シルバーウィング   作:破壊神クルル

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14話

「へぇ~いっちゃんがIS学園を‥‥」

 

夕食後、楯無は束に今後の事で電話を入れた。

その中で、イヴが来年、IS学園を受験する予定を束に伝える。

 

「はい。将来、篠ノ之博士の役に立ちたいって言っていました」

 

「うぅ~いっちゃん、なんて健気な子‥‥」

 

「それで、私も今年は受験でIS学園を受ける事になっていまして‥‥」

 

「確か、IS学園は全寮制だったね‥でもなんで、IS学園に?」

 

「ロシア政府からの命令で‥‥」

 

「成程、宮仕えも大変だね」

 

「はい‥あっ、でも、博士、くれぐれも変な圧力とか止めて下さいよ!!

 

楯無は束にイヴの傍に居させるため、IS学園に圧力をかけて自分を不合格にする様な事は止めてくれと頼んだ。

篠ノ之束の力はIS界において、IS委員会よりも遥かに上で、束が「アイツはIS学園に入れないで」と言えば、その者がどんなに好成績でも不合格にされてしまう。

 

「流石の私でもそんな無粋なマネはしないよ。ただ、もし青髪が落ちるようであれば、それは青髪の努力が足りなかった結果だよ。それよりも青髪がIS学園に行くって事はその間、いっちゃんは一人になる訳?」

 

「はい。それで私が居ない間、イヴちゃんが気がかりで‥‥特に夜が‥‥」

 

「ん?夜?」

 

束は楯無の言う『夜』と言う単語に疑問を感じた。

楯無は束にイヴが毎夜、悪夢に悩まされている事を伝える。

 

「そうなんだ‥‥」

 

「博士、何とか出来ませんか?」

 

「‥‥分かった、何とかしてみるよ」

 

「ありがとうございます」

 

「ところで、青髪」

 

「何でしょう?」

 

「‥‥どうして、いっちゃんが夜魘されている事を知っているのかな?‥かな?」

 

「えっと‥‥それは‥‥」

 

楯無の顔が忽ち冷や汗まみれになる。

電話口の向こうから聴こえてくる束の声は冷たく、電話なのに受話器の向こうからダークオーラが滲み出てくるように感じた。

 

「まさか、私のいっちゃんになにかいかがわしい事をしたんじゃないだろうな?」

 

「っ!?」

 

束の言葉に楯無は先日、イヴに自らの乳房を吸わせたことを思い出し、赤面する。

 

「ねぇ、どうなのさ」

 

「あわわわわ‥‥そ、それじゃあ、イヴちゃんの件、よろしくお願いします!!」

 

「あっ、ちょっと‥‥」

 

プチっ、ツー、ツー、ツー

 

楯無は急いで電話を切って逃げた。

 

 

その後、更識姉妹達は、姉の楯無はIS学園の受験勉強、妹の簪は日本代表候補生となるべく勉強の日々を送った。

一方、イヴもIS学園を目指し、勉強をすると共にナノマシン制御の修業を行いつつも夜は楯無と共にしていたが、日が経つにつれ、楯無も受験勉強で夜遅くまで起きている日が続き、イヴもそんな楯無の邪魔は出来ないと、一人で眠る様に頑張った。

だが‥‥

 

「ねぇ、イヴちゃん」

 

「はい?」

 

「貴女最近、ちゃんと寝ているの?」

 

「‥‥」

 

楯無はある日、イヴに睡眠がちゃんと取れているのかを尋ねた。

答えづらいのか、イヴは楯無から視線を逸らした。

でも、答えなくても、答えは分かっていた。

イヴの目の下には受験生の楯無以上に濃い隈が出来ており、彼女は眠れていない事が窺える。

市販の睡眠薬ではイヴの体内のナノマシンが睡眠薬の成分を無効化してしまうので、飲んでも意味がない。

 

「まったく、無理して‥‥」

 

「でも、楯無さん、受験生だし‥‥私のせいで勉強の邪魔をしたくは‥‥」

 

