(旧)ユグドラシルのNPCに転生しました。   作:政田正彦

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この章でアニメ第1期は終了しますので、実質最終章となります。

長いようで短い……いや確実に短かったですが、
ひとまず完走まで頑張りたいと思います。



シャルティア編(1/4)

 「……それで、反逆したという根拠がこれか……」

 

 そこに開かれたウィンドウ、マスターソースには、ナザリックに所属しているNPCの全ての名前が表記されており、通常の者は白い文字で表記されているのに対し、シャルティア=ブラッドフォールン、その文字だけは、赤黒い表記に変わっており、それはつまり、「第三者による、精神支配などによって、一時的な敵対行動を取っている」という状態を指している。

 

 つまり、この場合、シャルティア=ブラッドフォールンが敵対行動をしているという事に他ならず、同行していた眷属のヴァンパイアも死亡している事が確認された。

 

 「連絡が途絶えた為、確認したところ……このような表記に」

 

 「ふむ……事情を説明していただけますか?ペロロンチーノさん」

 

 「うぐう……」

 

 

 モモンガが顔を起こして目をやった先には、赤黒く変色したピンクスライム、ぶくぶく茶釜……によって拘束されている、ボコボコにされたバードマン、ペロロンチーノの姿があった。

 が、実際にナザリックにいるわけではなく、ミラーオブリモートビューイングによって遠隔的に観ているに過ぎず、防壁も一時的に解除している。

 ぶくぶく茶釜が居るのはもしもの時の為にモモンガがゲートを使って送り出した為である。

 

 「すみません……全ては俺の責任です」

 「当たり前でしょ!?この愚弟が!!あんた一体何のためにあの子に付いて行ったのよ!!?」

 「か、返す言葉も無い……」

 

 

 その後数分説教を受けた挙句話が進まないと見たモモンガによってそれは一時中断。解放されたペロロンチーノは正座で「今から、何があったか説明するよ。」と開く。

 

 

 

 

 〜時は今から遡り、シャルティアside〜

 

 

 

 

 

 「それで、獲物は釣り針に引っかかったという事でありんすか?」

 

 とある山道、そこを行く、この世界では豪華な方な馬車。

 その中でシャルティアは揺られて居た。

 彼女は至高の御方々からの「犯罪者の拉致」という君命に従い、ナザリックを離れ、独自に行動していた。

 

 それは、この世界の情報についてだとか、政治的な情報等、国家について、そして、この世界特有の技能であると思われる、「武技」と呼ばれる存在についてや、この世界特有の魔法の調査の為であり、現在はその調査をしていた。

 

 ……というのは、表向きの話。

 

 実際には、カルマ値が極悪寄りのナザリックの僕達の為、食べたり虐めたり痛めつけたり実験に使ったり、切り刻んだり皮を剥いだり目玉をくりぬいたり血を抜いたり指を落としたり発狂させたり……etc

 

 といった事をしても何ら問題の無い人間、その確保の為であった。

 

 

 「ええ、見事に。全ては我らが御方々の思惑通り」

 「武技やモモンガ様の求める魔法の使い手が居るといいでありんすねえ、ね?ペロロンチーノ様?」

 「そうだね。でもまぁ、あまり調子に乗りすぎて殺してしまわないようにしないといけないのが面倒だけど」

 

 そして、本来のシナリオと違うのは、この男、ペロロンチーノの存在である。

 

 この男も、モモンガと同じくこの世界に転移してきてしまったユグドラシルプレイヤーであり、悪名高きアインズ・ウール・ゴウンの古株でもある、バードマンの弓使いである。

 現在は変装するスキルによって人間に化けており、髪は元来のゴワゴワとした茶髪を短めに切りそろえた物で、目は黒く、服装は今はセバスと同じくスーツ姿を着こなし、セバスの部下の若い執事と行った風貌である。

 

 セバスは「恐れ多い」と言っていたが、一番違和感なく彼らに同行できる形がこれしかなかったと言われてしまうと何も言えなかった。

 

 馬車に乗って居るのは、そのシャルティアとペロロンチーノ、そしてヴァンパイアブライド2体、セバス、そして我儘なお嬢様役の、プレアデスのソリュシャン=イプシロンである。

 

