある。
それこそ、先輩が言うように筋が通らないというやつだろう。
「いえ、大丈夫です……」
「本当、ですか?」
「……はい、ありがとうございます」
だから、話さない、話せない。
こんなにも優しい人を、他人にまで気を向けるような出来た人に、迷惑をかけるわけにはいかない。
「……でも辛そうに見えますよ?」
「っ……」
彼女は放っておいてくれなかった。
だが言えない、言う資格などない。
「……わたし、前に言われたことがあるんです」
「え?」
「大切な人に『辛かったら弱音吐いて良い。苦しかったら泣いて良い。我慢する必要なんてない』って」
「……」
「だからお姉さんも、我慢する必要なんてないと思います。それにほら、初対面だから言い安いってこともあると思いますよ?」
えへへ、と明日奈さんは笑みを浮かべる。
そこで私は思わず尋ねてしまった。
「……そんな辛そうに見えました?」
返答はなかった。
明日奈さんは申し訳なさそうに、私の顔を伺うように一度頷いた。
大切な人に言われた。
それが先輩なのか、違う人なのかはわからない。だが彼女も私のように落ち込んだときがあり、先程のことを言われたのだろう。我慢する必要はない、と励まされたのだろう。
だから放っておけなかったのも知れない。
明日奈さんもあったからこそ、自分のような人間、つまりは私のような人間を放っておけなかったのかもしれない。
彼女が出来た人であることは知っている。あの先輩が常に気にしているような人だ。知的好奇心で私の話しを聞こうとしているわけがない。ましてやそんなことをして、彼女に何の得があるというのか。
純粋な他者への思いやりの精神で、彼女は私を心配している。
本当に優しい人だ。私のように打算的で動いている人とは違う。先輩が彼女を大切に想っているのもわかるかもしれない。
どの口が言うのか、どの面を下げて言うのか。
わかっている、自分が一番わかっている。それでも、私は耐えられなかった。
明日奈さんの眼を見て、いつの間にか口を開いていた。こんなに優しい目が出来る人がいるのか、と思いながら――――。
「実は――――」
そうして私は今までの話しをした。
先輩との出会い、小さいころ先輩が私を助けてくれたこと、先輩と私はどういった関係か、私がVRMMOをプレイする目的、そして先輩に突き放されたこと。
もちろん、先輩が茅場優希であることは伏せている。ここで暴露できるほど、私は強くないし、神経が図太くない。
話し終えて、ふと彼女を見ると、不思議な反応をしていた。
意外そうに、眼を少しだけ見開き、それからうんうんと首を捻って考える。
「あの、どうしました……?」
「あぁ、ごめんなさい。ちょっと意外と言うか」
「意外?」
「わたしの大切な人も似たような人なんですよ。意外に周りにもいるんだなーって」
思わず黙ってしまった。
似たような人と言うか、完全に同一人物なのだから。本当に申しわけないが、ここでは黙っていることにした。
「突き放されるのは辛いですよね……」
「はい、正直しんどいですね……」
「わかるなー。私も何度もそういうことあったし」
意外だった。
明日奈さんは違うと思っていた。いつも先輩から気にかけてもらえて、過保護なまでの声をかけてもらって、それこそ私が見たことがない顔を先輩に向けられた存在であると思った。それこそ、彼女だけ特別で、厳しい態度もきつい言葉も投げられない、そんな存在であると、私はそう思い込んでいた。
だから聞いた。
今度は明日奈さんのことを聞くために、私は彼女に聞いてみることにした。
「……貴女の大切な人ってどんな人なんですか?」
「うーん、捻くれてるけど、凄く優しい人、ですかね?」
あはは、と困ったような笑みを浮かべて明日奈さんは続ける。
「本当は優しいのに、素直じゃないから勘違いされて、でも改めないからもっと勘違いされるんですよ」
「それは、確かに。先輩もそんな人です……」
「受け取る側は困りますよね。素直に心配だから、って言ってくれればいいのに。わたしも勘違いして、何度も言い争いしましたよ」
「えっ、せんぱ――――その人と喧嘩したことあるんですか?」
「それはもう何度も」
二度目の衝撃を受けている私を余所に、明日奈さんは続けて懐かしむような口ぶりでそう言った。
「小さい頃なんて、嫌われてましたからね」
「そうなんですか?」
「近づくだけで睨まれちゃったりして……」
あの頃は大変だった、と呟いて。
「それから何度も距離を開けれれたこともありましたね」
「それから、どうしたんですか?」
「後を追いかけましたよ。彼、勝手に進むから追いつくこっちも必死ですよ」
何事もなく、苦もなく、軽く言う彼女が眩しく見えた。
辛かった筈だ。好いている人から一方的に距離を開けられ、置いてかれる感覚は私も経験をしたからわかる。それは辛く、耐え難いものであった筈だ。
