IS学園における一年生の行事の一つ、臨海学校の会場となった海辺の町の沖合にある小さな小島‥‥
その小島の浜辺に福音はいた。
ステルスモードを発動し、まるで胎児のような格好で浜辺から少し浮いた状態で制止する福音。
その福音がいる浜辺に突如、隕石が落下した様な衝撃が走り轟音が鳴り響く。
大きな衝撃で浜辺の砂が舞い上がる。
福音のセンサーはその砂煙の中に立つ一人の人影を捉える。
「よぉ、ガラクタ‥‥」
砂煙の中からは底冷えするような声がした。
やがて、砂煙が晴れると其処にはドレス甲冑を纏い、手にはバルニフィカスを部分展開し、背中には白い翼を生やしたイヴの姿があった。
「退屈だっただろう?遊びに来てやったぜ」
福音を視認したイヴはニヤリと不敵な笑みを零す。
そして、彼女は福音が手にしている雪片に気づく。
「へぇ~随分と面白そうなおもちゃを持っているじゃないか‥‥さあ、殺り合おうぜ‥‥今度は本気の手加減なしだ」
バルニフィカスを大剣モードにして福音へと肉薄するイヴ。
当然、福音も雪片で応戦する。
ガキーン!!
イヴのバルニフィカスと福音の雪片がぶつかり合う。
ガチャ、ガチャと鍔迫り合いが繰り広げられる中、
イヴの髪の毛が伸び、拳の形を形成すると福音の横腹を思いっきり殴る。
横からの突然の攻撃に福音は吹き飛ばされる。
「ピィ‥‥ガァ‥‥ガァ‥‥」
吹き飛ばされた福音は何が言いたげに機械音を鳴らす。
「卑怯だとか抜かすんじゃねぇぞ、ガラクタが‥‥これは殺るか殺られるかの戦いだ」
イヴはそう言って髪の毛を物凄い長さまで伸ばし、福音へとけしかける。
彼女の髪の先端はハエトリグサの様な形状となり、福音を掴みかかろうとする。
福音の方も銀の鐘を最大稼働させ、反撃に移る。
無数の光弾が福音の周りに展開され、それが射出される。
しかし、光弾がイヴの髪の毛に当たっても直ぐに再生し福音へと迫る。
回避行動で動きが鈍る福音。
「ほらほら、どうした!?足元がお留守だぜ!!」
イヴが福音の真下から突撃する。
防御を無視した捨て身の特攻の様に思えるが、福音の光弾がイヴに向かってきても触手の様に伸びた髪の毛がイヴ自身を防御して致命打を与えられない。
「もらったぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
イヴの渾身の斬撃が、福音の片翼を切断した。
しかし、福音もただではやられず、片翼になりながらも体勢を立て直し、イヴに回し蹴りを放つ。
髪の毛でガードしつつも全ての衝撃を吸収できずに吹き飛ばされる。
「て、テメェ!!」
再びバルニフィカスを振りかざし急加速で福音へと迫るイヴ。
すると福音は左手でバルニフィカスを握りしめた。
「くっ」
そして右手に持つ雪片でイヴを突き殺そうとするが、雪片にイヴの髪の毛が巻き付く。
「残念だったな‥‥アブソルート‥‥発動!!」
イヴが相手のエネルギーを奪うアブソルートを発動させ、福音のエネルギーを奪い始める。
福音も自身のエネルギーがイヴに奪われている事に気づき、雪片から手を離し、握っていたバルニフィカスからも手を離す。
イヴと距離を取りつつ、福音は、残っていた片翼を広げ、光弾を放とうとした。
「逃がすか!!」
イヴはバルニフィカスを持たぬもう片方の手に小さな翼を生やすと、羽根が弾丸の様に飛び、福音の身体に突き刺さる。
そしてイヴがパチンと指を鳴らすと、突き刺さった羽根が一斉に爆発する。