「そんな事気にしていたの?大丈夫よ。お姉さん、これでも優等生なんだから。それよりも、ホラ、いらっしゃい」

 

楯無はイヴの近くに座り、自らの膝をポンポンと叩き、此処に頭を乗せろと言うジェスチャーをする。

 

「‥‥」

 

イヴは花に戻る蝶の様に楯無に近寄り、彼女の膝に頭を乗せると、あっという間に寝入ってしまった。

楯無は微笑みながら、イヴの髪を撫でた。

 

 

それから数日後‥‥

 

イヴ宛てに束から荷物が届いた。

箱を開けてみると、その中には錠剤が入った瓶があった。

同封されていた手紙に寄れば、これはイヴのナノマシン、バハムードの活動を抑制する効力がある薬だと言う。

バハムード自体を破壊する事は出来ないが、活動だけは短時間だが、なんとか抑制する事ができ、アドレナリンの分泌を押さえる事により興奮を抑え、ナノマシンの活動を抑える効力があるらしい。

束から送られたこの薬のおかげでイヴはナノマシン制御と睡眠に関しては解決する事が出来た。

 

イヴが束のおかげでナノマシン制御と睡眠問題が解決した頃、簪の方も無事に日本代表候補生となる事が出来た。

次の目標は専用機枠に入る事だった。

そんなある日、簪は自身の従者である布仏本音と一緒に買い物へ行こうと誘われた。

本音からのこの誘いに簪は迷った。

遊びに行く時間なんて自分にはないが、今日は自分が大好きなアニメDVDの発売日であった。

ネット通販でも買えるが、店頭で直接購入すれば、特典の限定品グッズやポスターもついてくる。

その為、簪は渋々本音と買い物へ出かける事にした。

本音も普段はポワポワしているが、やはり、簪の事を気にしていた。

いつも眉間にしわを寄せて夜遅くまで参考書を読みふけり、学校と家、候補生の研修施設を行ったり来たりの生活。

友達も作らず、休日も家から出ずに机に向かって勉強をするかアニメか特撮のDVDを見ているだけ‥‥。

たまには外に出てリフレッシュをしてもらわないと‥‥

そんな思いがあって本音は簪を外へと連れ出したのだ。

 

また、この日イヴも外へ出かけた。

彼女自身も学校に関しては、通信教育であるが、ずっと更識家の離れで引きこもり生活をしている訳では無い。

楯無が休日の日には一緒に出ているし、楯無が居ない日でも近くを散歩に出ている。

今日、楯無は何か用事はある様で不在であるが、折角の休日なのでイヴは出掛けたのだ。

ただ、万が一のことを考え、髪の長さは短くし、帽子に伊達メガネをつけてジャケットにジーンズとボーイッシュな服装で出かけた。

 

そして、別々だが、この日出掛けたイヴ、簪、本音の三人はまるで運命の糸に導かれるかのように出会うこととなった。

 

 

「いやぁ~楽しかったね、かんちゃん」

 

「う、うん」

 

久しぶりに簪とお出かけした事に満足したのか本音は何時にも増して明るい笑顔で、簪も何だかんだと言いつつも、購入予定のアニメDVDと限定品の店頭特典を無事にゲット出来てご満悦の様子。

 

買い物を終え、自宅に帰る為に駅からバスへと乗った。

バスの車内には、そこまで込んでいる訳では無かったが、乗客がソコソコ乗っていた。

簪と本音は後ろの方の座席に座っている一人の乗客に目を奪われた。

その乗客は自分達と同い年ぐらいの子で、綺麗な銀髪にマリンキャップにジャケットにジーンズと動きやすい格好をした子だった。

顔立ちも日本人よりも西洋人に近い顔立ちだった。

銀色の髪がそれを引き立てていた。

 

「きれいな人‥‥」

 

「うん、もしかして有名人かな?」

 

二人が気になった子は眼鏡をかけており、まるで芸能人が変装しているかのような出立だったので、二人は有名人が変装をしているのではないかと思った。

一方、その子も簪の姿を見て、顔には出さなかったが、

 

(楯無さん!?いや、よく見るとちょっと違う‥‥眼鏡をかけているし、髪留めもつけている‥それに雰囲気もちょっと違う‥‥身内の人かな?)

