(旧)ユグドラシルのNPCに転生しました。   作:政田正彦

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大変遅くなってしまい申し訳ありません。

リアルの方が忙しくてなかなか……。
そんでこれからも更新頻度が低くなるかもしれません。

出来るだけ……とりあえず1期アニメのとこまでは終わらせようと思います。
2期が来たら……あるいは作者が原作を買ったら……。

その時は、追々って感じで。


冒険者編第一章(3/4)

――数日前――ナザリック地下大墳墓のどこか

 

 モモンガとエレティカが、「冒険者モモン」、そして、「冒険者ティカ」という、モモンガが冒険者として活動するにあたって、色々な設定を事前に打ち合わせしていた時の事。

 

 モモンガの目の前にはエレティカが「これを」と差し出した一つのマジックアイテムが、宝石でも扱うかのように置かれている。

 

 それは見た目だけで言えば、ある種ペンダントのような、しかし形状は丸く、手にすっぽり収まる程度の懐中時計でもあるような物で、アンティーク調と言えば聞こえは良いくすんだ金色のソレは、どうやら横についている窪みに指をひっかける事で蓋を開くことができ、「ロケットペンダント」と呼ばれる、中に小さな写真等を入れて置けるアクセサリーだと分かる。

 

 こういった物にいくら縁が無い現実世界の住人だったモモンガも、漫画やアニメといった文化に殊更関心が無かったという訳ではない、というか、宝物殿を守護する軍服姿の息子を思い出していただければ、まぁ、この程度の事は知っていて当然だろう。

 

 蓋を開いてみると、中には何やら貴族のような――豪華で赤い服を着た男性――しかし、顔の部分が掠れてしまっていてその顔を確認することは出来ない――といった写真がはめ込まれており、古くなっているのか、元々取り出すという事を想定していなかったのか、中身を入れ替える事は出来そうにない。

 

 モモンガは、ふむ、と無い鼻を鳴らすと、「これは?」とエレティカに視線を送る。

 自分でマジックアイテムを鑑定する魔法を使えばいいとも思ったが、ここに持ってきた本人にその真意を聞いてみた方が早いと判断したのだ。

 

 「これは、先日私がゴm……倉庫を整理している際に見つけた、【トランスオブヒューマノイド/偽りなる人間への変身】が使えるようになるマジックアイテム、名前を「血族のロケットペンダント」といいます。」

 「……なんだと!?」

 

 

 思わず立ち上がって狼狽する。

 そんなものを何でエレティカが持っているのか。

 このアイテムが非常にレアだからとかそういう理由ではない。

 このアイテムは、今、冒険者として活動しようとしているモモンガにとって、非常に「都合が良すぎる」からだ。

 

 そもそもの話、幻を作る魔法でどうにかすればいいやと思っていたモモンガからすれば、それを出す、という事は、幻覚魔法を使用する必要はなく、しかも、これを使えば人間に変身する事が可能であるという事を意味していた。

 アレを失い、食欲を失い、睡眠する必要も失った彼からすると、それはとても魅力的な物に見えた。

 

 

 「とはいえ、いくつかデメリットも御座います。」

 「……ほう?言ってみよ。」

 

 

 デメリットと聞いて、それはそうだ。でなければゴミ倉庫で眠ってるわけが無い。と思ったモモンガは、精神が沈静化する前に、モモンガは落ち着きを取り戻して椅子に座り直す。

 

 「はい、まず、感情や欲求を抑制するスキルの効果が消え去り、アンデッドであるならば、精神支配の攻撃も人間種同様に受けるようになります。」

 「うっ……。」

 

 その思っていたより痛いデメリットに、思わず顔を顰める。

 尤も、モモンガは表情筋なんてものは無いので、いつもと変わらない顔である。

 エレティカは「多分苦い顔してんだろうな」位には思っているが。

 

 「他には、全体的なステータスの低下……これは種族が異形種から人間種モドキになるからですね。」

 「……まぁ、元より全力を出して戦う事等、そうそうありはしないだろう。それぐらいのハンデは問題ない。」

 「えぇ、もしもの時は私が守ります。そのために居るのですから。」

 

