シルバーウィング   作:破壊神クルル

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47話

VTシステムによる暴走があったタッグトーナメント翌日、学園内はその噂で持ちきりだった。

ラウラに突如起こったあの現象はなんだったのか?

ISの暴走なのか?

それとも彼女のIS、シュヴァルツェア・レーゲンの単一仕様能力なのではないのか?

と噂する者もいる。

確認をしたくても当のラウラ本人が今日は欠席だった。

彼女は全身筋肉痛で動けなかったからだ。

また教室にはイヴの姿も見えなかった。

 

「皆さん、おはようございます。ではHRを始めますよ」

 

朝礼の時間となり山田先生と千冬が教室に入って来る。

 

「先生、ボーデヴィッヒさんとアインスさんはどうしたんですか?」

 

クラスメイトの一人がまだ来ていないイヴとラウラについて尋ねる。

 

「ボーデヴィッヒさんとアインスさんの二人は今日、体調不良の為お休みです」

 

山田先生がラウラとイヴが今日欠席である事を告げる。

すると別のクラスメイトが、

 

「あ、あの‥先生‥昨日のボーデヴィッヒさんのアレは一体何だったんですか?」

 

ラウラに起こったあの現象について尋ねた。

大勢のクラスメイト達もやはり気になる様子だった。

 

「え、えっと‥‥アレはですね‥‥」

 

山田先生が気まずそうな顔をして千冬に助けを求めるかのようにチラッと千冬を見る。

まさか、クラスメイト達にラウラのISに御禁制のシステムであるVTシステムが搭載されてそれが暴走したなんて言えない。

 

「あれは、ボーデヴィッヒのISの機能が暴走した事故だ。あの機体はまだ試作品だったからな。幸いボーデヴィッヒに対したケガはないが念の為、今日は休む事になった」

 

千冬は間違ってはいないが真相をそこまで詳しく説明する訳でもなく生徒を納得する様な説明をする。

ISにはまだまだ未開発の部分が多くあるので一年生では千冬の説明である『ISの暴走』と言う事で皆納得した。

HRが終わると鈴が一組を尋ねて来た。

 

(あれ?イヴは居ないみたいね‥‥)

 

鈴は昨日のタッグトーナメントにてラウラに起こったあの現象についてイヴなら知っているのかと思い一組に来たのだが教室を見渡しても肝心のイヴの姿が見えない。

そこで鈴は、

 

「本音、ちょっといいかしら?」

 

「ん?どうしたの?リンリン」

 

「イヴの姿見えない様だけど何かあったの?それに昨日のアレ‥‥」

 

本音にイヴの行方とラウラに起こったあの現象について尋ねた。

 

「織斑先生はボーデヴィッヒさんのISの暴走って言っていたけど‥‥それにイヴイヴは今日体調不良で休みだって言っていたけど‥‥」

 

「なんか釈然としないわね‥‥」

 

鈴は本音の言う千冬の説明に納得いかない様子だった。

 

「かんちゃんかたっちゃんなら何か知っているかも」

 

「簪が?」

 

「うん」

 

(確かにあの時、イヴのパートナーを務めていた簪なら何か知っているかもね)

 

「‥‥それなら次の休み時間、簪に聞きに行きましょう」

 

鈴はイヴの次に今回の騒動の事情を知っていそうな簪に尋ねてみることにした。

 

「そうだね」

 

本音もやはり鈴同様、今回の騒動における千冬の説明には納得していない様子だった。

 

「「‥‥」」

 

鈴と本音の会話を百秋とシャルルは密かに聞き耳を立てていた。

一時間目の講義が終わり休み時間となると、本音と鈴は簪の居る四組へと出向いた。

そして二人の後を百秋とシャルルはこっそりつけて行った。

 

「簪」

 

「かんちゃん」

 

「本音。それに鈴も‥‥」

 

「ちょっといいかしら?」

 

「う、うん」

 

「此処じゃ、言いにくいかもしれないから場所‥変えましょう」

 

鈴の言葉で簪は鈴と本音が自分に何の用はあって来たのかを直ぐに察した。

四組の教室を出た簪、本音、鈴の三人は人気のない通路へと行き、そこで本音と鈴は簪に昨日のラウラに起きたあの現象はなんだったのか?

