(旧)ユグドラシルのNPCに転生しました。   作:政田正彦

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今回はヤツが出ますが、それより挿絵描きました。


人モドキ化モモンのイメージ(仮)

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個人的にはもうちょっと20代感出したい(意味不明)

そしてエレティカ三変化

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分かりづらいですが冒険者スタイルでは髪は完全な白になります。




冒険者編第二章(4/4)

 -カルネ村付近の村(森の賢王の縄張り付近)

 

 「では、ここから森に入りますので……警護をよろしくお願いします。」

 

 

 エレティカは、まず一目見て、原作知識として持っていたこの森へのイメージを改める必要がありそうだと思った。

 まず、木が半端じゃなく大きい。

 一体樹齢何年何だろう、と思う程に、入り口からして木の大きさに少し驚く。

 エレティカはせいぜい4~5mあれば良い方だろうと思っていたがとんでもない、目の前の木は優に15m~20mに届くのではないか、もしかしたら30mなんてこともありえるかもしれない程に大きかった。

 

 原作知識だけでかかると、いかにも「初心者ご用達の森!」というイメージがあるのだが、どちらかと言えば、「冒険に慣れて来た冒険者が挑むべき場所」というイメージを持たされる。

 

 「まぁ、モモンさんが居れば大丈夫だとは思いますが!」

 

 そんな事を思っていたので、一瞬反応が遅れ、ペテルや他の漆黒の剣の面々の事を思い出しつつ、「いやいやユグドラシルではもっと鬱蒼とした森に入った事もあるだろう、それに比べればこんなもの初心者向けというにもおこがましいというものだ。」と考えを改めた。

 

 ユグドラシルでレベル上げの為に潜った霧の立ち込めた森や精霊が出現する聖域、歩くだけで凍り付いた草によるダメージを受ける樹氷の森等もあったし、そもそもナザリックなんて毒の沼地なんていう危険な場所に有ったのだから今更だ。

 

 「あの、モモンさん……も、もし、森の賢王に会ったら、殺さずに追い返してくれませんか?」

 「えっ!?」

 

 ここでンフィーレアが口走った事にペテルは驚愕した。

 普通なら、森の賢王なんていう伝説の魔獣に出会ったとして生きていられるかすら定かではない。

 そこにさらに、「殺してはならない」と付け加えるとなると任務の成功確率はグンと下がるだろう。

 

 殺すほどの威力を持たない方法で追い返すより、モモンの持つ圧倒的な腕力で切り伏せてしまった方が早いし、確実で、何より楽だと思われた。

 

 「それは何故ですか?」

 

 しかしそこで慌てるようなモモンではない。

 彼は危険なタレント持ちという警戒すべき人物だが、この依頼を通じて彼が意味もなく自分達にとって不利益、不利になりえない事を言う人物ではないと知っているからだ。

 

 「これまでカルネ村がモンスターに襲われなかったのは、森の賢王が、このあたりを縄張りにしていたからです。それを倒してしまうと……。」

 

 つまりは、森の賢王は村にとって、村を守護する存在であり、それのおかげでモンスターに襲われなかった。

 それがいなくなった場合、今までのようにはいかず、カルネ村はモンスターに襲われるようになるだろうという事が簡単に予想できる。

 

 「いくらなんでもそれは無理だろ。」

 「了解しました。」

 

 そう、普通はいくらなんでも無理だと思うが、そこは漆黒のモモン。

 普通とはかけ離れた存在である。

 

 「相手は伝説の魔獣だぞ……!?」

 「強者のみに許された態度であるな……。」

 

 そんな存在を前にして、漆黒の剣はこの依頼で一体何度驚き、何度その姿に尊敬の念を覚えただろうか。

 もはやモモンは彼らにとって憧れの存在ともいえる人物に成っていた。

 

 最も、一番大きなイベントはこの後にこそ控えているのだが。

 とティカは一人笑みを零す。

 

 「そこで、一つ提案なのですが……。」

 「どうぞ、モモンさん。」

 「実は、ティカが使える魔法の中に、《アラーム/警報》に似た魔法があるんです。出発する前に一度森の中を見てきていいでしょうか?」

 「構いませんよ。でも、あまり長く離れないで下さいね。」

 「もちろんですとも。」

 

 

 そう言って二人は先に森の中へとその足を踏み入れる。

 

 ざわざわという木々が風でざわめく音と、鳥の鳴き声が響き渡る森。

 木々が多い事もあってか、昼間だというのに少し深い場所へ行こうとすると、その一寸先は闇、何が起こるか分からない、という雰囲気が漂っていた。

 

