シルバーウィング   作:破壊神クルル

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61話

ラウラが千冬の部屋をまるで追い出されるかのように出てロビーへと出るとそこでは小さな人だかりが出来ていた。

何事かと思って近づいてみると、

 

『ふざけんなよ!クソじじぃ!!坂道下るときは、必ずソリから降りるっていう約束だっただろうがぁ!!こっちはもうソリを引いているというより、追われている感じだったんだよ!アキレス腱にガンガンソリが当たっているんだよ!!血だらけなんだよぉもう!!』  (CV宇〇 秀〇)

 

『そんなもんお前がソリを上回る速さで走ればいい話だろうが!トナカイだろうが!ああん!?お前の親父はそりゃあ凄かったよ。坂道でもぐんぐんソリを引っ張ってさ、そりゃ立派なトナカイだった!!』 (CV緒〇 賢〇)

 

『アンタ、えらい親父を気に入っている様だけどな、親父はあぎれにアンタの悪口ばっか言ってたから言っとくけど』 (CV〇垣 〇成)

 

『嘘つくんじゃねぇ!!』 (CV〇方 〇一)

 

イヴはトナカイのぬいぐるみとサンタクロースのぬいぐるみで腹話術を披露していた。

しかも声まで変えている程の腕前だ。

 

(なぜ、この季節にサンタクロースなのだ?)

 

ラウラを始めとするイヴの腹話術を見ていた者達はもうすぐ夏が近づいているのに腹話術の人形がサンタクロースとトナカイと言う冬のキャラクターだったので、なぜそのキャラクターなのかとそんな疑問を感じていたが、内容が面白かったので突っ込まずに見ていた。

 

「ありがとうございました」

 

やがてイヴの腹話術が終わり、イヴは観客達にペコリと一礼すると拍手が起こる。

イヴの腹話術が終わり解散となる中、

 

「それじゃあ、デュノア君おやすみ」

 

「あっ、うん。おやすみ、アインスさん」

 

シャルルが部屋に戻ろうとした中、

 

クシャ

 

シャルルの手にはいつの間にか小さく折りたたまれた紙が握られていた。

 

「?」

 

シャルルが首をかしげながら紙を開いていくと、

 

「っ!?」

 

其処には、

 

『9時に浜辺で待っています。 アインス』

 

とイヴの筆跡でそう書かれていた。

 

(あ、アインスさんからの呼び出し!?しかも浜辺って‥‥)

 

シャルルは何故イヴがこんな事をしたのか分からないが兎も角、イヴから直々のお誘いなので断ると言う選択肢は無かった。

そして、何故イヴはシャルルにこうしてお忍びの誘いを用意したのか?

それはイヴの中に居る獣のためであった。

シャルルと一緒に買い物に行ったあの日から、イヴの中で獣がしつこくシャルルと二人っきりの時間を作ってくれと頼んできたのだ。

このまま放置しておくと獣が強引な手を使って自分の身体を乗っ取る可能性もあり、昼間にイヴは獣と約束をしたのだ。

ただその時に、

 

(いい、夜にデュノア君との密会はさせるけど、エッチな事は禁止だからね!!やってもキスまでだからね!!)

 

『分かっているよ、しつこいな。そんなに私の事が信用できないか?』

 

(できない!!)

 

『なっ、即答かよ!』

 

(だって、お前デュノア君の前だと発情期の獣になるんだもん)

 

『そりゃあ、獣ですもの大目に見てね』

 

(できるか!!問題を起こせば私だけでなく、デュノア君にも迷惑がかかるんだぞ!!その辺分かっているのか!?大体、こうして密会するだけでも危ない橋なのに‥‥こんな事がアイツらにバレたら確実に潰しにかかって来るぞ)

 

『ああ、あのブリュンヒルデ様とその弟様か?あんな雑魚共に何が出来る?』

 

(ISの腕だけじゃなくて教師と言う権力を使って来るって事だよ!!)

