シルバーウィング   作:破壊神クルル

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38話

 

昼時、鈴が簪を連れて一組にやって来た。

 

「お?鈴」

 

鈴を見つけて百秋が彼女に声をかける。

この時、簪は彼の姿を見て顔をしかめる。

 

「なに?」

 

「今日、屋上で一緒に飯食わねぇか?」

 

百秋は鈴を昼食に誘う。

しかし、

 

「あたし、別の人といくからいいわ」

 

と、百秋の誘いを断った。

 

「お前、百秋の誘いを断るのか!?」

 

そこへ、箒が絡んできた。

 

「あたしが誰と昼ご飯を食べようとアンタには関係ないでしょう。あたしは百秋の恋人でなければ、使用人でもないんだから」

 

「き、貴様‥‥」

 

箒が鈴を睨むが、鈴本人は何処吹く風である。

 

「まぁまぁ、箒さん、本人が行きたくないと言うのであれば、それもいいじゃないですか」

 

セシリアとしてはライバルが一人消えたことに関して内心喜んでいた。

百秋は箒、セシリア、シャルルを連れて屋上へと向かった。

 

一方、イヴは鈴、簪と共に昼食を摂った。

鈴のお手製の酢豚と青椒肉絲はとても美味しかった。

 

そして放課後は、簪と共に打鉄弐式の製作にあたった。

一方その頃、百秋の方は箒とセシリア、そしてシャルル共にISの訓練をしていた。

だが、箒の説明は「どーん」「ばーん」等と相変わらず抽象的で、セシリアの説明は「右斜め五度」等とあまりにも細かすぎてどちらの説明もあまり参考にはならない。

 

「ええとね、織斑君が勝てないのは、単純に射撃武器の特性を把握していないからだよ」

 

最終的にシャルルが百秋に説明して、話を進めていき、百秋が実際に射撃武器を使ってみることになった。

男に教えてもらうと言うのは彼にとっては屈辱であるが、実際彼は射撃戦では、セシリアに勝つことが出来ず、勝つためにはやむを得なかった。

シャルルの補助を受けながら、ターゲットを撃ち抜いていく。

一通り撃ち尽くすと、

 

「おお~」

 

(流石、俺だぜ)

 

百秋は何やら感心した声を漏らしつつ自画自賛をしていた。

 

「どお?」

 

シャルルが射撃の感想を聞くと、

 

「ああ‥なんか、あれだな‥とりあえず、速いって感想だ」

 

百秋が感想を言った時、

 

「ねぇ、ちょっとあれ」

 

周りの生徒達がある方向を見ながらざわつきだす。

百秋達もその視線の先を見てみると、そこには黒いISを纏ったラウラの姿があった。

あの黒いISが恐らく彼女の専用機なのだろう。

 

「嘘!?あれってドイツの第三世代じゃない!?」

 

「まだ本国でトライアル段階だって聞いていたけど‥‥」

 

百秋達の訓練を見学していたクラスメイト達はラウラのISを見てざわつく。

まさか、他国の試作品とは言え、最新鋭のISをこうして見る事が出来たのだからそれも当然と言えば当然なのかもしれない。

ラウラは、ピットの入り口から百秋を見下ろし、

 

「織斑百秋」

 

百秋に呼びかけた。

 

「何だよ?」

 

百秋は少々不機嫌気味に答える。

HRの際、いきなり彼女からのビンタを未だに根に持っていたからだ。

 

「貴様も専用機持ちだそうだな?ならば話が早い。今ここで私と戦え!」

 

百秋との模擬戦を所望するラウラ。

それに対して百秋は、

 

「嫌だ。理由が無ぇよ」

 

(めんどくせぇしな)

 

百秋はそう断る。

しかし、

 

「貴様には無くとも、私にはある」

 

「今じゃなくてもいいだろう?もうすぐ学年別トーナメントがあるんだから、その時で良いだろうが」

 

百秋はそう言って断ろうとした。

だが、

 

「ならば‥‥」

 

ラウラが呟くと同時に右肩のレールガンが発射された。

 

