臨海学校の準備の為ショッピングモールへとやってきたイヴとシャルル。
その二人の後ろからはシャルルの抹殺を企てている簪と本音、興味本位で突いて来たラウラの姿があった。
そして、イヴはまだ気づいていないが、かつて百秋と同じく自分の悪評を近所に垂れ流し百秋と共に自分を強姦した五反田弾も来ていた。
「蘭、すまねぇが俺ちょっと用を思い出した。後はお前一人で買い物してくれ」
「えっ?ちょっと、おにぃ!?」
弾は蘭に抱えていた荷物を手渡すと何処かへと行ってしまった。
「全く勝手なんだから」
蘭は気に入らないが荷物持ちが消えた事に対して不満なのか頬を膨らませた。
弾が再び一夏(イヴ)に対して性的暴行を目的に狙っているとはこの時の蘭は知る由もなかった。
一方、イヴ(一夏)本人も弾に狙われているとは知る由もなくシャルルと共にショッピングモールを歩いている。
そんな中、シャルルがジュエリー店で結婚か婚約の為、指輪を購入しているカップルを見つけてつい足が止まってしまう。
女尊男卑の世の中ながらもそのカップルの女性は女尊男卑に染まっている訳ではなさそうで、彼氏に指輪を選んでもらって喜んでいた。
その様子を見てシャルルは、
(結婚か‥‥いいなぁ‥‥)
夢見る乙女ではないが、美少女だらけのIS学園に在籍している為かシャルルにも恋愛感情、結婚願望と言うモノが次第に芽生え始めていた。
しかも今朝のイヴとの間にあったあの出来事がますますシャルルにイヴを意識させる。
故にシャルルがこんな妄想をしてしまうのも不思議ではない。
高級フランス料理店内に入ってくる自分とイヴ。
自分は洒落たスーツをイヴは小粋な赤いドレスを着ている。
イヴは豪華な店内の様子をうっとりと眺めている。
自分はロビーの受付に立っているホストに軽く手を振る。
そして二人は夜景の見える最高の席に案内される。
ウェイターがイヴの椅子を引いて彼女が座るのを立ったまま待つ自分。
「ここ、高そうだけど大丈夫?」
「大丈夫だよ」
おどけた表情でウィンクをする自分に微笑むイヴ。
次々と運ばれて来る最高級のフランス料理に舌つづみを打つ二人。
デザートが終わり、バイオリン奏者がテーブル側で演奏を始める。
ロマンティックな演奏とレストランの雰囲気に酔いしれるイヴ。
「僕がいつもどんなに君を思っているか、わかる?こんなに一緒にいるのに、どう上手く伝えればいいかわからないけど……アインスさん、いや、イヴさん。貴女に伝えたい気持ちがあるんだ」
「ん?それはどういう意味?」
本当に分からないのか?それとも敢えてシャルルに言わせようとしているのか?首を傾げるイヴ。
「僕は君を愛しています」
「で、でも‥私は‥‥その‥‥人間じゃないし‥‥」
イヴは俯きながら自分は既に人間ではなく既に生物兵器となっている事に対して負い目がある様だ。
そんなイヴに対して自分は彼女の言葉を遮り、
「愛があれば、どんなことも乗り越えられるのさ。僕だってその‥‥特殊な身体だし‥‥」
自分も普通の人の体ではない事を彼女に伝え、ポケットから指環の入った小箱を取り出してイヴに見せる。
「僕達は愛し合わなければいけない運命なんだよ……イヴ」
自分は指輪を小箱から取り出しイヴの手を取り、彼女の指に指輪をはめる。
頬を赤く染めるイヴ。
「デュノア君‥‥」
「シャルルって呼んで」
「シャルル‥‥」
「イヴ‥‥」
二人の唇の距離が次第に縮まり‥‥
「‥‥の‥あ‥君‥‥で‥‥あ‥君‥‥デュノア君」
「えっ?」
イヴはジュエリー店を見て突然ボォッとしてしまったシャルルに声をかけてシャルルを現実に引き戻す。
「イヴさ‥‥アインスさん?」
「どうしたの?気分でも悪いの?」
「い、いや大丈夫‥初めて来た所かだから色々目移りしちゃって‥‥あははは‥‥」
まさか、ジュエリー店に居たカップルを見てイヴにプロポーズをしていた妄想をしていたなんて言える訳もなくシャルルは乾いた笑みと共にそれっぽい事を口にした。
「そう?でも、気分が悪かったら遠慮しないで言ってね」
イヴの方もシャルルがこのショッピングモールに来たのが初めてと言う事でシャルルの言葉を納得した様子。
そして二人は再び歩き始めた。
シャルルは帽子と伊達メガネで変装しているが連れのイヴはやはり目立つ容姿をしている為か通行人はイヴの姿をチラチラ見て、男はその連れのシャルルに対して嫉妬深い目線を送っていた。
しかし、イヴもシャルルもそれらの視線を一切気にすることなくショッピングモールの中を進んでいった。