そして、イヴは何故休みなのかを尋ねた。

すると簪の話は衝撃的なものだった。

 

「VTシステムですって!?」

 

「う、うん」

 

鈴も伊達に中国の代表候補生を務めてはいない。

彼女自身もVTシステムがどんなシステムなのかくらいは知っていた。

 

「まさか、そんなもモノがアイツのISに搭載されていたなんて‥‥」

 

「でも、なんでイヴイヴはそれで今日は休んだの?」

 

「そ、それが‥‥」

 

簪は昨日、アリーナで起きた事を二人に話した。

他の者には決して話さなかっただろうが、簪は本音と鈴ならば信じられるので話したのだ。

 

「そんな‥イヴイヴが‥‥」

 

「VTシステムに取り込まれるなんて‥‥」

 

「それで、イヴイヴは無事なの?」

 

「‥‥意識不明で今は集中治療室に居るみたい」

 

「そんな‥‥」

 

「イヴイヴ‥‥」

 

イヴが今集中治療室に居る事に意気消沈する本音と鈴。

 

「そ、それなら放課後みんなでイヴのお見舞いに行かない?」

 

鈴が放課後イヴの見舞いに行かないか?と提案する。

 

「そうだね。行こうよ、かんちゃん」

 

「うん」

 

簪、本音、鈴は放課後イヴのお見舞いに行く事にした。

その話を影から百秋とシャルルは聞いていた。

 

(あの人‥今は入院中なのか‥‥)

 

(くっくっくっ‥いい事を聞いたぜ‥これはアイツがあの出来損ないの疫病神なのか確かめるには絶好のチャンスだぜ)

 

シャルルはイヴの身を案じていたが百秋は何やら良からぬことを考えていた。

 

四時間目の授業が終わった後、百秋は千冬に声をかけた。

 

「千冬姉」

 

「織斑先生だ。何か用か?」

 

「あ、ああ‥ちょっと此処じゃ、不味いから別の場所で‥‥」

 

「いいだろう?」

 

百秋と千冬は一緒に教室を出て行った。

 

「‥‥」

 

その様子を本音はジッと見ていた。

 

「それで用とは何だ?」

 

「なぁ、千冬姉。アインスって奴は今、集中治療室に居るんだろう?」

 

「何処から聞いたのかは聞かないでやるが、そうだ。だが、あまり言い触らすなよ」

 

「分かっているよ。それで、アイツがあの疫病神なのか確かめるため、集中治療室に入れる許可をくれないか?」

 

「お前に分かるのか?」

 

「ああ」

 

「どうやって確かめる?」

 

「それはちょっと言えないけど、絶対の自信はある。だから頼む」

 

百秋は千冬に手を合わせて頭を下げる。

 

「まぁ、いいだろう」

 

千冬は百秋に集中治療室に入る許可を出した。

 

「ありがとう千冬姉」

 

「織斑先生だ」

 

そう言って千冬はその場から去っていた。

 

(フフフフ‥‥これで久しぶりにアイツの体を抱けるぜ‥‥この後の運動に備えて精力をちゃんとつけておかないとな‥‥)

 

百秋は密かにイヴの寝込みを襲う計画を立てていた。

 

放課後、シャルルは本音達よりも先にイヴがいる集中治療室にやってきた。

ガラスの向こうのベッドに眠るイヴはまるで眠れる森の美女のように静かに眠っていた。

 

(綺麗‥‥)

 

その光景にシャルルは思わず見入ってしまう。

医療用のコードに繋がれ、ピッ、ピッ、ピッと心電図が奏でる電子音が眠る彼女をより一層儚げに演出している。

 

(白雪姫や眠れる森の美女なら王子様のキスで目が覚めるけど、やっぱり僕じゃ役不足だよね‥‥)

 

