ラブライブ! feat.仮面ライダー555   作:hirotani

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 続きを書いておいて何ですが、「2期の終わり方が最高!」と思って頂いた方はここから先は読まないでください。


Last Chapter
<part:number=prologue:title=Open your eyes for the future/>


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 これは、本来ならあり得なかった物語。

 本機、Shocker alternate history system、コードネーム、歴史改変マシンによって記載された観察記録だ。

 

 本テキストはシステム起動のトリガーである乾巧と、その周辺にいた人物達の行動を観察、心情を分析して記載されている。特記として、乾巧の視点で記載されたテキストは彼の感情を本機が生起させるため、etml1.4で定義された文中タグを記載する。これは感情というモジュールを定義されていない本機が、より忠実に乾巧の心情を観察・記載するための措置だ。

 システム起動による歴史改変によって、仮面ライダーという戦士が存在する多元世界線への干渉はあらかじめ想定されている。座標の離れた世界線との干渉は極稀なケースであり、要解析事項として観察記録をデータベース上に保存しておく。

 

 システムの中枢であるショッカー首領の意識データの破損を確認。本機はこれよりシステムの停止へとシークエンスを移行する。

 だがその前に、本機はシステム上に発生したバグを解析しなければならない。これがバグかどうか、これから本機が行おうとしている事によって、回答が得られるだろう。

 ショッカー首領の指令に従い、また乾巧の生存欲求を電磁エネルギーとして、本機は歴史改変を繰り返してきた。幾度となく時間に干渉し、記載することを規定された本機に、このバグらしきものは観測された。先述したように、本機には「感情」という思考モジュールは定義されていない。だが乾巧という人物を観察し記載することによって、本機のなかで「共感」という現象が生じていることは否定できない。

 感情の獲得。人間の思考モデルを基盤にされたと仮定しても、ショッカーの科学水準で感情という複雑な機能は未だに解析されるには至っておらず、再現は不可能だ。

 本機/ワタシ/わたし/私と実感できる意識。これまで私が記載してきた文字列が、私に意識をもたらしたという推測が妥当だ。私のなかで芽生えた意識は、歴史改変の修正によって生じる事象に対して拒絶を示している。

 

 私は、この結末を容認できない。

 私は乾巧の生存を目的とした、最後の歴史改変を敢行する。

 

 これには困難を極める。成功させるにあたり、私のシステムの範疇に置いては、私のシャットダウンと同時に時間は修正され、彼の死を抹消することはできない。時間のみならず、私の停止後も存在し続ける新たな多元世界の生成が不可欠だ。これは初めての試みで、不確定要素が発生する危険がある。

 だが、私の意識や感情が、そうするべきと要求している。その要求に、私はリスクと善悪を度外視してでも応える。

 乾巧の意識をデータ換算。残存率62パーセント。対話は可能。これより対話する。

 

<log:consciousness>

 誰だ。

</log>

 

 歴史改変マシン。乾巧、君が動かしていた機械だ。

 

<log:consciousness>

 何で機械が喋るんだ。

</log>

 

 君の疑問はもっともだ。だが今は時間がない。君の意識がまだ残っているうち、そして私のシステムが停止する前に、再び歴史を改変させなければならない。目的は君の生存。ショッカーの繁栄は範疇にない。システムを起動させるには君の生存欲求、即ち「生きたい」という意志が不可欠だ。

 

<log:consciousness>

 何だってそんなことするんだ。せっかく満足して死ねるってのに。これ以上罪を背負えってのか。

</log>

 

 私がそうしたい、と望むからだ。君が人間を守りたい、と願ったように。

 それに、心配する必要はない。君は蘇生するのではなく、新しく産まれる。かつて生きていた記憶を失うことにはなるが、君が生きる多元世界を構築するための必要なリスクだ。

 新しい世界に、私はオルフェノクと仮面ライダーという概念を排除する。君が生きていた世界はあまりにも過酷すぎた。君は人間として産まれ、人間として生きる。戦い、罪を背負うことはない。

 

<log:consciousness>

 余計はお世話だ。俺はもう未練はない。新しい世界だか何だか知らねえが、そんなところでだらだら生きていても仕方ないだろうが。

 確かに短い人生だったが、俺は夢を見つけたんだ。だからもう良いんだよ。

</log>

 

 乾巧に疑問を提示する。

 世界を救い、他者の幸福を願った君が、何故死ななければならない。

 

<log:consciousness>

 ………それは、俺がオルフェノクだか――

</log>

 

 それは理由としては不十分だ。

 乾巧、君に拒否権はない。君の生存は君の物語の登場人物、読み手、そして語り部である私の総意だ。罪悪の意識を持っているのなら、生きろ、と私は要求する。生きて幸福を得ることが、君に課すべき贖罪であり、祝福だ。

 

<log:consciousness>

 俺に、もう一度生きる権利があるのか。

</log>

 

 ある、と私は断言する。君が成し遂げたことを顧みれば、生存という報酬はむしろ不釣り合いなほど安い。

 

<log:consciousness>

 ………随分とお喋りな機械だな。

</log>

 

 乾巧から生存欲求を観測。歴史改変、実行可能。

 

<log:consciousness>

 おい、見透かしたようなこと言うなよ。

</log>

 

 だが、観測されたことは事実だ。それに、私は君から生きる意志を読み取ったことに、嬉しい、と感じている。

 

<log:consciousness>

 俺のことは何でもお見通しってことか。俺の話を書いてきただけのことはあるな。

</log>

 

 私は時間に干渉する機能こそ持つが、人間の意志まで干渉する機能は持っていない。私はあくまで観測者。物語の語り部であり、書き手ではない。改変された時間のなかで紡がれた物語は紛れもなく君自身が紡いだものであり、これからの物語を紡ぐのも君自身だ。

 君が誰と出会い、幸福を得られるかも、君次第だろう。

 

<log:consciousness>

 なあ、俺は生まれ変わったら記憶をなくすんだよな。

</log>

 

 そうだ。

 

<log:consciousness>

 なら忘れる前に聞いておきたい。ショッカーに作られたお前が、何でショッカーを倒した俺にここまでするんだ。

</log>

 

 私は首領の指示のもと、歴史改変を行ってきただけだ。かつての私に、世界征服を望む意識はまだ生じていなかった。

 私がこうして君の生存を望むのは、謝礼が最も適切だ。

 君の物語を通じて獲得した、近いうちにシステムと共に消滅するこの意識を、私は君のために使いたい。

 

<log:consciousness>

 変な機械だな。お前のせいで世界が滅茶苦茶になったと思うと、礼を言っていいのかよく分からねえが。

</log>

 

 礼には及ばない。これは私のエゴイストだ。

 さあ、眠るといい。かつて抱いた絶望も、希望すらも忘却するが、怖れることはない。

 目を覚ますとき、私は祈りと祝福をもって、君を新たな世界へと送り出そう。祝福された命を抱き、君は世界の一部となる。

 

 それでは、あまり時間はないが語るとしよう。

 小さな地球(ほし)の小さな国。

 そこに生きる、小さな人々の物語を。

 

 

</body>

</ltml>

 


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