そしてその後ろを青黒いマイナスオーラを纏った簪が追いかけると通行人は簪の姿を見てドン引きしていた。
二人はまずシャルルの水着を購入することにした。
女性の買い物は長い為、男物の水着を買うシャルルの方が早く済みそうだったからだ。
「へぇ~男物の水着も結構色々あるんだ‥‥」
イヴは男物の水着コーナーでその種類の多さに意外性を感じていた。
「あっ、見て見てデュノア君、男物にもビキニってあるんだってこれなんてどう?」
イヴはシャルルに男物のビキニ水着を勧める。
しかもかなりきわどい。
「い、いや‥流石にそれはちょっと‥‥」
布の面積が少ないので水の抵抗は少ないかもしれないが、下が男のシャルルも流石に恥ずかしいのかイヴの勧めるきわどいビキニを遠慮する。
「うーんと、それじゃあ‥‥」
最初のビキニが却下されたのでイヴは次の水着を選ぶ。
その様子を影から見ていた簪は‥‥
「ちょっと、なによ!?あれ!!あれじゃあまるでデート中のカップルじゃない!?イヴは私のモノなのに‥‥やっぱりデュノア君は此処で始末するしかないようね」
イヴとシャルルの様子を見て青黒い嫉妬の炎をメラメラと燃やす。
(かんちゃんもやっぱりたっちゃんの妹だ‥‥たっちゃんと同じ事を言っているよ‥‥いや、デュノア君の抹殺何て言っているあたりはたっちゃんよりも過激かも‥‥)
本音は以前、食堂でイヴと食事をしていたシャルルに対して同じ台詞を言っていた事に関してやはり楯無と簪は姉妹なのだと実感した。
(ふむ、アレが操を立てるというものなのだろうか?)
シャルルの水着を選んでいるイヴを見て日本かぶれの副官が教えてくれた日本の女性を表す言葉の一つなのかと思ったが、ちょっと意味が違った。
そして、簪、本音、ラウラは自分達以外でもイヴを狙っている者が居る事に気づかなかったし、その者も簪達の存在には気づいていなかった。
「ちっ、男と呑気に買い物かよ。あの男、もしかしてアイツの彼氏か?」
弾は一夏(イヴ)が水着を選んでいるシャルルが一夏(イヴ)の彼氏かと疑う。
「あんな売女の彼氏になるなんてどうかしてんじゃねぇか?」
今のシャルルは私服を着て変装の為、帽子と伊達メガネをしているので、弾はシャルルが世界で二番目に発見された男性操縦者でIS学園の生徒である事を知らなかった。
まぁ元々、シャルルはデュノア社が意図的に隠す様にIS学園に入学させたので弾がシャルルの事を知らなくても無理はなかった。
「まぁ、アイツが中学時代に俺のムスコでヒィヒィ言っていた事を知ったらどうなるかな?」
弾は一夏(イヴ)を犯すだけでなく、昔の話を一部誇張と捏造をして一夏(イヴ)とシャルルの仲を引き裂こうと考えた。
一夏(イヴ)を犯してその写真をシャルルに見せて自分と一夏(イヴ)は深い関係だとアピールさせてシャルルを絶望させると同時に彼氏(シャルル)が一夏(イヴ)を振る状況を作って一夏(イヴ)にも絶望を味合わせてやろうと画策したのだった。
弾がそんな外道な事を画策しているとは知る由もないイヴはシャルルに似合いそうな水着をチョイスしている。
「うーん‥‥それなら、これはどうかな?」
そしてイヴはシャルルに今度は薄水色のハーフパンツ型の水着を差し出す。
「うん、いいかもしれない」
シャルルはこの水着を気に入った様でそれを買うことにした。
そして次に上に着る為のパーカーを選ぶ。
下の水着が薄水色なのでそれに合う色のパーカーを探す事にして、白色のパーカーを購入した。
そして次にイヴの水着を買う為、女物の水着が売っているコーナーへと向かう。
イヴとシャルルの後ろからは簪達がさりげなく追尾し、更に別のルートからは弾がイヴを追いかける。
しかし、簪達はイヴを追尾する途中、人混みによりイヴとシャルルの姿を見失ってしまった。
イヴの目的地は女物の水着コーナーなのだが、このショッピングモールには複数のレディース物の洋服店があり、水着を売っているコーナーも複数ある。
イヴたちがその水着コーナーに買に行ったのか検討がつかない。
簪達は一つずつしらみつぶしにイヴを探しに行くしかなかった。
一方、弾はイヴの姿を見失うことなく付かず離れずの距離を保ったままイヴを追尾していた。
この執念を別の方向に向ければいいものを‥‥
そしてやってきたレディース水着コーナー。
そこには男物の水着よりもデザイン、種類が多い水着があった。