だが彼女は諦めなかった。
諦めを踏破し、先輩に追いつき、とうとう認められたのだ。
私が出来ないことを、彼女は成し遂げた。私から見たらそれは、偉業に等しい行為。
ポツリと、思わず呟いてしまった。羨ましそうに、そんな自分を自嘲するように。
「強いですね……」
「そう、ですかね?」
「そうですよ。私なんて、先輩に初めて突き放されただけで耐えられなかった」
何度も経験した彼女に対して、私はただの一度。
それだけで、心が折られてしまった。
「先輩が言ったことが本心じゃないと思いたい。でも心のどこかで本音かもしれないって思っただけで、私は逃げ出しました」
「本音じゃないですよ。何度も助けてくれたんですよね?」
「はい」
「だったら、本音なんてありえないです。それだけお姉さんが大切に思っているから、助けてくれてたんですよ」
その言葉は力強かった。きっと経験から導き出された彼女の答えなのだろう。
頼もしい。だが、問題は私にある。桐ヶ谷くんが言ったように、先輩を認めさせるには先輩に勝つしかない。となれば、先輩と相対する必要がある。私に出来るのか、先輩の額を狙い、引き金を引くことが。
答えは火を見るよりも明らかだ。
出来ない、出来るわけがない。
「でも私には出来ません。先輩を倒すなんて無理だし、ましてや争うなんて……」
「んー、争うって考えないようにしたらどうですか?」
「それは、どういう……?」
いまいち要領の得ない私に、明日奈さんは少しだけ考えて。
「先輩って人は、お姉さんが力不足だからって言ったんですよね?」
「そうですね」
「だったらお姉さんの力を見せればいいんですよ。争って倒すんじゃなくて、力を見てもらうんです」
「力を、見てもらう……」
倒す必要はない、と。
そうだった、桐ヶ谷くんは喧嘩し続けたからこそ認められたといった。誰も勝ち負けの話しをしていなかった。
勘違いしていた。私は先輩と争い勝つしかないと、ずっと考えていた。そして、そんなことは出来ないと、勝てるわけがないし、先輩と本気で戦うなんて無理であると断じていた。
そもそも前提が違っていた。
勝ち負けではない。私にとってこの戦いは、単純な勝ち負けの話ではない。もっと深く、抽象的で曖昧なもの。先輩を認めさせるかさせないかの戦いでしかない。
そんな戦いをしてきたのだろう。
桐ヶ谷くんも、妹ちゃんも、篠崎さんも、そして――――明日奈さんも。
ならば私も立ち向かわなければ。この人が出来て、私に出来ないなんて、負けを認めているようなものだ。
負けない。負けてなんていられない。心が折れている場合じゃない。
先輩の隣に立つためにも、この人と対等になるためにも、ここで立ち止まっているわけにはいかない。
見せ付けてやるんだ。先輩に、どうだ、って。貴方が突き放した私は、こんなにもつ強いんだぞって。先輩にたくさん、強い私を見てもらうんだ。
「ありがとうございました。私、もうちょっと頑張ってみます」
「はい! そうですよ、頑張りましょう! 先輩に謝ってもらいましょう!」
「えぇ、そうですね」
おーっと、握り拳を作った片手を高々に上げる明日奈さんを見て、思わず笑みをこぼしてしまった。
先輩がこの人を大切に想う気持が、わかった気がする。
この人は光なんだ。先輩にとっての光。少しだけだけど話して、励まされて、後押しされた私にはわかる。この人と話していると心が安らぐんだ。一生懸命にこっちの話を聞いて、共感されて、応援してくれる姿は守ってあげたくなる。
だが、それはそれ、これはこれ。
先輩を譲る気は毛頭ない。
「話を聞いてもらって、本当にありがとうございました」
「もう行くんですか?」
「はい、これから先輩に喧嘩を売りに行ってきます」
そこまで言うと立ち上がり、私は出口へと足を進める。
ドアを開き、そういえば、と立ち止まり肩越しに振り向いて。
「私、詩乃って言います。今度お礼に来ますね――――明日奈さん」
べるせるく・おふらいん
~その後のダイシーカフェ~
ドリュー「ただいまー」
明日奈「おかえりなさいー」
ドリュー「なぁ、今さ。すれ違ったんだが……」
明日奈「あぁ、詩乃ちゃん? 可愛い子だよねぇ。常連さんなの?」
ドリュー「あ、あぁ。良く来てくれるな。それよりも」
明日奈「なに?」
ドリュー「あ、いや。何でもなかったのか?」
明日奈「何かって?」
ドリュー「何かって……修羅場?」
明日奈「しゅらば?」
ドリュー「いいや、何でもないならいいんだ。うん、平和が一番だよなっ!」
明日奈「よくわからないけどその通りよね。でも何で詩乃ちゃん、わたしの名前知ってたんだろ?」
ドリュー「……他に何か言ってたか?」
明日奈「今度お礼してくれるって。お話を聞いただけなのに、律儀な子だよね~?」
ドリュー「……………おう」
明日奈「???」