「戦わざるを得ないようにしてやる!!」

 

「なっ!?」

 

百秋にしても、いきなり撃って来るとは思わなかったため、反応が遅れる。

しかしその瞬間、

 

「いきなり戦いを始めようとするなんてドイツ人は随分と沸点が低いんだね」

 

「シャルル」

 

シャルルがラウラのレールガンをシールドで防ぎ、ラウラに向けてライフルを構える。

 

「フランスの第二世代(旧式)如きで私の前に立ちふさがるとはな」

 

ラウラはシャルルのISを見て呆れながら言い放つ。

 

「未だに量産化の目処が立たないドイツの第三世代(試作品)よりは動けるだろうからね」

 

シャルルは自分の愛機をバカにされ、ムッとした顔でラウラを睨む。

シャルルとラウラが互いに睨み合い、一触即発に近い状況となる。

どちらかが動いたその瞬間、戦闘が始まる。

しかし、

 

『そこの生徒!何をやっている!』

 

「ふん、今日の所は引いてやろう」

 

騒ぎを聞きつけた教師が注意に入ると、ラウラは意外にもISを解除してその場からあっさりと引いた。

 

百秋達とラウラがアリーナで、ドンパチ寸前の事態に陥っていた時、格納庫ではようやく簪の専用機、打鉄弐式が完成した。

 

「出来た‥‥」

 

「やったね、簪さん」

 

「う、うん‥ありがとうイヴ」

 

「早速明日、試験稼働をやろうね、鈴も呼んで、補助を頼めば色んなデータが取れると思うよ」

 

「そうだね、後で鈴に伝えておく‥‥あ、あと‥‥」

 

「ん?どうしたの?簪さん」

 

「あ、あの‥‥呼び名‥‥」

 

「呼び名?」

 

「う、うん‥‥いつまでも『簪さん』はちょっと他人みたいだから‥‥」

 

簪が『さん』は要らないと言う前に、

 

「じゃあ、かんちゃんね」

 

「えっ?」

 

本音と同じ呼び名で簪を呼ぶイヴ。

 

「そうだよね、かんちゃんとはもう友達なんだから、いつまでも『簪さん』はよそよそしいと思っていたんだよ」

 

簪の手を握って力説するイヴ。

 

「う、うん‥そう‥だね‥‥私達友達‥だもんね」

 

ほんのりと頬を染めて簪は嬉しそうに言った。

 

簪の専用機は完成し、明日は試験稼働をするので、イヴはアリーナの使用許可を取りに行った。

その帰り道‥‥

 

「答えて下さい、教官!!何故こんなところで!?」

 

不意に聞こえた叫び声の様な大声‥それは聞き覚えがある声だった。

声がした方に視線を向けると、そこには見覚えのある二人の姿が‥‥ラウラ・ボーデヴィッヒと織斑千冬の姿がそこにあった。

知り合いの間柄の様な二人の関係に少し興味が湧いたイヴは二人に近づき、物陰から二人の様子を窺った。

 

「何度も言わせるな。私には私の役目がある。それだけだ」

 

「こんな極東の地でなんの役目があるというのですか!?お願いです教官。我がドイツで再びご指導を。ここでは能力は半分も生かされません!!」

 

ラウラの話を聞く限り、彼女は千冬にもう一度軍へ戻って来てほしい様だ。

まぁ、千冬の性格や普段の言動を考えると学園教師よりは軍の教官の方が向いているような気がする。

 

「ほう?」

 

だが、肝心の千冬本人は、あまり乗る気じゃない様だ。

 

「大体、この学園の生徒など教官が教えるに足る人間ではありません!危機感の不徳、ISをファッションか何かと勘違いしている」

 

『ハハハハハ‥なかなか言うじゃないか、あの小娘。面白い奴だ、気に入った。だが、あそこまで豪語すると言うのであれば、是非とも私とお手合わせを願いたいものだ。お前はこの殺戮の銀翼に勝てるのかな?』

 

ラウラの戦いを求める軍人気質に感覚されてイヴの中の獣はラウラに興味を抱いた様子。

 