イヴは元々学校のスクール水着で行こうと思っていたので、適当でいいかと思っていたのだが、
「いらっしゃいませ」
「あっ、どうも‥‥」
「本日は何をお求めでしょうか?」
「水着を一着欲しいのだけれど‥‥」
「わかりました」
適当に買うつもりだったのだが、店の女性店員さんが何故かノリノリでイヴの水着を選び出した。
シャルルとしては自分が選びたかったが、此処は同性の店員さんに任せることにした。
「お客様は綺麗な容姿ですし、大人っぽい身体つきなので、ビキニスタイルの水着はどうでしょうか?」
「ビキニ‥ですか‥‥?」
まさかシャルルに最初に勧めた水着を自分も勧められるとは‥‥
とはいっても男物と女物のビキニでは若干印象も異なる。
「はい。ビキニが綺麗に見えるのは大人ならではですから」
そう言って店員はイヴをビキニの水着コーナーへ案内する。
そして案内されたビキニの水着コーナーでも様々なデザインのビキニ水着に色も様々である。
「色に関しては、淡色で単色だったり、白と合わせただけのツートンですと、爽やかな感じではありますけど、少し幼く見えてしまいます。白系ですと、拡張色なので、お体を細く魅せたいのでしたらなるべくは避けるべきかと・・・お客様のお肌は白く髪も銀色なので、此処はやはり色合いを引き立てる黒がよろしいかと?」
店員さんはそう言うとシンプルなデザインの黒いビキニ水着をイヴに勧める。
「は、はぁ‥‥ではそれで‥‥」
「ご試着なさいますか?」
「そうですね」
念の為イヴは水着を試着してみることにした。
試着と言う事で店員さんはイヴの下から離れ、シャルルも
「アインスさん」
「ん?なに?」
「ゴメン、ちょっと僕、トイレに行って来る」
「うん、わかった」
シャルルはトイレへと向かった。
そして一人、試着室へと入るイヴの姿を物陰から窺う赤い影があった。
他ならぬ弾だった。
「へぇ~試着室に入ったか‥‥これは丁度いい、服を脱がせる手間が省けるぜ」
弾は試着室へと入って行くイヴの姿を見て抱く際に服を脱がす手間を省く為、暫く時間を置いて周りの様子を窺ってタイミングを見計らう。
その頃、まさか試着室の外で自分を狙っている変質者が居るとは知らないイヴは店員さんが勧めた水着を着るために服を脱いでいた。
そして、手早く水着に着替えた時、試着室の外に人の気配を感じた。
店員かシャルルが来たのだろうか?
そう思っていると、その人物は試着室の中に入って来た。
外にはイヴの靴があるので他の客が無人だと思って間違って入って来るとは思えない。
それに店員にしても中に居るイヴに対して一言声かける筈だ。
「っ!?」
イヴが振り向くと、彼女の口はその侵入者の手によって塞がれた。
「むぐっ!?」
「よぉ、久しぶりだなァ。ハニー‥随分とまぁ、大人びた身体つきになったじゃねぇか」
試着室に入って来た侵入者こと弾はニヤリと嫌らしい笑みを浮かべてイヴ(一夏)に小声で声をかける。
「うっ‥むっ‥‥んっ‥‥」
「第二回モンド・グロッソの後、行方不明になったって聞いたから心配したぜ‥でも、こうして会えたんだ‥久しぶりに俺のモノをあげるぜ‥‥嬉しいだろう?ん?」
そう言って弾はイヴの口を塞いでいない方の手で器用にベルトを緩めズボンのボタンを開けチャックを下ろし、ズボンを脱ぐ。
そして残った下着も一気に下ろした。
「久しぶりにお前に姿を見て思わず興奮しちまったからな‥‥場所が場所だけにお前の声を聞けないが、一緒に気持ちよくなろうぜ」
「んっ‥‥むぅ‥‥んっ」
弾がイヴへと迫る。
すると、イヴは自分の口を塞いでいる彼の腕を両手でガシっと掴む。
「ん?ふん、無駄な抵抗だな」
弾はイヴの行動が最後の悪あがきだと思った。
イヴの中に入れてしまえば性の快楽からイヴはだらしなく乱れ、この腕だって離すだろうと思っていた。
しかし‥‥
ぎゅぅぅぅぅぅぅ~
イヴの力は物凄く強く、腕の骨が折られるかと思うぐらいだ。
(っ!?コイツ、何時の間にこんな力を‥‥)
声を出したい所であるが、此処下手に声を出せば試着室の異変を他の客や店員に気づかれてしまうと思い弾は声を出せなかった。
それに今、イヴの口から手を離せばイヴが叫ぶかもしれない。
それもアウトだ。
(コイツ、放しやがれ)
ズボンと下着を下ろしたもう片方の手でイヴの片腕を掴み、放そうとするがイヴの腕はびくともしない。
弾の腕を掴んでいるイヴの腕は次第に力を増していき、弾は悲鳴を上げる寸前である。
(くそっ、このクソアマがっ!!)