 

楯無に似ている簪の顔を見て驚いていた。

やがて、バスは発車時刻となり、駅のバス停を出発した。

バスは順調に路線を走っていたのだが、ある銀行の前のバス停にバスが到着すると、銀行から二人組の男達が出てくると、バス停に並んでいた人達を押し退けてバスへと乗ると、

 

「てめぇら!!死にたくなかったら大人しくしやがれ!!」

 

男の怒声と共に一発の銃声がバスの中に響いた。

 

「おら、さっさと出せ!!」

 

拳銃を持った男は運転手に銃を突きつけ、バスを発車させた。

 

「ちっ、ちょっと欲張り過ぎたか?」

 

男達がバスの床にドサッと置いたバッグの中には大量の札束が詰まっていた。

拳銃に沢山の札束が入ったバッグ、そして銀行‥‥

これ等の要素からこの男達の正体が銀行強盗だと言う事が簡単に予測できた。

 

「それにしてもまさか、俺達が銀行に居る間にアシが駐禁に合うたぁついてねぇぜ‥‥」

 

普通、銀行強盗に押し入る時は時間との勝負でもあり、当然逃走手段を用意しているものだが、この強盗達、どうやら銀行に押し入っている間に止めてあった車が駐禁の取り締まりにあって逃走手段を失ったので、急所銀行の目の前に停まったバスを逃走手段としてバスジャックしてきたのだ。

 

「あ、兄貴~俺、捕まりたくねぇよぉ~」

 

「バカやろう!!ムショ送りになるくらいなら、乗客(こいつら)全員道ずれにしてやるぜ!!」

 

兄貴分の男が血走った目で拳銃を向けながら、乗客たちを睨む。

自分達がいきなり、凶悪犯罪に巻き込まれた事で運転手、乗客は不安、恐怖に包まれる。

顔色は悪く、震えている者も居る。

 

「か、かんちゃん‥‥」

 

「ほ、本音‥‥」

 

本音も怖いのか震える手で簪にギュッと抱き付き、簪も本音同様、震える手で本音の事を抱きしめている。

普段、男は女には勝てないと豪語している者も世間でそう言われている女尊男卑の常識は、ISがあればの話であり、丸腰の女が拳銃で武装している男に勝てるのかと言われたら、それはほぼ、NOである。

今回このバスジャックに巻き込まれた女性達はそれを改めて認識してもらいたい。

運転手、乗客が不安と緊張、恐怖に呑まれている中、平然とした様子で強盗犯達を見ている者が居た。

 

(な、なんだ?此奴は?)

 

兄貴分の強盗犯はその者の存在に気づいていたが、特に抵抗する様子もなかったので気にはなったが放置した。

すると、後ろの方からパトカーのサイレンの音がして来た。

強盗に入られた銀行が警察に通報したのだろう。

 

「おい、もっとスピードを上げろ!!」

 

拳銃を持っている兄貴分の強盗が再び運転手に拳銃を突きつける。

 

「そ、そんなこれで限界です!!」

 

運転手は震える声でこれ以上スピードは出ないと言う。

 

「ちっ、おいノブ、おめぇ運転代われ!!」

 

「ウッス、おらぁ、退け!!」

 

「ひぃっ」

 

兄貴分の強盗は弟分の強盗犯にバスの運転を代わらせた。

 

「おらぁ、どけ、どけ!!」

 

弟分はハンドルを握ると性格が変わるのか、並走して追いかけてくるパトカーにバスの車体をぶつけて追撃を振り切ろうとする。

バスの車体が傷つこうが車内が激しく揺れようが関係なく、荒っぽい運転で警察からの追撃を振り切ろうとする。

そんな中、

 