 

 そう聞いたモモンガは別の意味で在りもしない眉を潜める。

 

 基本、モモンガの前……というか、表面上はエレティカはモモンガやペロロンチーノ、ぶくぶく茶釜への忠誠心は高い。

 余程おかしな要求をされない限りはそれに応えている。

 ……まぁそういう意味で若干一名、身の危険を感じ始めてきている人物も居ないわけではないのだが。

 

 ともかく、そういった忠誠心は未だに慣れない物があるのだ。

 特に、エレティカに限っては、ひょんな事(番外編参照)から、「エレティカは実は明るい性格である」と思っている為、無理してそんな態度を取らせてしまっているのだと思っているために、モモンガは今非常に複雑な心情なのだ。

 

 「性欲や食欲、睡眠欲求と言った欲求等も復活してしまうので、アンデッドであるモモンガ様は食事や睡眠をする事に慣れるのに時間がかかるかもしれませんね。」

 「ふむ……(それって、逆に言えば食事や……えっと……そういうコトが出来るようになるって事、か?それはありがたいが……。)」

 

 そんなモモンガの心情をよそに説明を続けるエレティカ。

 

 遠回しではあるが、エレティカのその発言は暗に「そういう事が出来るようになる」と言っていたし、本人もそのつもりで言っている。

 無論アンデッド状態であったなら、食事をしようとしたらそれは垂れ流し状態になって目も当てられない状態になるし、性的な事はアレが無いために一切不可能だ。

 

 かの偉大なアンデッドの頂点に君臨するモモンガでも、夜の戦では役立たずどころかたつ物が無いんだよなぁ……と下品な事を考えてしまい、つい吹き出しそうになるのをこらえるエレティカ。

 

 モモンガの方は食欲はいいとして、性欲や睡眠欲求は……沈静化が無効化される事で、どれだけ我慢が効かなくなるかが問題だ、などと考えており、エレティカの表情筋がピクピクと痙攣しているのに全く気付いていない。

 

 

 「……まぁでも、モモンガ様でしたら、大丈夫でしょう。」

 「っ、あ、当たり前だ。(何を根拠に大丈夫なんて言っているんだお前は!!)」

 

 

 そうして、お互い別の意図を気付かれるのを恐れて強引に話を打ち切り、結局その「血族のロケットペンダント」は必要に応じて使用する方向で話が決まった。

 

 

――そして現在に戻る。

 

 「……ヘルムで顔をすっぽり隠していらっしゃるので、てっきり戦傷でもあるのかと思っていましたが……。」

 

 「おいおい!それをヘルムで隠しちまうなんてもったいねぇよ!街の中でくらい外していたらどうだ?」

 

 

 モモンも、使うまでは「そういえばどういう容姿になるんだろう?」とは考えていなかった為に、この状況は予想外の物でもあり、予想していたことでもあった。

 

 どういう事か、というと、ブリタという冒険者と出会った時に、モモンだけ借りた部屋に行って、ブリタとティカの二人を待たせたことがあったのを覚えているだろうか?

 

 そう、あの時に、モモンは【トランスオブヒューマノイド/偽りなる人間への変身】を初めて使用し、その容姿に愕然としたのだ。

 

 青年でも、なんならリアルのような容姿でも、冴えないおっさんでも、まぁ人間ならなんでもいいか、流石にショタとか脂肪たっぷりのデブ、まかり間違って女になっちゃうとかはちょっと勘弁してほしいなぁ位にしか思っていなかったモモンだった。

 

 しかし現実は予想を反して……というか、予想の斜め上を突っ切っていくような感じだった。

 

 

 彼、モモンの状態……容姿を細かく伝えるとするなら、まずその顔から説明すると、髪は黒髪短髪、いわゆるベリーショートという奴で、現代の現実世界ならまず間違いなく何かしらのスポーツをやっていそうな偏見を持たれかねない、爽やかさをアピールしている髪型だと言えるだろう。

 