 

『そん時は、あの青髪のストー会長に助けてもらえればいいじゃねぇか。こっちだってもてる人材と権力は使わねぇとな』

 

(いいから、あまり他人には迷惑をかけるな!!それに高校生で妊娠、出産、子持ち何て生まれて来た子供がかわいそうだろうが!!)

 

『今まで男に抱かれてきて今更かまととぶるなよ』

 

(うるさい!!あんな奴等の子供を孕むなんて想像するだけでもおぞましい!!これまでの経験で妊娠してこなかったのが奇跡だと思うよ、本当に‥‥)

 

イヴは過去の経験を思い出し、思わず身震いする。

 

(いい、やってもいいのはキスまでだからね!!わかった!?)

 

『へいへい』

 

イヴは獣に釘をさして入れ替わった。

獣は確かにイヴの言う通り、シャルルの前では発情期の獣っぽくなるが、その反面、血に飢えた獣‥殺戮の銀翼とは違った一面性‥人間に近い感受性を抱いているので出来ればこのまま人間性を高めていきたいと思っていた。

だからこそ、シャルルにはすまないが強制的に協力してもらうつもりだったのだ。

 

月夜の静かな浜辺。

そんな浜辺をシャルルは一人歩いていた。

時間指定はあったが、待ち合わせ場所が浜辺と言う事しか書いていなかったので、シャルルはこうして浜辺を歩きながらイヴを探していた。

すると、シャルルの前に月夜の夜の海をジッと見ているイヴを見つけた。

 

「‥‥」

 

シャルルは暫しその姿に見とれていた。

しかし、いつまでも呆然と見ている訳にはいかない。

こうして二人っきりで会える時間は限られているのだから‥‥

 

「あ‥‥」

 

シャルルが声を掛けようとした時、

 

「待っていたよ、デュノア君」

 

イヴはゆっくりシャルルの方へと振り向く。

流石は暗殺者、人の気配に関しては敏感な様だ。

 

「‥‥こんばんは、アインスさん」

 

「こんばんは、デュノア君」

 

シャルルはイヴの隣へと近づく。

ただ、シャルルはイヴの様子に違和感を覚え、もしかしてと思って、

 

「‥‥君はもしかして、もう一人のアインスさん?」

 

恐る恐る尋ねてみた。

 

「へぇ~デュノア君もなかなか分かって来たみたいじゃないか‥そのとおり、今はこの私、殺戮の銀翼がイヴの身体の表にいる」

 

イヴ(獣)が不敵に笑みを浮かべるとシャルルは思わず半歩下がる。

 

「おいおい、そんなに怯えるな。別にお前を殺しはしないし、食べるつもりはない。イヴ曰く大勢の人に迷惑が掛かるみたいだからな」

 

「そ、そうなんだ」

 

一応表のイヴが獣に忠告してくれたみたいなのでホッとするシャルル。

 

「それよりも見てみろ、綺麗な月だぞ」

 

イヴ(獣)は再びシャルルから空に浮いている月へと視線を戻す。

シャルルもイヴに釣られて月を見る。

 

「綺麗な満月だ‥‥こんな夜は何故か、無性に興奮する‥‥知っているか?『満月の日には犯罪が増える』と言うデータがあるらしいぞ」

 

「えっ!?」

 

突然物騒なトリビアを言われて益々警戒するシャルル。

 

「だから、そんなに怯えるな」

 

「で、でも‥‥」

 

「まぁ、まずは一杯やろう。勿論ジュースだがな」

 

イヴ(獣)は浴衣の袖から二本の缶ジュースを取り出してそのうちの一本をシャルルに渡す。

そして、浜辺に漂着していた丸太の上に腰掛ける。

 

「そんな所に突っ立っていないで座ったらどうだ?」

 

イヴ(獣)自らの隣をポンポンと叩きシャルルに座れと誘う。

シャルルとしては迷ったが、既に退路は無く恐る恐るイヴ(獣)の隣に座る。

 

「それじゃあ、乾杯」

 

「か、乾杯」

 