シャルルは自嘲めいた笑みを浮かべる。

そこへ、

 

「君、確かデュノア君だっけ?」

 

「あっ‥‥」

 

シャルルはイヴに見とれているあまり楯無たちが来た事に気づかなかった。

 

「貴方もイヴちゃんのお見舞いに来たの?」

 

「は、はい‥」

 

(黄色いネクタイ‥あの人は二年の先輩か‥‥確か一昨日のタッグトーナメント、二年生の部で優勝した人だ)

 

転校してきたシャルルは目の前の蒼い髪の女生徒がこの学園の生徒会長である事を知らない。

同じクラスとは言え、イヴとあまり深いかかわりがない自分がこれ以上此処に居ては不自然なので、

 

「そ、それじゃあ、僕はこれで‥‥」

 

シャルルはその場を後にした。

 

「な、なんだったの?彼?」

 

「さあ?」

 

「‥‥」

 

(今のが、フランス代表候補生にして二人目の男性操縦者のシャルル・デュノア君‥‥)

 

(でもなんか妙ね‥‥)

 

簪はタッグトーナメントの時に、シャルルを見て彼に対して違和感を覚えていたが、楯無も今ここでシャルルと出会い簪同様、シャルルに対して違和感を覚えた。

 

(二人目の男性操縦者と言う割には織斑君の時のように大々的に報道されなかったし、二人目と言うのにフランス代表候補生でしかも専用機持ち‥‥)

 

(簪ちゃんだって代表候補生、そして専用機持ちになるには一年以上の時間を有したのに‥‥まぁ、専用機持ちと言う点では織斑君と同じくデータ採取を目的にしているのかもしれないけど、織斑君より後に出て来て代表候補生だなんて‥‥)

 

(それにあの気配‥なんか不自然と言うか違和感を覚えるわね‥‥)

 

楯無は遠ざかっていくシャルルの背中を見ながら、シャルルの今の地位と雰囲気に疑問を感じていた。

 

シャルルがその場から去った後、楯無たちは医務の先生にイヴの容体を尋ねた。

脳波は今のところ問題なく正常だったのだが、原因は分からないと言う。

 

「ま、まさかこのままずっと目を覚まさないなんて事‥ないわよね‥‥?」

 

「り、鈴。縁起でもないことを言わないで」

 

「ご、ゴメン‥‥」

 

「だ、大丈夫だよ。イヴイヴならきっと戻ってくれるよ。イヴイヴは強いもん」

 

「そ、そうだね」

 

「うん」

 

本音の言葉の根拠はないがイヴは絶対に自分達の下へ帰って来てくれるような気がしていた。

イヴの見舞いを終え集中治療室を出た時、

 

「たっちゃん‥‥」

 

「何かしら?本音」

 

本音が楯無に声をかけた。

 

「実は‥‥」

 

本音は楯無に昼休みに百秋と千冬が何かを話していた事を伝えた。

 

「織斑先生が彼に集中治療室に入る許可を?」

 

「うん‥‥何か嫌な予感がする‥あの時の彼の顔‥何か見ていて生理的に寒気が走った‥‥」

 

「‥‥」

 

本音の言葉を聞き、楯無は顎に手を当てて考える。

 

(彼がイヴちゃんに何の用があるのかしら?)

 

(確かに何か良からぬことを考えているかもしれないわね‥‥)

 

本音が言う『生理的に寒気が走った』の言葉の部分が気になる楯無だった。

 

そして、その日の夜‥‥

伝統は消え心電図と脳波を測定する機械の灯りのみが灯っている集中治療室でイヴは未だに静かに眠っていた。

その集中治療室に訪問者が居た。

訪問者は医師でも看護師でもなくIS学園の制服を着ていた。

 

「フフフフ‥‥久しぶりに可愛がってやるぜ‥疫病神の姉さん」

 

集中治療室に入って来たのは百秋であった。

彼はベッドで眠っているイヴを見てニヤリと笑みを浮かべて舌なめずりをする。

そして、一歩一歩イヴが眠るベッドへと近づいていく。

その最中、彼はズボンのベルトを緩める。

 