 

 「この辺りでいいな。」

 

 そう言ってモモンがぴたりと足を止める。

 それに合わせて、ティカが歩みを止めると、モモンが大声で周囲に呼びかける。

 

 「さあ!我が名声を高める為の打ち合わせと行こうじゃないか!」

 

 そして、すぐに聞き覚えのある元気いっぱいな女の子の声が響き渡る。

 

 「はぁーい!!」

 

 その方向に目をやると、そこにいたのは第六階層守護者の片割れ、アウラ・ベラ・フィオーラその人であった。

 

 「成程、アウラですか。」

 「チェッ、この程度じゃ驚かせるのは無理か~。」

 

 実を言うとティカはこの森に入ってからずっと尾けている事だけは知っていたので、全力でアウラがどこにいるのか探していた。

 が、それでも、気配すら感じ取ることができなかったので、流石はアウラだなと素直に感心していた。

 アウラはアウラで、その様子を見ていたので、いかなる時でも警戒を崩さないエレティカ、という印象を受けて、表でこそ「イタズラに失敗した~」というような顔であるが、内心流石はエレティカだなと感心していた。

 

 「……それに比べてあのバカは……。」

 「はい?」

 「ううん!?なんでもない!」

 

 と、ここで一応アウラがここに居る理由について話しておくが、簡単に言えば、森の賢王を探し出し、それをモモンにけしかける。

 そこで森の賢王を見事に退け、名声を得よう、という作戦である。

 その理由は単に、「オーガを一撃で屠ったってだけじゃインパクトに欠けるよなぁ」という理由である。

 そんな頭がおかしいのかと思う程自己中心的な目的は森の賢王からしてみればたまったものではない。

 まぁ、エレティカはこの作戦の結末を知っているのだが。

 

 「ではアウラ、任せるぞ。」

 「はいっ!」

 

 そして少女の姿をしたダークエルフは一瞬にしてどこかへ飛び去っていく。

 

 

 そうしてアウラとの打ち合わせを終え、再び漆黒の剣と合流し、森の中へ。

 

 一応採集の手伝いはするものの、「ここら辺りには私達の国で見るような薬草は見られないのですね」という、暗に「どれが薬草なのかわからない」という予防策を立てつつ、薬草採集の手伝いをする。

 

 とは言っても、モモン達は薬草採集が出来ない(薬草を見せられても、それが薬草だと分からない)為、ほとんど荷物持ちという形でしか手伝えないのだが、ティカはンフィーレアからその薬草の効能を聞いたり、食べられる山菜だという植物をいくつか貰えるように事前に話していたため、かなりご満悦な様子であり、モモンもそれを見て仮初の頬が緩んだ。

 

 それからしばらくして、薬草もほどほどに集まり始めてきた頃だった。

 

 ―――ザワザワ……!!

 

 「!!」

 

 突然、小鳥達の群れが、「なにかから逃げるように」飛び立ち、その方向の木々が不自然にざわめくのが聞こえる。

 

 すぐにレンジャーであるルクルットが耳を地面につけて音を探知、その結果……。

 

 「……まずいな、こりゃ……デカイ物がこっちへ向かって来てる!」

 

 そう険しい顔でルクルットが告げる。

 

 「森の賢王でしょうか……!?」

 「わからない、だが、とてつもなく巨大で……しかも、速い!!」

 

 ヘルムの下でモモンは「アウラが作戦に成功したようだな」とほくそ笑む。

 そのまま、森の賢王が来ると思われる方向に立ちふさがると、余裕といった態度で言い放つ。

 

 「ここからは、私達に任せてください。」

 「分かりました!」

 「頼みましたぞ!」

 

 「あの、モモンさん!」

 「何でしょう?」

 「その……無理は、しないでくださいね?」

 

 ……これ、声と顔を見ているからなんとも思わないが、行っているセリフを文面だけに直して見ると、まるで思いを寄せる目上の方へ気遣いを見せる女性の後輩のようだ、なんて事を考えてしまい、一人悶絶しそうになるティカ。

 だがそこは鉄壁のアルカイックスマイルが防いでくれる。

 

 対してモモンの方はというと、「誰かが見ていてくれないと、撃退しても相手が森の賢王だと分からないではないか……」と独りごちた。

 

 「足の一本位切り飛ばすか……。」

 