イヴとシャルルはプルトップを開けると互いに缶ジュースをぶつけ合い飲み口に口をつける。

月と夜の海を肴にイヴとシャルルはジュースを飲んでいると、

 

「‥‥そう言えば」

 

「ん?」

 

ジュースを飲んでいる時、不意にイヴ(獣)が口を開く。

 

「昔、夏目漱石は『 I LOVE YOU 』を『月が綺麗ですね』と訳したらしい」

 

「な、なつ‥ソウセキ‥?」

 

「夏目漱石。この国の昔の文豪‥小説家だ」

 

「へぇー」

 

「おっと、そう言えば私もついさっき、デュノア君に似たような台詞を言ったなぁ‥‥」

 

「あっ!?」

 

「まぁ、私の言葉をデュノア君がどう解釈するかは君の自由だよ」

 

「‥‥」

 

イヴ(獣)の言葉にますますイヴの事を意識してしまうシャルル。

その後は暫く互いに会話をする事もなく二人はジュースを飲みながら月夜の海を眺めている。

シャルルはやはりイヴの事を気になるのか時々チラチラとイヴの姿を見ている。

 

「‥‥ねぇ、デュノア君」

 

「な、なにかな?アインスさん」

 

「IS以外で空‥‥飛んでみたくない?」

 

「えっ?IS以外で?」

 

「うん」

 

「でも、どうやって?」

 

此処にはヘリもセスナ(飛行機)もない。

IS以外でどうやって空を飛ぼうと言うのだろうか?

 

「私が連れていってあげるよ」

 

イヴ(獣)はバザッと背中に白い大きな翼を生やしてシャルルを夜の空中散歩へと誘う。

その姿はまさに天使を彷彿とさせる。

普通ならば断わるところだが、この時シャルルは無意識のままイヴの手を取った。

すると、シャルルの身体はフワリと宙を舞う。

そして二人は月夜空へと舞上がる。

始めはISなしで空を飛んだことでちょっとビクついていたシャルルも段々と慣れてくるとイヴに声を掛ける余裕も出て来た。

 

「ね、ねぇ、アインスさん」

 

「ん?なに?」

 

「その‥‥昼間、人魚が出たって聞いたんだけど‥‥それってもしかして‥‥」

 

イヴの背中の翼を見て、昼間噂になった人魚について尋ねるシャルル。

 

「それは表のイヴだ。鈴が溺れて海に沈んだから咄嗟に変身して鈴を助けた。幸い溺れていたから鈴の意識があいまいだったから噂程度におさまったがな」

 

(アインスさんの人魚姿か‥‥見てみたったなぁ‥‥はっ!?そう言えば僕、アインスさんの水着姿見ていない!?)

 

昼間他のクラスメイト達からのお誘いを受けてイヴの水着姿を見ていなかった事に気づいたシャルルは今更ながら悔しがった。

 

「~♪~♪」

 

するとイヴ(獣)は空を飛びながら歌を歌いだす。

以前表のイヴが歌っていた『星めぐりの歌』だ。

今は獣が表に出ていてもやはり声はイヴなので、綺麗な歌声だった。

シャルルと共に夜の空中散歩を堪能したイヴは再び浜辺へと戻る。

 

「いやぁ~久しぶりに自分の翼で飛んだわぁ~」

 

うーん と背伸びをしながらイヴ(獣)も空中散歩を堪能した様子。

 

「デュノア君はどうだった?」

 

そして、シャルルに感想を尋ねる。

 

「なんだか、新鮮な感じだった‥‥ISとも違う感じだったし‥‥それになにより‥‥」

 

シャルルは其処で言葉を止めた。

空を飛んでいる時はずっとイヴの手を握りしめていたのだ。

その事を敢えて言うと何だか恥ずかしい。

 

「ん?どうした?先を言えよ」

 

「あっ、いや‥‥なんでもない。でも、楽しかったよ」

 

「そうか、それは良かった。さて、そろそろ戻ろうか?」

 

「う、うん‥そうだね」

 