「さあ、姉さん‥愛しの弟が着てあげましたよぉ~久しぶりにたっぷりとご奉仕してあげますからねぇ~」

 

百秋はベッドの上のシーツに手をかけた時、

 

「へぇ~一体どんなことをしてくれるのかしら?」

 

「っ!?」

 

「眠れるお姫様を起こすのは王子様のキスだけど、今の貴方‥どう見ても王子様というよりは不審者か変質者よ」

 

集中治療室からはイヴの声でもない百秋の声でもない第三者の声が響いた。

そして、それと同時に電灯も点灯する。

 

「お、お前はっ!?」

 

「こんばんは、織斑君」

 

集中治療室には楯無の姿があった。

 

「あらあら仮にも先輩に対して『お前』は無いんじゃないかしら?」

 

「くっ‥‥な、何故、先輩が此処に?」

 

(この女、確か生徒会長‥‥)

 

「私は生徒会長だもの。重症になった生徒の様子が気になって来ただけよ。それに彼女、私のルームメイトなのよ‥貴方こそ、こんな時間に何の用?」

 

楯無は先程の百秋の言葉を聞いて彼が何の目的で此処に来たのかを敢えて知っているのを承知で彼に此処へ来た目的を問う。

 

「そ、それは‥‥お、俺もアインスの奴が心配で見舞いを‥‥」

 

「なら、どうしてこの中に来ているのかしら?普通の見舞なら外からの見舞いだけど?それにさっきの言葉の意味も聞きたいのだけれど?」

 

「そ、それは‥‥か、彼女にマッサージをしてあげようかと思いまして‥‥」

 

「マッサージ?」

 

「はい。俺のマッサージ、千冬姉からもかなり評判なんですよ『上手い』って‥‥」

 

「意識の無い彼女にマッサージ?結構苦しい言い訳だと思うけど?」

 

「‥‥」

 

「それにベルト‥外れているわよ」

 

「あっ、これは放課後、ISの特訓をしていてその帰りに来たんです。急いで来たので‥‥」

 

そう言って慌ててベルトを締める百秋。

 

「そう‥もう、いいから、今日は帰りなさい」

 

楯無が百秋に帰るように言うと彼は苦虫を噛み潰したように顔を歪めるとスゴスゴと帰って行った。

勿論、彼女は百秋の言い訳に対して全然納得しえいないが、此処で騒いでも仕方がない。

それに問題にしたところで握りつぶされるのは目に見えていた。

故に今日は彼をそのまま帰したのだ。

 

(彼‥イヴちゃんに何かをしようとしたのは明白ね‥‥)

 

ただ、楯無が惜しむのはこの医療区画に監視カメラが設置されていない事だ。

IS学園の設立の目的上、重要拠点はやはりIS関係で格納庫やコンピュータ関係の区画には厳重な監視網があるが医療区画はそこまで重要視されていなかった。

 

(今度の職員会議でこの医療区画の監視カメラの設置を提言しないとね)

 

今回の百秋の集中治療室の侵入を受けて医療区画にも監視カメラをつけてもらおうと決めた楯無だった。

 

「イヴちゃん‥‥早く目を覚ましてね」

 

楯無は未だにベッドの上で眠るイヴの髪を撫でて集中治療室を出て行った。

流石の百秋もこの後集中治療室に戻ってくることはないだろう。

 

翌日、ラウラは全身の筋肉痛も和らぎなんとか復活する事ができた。

それでも教室ではやはりあの騒動のせいで気まずさがあった。

 

「‥‥」

 

しかし、相変わらず孤高を貫いているラウラは全く気にしている様子はなく、むしろ別この事を考えていた。

放課後、生徒会室にて楯無と虚が生徒会の仕事をしている時、

 

「そうですか、織斑百秋が‥‥」

 

「ええ‥彼がイヴちゃんに何かしようとしたのは明白ね‥‥」

 

(昨日の彼の発言‥‥恐らく彼はイヴちゃんを強姦するつもりだったのね‥事態が発覚しても織斑先生のネームバリューと世界初の男性操縦者と言う肩書で何とかできるとでも思っているのかしら?)