「そのような者達に教官が時間を割かれるなど‥‥」

 

「そこまでにしておけよ。小娘」

 

「っ!?」

 

学園の生徒に対しての印象について言いたい放題言い続けるラウラに千冬も一応、教育者としての知念があるのか、威圧感を含めて彼女を黙らせる千冬。

 

「少し見ない間に偉くなったな?一五歳でもう選ばれた人間気取りとは恐れ入る」

 

「わ、私は‥‥」

 

「寮に戻れ、私は忙しい」

 

「くっ‥‥」

 

千冬はラウラにもう話す事は無いと切り上げた。

ラウラは納得がいかない、悔しいと言う表情でその場から去って行った。

 

(成程、ボーデヴィッヒさんは、あの人のドイツでの教え子か‥‥軍人気質の他にやや傲慢な性格があるのも頷けるな)

 

イヴはそのまま千冬に気づかれないようにその場を後にした。

 

翌日、教室でシャルルと百秋の二人がなんかよそよそしい態度であったが、イヴとしては別にあの二人の間で何があったのかは興味なんてなかった。

それよりも重要なのは今日の放課後、行う簪の専用機の試験稼働の方だった。

ただ、この日、イヴは日直となり、放課後は少し遅れる事になった。

 

「ヤバい、ヤバい、すっかり遅れちゃったよ~」

 

日誌を職員室に戻した後、昨日予約したアリーナへと向かうイヴ。

だが、

 

「あれ?鈴だけ?かんちゃんは?まだ来ていない?」

 

「(かんちゃん?)ええ、てっきりイヴと一緒に来るのかと思っていたんだけど‥‥」

 

アリーナに居たのは鈴一人だけで簪はまだ来ていなかった。

 

「おかしいな‥‥私、ちょっと、かんちゃんを探してくるね」

 

「分かったわ。あっ、もし、入れ違いになったら、アンタにメールか電話するから、番号とアドレス、教えてもらっていいかしら?」

 

「あっ、うん。そうだね」

 

イヴは鈴とスマホの電話番号とメールアドレスを交換して簪を探しに行った。

まず、最初に簪のクラスへと向かったら、簪は不在で、次に寮にある簪の部屋に行ったら、そこにも簪は居らず、職員室にも居ない。

そこで、簪の専用機がある格納庫へと行ってみると、そこで漸く簪を見つける事が出来た。

 

「やっと見つけた」

 

「えっ?イヴ」

 

「アリーナに行ってみたら、まだかんちゃんが来ていなかったから、探しに来たんだよ」

 

「そ、そうなんだ‥ご、ゴメン。日直の仕事で遅くなって‥‥」

 

簪もイヴと同じく、今日は日直だった様だ。

 

「それよりも急ごう、鈴がアリーナで待っているから」

 

「う、うん」

 

簪は自らの愛機である打鉄弐式を待機モードにしてイヴと共に鈴の待つアリーナへと向かった。

その最中、アリーナの方が何やら騒がしい。

 

「第三アリーナで代表候補生三人が模擬戦やっているって」

 

まわりの生徒達がそう言って第三アリーナの方へと走って行く。

 

「第三アリーナって‥‥」

 

「昨日私が、借りた場所‥‥」

 

「それに代表候補生って‥‥」

 

「まさかっ!?簪は此処で待っていて!!」

 

嫌な予感がしたイヴは第三アリーナへと走って行く。

 

「‥‥イヴ‥すごく足が速いのね‥‥」

 

洗脳されていたとはいえ、流石は元暗殺者、その動きはまるで特撮かアニメの超人や忍者のように素早かった。

イヴが第三アリーナのピットへと着くと、其処で繰り広げられているのは模擬戦などではなく、一方的な蹂躙だった。

アリーナには鈴の他、何故かセシリアの姿もあり、二人は黒いISを纏ったラウラに苦戦を強いられていた。

やはり、先日の山田先生との模擬戦同様、二人は我が強いせいかコンビネーションがバラバラで二対一だと言うのにラウラ一人相手にボコボコにされていた。

二人のISは、シールドエネルギーがギリギリとなり、もし、エネルギーが切れてISが強制解除されたりしたら、体を防御する手段がなく、ISの搭乗者自体に致命傷を負いかねない。

ラウラの模擬戦ではない一方的な暴力を見てその匂いにつられたのか、イヴの中の獣が起き出し、彼女に語りかける。

 

『ハハハハハ‥‥なかなか、やるじゃないか、あの銀髪ちゃんも‥‥なぁ、そう思わないか?一夏』

 

(‥‥)

 

『でも、いいのか?このままで?』

 

(どういう‥こと?)