ゼロ距離での爆発により、福音の装甲の彼方此方が剥げる。
やがて福音は、爆炎の中から海上に向けて落下していき、水柱を立てて海中へと沈む。
「あっ、ヤバッ、アイツのコアを回収するのを忘れてた‥‥どうしよう‥‥」
戦いに夢中になるあまり、イヴは福音からコアを抜き取るのを忘れてしまった。
髪の毛を元の長さに戻しながら、束に頼んで潜水服を用意してもらおうかと思っていると、海中から強烈な光が海を割るかのように聳え立つ。
青白い光の柱は、海面をへこませ、その中心に福音が自らを抱くように蹲っている。
「ガラクタの分際で生意気に二次移行したか‥‥」
その瞬間、蹲っていた福音が体を起こし、次の瞬間、翼を失ったはずの頭部からエネルギー翼が発生、更に枝分かれし、四対八枚の翼を広げた。
そして、光の珠が弾け飛び、福音はまるでイヴを睨みつけるかのように彼女の方へと頭部を向ける。
すると、エネルギー翼から発生した光の粒子が福音の頭上に集中し、見る見るうちに巨大な光の球となり、次の瞬間、特大の砲撃となってイヴに襲い掛かった。
「ちっ」
イヴも背中の翼の数を増やし、そのまま自身の身体を翼で包み込み福音の攻撃を防御する。
福音は射撃しつつイヴとの距離を詰め、拳でイヴの翼の繭に拳打を打ちこむ。
バサッ
繭となっている翼を大きく広げ、福音を強引に吹き飛ばす。
しかし、福音は直ぐに光弾を出し、イヴへと打ちこむ。
「舐めるなよ!!ガラクタがぁ!!」
一方のイヴは腕と背中の翼の羽根で迎え討つ。
福音の光弾とイヴの翼の羽根が互いに命中し合う度に空に花火の様な爆発と光球が起こる。
そしてその爆発の中、イヴと福音は互いに接近戦を行いイヴは雪片とバルニフィカスの二刀流、福音は拳でやり合う。
イヴと福音の戦闘は遠方の方からも確認できた。
旅館にて福音との再戦を決意しその準備をしていた箒は遠くの空の彼方で光る光球と爆発音を聞き、
「一体‥何が‥‥」
「篠ノ之さん、大変です。福音が再び活動を開始しました」
作戦室で福音の動向を窺っていた山田先生が箒の下にやってきて福音に動きがあった事を伝える。
「では、あの爆発音は‥‥」
「はい、福音がどうやら何かと戦闘をしているみたいなんです」
「何か?‥‥何と戦っているんですか?」
「そ、それが分かりません‥‥」
「哨戒に出ている先生の誰か、自衛隊、在日アメリカ軍とか?」
「いえ、その様な連絡は一切此方には入っていません。その‥篠ノ之さん、この状況で出撃するのは危険ではありませんか?もう少し情報は入ってからでも‥‥」
山田先生は今福音が何と戦っているのか不明なこの現状で福音との再戦は危険ではないかと指摘する。
しかし箒は、
「いえ、危険は承知しています。ですが、今は一刻も早く福音の暴走を止めなければなりません。百秋がやられてしまった今、戦えるのは私だけなのですから」
「篠ノ之さん‥‥わかりました。でも、絶対に無茶だけはしないでくださいね。危険と判断したら、直ぐに逃げて下さい」
「はい」
紅椿の準備が整い、
「篠ノ之、紅椿出るぞ!!」
箒は紅椿を纏い、空へと舞い上がる。
行き先は福音の居る空‥‥。
その福音が居る空では、イヴと福音の戦いが続いていた。
イヴの瞳孔は完全に開いており、それはイヴがかなり本気となっている事を示していた。
イヴのバルニフィカスと雪片、髪の毛、羽根の攻撃を福音は翼と拳で受け止めつつ、拳と蹴り、光弾でイヴを攻撃する。
互いに攻撃し防御し、攻撃を躱す。