 「ところでシャルティア様とペロロンチーノ様に、失礼をご承知で一つお聞きしたい事があるのですが」

 「ん?何?」

 「この度は私達がご同行させてもらう形になりましたが……エレティカ様と離れてしまって良かったのでしょうか?」

 

 それを聞いて、シャルティアは悪戯に笑う。

 

 「ん?それは私とペロロンチーノ様、そして貴方達だけではこの任務は荷が重いという事?」

 「いえ、そのような事は!」

 

 慌てふためくセバス。

 もちろんそのような意図があって言った訳では無い。

 そこでペロロンチーノからフォローが入る。

 

 「こら、あまりいじめちゃいけないよ。セバス、君はおそらく出立前に我が姉であるぶくぶく茶釜の「双子は常に一緒に居るべきである」という言葉から、離れるのはよく無いと案じて居るんだろうが、今回はあくまで任務だ。当然本人や姉の承認はもらって居るし、会議を行なって決定した話だ。まぁ、シャルティアとエレティカを離れ離れにしてしまうのは悪いと思って居るが、適材適所という言葉がある。今は我慢してほしい。」

 「だ、大丈夫です!姉様が居なくても、立派に任務をこなしてみせま……見せるでありんすえ!」

 

 隣から叱責を受けてピンと一層背筋を伸ばして息巻く、我が娘同然……いや、愛娘の姿を見て頰が緩むペロロンチーノだったが、その時、突如馬車が急停止し、彼らの時間を邪魔する野蛮で愚かな声が。

 

 

 「おい!出てこい!!」

 「とっとと出てくるんだ!!」

 「早くしろ!!」

 

 

 ドンドンと扉を叩きながら、そうまくし立てるのは、事前に美人で気の強い世間知らずなお嬢様、という絶好の餌を垂らされているのを見て、まんまとそれに釣り上げられた愚かな盗賊の一派。そしてその手引きをしたザックという男。

 

 そして、彼らの声に応えるように、馬車の扉がゆっくりと開く。

 そこには、白髪で赤黒いドレスを着た、見目麗しい絶世の美少女だった。

 

 ただ一人、ザックはその姿を見て、「ん?」と疑問の声を漏らすが、逆光でよく見えて居ないだけかもしれないし、もし、もし仮に彼がその違和感に気付き、その事を仲間に知らせたとしても……

 

 この蹂躙劇の幕は、もう上がってしまっている。途中退場は許されない。

 

 

 

 最初の犠牲者が一人、「へへへ」と下劣な笑い声を漏らしながら、「それ」に歩み寄る。

 

 「運が悪かったなぁ、嬢ちゃん。なあに、大人しくしてりゃあ命までは取らねえよ、へへへ……ガキにしちゃいいもん持ってんじゃ……」

 

 そして、その言葉に対する彼女の返答は、彼がそのコッテコテの盗賊っぽいセリフを言い終わる前に、第三者によって返された。

 

 「うちの娘に薄汚ない手で触るんじゃない、ゴミが。」

 

いつから手に持っていたのか、朱く燃えるような色の弓を手に、盗賊に狙いを付ける執事風の男が、少女を庇うように前に躍り出る。

 瞬間、まずその娘の胸に伸ばして居た腕が弾き飛ぶ。

 

 「あ……え??」

 

 次に、ナイフを持って居たもう片方の腕、次に両足、重心を失い地面に着く前に胴体と首が弾け飛び、最後に頭が飛んだ。

 

 

 「あ……!!?」

 「な、何だ!?一体何が……。」

 「ぎゃあああああああああ!!!!!」

 

 その一瞬のうちに放たれた数本の矢の直線上に居たある一人、あるいは数人の盗賊の腹や腕、足がが消し飛び、かつて経験した事のない痛みでたまらず悲鳴をあげる盗賊。

 

 それを皮切りに、蹂躙劇は一気にクライマックスへ。

 

 「ば、化けもぼッ!!?」

 「うわあああああ!!!?」

 「足が、俺の、足があああああベボボッ!!!」

 「いやだ!!死にたくない!!死にたくな……」

 

 ある者はどこからか現れたヴァンパイアの美女によって八つ裂きにされ、あるものは首がいつの間にか吹き飛び、あるものは果敢に立ち向かって見るも無残な姿になり、あるものはそれらを見て狼狽している内に、気づいたら死んでいた。

 