そろそろ就寝前の点呼がある時間だ。

戻らなければ密会がバレてしまう。

イヴ(獣)とシャルルは旅館へと戻りロビーにて、

 

「それじゃあおやすみ、デュノア君」

 

「うん、おやすみアインスさん」

 

すると、別れ際にイヴ(獣)は、シャルルの両頬を両手で掴むと、

 

「んっ‥‥」

 

「んぅ?」

 

不意にシャルルの唇を奪った。

キスはニ~三秒ほどの短いものだったがシャルルを狼狽させるのには十分な威力だった。

 

「なっ、なっ、なっ、アインスさん?」

 

「それじゃあ、お休みデュノア君」

 

イヴ(獣)はシャルルに笑みと共に手をひらひらと振り自分の部屋へと戻っていく。

反対にシャルルは未だにイヴ(獣)にキスをされた事に呆然として山田先生に見つけてもらうまで呆然としていた。

 

(満足したか?)

 

部屋に戻っている最中、イヴは獣にシャルルとのひと時を楽しめたのかを尋ねる。

 

『ああ、満足したぞ。でも、やはり彼を食えなかったのが残念だがな、月夜の浜辺は雰囲気もバッチリだったのに‥‥』

 

(‥‥)

 

獣はやはり獣であったが、ちゃんとイヴの言う事は聞いてくれたことにホッとした。

予め釘を刺していなかったら、シャルルは女性恐怖症になっていたかもしれない。

 

翌朝‥‥

 

「‥‥」

 

箒は旅館の中庭から飛び出ていたモノをジッと見ていた。

 

「ん?おい、箒どうした?」

 

そこへ百秋が来て、箒に声をかける。

しかし、箒はそれにも答えずに中庭から飛び出ていたあるモノをジッと見ている。

箒が何を見ているのかと思い、百秋も箒の視線を追うと、そこには機械で出来たうさぎの耳と『引っ張って下さい』と書かれた看板があった。

箒も百秋もその機械で出来たうさぎの耳には見覚えがあった。

 

「な、なぁ、箒‥これって‥‥」

 

「私は知らない」

 

そう言って『引っ張って下さい』と言う看板の指示を無視してその場から去って行く。

 

「‥‥」

 

百秋もどうするべきか迷ったが、『触らぬ神に祟りなし』の言葉通り、態々藪をつついて蛇を出して面倒に巻き込まれるのはゴメンだと判断したので箒同様、ソレを無視をしてその場から立ち去った。

百秋と箒の二人が機械で出来たうさぎの耳を無視してから少しして、

 

「ん?あれは‥‥」

 

今度はイヴがソレを見つけた。

 

「これって確か、たばちゃんのつけているカチューシャ?」

 

中庭から飛び出ていた機械のうさぎの耳を見て首をかしげるイヴ。

しかもその傍には『引っ張って下さい』と書かれている看板もある。

まさか、この下に束が埋まっていると言う事はないだろうが、気になったイヴはそのうさぎの耳を地面から引っこ抜いた。

引っこ抜いてみると案の定、地面には束は埋まっていなかった。

その直後、キィィィンと何処からジェット戦闘機のような音が聞こえてきたと思ったら空から大きなニンジンが降って来た。

ニンジンは旅館の中庭に突き刺さり轟音と砂煙を上げる。

 

「に、にんじん?」

 

メタリックな光沢を放つ、機械のニンジン。

イヴがそのニンジンに触れようとした時、ニンジンが音を立てて左右に開いた。

そしてその中から現れたのは‥‥

 

「此処は何処だ?」

 

白と青のアリス風のドレスに機械で出来たうさぎの耳のカチューシャをつけた束だった。

 

「地球よ。よく来たわね」

 

「いやぁ~いっちゃん久しぶり会いたかったよ~!」

 

束はイヴに向かってダイブ&ハグをした。

そしてイヴも束を抱き返した。

 

「うん、ホントに久しぶり、年始に会ってからだから大体半年ぐらいかな?元気だった?」

 