 スッ、と大剣を構えながらそんな事を言っていると、そろそろ足音が近くなってくる。

 それにつれて、流石に、万が一にでも、アレに一撃もらうのは嫌だなぁとエレティカは警戒を強めていつでも動き出せるようにする。

 本来、その必要はないほどのスペック差はあるのだが……。

 

 

 そして、次の瞬間、それを目視する。

 

 とはいえその相手は高速移動しており、自分達に気付くや否や、旋回し、角度を変えた方向から素早い攻撃を繰り出す。

 

 それは、緑色の蛇の頭のように見える、伝承通りであればヤツの尻尾。

 

 並外れた身体能力でもって、余裕でそれをいなすモモンだったが、その攻撃の重さにモモンの体重の方が根負けして、ズリリと音を立てながら地面を数センチ滑る。

 

 「はぁっ!!!」

 

 そして雄叫びと共に大剣で受け止めた尻尾の攻撃を弾き返す。

 尻尾はしゅるしゅると再び木々の影に隠れるように戻っていく。

 

 相手はそれに驚いたのか、あるいはそれによって冷静になったのか、相手の力量を知ってか知らずかその姿を潜める。

 

 そして、モモンがその伝説の魔獣の姿を探しているとどこからか声が響く。

 

 

 『某の初撃を完全に防ぎきるとは、見事なものでござる。』

 

 「……ござる?」

 

 『さて、某の縄張りへの侵入者よ。もしここで引き返すのであれば、先の見事な防御に免じ、某は追わないでおくが……どうするでござるか?』

 

 どうする、といいつつ、既に答えが分かりきっているような声色だ。

 現にモモンの方も、「今なら見逃してやる」という挑発に乗ることにし、こちらからも挑発を仕掛けることにした。

 

 「それよりも姿を見せないのは、自信が無いのか?それとも、森の賢王ともあろう伝説の魔獣は意外とシャイなのかな?」

 『言うではござらぬか……。』

 

 ここでティカは「おや?」と若干違和感を感じて内心首をひねり、それが冒険者組合での自分の発言が原因だと思うと、少しそのアルカイックスマイルの口角が上がった。

 

 『では某の威容に瞠目し、畏怖するが良い!』

 

 ずん、ずん、という、大きな音が鳴り響く。

 そしてそれは、恐れる様子もなくこちらに近づき、その進行上にあった木をその強靭な腕と爪で無理やり折り曲げ、そこでようやくその姿の全貌が明らかになる。

 

 

 「な……こ、これは……!!」

 『フフフ……そのヘルムの下から、驚愕と恐れが伝わって来るでござるよ。』

 

 既に、勝ち誇ったような態度でそう告げる魔獣。

 しかしモモンの方はというと全く別のことに対して驚きを隠せずにおり、ついにそれを口に出して本人に問いかけてしまう。

 

 「一つ、聞きたい……。お前の種族名は…………ジャンガリアンハムスター、とか言わないか……?」

 

 「なんと!?もしや其方、某の種族を知っているのでござるか?」

 

 そう、その魔獣の全貌……それは一言で言えば「巨大なハムスターに魔術の刻印のようなものと蛇のような見た目の緑色の尻尾を付けたらこうなる」といった魔獣である。

 その顔は、間違っても魔獣とは呼べないほどに愛くるしく、くりくりとした目とひくひくと動く鼻は女子供にとてつもない愛玩欲求を生むだろう。

 まぁ、こうも巨大で人の言葉(何故か武士口調)まで話すとなると流石に違う気もするが。

 

 「……う、ん……知っていると言って良いか……かつての仲間が、お前によく似た動物を飼っていた……。」

 

 そのギルドメンバーには実はエレティカも会ったことがある。

 ペロロンチーノがエレティカを良く連れ回していた頃に、飼っているハムスターの画像をこれでもかと言う程ギルドのメンバーに見せつけまくっていた人だ。

 だからこそ、そのハムスターが死んだときには目も当てられなかった。

 NPCだから下手な動きをするわけにもいかないし、実はペロロンチーノがログアウトした直後にちょっと泣いてしまったのはエレティカの秘密である。

 

 「なんと!?もし同族が居るのであれば、教えて欲しいでござる!子孫を作らねば生物として失格であるが故に……。」

 「いや、それはサイズ的に無理だ……。」

 「そうでござるか……残念でござる……。」

 「すまんな……。」

 

 モモンはそう答えつつ、その理屈で行くと俺はやはり生きる者として失格ということになるな、と思いかけ、首から下げたペンダントの存在を思い出して内心で苦笑する。

 どうやら本当に心までアンデッドになっているようだ。

 わざわざこんな物を使ってまで人間化し、上手く行けば子孫繁栄も夢じゃないというのに。

 ……いや、そもそも一体誰と子孫を繁栄させるというのか?