 ザックは一人それを目前にし、「何故だ?」と一人困惑する。

 

 どうしてこうなった?何が起きている?俺は死ぬのか?こんなところで?こんな、こんな訳のわからない化け物共に殺されて……「ザックさん」

 

 そこに聞き覚えのある艶やかな声がザックの耳に入る。

 後ろを振り返ると、そこには、先ほどまで馬車に乗って居た金髪の美女の姿。

 

 「こちらへ」

 

 先ほどまでと、まるで違う口調、言葉遣い、表情だったが、困惑した彼にそれらに違和感を覚えるような余裕はなかった。

 彼女は惨状が起きている場所から少し離れたところへ彼を誘い込むと、おもむろに衣服を脱いで、胸部を剥き出しにする。

 

 ザックはもう、何も考えられなくなって居た。

 目の前の光景、後ろで行われている惨状。

 正気を保て、というのは、彼には酷な話である。

 

 何より、本能的に、本当に死にそうになった時、人間はいくつかある欲求が生まれる。

 本当に窮地に立たされて命を危ぶまれた時、彼らは自身の子孫を残そうとするのだ。

 

 ザックはこの状況でそんな気分になるのが不思議でたまらなかったが、それは本能的に仕方のない事だと言え、目の前の彼女も、自分と同じ感情に至っているのだろうと考えたら、もう何も考える気にはなれず……彼女の胸部に手を触れるまでに、かかった時間と動揺、迷いは一瞬だった。

 

 

 しかし、その行動、その全ては間違いであった。

 

 「………!!!!ああああああ!!!??」

 

 手を触れた瞬間、自分の手がズブズブと彼女の胸部に飲み込まれていく。

 同時に両手に凄まじい熱で焼かれるような痛みが走り、絶叫する。

 そこでようやくザックは正気を取り戻すが、もう遅い。

 

 「やめて!!!助けて!!!助けてくれ!!!誰か!!!」

 

 その叫びは誰にも届かない……いや、一人届いている者が居た。

 それは彼を今まさに捕食しようとしている彼女である。

 

 その叫びは、彼女の嗜虐心を大いに刺激し、大いに満足させるに値した。

 だから彼女はそれに対して、微笑みを返す。

 

 でも彼女はスライムだから、ちょっぴりその笑顔がぐにゃりと歪んでいるけれど……。

 

 

 「助け…………」

 

 

 

 それは、まぁ、ご愛嬌、というものである。

 

 

 

 「今回のは外れみたいでありんしたねぇ」

 「そうだね……」

 

 散々やっておきながら外れと言われてしまう盗賊達は気の毒だが、自業自得であるし、どいつもこいつもただ斬りかかるか狼狽して糞尿を漏らすかのどちらかしかなかった為、やはり外れであると言えるだろう。

 

 そんな中、一人のヴァンパイアブライドが気絶した盗賊の一人を引きずりながら口を開く。

 

 「シャルティア様、ペロロンチーノ様、人間共の寝ぐらが分かりました。こいつらの仲間に武技の使い手で「ブレイン」という男がいるそうです。この国の王国戦士長、ガゼフと互角に戦ったとか。」

 

 「その王国戦士長なる者……確かこの国で一番の戦士だったかと。」

 

 報告を聞いて、シャルティアの口が三日月のように裂け、くすくすと笑い声を漏らしながら「それは楽しみでありんすねぇ」と零す。

 

 その傍でペロロンチーノは「あんまりやりすぎて殺さないように見守っておかないとなぁ」と考えていた。




主人公が事前に打っておいた策である「ペロロンチーノ様に任せる」という手は失敗に終わり、シャルティアは支配されてしまいました。

支配回避しても良かったんだけど……クレマンさんとの戦いをほぼほぼ回避に近い形にしちゃったんで、戦闘描写がすっっっっくないんですよね。

だから入れちゃいましたってわけでもないのだけど、回避した場合このシャルティア編そのものが、1000文字ちょいで終わる内容になってしまうので。

「モモンガとエレティカは漆黒の英雄としての立場を手に入れた!」
「シャルティア達は洗脳されることなく無事にブレインとかをGETした!」
「え?漆黒聖典?白銀の騎士?なにそれ美味しいの?」
「そして物語は伝説(アニメ2期)へ」

 〜完〜


さすがにこれじゃ……ねぇ?

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