しかし、どちらにも疲労が見え始めてきた。
無人機の福音に疲労などは感じないが、雪片とアブソルートを展開しているバルニフィカスの影響でエネルギーが吸われ、福音自体も段々と余裕がなくなり始めたのだ。
光弾を撃てばバルニフィカスに吸収されエネルギーを回復、雪片へと回す。
だが、それを扱っているイヴの体力も無限と言う訳ではない。
その為、互いに攻撃がエネルギー、体力の消耗を控える為単調になり始めた。
「ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥」
(くそっ、まさかこの私が‥‥殺戮の銀翼が此処まで苦戦するとは‥‥)
「‥‥」
「ふぅ~‥‥」
一息ついて興奮した気分を落ち着かせる。
伸びた髪の毛、バルニフィカスを引っ込める。
雪片だけは自分の装備品ではないので、引っ込める事ができない。
イヴとしてはアイツの愛用の武器と言う事が気に食わないが、雪片の能力は止めの一撃には十分な一撃となり得る。
福音も拳を構える。
「‥‥」
「‥‥」
互いに空中でそれぞれ構えたまま睨み合う。
勝負は恐らく次の一撃で決まる。
イヴがカッと目を見開き福音へと迫る。
福音もイヴへと迫る。
距離がどんどん縮まっていく中、福音は拳の一撃ではなく、特大の砲撃をイヴへ当てようとする。
それは最初にイヴが福音と鍔迫り合いをした時、真横から髪の毛パンチを不意打ちでくらわした様に不意打ちには不意打ちでお返ししてきた。
そんな福音にイヴは雪片を投擲した。
エネルギー無効能力を持つ雪片は放たれた砲撃に突き進む。
福音の砲撃と雪片がぶつかり合い、砲撃のエネルギーが分解され、四散してゆく。
雪片は砲撃を分解しながら勢いを緩めず突き進む。
遂に砲撃を貫き、同時に同じエネルギーで出来ていた福音の翼も分解して消し去った。
いきなり翼を消し去られた福音は動けない。
「これで終わりだ!!ガラクタがぁぁぁぁー!!」
イヴが福音の懐に飛び込み拳を金属化+ナックル状にして福音の心臓部分を貫く。
「‥‥」
「ピィ‥‥ガァ‥‥ガァ‥‥ガァ‥‥ガァ‥‥」
福音は機械音声を出し、身体の彼方此方から火花を散らす。
イヴが福音の身体から手を引き抜くと、その手には福音のコアが握られていた。
そして、福音の首を掴むとそのまま小島の方へ投げつける。
轟音と砂煙を巻き上げ、福音は砂浜に叩き付けられる。
ゆっくりと浜辺に降り立つイヴ。
「‥‥」
砂浜に叩き付けられ、沈黙する福音を見下ろすイヴ。
コアを抜かれた為、福音は完全に機能を停止した。
「ふぅ~‥‥」
目標が完全に機能を停止した事を確認したイヴは一息ついた。
そして、イヴは福音のコアを懐に仕舞った。
福音のコアは手に入ったし、もう此処には用は無い。
さっさと束の下へと行き、コアを手渡そうとした時、
「こ、これはっ!?」
この場に訪問者を告げる声がする。
咄嗟にイヴは背中の翼を引っ込める。
「おや?これはこれは、篠ノ之束の付属品、篠ノ之箒じゃないか」
そう、やってきたのは福音を討伐しにやってきた箒だった。
勿論、箒はイヴの変化には気づいていない。
今自分の目の前に居るイヴが普段のイヴではない事に‥‥
「っ!?貴様はアインス!!どうして此処に!?」
「どうして?はっ、それは愚問だぞ、付属品。私が此処に居るのはコイツに用があったからだ‥このガラクタにな」
そう言ってイヴは砂浜に埋まりかけている福音の頭を踏みつけその体に刺さっている雪片を引っこ抜く。