 その顔の作りからしてもそうだ。

 

 鼻は、現代の日本基準で言うところの高い鼻に位置しており、キリッとした目はキツそうというよりは他人にやさしく自分に厳しい、そんなストイックさを醸し出している。現在は苦笑したように微笑んで、整えられた眉も今はハの字だ。

 

 そして全体的に言えることは、彼の身体を構成する皮膚が健康的な褐色肌だったことだ。

 

 現実世界に居たら「おっ?もしかして海行った?」となる程度だが、その程よく日に焼けて黒くなった肌は、となりのティカの透き通るような白い肌とはまた違う魅惑を持っていた。

 

 

 「ハハハ……いや、私もティカも異邦人だと知られると何かと厄介事に巻き込まれるかと思いましてね。」

 

 と、漆黒の剣のメンバーからの驚きやら羨望やら嫉妬やらといった目線から居たたまれなくなり、ヘルムを被り直し、事前に考えておいた言い訳を言っておくモモンだったが、その言い訳で納得するほど漆黒の剣のメンバーも素直ではなく、納得半分疑問半分といったところだった。

 

 

 どうしたものか、と内心で頬を掻くモモンだったが、そこで突然ティカが口を開く。

 

 

 

 

 「モモンはこう見えて恥ずかしがり屋なの。頭のてっぺんからつま先まで隠さないと羞恥で生きていけない程の、ね。」

 

 

 

 ニコリというよりはニヤッとした顔でそう言い放ったティカのその台詞を聞いて、モモンを含めたその場の全員が何かを吹き出しそうになる。というか吹き出した。

 

 「ちょっ!?ティ、ティカ!?」

 

 「ブフッ……言われてんぞモモンさん!」

 「る、ルクルット、失礼ですよ。」

 

 失礼だ、といいつつ、ニニャも若干声が震えているし、その表情はとても笑いをこらえきれていない。

 

 ダインやペテルなんかは、にこにこしながら「彼女なりの冗談なんだろうな」と思いつつ、「そういう理由なら仕方ないですね(のであるな)」なんてのたまっている。

 

 当然モモンも彼女を責めるなんてことはしないし、その程度の冗談は受け流す位の度量はある。何故ならかつての仲間の放つブラックなジョークはこれの比ではなかったから。

 

 「い、言わないでくれって言ったじゃないか~!」

 

 なんて、冗談に便乗している始末である。

 本心では「そうそう!冒険者なんてこのくらい軽い感じでいいんだよ!!」と思っている。

 

 どうにかしてこういうかる~い感じの間柄になれるようNPCに仕向けられないか本気で考える程に。

 

 しかし今ではあの忠誠心MAXの彼らとの接し方も慣れ始めて来たので、突然フランクに接するようになったNPCを想像してしまいブルッと悪寒がしたので、モモンガはそれ以上考える事をやめた。何事も程々が丁度いい。彼らはあれが丁度いいんだろう。

 

 

 「ハハハ……それじゃあ、お互い準備も済んでいますし、早速行きましょうか。」

 

 談笑も程々に、ペテルがそう切り出して一行は階段を降りて出入り口へと向かう。

 お互い準備万端、いつでも行けるぜ!という状態でスタンバイしていた為、今しがたあったこの気の合う冒険者仲間、実はシャイな黒い戦士と、実はちょっとお茶目な一面を持つ可憐な少女……と始まる冒険に心を躍らせていた。

 

 ……が、ティカは知っていた。

 多少原作とは違う道に進んだが、あるいはここで……

 

 「モモンさ~ん?ご指名の依頼が入っています。」

 

 出鼻をくじかれる事を。

 

 「指名?一体誰から?」

 「ンフィーレア=バレアレさんからです。」

 

 

 その時エレティカが感じていたのは、意外、というよりは案外という感じで、「結構原作とは違う事をしたはずだけど、こうなるんだなぁ」と思っていた。




モモンさんの外見ですが、単純に「そういや褐色肌の人って居たっけ?」と思ったから出しました。

もし既に居たらごめ~んねっ☆

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