 

 ……いや、それはおいておいて、だ。

 

 「良いでござるよ……それよりも!」

 『そろそろ無駄な話は止して、命の奪い合いをするでござる!!』

 

 その、わざわざ声を変える必要ってあるんだろうか……というかどうやって変えているのだろう?やはり魔獣、侮りがたし!

 

 「……ハズレだ。」

 

 ……侮りがたし!……とはならないようで。

 

 

 「森の賢王なんて……名前だから……期待したのに……。」

 

 モモンはまるでいじける子供のように、大剣をザクザクと地面に振り下ろしてはブツブツと愚痴を垂れる。

 まぁ、それはそうだろう。

 

 森の賢王という伝説の魔獣!?どんな奴なんだろう!?とおもって蓋を開けてみれば、デカイハムスター(魔獣)である。

 がっかりするのも無理はない。

 

 男の子がクリスマスに携帯ゲーム機を頼んだら、成る程確かに頼んだ携帯ゲーム機であるが、何故かカラーがピンクだった時のような、そんな気分だ。

 

 『某の支配する区域に侵入せし者よ!某の糧となるでござる!!』

 

 「外れだ……完全に外れだ。」

 

 賢王だというのに、出会って数十秒経とうとしているが、いまだにその賢王たる所以、その片鱗のへの字も見られない。

 相手と自分の力量の差を見ることすら出来ないとは……。

 

 こんな魔獣を撃退したとて一体誰が褒めてくれるだろう?

 

 

 モモンは、完全に興が削がれた、という気分であり、とてもじゃないがまともに戦おうという気すら起きなくなっていた。

 

 当の魔獣はというと『何をしているでござるか?まさかとは思うが未だ勝敗が分からぬ内に降伏とは有り得ぬでござろう?さあ、某と本気で戦うでござるよ!命の奪い合いをするでござる!!』などと気合十分という顔をしている。

 

 ――もう、ヤメだ。

 

 「スキル、<絶望のオーラ……………レベル1>。」

 

 極めてめんどくさそうに言いながら、剣先を件の魔獣へ向け、スキル名……とその加減具合を示すレベルを言い放つと、剣先から黒いオーラ(極めて脆弱な)が弾け、魔獣の体を包む。

 

 「ふあああああ……!!?」

 

 途端、魔獣はゾワゾワとした悪寒、その上位版のような、目の前の相手には絶対に勝てないと本能に直接叩き込まれたかのような感覚に陥る。

 

 すぐさま、ずしんと倒れるように自分の腹を見せ、「こ、降伏でござる~!某の負けでござるよぉぉぉ……。」と力なく降伏の意を示した。

 

 

 モモンはそれを見ながら、「さて、どうするかな……。」と呟くと、その一部始終を見ていた者が上から声をかける。

 

 「殺しちゃうんですか?」

 

 見ると、それはこの魔獣をモモンにけしかけた張本人であるアウラである。

 木の枝に座り込んで愉快そうに足をプラプラさせる姿は、成る程、ダークエルフだな。

 

 「でしたら、皮を剥ぎたいなって思うんです!結構良い皮取れそうですし。」

 「そ、そんなぁぁぁ……。」

 

 魔獣からしてみれば、大人しく自分の住処で寝ていたところをスキルでたたき起こされて、侵入者が居ることを知り、駆けつけて出会った戦士に戦いを挑めば結果はご覧の有様であり、挙句殺して皮を剥ぐとまで言われる。

 

 それをその傍で見ていたティカは、流石に目の前のなんの罪もない立派な魔獣の踏んだり蹴ったりっぷりに、激しく同情したのであった。




なかなか良い終わりどころが決められなくてちょっと長くなってしまいました。

……あぁ、そういえば、ようやく次回あたりに、あの人が出ますねぇ。
第三章は、その辺を色々片付けるまでになります。

そろそろペロロンチーノさんやぶくぶく茶釜さんにもスポットライトを当てたいと思いますよ~。


作者がなにかいいネタを思いつき次第では、これからの展開は本来のオーバーロードの展開からちょくちょく大きく逸れるところがあったりなかったりします。

なので、もう、事前に言っておこうと思います。





作者、クレマンティーヌさん大好きです……。^p^

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