もう弾はイヴを犯すことなど二の次となり、自分の腕から彼女の腕を引き剥がすことに専念し、拳で彼女の腹部を殴った。
腹部を殴られてイヴは痛みで僅かに顔を歪めるがそれでもイヴは弾の腕を離さない。
もう、こうなったらイヴの口元から腕を離してこの場から逃げようかと思ったが、腕はびくともしない。
まるでイヴが自分の腕を押さえつけているかのようだ。
(コイツ、放せ!!放しやがれ!!)
あまり時間をかけると店員が戻ってくるかもしれない。
弾の中に焦りが募る。
シャルルの場合、弾は敢えて自分がイヴを犯している場面を見せて、「此奴の方から俺を誘ってきた」と言って自分とイヴの過去をシャルルにぶちまけるつもりだった。
しかし、イヴの予想外の抵抗で時間を多く削られた。
そして、弾にとって最も恐れていた事態となった。
「お客様?」
「っ!?」
店員が戻って来てしまったのだ。
今のこの姿を店員に見られたら自分はおしまいだ。
此処はなんとか店員をやり過ごすしかない。
弾はそう思っていたのだが、イヴの力は更にまして腕の骨がミシミシ言っている。
彼はイヴを殴るのを止め、咄嗟に自分で自分の口を塞ぐ。
このままでは悲鳴を上げてしまい店員に気づかれてしまいそうだからだ。
その間にもイヴは力を強めて弾の腕を強く握る。
「お客様?大丈夫ですか?御気分でも優れないのですか?」
店員さんが試着室の外から心配そうに声をかける。
しかし、試着室の中からはうんともすんとも返答がない。
一応、客が入っているので店員さんも無理には試着室の中には入れない。
そこへ、
「どうかしたんですか?」
トイレからシャルルが戻って来た。
事態は更に悪化した。
「あっ、先程のお客様のお連れ様」
「何があったんですか?」
「それが、お客様が試着室に入ったきり出て来なくて‥‥お声をかけたのですがそれにも返答がなく‥‥」
「えっ?アインスさん?アインスさん!!」
店員さんから事情を聞いたシャルルが試着室に声をかけたが、店員さんの時と同様中からの返答はない。
店員さんとシャルルの声を聞いたイヴは口が開けるくらい弾の腕を少し動かして‥‥
「た、助けて!!デュノア君!!」
悲鳴を上げた。
「なっ!?」
「えっ!?」
イヴの行動に驚いたのは弾であり、またイヴの悲鳴を聞いて店員とシャルルも驚いた。
試着室の中で何かが起きている。
そう予感したシャルルはイヴにすまないと思いつつも試着室のカーテンを開ける。
そこには‥‥
「キャァァァァ!!変態よ!!」
試着室の中の様子を見て店員さんが大声を上げる。
試着室の中には下半身を露出した弾が居たからだ。
その姿を見たシャルルの中で何かが切れた。
「おい、お前!!アインスさんに何をしている!!」
「い、いや、待て!!お、俺は‥‥」
「問答無用だ!!」
シャルルは弾の後ろ襟を掴んで試着室の中から引きずり出そうとする。
そのタイミング見計らってイヴは弾の腕から手を離す。
突然イヴから手を離されてシャルルから後ろ襟を引っ張られた弾はバランスを崩す。
「このっ、変態野郎が!!」
バランスを崩した弾にシャルルは渾身のストレートをお見舞いする。
「誰か!!警備員と警察を呼んで!!」
店員の悲鳴で水着コーナーは一時騒然とした。