「そ、それは、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)!?まさか、お前が倒したのか!?」
「此処に私とお前以外の誰が居る?」
「何、勝手な事を!!そいつは私の獲物だったのだぞ!!それを‥‥」
箒はイヴが福音を倒した事に不満があるらしく、イヴに食って掛かる。
「『私の獲物』だと?ふっ‥フフフフ‥‥ハハハハハ‥‥」
箒の発言を聞いてイヴは腹を抱えて笑う。
「貴様、何がおかしい!?」
「私でさえ、コイツには少々骨が折れたのだぞ、それを姉の七光りのおかげで手に入れた中途半端な力で勝つつもりとはな、ハハハハハ‥‥」
「き、貴様~疫病神の分際で‥‥!!」
「けど、実際笑っちゃうだろう?もしも立場が逆だったらアンタだって腹抱えて笑いこけているよ。ハハハハハ‥‥」
尚も笑い続けるイヴの姿を見て、箒は顔を俯かせ、プルプルと身体を震わせる。
そして、キッと怒りに満ちた顔を上げると、両手に空裂と雨月を装備してイヴに斬りかかって来る。
当然イヴは箒の行動も読んでいた。
イヴは箒の剣撃を雪片で受け止めると、箒の腹に思いっきり蹴りを入れる。
「がはっ‥‥」
(こ、コイツ‥ISの絶対防御の上から蹴りを入れたのに‥‥)
箒はイヴが生身の状態でISの絶対防御の上から蹴りを入れて、ISを纏った自分の方を蹴り飛ばしイヴ自身、足には全然ダメージがない様子。
「くっ、この‥‥」
箒は再びイヴに斬りかかる。
(単調な攻撃‥‥)
イヴは次にどんな風に遊んでやろうかと思案していると、箒の近くに多数のミサイルが着弾する。
「な、なんだ?」
箒はミサイルが飛んできた方向を見ると、其処には冷たい目で箒を空から見下ろしている簪の姿があった。
「更識、お前!!いきなり何をする!?」
箒が声を荒げると、
「‥‥篠ノ之さん‥何をしているのかな?‥かな?」
口を開いた簪の声は目と同じく冷たい声で箒に何故イヴに斬りかかっているのかを尋ねる。
「『何を』だと!?コイツは、私の獲物を横から奪い取ったのだぞ!!」
箒が砂浜に埋まりかけている福音を指さして声を荒げる。
簪も箒の指先にある福音をチラッと見て、
「貴女の獲物?福音が?ハッ、貴女程度の小物が福音の相手?フッ、笑えないジョークね」
簪は鼻で箒を笑う。
「お前までも私を愚弄するか‥‥」
箒は今度、簪に斬りかかる。
「これまでの私だと思って甘く見ていると痛い目に遭うぞ!!丁度いい、タッグトーナメントでの借り、此処で還させてもらうぞ!!」
これまでの箒は学園の訓練機である打鉄を纏っていたが、今の自分は束のお手製の専用機を持っている。
束のお手製の専用機が同じ専用機とは言え、そこら辺の企業が製作したIS如きに負けるとは思っていなかった。
「はぁぁぁー!!」
空裂と雨月で斬りかかる箒を簪は夢現で迎え撃つ。
空中で箒と簪が戦っている中、
「「イヴ!!」」
「アインスさん」
「無事ですか?」
鈴、ラウラ、シャルル、セシリア達、イヴの捜索メンバーも駆け付けた。
「えっと‥‥」
「これは‥‥」
「一体どういう状況ですの?」
「なんで?箒と簪が戦っているの?」
鈴達は何故、福音ではなく箒と簪が戦っているのか理由が分からず、首を傾げている。
「それよりも福音はどうなった?」
ラウラが福音の行方を尋ねる。
「あ?ああ‥あのガラク‥‥福音はあそこで埋まっているよ」