 

楯無は織斑姉弟の行動に頭を悩ませた。

その時、生徒会室の扉がノックされる音が聞こえた。

 

「はい、どうぞ」

 

虚が返事をするとドアが開き入って来たのは意外な人物だった。

 

「あら?貴女は‥‥」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒさん」

 

生徒会室を訪れたのはなんとラウラだった。

 

「何かご用ですか?」

 

「あの‥‥生徒会長に聞きたい事があるのだが‥‥」

 

「何かしら?」

 

「タッグトーナメントで何が起きたのかは教官から既に聞いている‥‥だが、私が知りたいのはより詳しい詳細だ‥‥貴方ならあのタッグトーナメントで何があったのかを知っている筈だ」

 

「ええ、知っているわ」

 

「ならば教えて欲しい!!私がVTシステムに取り込まれた後、一体何が起きたのかを!!」

 

「‥‥いいでしょう」

 

楯無はラウラにタッグトーナメントで何が起きたのかを話した。

 

「そ、そんな事が‥‥」

 

ラウラは楯無から話を聞き唖然としていた。

 

「そ、それでアインスは‥‥」

 

「まだ、意識不明のままで集中治療室に居るわ」

 

「‥‥」

 

話を聞いたラウラは愕然とする。

 

「何故‥‥」

 

「ん?」

 

「何故、彼女はそこまで強いのでしょう?」

 

ラウラはイヴの強さを楯無に尋ねる。

 

「そうね‥‥あの子は過去の経験も関係しているけど、自身の大切なモノを守ろうとするところが彼女の強さの秘訣なのかもしれないわね‥‥」

 

「‥‥」

 

ラウラは生徒会室から出るとイヴの眠る集中治療室へと向かう。

彼女は集中治療室へと行くとそこにはシャルルの姿があった。

 

「む?お前は‥‥」

 

「あっ、ボーデヴィッヒさん」

 

「確かデュノアとか言ったな」

 

「ボーデヴィッヒさんもアインスさんのお見舞い?」

 

「あ、ああ‥‥生徒会長から聞いたのだが、彼女には色々世話になったみたいだからな‥‥」

 

そう言ってベッドの上で眠るイヴの姿を見る。

 

「‥‥」

 

「‥ボーデヴィッヒさん」

 

「なんだ?」

 

「‥彼女、綺麗だと思わない?」

 

「‥‥」

 

シャルルの言葉を聞き、ラウラはイヴの姿を凝視する。

 

(た、確かにデュノアの言う通りだ‥‥眠っている姿からはあの狂人と同一人物なのかと疑うほどだ‥‥)

 

シャルルと共にイヴの見舞いを終えたラウラは徐に携帯を取り出し国際電話をかけた。

相手はドイツの自分の腹心であるクラリッサだった。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ隊長。お久しぶりです。隊長のISに例のVTシステムが発動したと聞いたんですが‥‥」

 

「ああ、すまないお前達に色々迷惑をかけた」

 

現在、ドイツではIS委員会からの強制調査によりラウラの居た部隊は元よりドイツのIS企業・研究所、政府が委員会からの事情聴取や査察を受けていた。

 

「かまいません。この部隊はボーデヴィッヒ隊長と共にありますから‥それで、今日は何の御用でしょうか?」

 

「そ、それなんだが‥‥」

 

ラウラはクラリッサに眠れる美女を起こすにはどんな方法があるのかと尋ねると、

 

「隊長、それはキスです!!それしか方法はありません!!」

 

「キス?」

 

「そうです!!」

 

クラリッサはラウラに言葉の意味とシチュエーションを熱弁した。

 

「な、なるほど‥‥了解した」

 

ラウラはクラリッサとの通話を切ると、

 

「キスか‥‥」

 

自らの唇を手で撫でながら一言そう呟いた。


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