 

『このままだと、お前の大切なお友達はアイツに狩られちまうぞ』

 

(っ!?)

 

『いいのかな?あんな子兎にお前の大事なモノを取られて‥‥』

 

(そ、そうだ‥このままじゃ鈴が‥‥)

 

『アイツはお前から大事なモノを奪おうとしている害獣だ‥‥害獣は駆逐しろ!!』

 

(害獣は駆逐‥‥)

 

『そうだ。奴は、お前の大切なモノを奪おうとしているんだ。ならば、あの害獣はそのちっぽけな命を奪われても文句は言えない筈だ』

 

(‥‥)

 

『撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ。一夏、お前には撃たれる覚悟もあるし、撃つ覚悟もある筈だ。そうだろう?』

 

(撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけ‥‥)

 

『そうだ‥当然、奴もその覚悟を持っている‥だから、あんなに酷い事をしているんだ。さぁ、早くいかないと手遅れになるぞ、一夏』

 

(害獣‥‥駆逐‥‥)

 

イヴの目か光が消え、彼女はリンドヴルムを纏うと害獣(ラウラ)の下へと襲い掛かった。

 

「むっ!?」

 

鈴とセシリアをボコボコに殴っていたラウラは突如、背後から襲い掛かって来たイヴに驚きはしたが、AICでイヴの動きを止める。

 

「なんだ?貴様か?」

 

てっきり、襲いかかってくるのは百秋かと思ったが、当てが外れたラウラ。

しかし、百秋と同じく、ラウラはイヴの実力も把握する為には丁度いい機会だと思い、相手にする事にした。

勿論ラウラはこの時、自分が負けるとは思ってもいなかった。

 

「随分と直線的な攻撃だな、まるで猪突猛進をする獣の様だ‥やはり、お前も私の敵ではない。私とシュヴァルツェア・レーゲンの前では、所詮お前も有象無象の一つに過ぎん!!消え失せろ!!」

 

そう言ってラウラはイヴに向けて大口径レールカノンの銃口を向ける。

だが、イヴは焦る様子も怯える様子もなく、逆にニヤッと口元を緩める。

 

「っ!?何がおかしい」

 

「私が獣であるならば、お前は道化だよ」

 

「なにっ!?ふん、減らず口だけは一丁前の様だな。ならば、その減らず口もたたけないようにして‥‥」

 

ラウラが大口径レールカノンを発射しようとしたその瞬間、

 

「ぐっ‥‥」

 

ラウラは背後から物凄い衝撃を受けた。

何事かと思い、背後を見ると、ラウラの背後には十基のドラグーンが背後からラウラを狙っていた。

 

「BT兵器だと!?」

 

「背中がガラ空きだぞ、道化師さん」

 

「くっ」

 

このままでは、イヴを撃つ前に大ダメージを受けると判断したラウラはAICを一時解除し、回避に専念する。

ドラグーンはラウラを追っていく。

その間にイヴはISが強制解除された鈴とセシリアをアリーナの隅へと避難させる。

この時、鈴はまだかろうじて意識があったが、セシリアは完全に気を失っていた。

 

「あ、ありがとう‥イヴ」

 

「‥‥」

 

「イヴ?」

 

鈴はこの時、イヴの様子に違和感を覚える。

目の前に居るのはイヴなのだが、雰囲気がまるで違う。

 

「‥鈴の仇は私がとるから」

 

「イヴ‥‥」

 