福音を思わずガラクタと言いそうになったイヴであったが慌てて訂正し、福音が埋まっている浜辺を指さす。
(あっ、このアインスさんもう一人のアインスさんだ‥‥)
瞬時にシャルルだけは今のイヴは表のイヴではない事に気づく。
「それで、箒さんと更識さんはなんで模擬戦をしていますの?」
セシリアが箒と簪が戦っている理由を尋ねる。
「うーん‥私にもよく分からないんだよねぇ~箒は最初、私に斬りかかってきて、其処を簪が助けてくれたんだけど、その後でああなっちゃって‥‥」
イヴも箒と簪の方へと視線を向ける。
空中では箒と簪が未だにドンパチを繰り広げているが、戦況的に簪が有利だ。
箒の斬撃を夢現でいなしている簪。
やはりISの騎乗時間‥専用機に乗り慣れている点から簪の方が箒よりも勝っている。
やがて、簪が箒の空裂と雨月を弾き飛ばし、夢現を180度反転させ、柄の部分で箒を叩き、浜辺に叩き付ける。
「くっ‥‥」
箒が起き上がると、簪は夢現を箒に突きつける。
「勝負あり‥ね‥‥」
「‥‥」
「篠ノ之博士のお手製のISも今の貴女には宝の持ち腐れよ」
簪の言葉に顔を歪ませる箒。
「まだ、やるつもりなら、今度は貴女の御自慢のISをスクラップにするわ」
完全に箒の戦意を削ぐ簪。
簪の覇気に当てられ、箒はガクッと項垂れる。
もし、今の姿を16代目当主‥簪の父親が見て入ればもしかしたら、簪が楯無に襲名していたかもしれない。
項垂れる箒からクルッと踵を返しイヴへと向き直ると、
「イヴ、良かった!!無事だったんだね!!」
箒に剥きだしていた覇気を引っ込めてパァっと花が咲く様な笑みを浮かべる。
その変わり様に箒以外の皆は少しドン引きした。
「う、うん‥心配してくれてありがとう」
「それより、その恰好は何?」
簪はイヴのドレス甲冑について尋ねる。
「ああ‥戦闘衣装‥かな?‥えっと‥何処か変かな?」
「ううん、良く似合っているよ。イヴ、ワルキューレみたいだよ」
簪は頬を赤くしながら言う。
「さっ、戻ろう」
簪はイヴの手を引いて旅館へ戻ろうと言う。
「あっ、ちょっとゴメン。私、寄るところがあるから、皆は先に戻っていて」
「イヴ」
簪はイヴがまだ戻らない事に関して寂しそうな表情になる。
「大丈夫、直ぐに戻るから」
チュッ
そう言ってイヴは簪の額にキスをする。
「い、い、い、い、い、イヴ!?」
額とは言え、突然イヴからキスされた事に驚愕し、顔を真っ赤にする簪。
「さっきのお礼‥ねっ」
イヴは簪にウィンクしてリンドヴァルムを纏い空へと舞い上がって行った。
束に福音のコアを渡す為に‥‥
「い、い、イヴが‥‥私に‥‥」
先程のイヴからのキスが余程嬉しかったのか頭から煙を出している簪。
顔はまるで酔っぱらったかのように真っ赤だ。
(僕がアインスさんとキスした事を知ったら、僕‥殺されるかも‥‥)
額ではなく、唇同士でのキスをした事のあるシャルルはイヴとキスをした事が簪にバレた場合、自分は殺されるのではないかと思い、想像しただけで身震いをする。
「取り合えず、簪は私が連れて帰るから、セシリアとシャルルは福音をお願い」
鈴が簪に肩をかして旅館に戻ると言う。
今の状態の簪の一人飛行は余りにも危険だ。
「了解ですわ」
「わかった」
シャルルとセシリアは機能を停止した福音の手を両方から持って旅館へと戻った。
箒は暫くの間、簪に敗北した事と彼女の言葉で凹んでいた。
※イヴのドレス甲冑はfateシリーズのセイバーオルタのドレス甲冑をご想像下さい。