「もちろん!私もクーちゃんも元気だよ!まぁ、いっちゃんに会えなくて寂しかったけど、会えて良かったよ~!!」

 

「うん!私もたばちゃんとまた会えて、とっても嬉しいよ。ところで今日はどうして此処に?」

 

イヴは束が此処に来た理由を尋ねる。

世界中から指名手配されている束が態々理由もなく人前に出てくるとは考えにくいからだ。

 

「あっ、うん‥‥ちょっとした野暮用‥‥後でまた会う事になるかもしれないけど、その時は他人のフリをして」

 

「えっ?」

 

「その方がお互いの為だから、特にアイツらに私といっちゃんの関係を知られると色々面倒だしね」

 

「ああ、なるほど。わかった」

 

束の言う『アイツら』が誰を指すのか直ぐに分かったイヴ。

 

「その野暮用が終わったら、少しは時間が取れると思うからその時に色々お話しよう」

 

「わかった」

 

「それじゃあ、また後でね」

 

「うん、後でね」

 

束はイヴに手を振りその場を去って行く。

 

(ゴメンね、いっちゃん‥‥いっちゃんには辛い思いをさせるかもしれないけど、これはいっちゃんのためでもあるんだよ)

 

去り際に束はこの後自らがイヴに対する行為に心の中で謝罪した。

 

束との邂逅後、朝食の席でイヴはシャルルに気づいて小さく手を振る。

すると、シャルルは昨日のことを思い出して顔をほんのりとあからめて俯く。

 

「あれ?イヴイヴ、昨日デュノッチと何かあったの?」

 

本音がイヴとシャルルの態度から昨日何かあったと思いイヴに声をかける。

しかし、

 

「えっ?いや、何もなかったよ」

 

と、とぼける。

 

「ホントに?」

 

「うん。まぁ強いてあげるなら、昨日かんちゃんとデュノア君と一緒にロビーでババ抜きをしたかな?」

 

イヴは、密会を行ったのはあくまでも獣がやった事なので完全に嘘ではないと割り切り本音には何もなかったと言う。

 

「ふ~ん」

 

だが、本音はイヴが何かを隠していると疑っていた。

 

「そう言えばイヴは何故、昨夜ロビーで腹話術などをしていたのだ?」

 

次にラウラがイヴに何故、ロビーで腹話術していたのかを尋ねる。

 

「かんちゃんとデュノア君と一緒にトランプをしていて特技の話なって、私が最近腹話術をやり始めたって言ったら二人が見て見たいって言うから、フロントでお人形を借りてやっていたら、人が集まっちゃって‥‥」

 

「なるほど」

 

イヴはラウラに昨夜のロビーでの出来事を話すとラウラは納得した感じだった。

 

朝食後、生徒は暫しの休憩の後、ISスーツに着替えて浜辺へと集まる。

昨日の自由時間とうってかわって今日は本格的な実習授業が行われる。

 

「それでは各班に振り分けられたISの装備試験を行うように」

 

『はい!!』

 

千冬はこの夏の日差しの中、いつもの黒いレディーススーツを着ている。

まぁ、それを言っちゃあイヴもツナギのようなISスーツなので、似たようなものだ。

 

「専用機持ちは各国から届けられた専用パーツのテストだ。時間は有限だ。全員迅速に行え」

 

『はい!!』

 

「篠ノ之。お前はちょっとこっちに来い」

 

「はい」

 

箒は何故自分だけ呼ばれたのか分かっていた。

彼女はポーカーフェイスを心がけようとしていたが、既に口元がニヤついており、嬉しさを隠せない様子だった。

 

「篠ノ之、お前は今日から専用機持ちだ」

 

「はい」

 

「えっ?どういう事だ?それは?」

 

百秋が突然箒に専用機持ちになる事に驚いていた。

 

「ああ、それなんだが‥‥」

 

箒が百秋に説明しようとした時に、

 

「お待ちどうさま。箒ちゃん」

 

浜辺には束がいつの間にか立っていた。


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