「びぇー!!」

 

乗客の中の一人の幼児が泣き出した。

 

「おい、うるせぞ!!さっさと黙らせろ!!」

 

「す、すみません~」

 

母親はビクッと体を震わせながら、怯える声で強盗犯に謝る。

 

「タマちゃんが~タマちゃんが~」

 

幼児はこの荒っぽい運転の中、手にしていたぬいぐるみを落としてしまった様で大好きなぬいぐるみが自分の手の届かない所に落ちてしまった事に対して泣いているのだ。

幼児の甲高い泣き声が強盗犯を苛立出せる。

そんな中、

 

「はい、タマちゃん」

 

泣いている幼児にぬいぐるみを手渡す者が居た。

マリンキャップを被り、短い銀髪をした子で、その子はバスジャックの最中、何の恐怖も抱かず、平然とした様子でバスの床に落ちていたぬいぐるみを拾い、幼児に手渡す。

そこへ、

 

「おい、誰が動いて良いって言った?あん?」

 

兄貴分の強盗が近づき、

 

「誰が動いて良いって言った!?」

 

その子の顔を思いっきり拳で殴った。

 

「「っ!?」」

 

強盗犯のこの行動に乗客達は全員息を呑む。

殴られた拍子にその子が被っていたマリンキャップと眼鏡が床に落ちる。

その事から強盗犯の拳はかなりの威力があったと思われたが、殴られたその子は痛がる様子もなく、また口の中を切った様子もなかった。

 

「ちぃ、大人しく座っていろ」

 

強盗犯がそう言うとその子は外れた帽子と眼鏡を拾い、何事もなかったかのように座席へと座った。

 

(咄嗟に頬の皮膚を鋼鉄に物質変換をして正解だった‥‥)

 

(あのヤロー、何て固い頬骨をしていやがるんだ‥‥)

 

反対に銀髪の子を殴った強盗犯の拳は赤くなっていた。

その間にも追いかけてくるパトカーの数は増えてきている様だった。

 

「あ、兄貴~どうしようぉ~このままじゃ、俺達捕まっちまうよぉ~」

 

「ちくしょう、捕まってたまるか!!俺は絶対に逃げ延びてやるぞ!!幸い、こっちには人質が大勢いるからな‥‥俺達が本気だって所を見せてやる!!」

 

そう言って乗客達を見渡すと、気弱そうな男の乗客を見つけると、

 

「おい、お前、ちょっと来い」

 

「えっ?」

 

「いいから来い!!」

 

強盗犯はその気弱そうな男の後ろ襟を掴んで前へと進んで行く。

 

「ノブ、前扉をあけろ」

 

「へい」

 

「あ、あの‥‥」

 

「解放してやる。嬉しいだろう?ん?」

 

強盗犯はその男の背中を足蹴りして男を走行中のバスから突き落とそうとする。

今のバスの速度から落ちたら怪我では済まない。

故に男も落されてたまるかと言う思いで必死に手すりに掴まる。

 

「俺達を刺激したらヤバいって事を警察の連中に教えてやんねぇーとな‥‥」

 

「うわぁぁ、た、助けて!!」

 

「人質は女と子供で十分だ!!ホラ行けよ!!」

 

強盗犯の行動に簪は震えるだけしか出来なかった。

日本の代表候補生になっても専用機が無い今の自分は余りにも無力だった。

こんな時、アニメなら、正義の味方が来てくれるのだが、現実はそう甘くはない。

姉ならば、この局面をどう乗り切るだろうか?