イヴの言葉を聞き、鈴はそのまま気を失った。

そして、イヴは再びラウラの下へと向かう。

その頃、ラウラは十基のドラグーンに追いかけ回されていたが、そこにイヴまでもが参加した。

AICでイヴ自身の動きを止めても十基のドラグーンすべては止まらず、ラウラの死角から攻撃を仕掛けてくる。

 

「くっ、私を舐めるな!!」

 

二基のワイヤーブレードを出してくるが、イヴはその一基を掴んで、手の掌の衝撃砲でワイヤーブレードを引き千切り残るもう一基もドラグーンの攻撃で破壊される。

クラス代表戦のセシリアの時の様に十一対一の状況に持ち込まれたラウラは次第に追い詰められていく。

そして、今度はイヴがAICでラウラの動きを封じ込める。

騒ぎを聞きつけた百秋、箒、シャルルの三人が第三アリーナへと来たが、とても入り込む隙は無く、ただ観客席で見ているだけしか出来なかった。

 

「それはっ!?AICっ!?何故、貴様のISにAICがっ!?それは我がドイツの技術の筈‥それにイギリスBTに中国の衝撃砲も‥‥貴様のISは‥‥一体‥‥」

 

「お前に答える義理は無い」

 

イヴは冷たい声でラウラに言い放つ。

そして先程、ラウラが自分にしたように、イヴは彼女にレールガンの照準を合わせる。

 

「お前は私の大事なモノを奪おうとした‥‥ならば、お前も奪われる覚悟はある筈だ、いや、例えなくてもお前は此処で狩る‥‥」

 

口を三日月型にして、ニヤッと不気味は笑みを浮かべるイヴにラウラは恐怖を感じた。

自分がイヴを初めて見た時に感じた違和感はまさにこの禍々しい狂気だ。

コイツはとんでもない化物だ。

ラウラは此処にきてようやくイヴの狂気の正体に気づいたが、既に手遅れだ。

先程ラウラは、イヴの事を獣の様だと言ったが、実際は自分が狩られる獣で、目の前の狂人こそが、狩人だった。

 

「じゃあね、害獣さん~♪」

 

イヴが満面の笑みを浮かべてラウラに止めをさそうとしたその時、

 

「そこまでだ!!」

 

アリーナに千冬の大声が響いた。

 

「教官!?」

 

「千冬姉」

 

「‥織斑‥千冬」

 

ラウラとイヴ、観客席に居た皆の視線がアリーナに乱入した千冬へと集中する。

 

「織斑先生だ。模擬戦をするなとは言わん、だが、学園内で殺し合いをする様ならば、教師として黙認しかねん」

 

「お前は引っ込んでいろ、そもそも、お前の教え子が私の大事なモノを私から奪おうとしたのが発端だ‥お前が私を止めると言うのであれば、二人纏めて相手になってやるぞ。あの時の決着をつけようじゃないか、なぁ、ブリュンヒルデ様」

 

今のイヴに千冬の声は届いていない。

 

「私としてもやぶさかでないが、いいのか?鳳をあのままにしていて」

 

「‥‥」

 

「そう言うことだ。此処は両者、引け‥この決着は学年別トーナメントでつけろ、それまで一切の私闘を禁止する」

 

「教官がそうおっしゃるのであれば‥‥」

 

ラウラは千冬の言葉に従い、ISを解除する。

 

「アインスもそれでいいな?」

 

「ふん」

 

「まったく、教師には『はい』と答えろ」

 

イヴは千冬に返答せず鈴の下へと駈け寄り、彼女を抱いてピットへと持った。

セシリアは百秋が観客席から降りて、医務室へと連れて行った。

ピットでは簪が待っていた。

 

「‥イヴ」

 

イヴはリンドヴルムを解除して、

 

「かんちゃん、鈴をお願い」

 

「え、ええ‥‥」

 

簪に鈴を託し、自身は急いでピルケースを取り出し、薬を服用して、自分の中の獣を抑えた。




ううむ。最近感想の返信が出来てないです…。ですが、感想はちゃんと見てるので、これからもドシドシ、コメントしてくれると励みになります。

ではまた次回です。


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