そんなことばかりが脳裏を過ぎる。

その時、隣に座っていた本音がいきなり立ち上がると、

 

「止めろ!!」

 

普段の本音らしからぬ大声を上げる。

 

「ほ、本音」

 

本音のこの行動に簪は驚きあたふたする。

拳銃を持っている強盗犯に本音は真っ向から対立したのだ。

 

「おい、お嬢ちゃん?今なんて言った?」

 

気弱な男を突き落とそうとしていた兄貴分の強盗は男を突き落とすのを止め、ゆっくり本音に近づいてくる。

 

「よく聞こえなかったわ~もういっぺん言ってくれるかな?お嬢ちゃん」

 

「や、止めろって言ったんだ」

 

本音の声は恐怖で完全に震えている。

 

「ほぉ~随分と大口を叩くじゃねぇか。『男は女に勝てない。戦争をすれば三日で男は絶滅する?』世間じゃ、女共がそんな事をほざいているみてぇだが、お前もそんなことを言う口か?ああん?その割には随分と震えているじゃねぇか?ん?武者震いってやつか?ハハハハハ‥‥」

 

拳銃を本音に向けながらニヤついた笑みを浮かべる兄貴分の強盗。

このままでは、本音が強盗に殺されてしまう。

そんな予感が簪の脳裏を過ぎる。

 

(誰か‥‥誰か、本音を助けて!!)

 

簪が目を閉じて心の中で助けを求めると、

 

「またテメェか!?」

 

「っ!?」

 

簪が目を開けると、先程、強盗に殴られたあの時の銀髪の子が本音と強盗犯の間に立っていた。

 

「このヤローさっきから‥‥いい加減にしねぇと撃ち殺すぞ!!」

 

強盗犯は拳銃の銃口をその子へと向ける。

 

「そんなオモチャで私がビビると思っていたのか?」

 

「な、なにぃ!?」

 

「強がるなよ。三下」

 

「て、テメェ!!」

 

完全に頭に血が上った強盗犯は拳銃の引き金に指をかけ、引いた。

バスの車内に再び銃声が響いた。

 

「‥‥」

 

「‥‥」

 

銃声が止み、バスの車内は静まり返った。

運転手、乗客達は唖然とし、それは拳銃を発砲した強盗犯も同じだった。

 

「‥‥だから、言っただろう?」

 

銀髪の子の手には盾があり、それが拳銃の弾丸を防いでいた。

 

「何もない所から盾を!?あ、ISか!?」

 

「そんなこと、いちいちお前に言うと思っているのか!?」

 

次に銀髪の子は座席をガシッと掴むと、なんと座席を引っぺがし、それを強盗犯にぶつけた

 

「ぐぇ!!」

 

座席を投げつけられた強盗犯はカエルが潰れた様な声を出し、ノックアウトされ、

 

「あ、兄貴~!!」

 

兄貴分がやられた事に気づいた弟分が運転席から離れ、倒れている兄貴分に近づく。

 

「運転中に非常識な事をするなよ!!」

 

弟分の首に手刀を入れて昏倒させると、銀髪の子は素早く無人となった運転席に座るとハンドルをきりながら、ブレーキを踏む。

キキィッと甲高い音を立ててようやくバスは完全停車した。

 

「ふぅ~もう、大丈夫ですよ」

 

銀髪の子が声をかけると、

 

「やった!!」

 

「助かったんだ!!」

 

とバスの皆は歓喜声を出す。

そんな中、

 

(あっ、でもちょっとやりすぎたな‥‥シート壊しちゃったし‥‥)

 

銀髪の子がやり過ぎたと思っていると、

 

「あ、あの‥‥」

 

「ん?」

 

「た、助けてくれてありがとう~」

 

先程強盗に真っ向から対立したポワポワした子がお礼を言ってきた。

 

「あっ、うん‥‥」

 

その時、遠くの方からパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。

 

「あっ、警察の事情聴取は具合が悪いので、私はこれで」

 

「あ、あの‥名前は?」

 

「名乗る程の者じゃありません」

 

そう言って急いで銀髪の子は外へと出て行った。

その後姿を見て、

 

「かんちゃん‥‥」

 

「なに?」

 

「正義の味方って本当にいるんだね‥‥」

 

「うん」

 

本音はそう呟き、簪は頷きながら尊敬の眼差しで見ていた。


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